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お盆時期の伝統衛士
5☆責任
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「ほんっと、由々しき事態ですよ!この世でもあの世の仕事でも!」
連並に怒っているのは榊篁も同様だった。
後から事情を知った篁はそう憤る。
「お盆時間切れで御霊が地獄行きになるものが多いんですから!」
普段は隠している鬼の角が、にょきと生えてきている。
本気で怒ってる証拠である。
「現世に彷徨う特別な御霊じゃない限り、自我も意志もなくして最悪悪霊と一体化しちゃうんですから!」
あの世との関わりの深い鬼の一族でもあってあの世の理について詳しいようだ。
「そういう理になってたんだね、私の落ち度だったね……申し訳なかった…」
中務の宮は深々と頭を下げて篁に謝る。
「あわわわわわわわっ!僕は薫先輩に怒っていたので中務の宮殿下は関係ないです!」
篁は李流を責めたくないし、中務の宮をお責になる事も恐れ多いので薫に怒るふうに最初からわざと振る舞っていた。
(いや、おもいっつきり関係あると思うんだが……)
とは、口に出さず、肩をすくめた。
薫は理不尽にならず、李流と宮様の盾になれるならムキにならず我慢できた。
「あのお爺さん幽霊だけではなく、毎年皇居見学で遊びにくる事のも事実で、実害もなかったから甘く考えていたんだけどね…」
見えてしまう中務の宮は見て見ぬ振りをしつつ陛下が慕われていることを嬉しく微笑ましく思っていた。
戦後世代になっていくと反日思想が強くなり日和を滅ぼす念を飛ばしてくる。
そんな念を防ぐために陰陽寮や舎人寮の太刀の者たちの存在がある。
穢れを忌み嫌う神殿の者たちには負えない仕事を担うのだ。
だが、そんなに強い想いの霊だとは思わなかった。
「……何か特別な力をあのお爺さんは持っていたという事でしょうか?」
李流は特別な世界や力に詳しくないから確証はないけれど、三人は真剣に頷いた。
「そうだね…そうとしか思えないね……」
中務の宮は若い頃、九尾の狐を宮中に引き入れて妖大戦争状態になった。
結果は良きものになったのでお咎めはなかった。
その時関わった今は陰の帝の神となっている威津那をふと思い出す。
一瞬、出会っただけの初老の男性で一瞬だとしても目を惹く魅力を持った者だった。
それは、目の前にいる香茂薫の祖父なのだが……
「まぁ、そういうものにはあやかしの四神が結界を張っていて入れないはずなのに……」
「あ、本物のあやかしのポンタはその日ライブをしてて、俺少し遅れたからな……」
西の守りは半妖の者が担うことが多いため多少結界は緩んで、隙間ができてしまうために伝統衛士はとくに西側を見回ることが多い。
「前々から思ってましたけど西の四神は役に立たないですね」
篁の嫌味に薫の頭から狐耳がにょきっと生えて、
「うるせ!冥府の役人の鬼のハーフのくせに幽霊逃してんじゃねぇよ!」
薫は怒鳴り、篁の痛いところをズバッと突いた。
「はぁぁあ⁉︎僕は地獄のサービスのボランティアだもん!責任ないですし!」
「責任逃れを得意にしてんじゃねえよ……」
薫はスッと怒りを冷やして鋭い瞳に静かな声で言う。
「陛下の住まう宮中で仕事するなら真っ当に何事にもお勤めしろ……」
薫のその言葉は、怒りよりも真摯で真剣な顔で言われて篁は言葉に詰まり胸が痛い。
篁は自分でも悪い癖だと直したいと思っていたからだ。
「う、わ、わかりました…でも…」
幽霊を逃したのは決して篁のせいではないのは事実で大好きな李流を見ると言葉を飲み込む。
李流も困った表情をして反省をしている。
「ま、伝統衛士仲間として、その爺さんをさっさと捕まえて事件解決しようぜ!」
薫は篁の肩と李流の肩を引き寄せて明るくそう言った。
「ああ、薫、よろしく頼む」
「し、仕方ないですね。仕事頑張りますよ」
「私も手伝わせてもらうよ、私の責任でもあるからね」
