陰陽師と伝統衛士

花咲マイコ

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お盆時期の伝統衛士

13☆慈愛

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「ただ、この御霊のまま陛下にお会いしたら魂から消滅しちゃうこともあるからね。」

 ということで、ハルの神は神世に上がってもらい、李流の中にお爺さんの御霊を取り憑かせて陛下の貴重な早朝のお散歩に恐れ多くも拝謁を賜った。
 それは李流にとってデジャブでもあって複雑な心境が尚更お爺さんを乗り移らせる器としてふさわしかった。
 太陽が昇る清々しい気配は陛下の霊氣そのものである。
 御前に膝を折り、かしこまる若き伝統衛士、刀の者たちは陛下の神々しさに息を呑み胸が熱い。

 我が国最高神の御子孫で生涯かけてお支えしたい尊き帝……

 そんな日和国民ならば帝をいただく事を常に誇りを言霊に正直に出すこともできず、呑み込み、逆に恨むみ言霊を吐くことに後悔していた御霊は涙を流し感動と後悔を抱いた事を李流の体を通じて伝える。

 気持ちが震える…闇が明かされる。
 全てを許されるような包み込まれるような…これは慈愛だ…

 いや、この場にいる陛下をお慕いあげる伝統衛士、近衛、舎人寮の者たちは同じ感無量の涙を流したいのをグッと我慢する。

『幼い頃から、陛下に憧れて一度でもいいので実際にお会いしたかった……そのことが心残りでした……』

 御霊のお爺さんは感情そのまま李流の中に入っているお爺さんの御霊は李流の体を通してポタポタと滝のような涙を流し恐れ多くも手を差し伸べてくださった恐れ多くも陛下の手に触れる。
 その手を陛下は力強く握り遊ばせ
「私のことをずっと想ってくれてありがとう…その気持ち全てが愛おしい」
 陛下は優しく微笑み陛下の瞳に一筋涙が頬を伝ったのを拝見し、お爺さんの霊も李流も息を呑む。
 心残りは全て昇華され、無垢な魂となったお爺さんは、太陽と夜の間に煌めき黄泉に旅だった。

『陛下の国民であられたこと…とても幸せでした……』

「そう言ってもらえると祝皇という存在としてあられてよかった…また日和に大御宝として生まれてきておくれ…」
 陛下は輝く空に昇るお爺さんに微笑みの次なる人生を祈られた

 その後李流はしばらく心が同調して、泣き腫らして陛下を困らせてしまったことに李流は一週間落ちこんでいた。

 落ち込むのと同時に至極幸せなような複雑な気持ちに苛まれた。

「いい加減にしろ!李流!落ち込む方が不敬だろ!」
 と薫に言われてなんとか李流は立ち直る。
「うん、そうだよな。迷惑かけてごめん…」
 李流は落ち込むと長い…と薫は新たな李流を知り支えてやらねばと決意する。
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