陰陽師と伝統衛士

花咲マイコ

文字の大きさ
上 下
68 / 81
お盆時期の伝統衛士

3☆強い思い

しおりを挟む
「陛下を思う志が李流と同じくらい強いってすげー爺さんだな!俺見てみてぇー!」
 薫は中務の宮の李流が幽霊を見えた理由を聞いて興奮する。
 中務の宮曰く、陛下を思う気持ちが特別強い御霊で李流と波長があったために見えたし、幽霊と会話が成立してしまったということらしい。
「あの…霊感のある殿下、薫は幽霊をいつも見ていらっしゃるのではないのでしょうか?」
 二人とも、うーん…と腕を組んで考える。
「俺は特別な縁や運命がなければ見れないかな……いつも見れるわけではなくそれは無意識に無かったことにすることもあるな。まぁ、現世にとっては無だからかな?」
 薫はうまく説明できないが端的に言う。
「僕は普段は見えないようにしてるけど、どうしても強い感情の念のような妖怪、怨念は意識しなくても見えてしまうね。」
 危険レベルの低い霊は見えないようにできる能力を薫の祖父に仕込まれたことを思い出す。
 それはあまりにも関わってしまうと皇族としての品や振る舞いに支障が出てしまうせいだ。
「顕示欲の強い霊と関わったら説法したくなっちゃうね。」
 前世が阿闍梨だった中務の宮はそう言うことが得意である。
 さらに、腕を組み難しい顔をなさり、
「そんな霊は物に意識を移して呪物になることがあるからね、それを陰陽寮に連れてきたら毎日みんなに迷惑かけちゃうからね。控えてるんだよ…これでも……」
 中務の宮は苦笑をしながらも瞳はキラキラ輝いていた。
「その割には呪物をお持ち込みになるんだよなぁ……」
 つい、ぼやいてしまった薫に失礼だぞと肘で軽く押して注意する。
 李流は皇族殿下に不敬な態度を許さない。
 中務の宮は説法もお好きだが、陰陽寮職員の特殊能力者の能力を観察なさることもご趣味になっている。

「李流君と同じ強い志を持っているなら、陛下に障る事はないと思うからそっとしておいてもいいと思うよ」
 中務の宮はそう言って微笑んだ。
 陛下をお慕いした思いの御霊は殿下にとっても尊い民なのだ。
 心残りなく天への道が現れるまでこの世を楽しんで欲しいと思う。
 その優しいお心を覗いて知った薫は中務の宮のことをさらに尊敬し好きになる。
「そうですよね…!もしまたあったから声かけて色々話してみたいです」
 李流は今度は怖がらず陛下について語っていきたいと思うのだった。
しおりを挟む

処理中です...