中務の宮は篁のと李流の肩を組むとスクラムのような形になりえいえいオー!と声をおかけになり捜索活動を始めるのだった。
連並に怒っているのは榊篁も同様だった。
後から事情を知った篁はそう憤る。
「お盆時間切れで御霊が地獄行きになるものが多いんですから!」
普段は隠している鬼の角が、にょきと生えてきている。
本気で怒ってる証拠である。
「現世に彷徨う特別な御霊じゃない限り、自我も意志もなくして最悪悪霊と一体化しちゃうんですから!」
あの世との関わりの深い鬼の一族でもあってあの世の理について詳しいようだ。
「そういう理になってたんだね、私の落ち度だったね……申し訳なかった…」
中務の宮は深々と頭を下げて篁に謝る。
「あわわわわわわわっ!僕は薫先輩に怒っていたので中務の宮殿下は関係ないです!」
篁は李流を責めたくないし、中務の宮をお責になる事も恐れ多いので薫に怒るふうに最初からわざと振る舞っていた。
(いや、おもいっつきり関係あると思うんだが……)
とは、口に出さず、肩をすくめた。
薫は理不尽にならず、李流と宮様の盾になれるならムキにならず我慢できた。
「あのお爺さん幽霊だけではなく、毎年皇居見学で遊びにくる事のも事実で、実害もなかったから甘く考えていたんだけどね…」
見えてしまう中務の宮は見て見ぬ振りをしつつ陛下が慕われていることを嬉しく微笑ましく思っていた。
戦後世代になっていくと反日思想が強くなり日和を滅ぼす念を飛ばしてくる。
そんな念を防ぐために陰陽寮や舎人寮の太刀の者たちの存在がある。
穢れを忌み嫌う神殿の者たちには負えない仕事を担うのだ。
だが、そんなに強い想いの霊だとは思わなかった。
「……何か特別な力をあのお爺さんは持っていたという事でしょうか?」
李流は特別な世界や力に詳しくないから確証はないけれど、三人は真剣に頷いた。
「そうだね…そうとしか思えないね……」
中務の宮は若い頃、九尾の狐を宮中に引き入れて妖大戦争状態になった。
結果は良きものになったのでお咎めはなかった。
その時関わった今は陰の帝の神となっている威津那をふと思い出す。
一瞬、出会っただけの初老の男性で一瞬だとしても目を惹く魅力を持った者だった。
それは、目の前にいる香茂薫の祖父なのだが……
「まぁ、そういうものにはあやかしの四神が結界を張っていて入れないはずなのに……」
「あ、本物のあやかしのポンタはその日ライブをしてて、俺少し遅れたからな……」
西の守りは半妖の者が担うことが多いため多少結界は緩んで、隙間ができてしまうために伝統衛士はとくに西側を見回ることが多い。
「前々から思ってましたけど西の四神は役に立たないですね」
篁の嫌味に薫の頭から狐耳がにょきっと生えて、
「うるせ!冥府の役人の鬼のハーフのくせに幽霊逃してんじゃねぇよ!」
薫は怒鳴り、篁の痛いところをズバッと突いた。
「はぁぁあ⁉︎僕は地獄のサービスのボランティアだもん!責任ないですし!」
「責任逃れを得意にしてんじゃねえよ……」
薫はスッと怒りを冷やして鋭い瞳に静かな声で言う。
「陛下の住まう宮中で仕事するなら真っ当に何事にもお勤めしろ……」
薫のその言葉は、怒りよりも真摯で真剣な顔で言われて篁は言葉に詰まり胸が痛い。
篁は自分でも悪い癖だと直したいと思っていたからだ。
「う、わ、わかりました…でも…」
幽霊を逃したのは決して篁のせいではないのは事実で大好きな李流を見ると言葉を飲み込む。
李流も困った表情をして反省をしている。
「ま、伝統衛士仲間として、その爺さんをさっさと捕まえて事件解決しようぜ!」
薫は篁の肩と李流の肩を引き寄せて明るくそう言った。
「ああ、薫、よろしく頼む」
「し、仕方ないですね。仕事頑張りますよ」
「私も手伝わせてもらうよ、私の責任でもあるからね」
中務の宮は篁のと李流の肩を組むとスクラムのような形になりえいえいオー!と声をおかけになり捜索活動を始めるのだった。
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