インターセプト

レイラ

文字の大きさ
上 下
90 / 225
第2部 2幕

再びインターハイ予選

しおりを挟む
 5月も終盤。6月に入ったら、すぐにインターハイ予選が始まる。

 兄ちゃんもドラフト候補になり、ドラフトを受けることになった。兄ちゃんも新たな出発の第一歩だ。

 兄ちゃんはアーリーエントリーでNBAを目指すと思っていた。

 アーリーエントリーは、ドラフト候補ではない選手がNBAと契約できる。

 兄ちゃんはドラフト候補ではないと思っていたけれど、ドラフト候補だったことに未だに信じられない。

 だけど、その分、インターハイ予選が近づくにつれて、俺の緊張感も半端なかった。

 インターハイの予選とはいえ、注目される選手に目星をつけて、メディアなども殺到する。

 当然、兄ちゃんがドラフト候補に選ばれたから、弟の俺にも兄ちゃんのことを聞かれることが多くなる。

 こういう状況になると、選手は心もズタズタになってしまうこともある。

 もちろん、メディアもそれが仕事だということもわかっているけれど、兄ちゃんは兄ちゃん、俺は俺だ。

 黙ってて欲しいというのが本音だ。

 でも、今はメンタルトレーニングも行っていて、緊張感が襲ってきても、ある程度受け流せるようになってきた。

「もうすぐ大会だからバスケのことを考えるのもわかるけど勉強しなさい」

 美香に心を読まれたのか、授業の合間の休憩時間に頭を叩かれた。

「いって……」

 俺はボソッと呟くと、美香は横目で見てくる。

「凄く軽く叩いただけだよ」

 美香は丸めたノートを広げて、次の授業の準備に入る。

 ノートを丸めて、俺の頭を叩いたのか。確かに痛くなかったんだけど、つい、痛いって出ちゃうときがあるだろう。

 なんだかんだ言って、もう、インターハイ予選の時季か。早いな。去年は悔しかった。

 授業が終わり、バスケの練習だと気合いを入れ直していると、高宮コーチが姿を現した。

「練習の前に報告だ」

 高宮コーチがニヤリとする。この状況からすると、悪い知らせではないな。

「インターハイ予選初戦の相手が決まった」

 高宮コーチの声に、俺たちはドキドキしながら次の言葉を待った。

「相手は埼玉県私立平塚高校さいたまけんしりつひらつかこうこうだ」

 平塚高校。城伯高校にとっては、初めての対戦だ。初めての対戦ということは、研究材料が少ないから、なかなか厳しい戦いになりそうだ。

 まずは初戦突破だな。

 インターハイ予選の対戦相手も決まり、より、練習も気合が入った。
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!


処理中です...