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陰陽寮のひと時
羨ましいハル様
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「私も学生生活送っていたら……お前たちのような親友ができたのかな?」
晴房は檜扇を口元に当ててため息をひとつついて呟いた。
「ハル様羨ましいのか?」
李流と一緒に勉強中の薫には晴房の呟きが聞こえてしまった。
西のあやかしの守護という仕事をしているのであやかし姿で呟きすら聞き逃さなかった。
「羨ましいと思ったことはなかったのだが、李流と薫の仲の良さを見たらつい言霊にだしてしまったのだ……」
そう言って、檜扇をパシンと掌で打って閉じ、苦笑する口元を見せた。
「学校に通ったからと言って、親友と言える縁が結ばれるとは限らないですけど……」
李流も薫も適当に話を合わせるクラスメイトはいたが、気がおける親友ができたのは高校一年の三学期だ。
もっと早く仲良くなれなかったのが互いに悔やまれるけれど、タイミングというものもあると悟る。
「だよな。オレ彼女の方が大事だったし…」
明るく薫は振る舞うが、寂しい気持ちが強い。
その分、李流に甘えるのもある。
彼女とは違う気やすさ同性の悩みも相談しやすい。
李流はさらにウブだから色々教えてやらねばと思っていたりするが父の瑠香に「二十歳まで余計なこと教えるな!」と言われている。
神の化身は純粋な子供が可愛くて仕方がないのだ。
それは晴房も同じらしく純粋で素直な李流を可愛がっている。
「ほぼ、宮中の陰陽寮住まいしかしていなかったのでな…外の世界というものはテレビで見た世界しかわからんのだ…」
陰陽寮には大型のテレビが置いてあって仕事に集中している時は消すが、ある程度暇な時は昼食中職員みんなで観たりして楽しんでいる。
それが唯一の外の情報なので晴房はテレビが大好きである。
ある程度の捏造は目を瞑っているが、ひどいものはメモをしている。
特に皇室に関する捏造は常にチェックするのも仕事のうちになっている。
「なんか寂しい人生でつね。」
野薔薇は遠慮なく正直に言霊にだした。
「まぁな!」
ふん!っと晴房は胸をわざと張る。
おちゃめなところをもった懐の深い優しい上司というより、若い家族のお兄さん的ポジションを晴房自身気に入っている。
仕事のときはきっちりしているつもりだが、陰陽寮自体実家のようなものなのだ。
「胸を張って言えることですか?」
真面目な李流は苦笑して言うが、晴房の明るい態度は嫌いじゃない、きらいじゃないからこそ野薔薇が言うように寂しさを思う…
「なんでハル様は学校通えなかったんだ?親父?」
薫は晴房たちの様子をお茶を飲みながら黙ってみていた父で副陰陽寮長の瑠香に尋ねる。
「そうだな…なんで私は学校に行けなかったのだ?」
晴房自身もわかっていなかったことに瑠香は飽きれて一つ大きなため息を吐いて、
「超能力ばかり発揮して、とんでもない事件起こされても困るからだ。」
瑠香は、はっきり言う。
「生まれた時から神の化身で陛下をお守りするのがお前の役割だったし学校生活なんぞ意味ないという判断だ。」
それは当然だと瑠香は思って揺るぎない。
「さらに、大人の今は人間としての分別はあるが、子供の頃はいたずらっ子でいつもはハルの神が体を乗っ取るし普通の生活できるわけないだろ」
そんな、晴房の生い立ちを知った李流、薫野薔薇は納得した。
「うーん。それもそうだな……クラスメイトが、陛下に対する悪態ついた時点でこの世から消してたかもな…」
晴房は怖いことをさらっという。
「ならどうやって常識や勉強を覚えたんですか?」
学校生活をしたことがないなら学習の基礎はどこでどうやって習ったのか疑問に思う。
「八歳までは瑠香に勉強を教わっていたが、途中で謹慎処分になってからは陰陽寮職員におそわったな。」
「ハルは私の弟のようなもので、私以外に世話されるのも私がやだった……」
瑠香はその時はあまり意識はしていなかったが今思えば独占欲と意地で幼いながらも晴房の世話を率先していたと思う。
対の神の化身として縁が深い仲なら当然のことだが……
「親父は生まれたときから世話焼きで、独占欲強かったんだな…」
母や自分たち子供にしていた事を思えば薫は納得がいった。
「勉強以外だと、宮様方、特に皇太子が、心配なされてな。お忍びで買い物とか付き合わせてくれたな。隠し子とも噂があったのは私のことだな。今も密かに皇太子の隠し子だと思い込んでる職員もいる。それはそれで良いと皇太子殿下は申されていてそれから私への陰口は減ったな……」
皇太子殿下の心配りをなさるのを知った李流は瞳を輝かせる。
「中務の宮の場合は宮中以外にあだ名す悪霊退治に連れて行かれたりしたな……お小遣いでお菓子を買ってもらったり殿下の手には負えないとかいいだして、今の陰陽寮の仕事を更に増やした原因になったな……」
そのめんどくさいことに晴房は憤っている。
「式部の宮はいろんな芸術ごとを暇を見つけては仕込んでくれたな。陰陽と関わりの深い知識も勉強を教えてくれたり楽しかった」
そのため、式部の宮と仲良しなのかと納得する。
「陰陽寮の職員にもついて買い物の練習して…心配なさった両陛下が後ろからついてきてくださったり、私の方がハラハラしたぞ。」
同い年の子供がいない分大人の雰囲気礼儀礼節はわきまえていたが、もともと子供っぽい明るい性格をしているので人と馴染めるのだと納得がいく。
特殊な人生だからこそ、人とは違う教養教育を受け今に至るのだと納得した。
高貴な方々に指導されていれば学校行かなくても事足りすぎる……
「なんて、羨ましいというか恐れ多い日常生活なさっているんですかっ!」
皇室大好き李流は両陛下殿下方の話を聞きたいというのと羨ましさで興奮して叫んでしまった。
「まぁな!」
さっきよりも堂々と腰を反り胸を張る。
「ハルは両陛下の孫……殿下方の末の弟みたいなものでもあり人であり守神だからな。
神が人間界で粗相なんぞされたら心配だという口実もあったな。私も十五までは陰陽寮と両陛下に可愛がられた……」
その時のことを思い出すと瑠香も幸せそうに微笑んだ。
神誓いを幼い時にし、成功するくらい祝皇陛下のことを愛している。
妻の葛葉子との愛とは別として、人として本当に敬愛している。
(ハルのように言霊には出せないほどにな……)
瑠香はそう自分の心にフッと一人笑う。
そんな父の強い祝皇陛下への芯ある敬意を、テレパシーで覗いていた薫は
(まだまだ敵わないなぁ…)
と思いながらもそんな父を尊敬する。
「まぁ、宮中の外にあまり出られない人生でもお前たちや雪に自由に会える人生を与えられたことにハルの神に感謝だな。」
子供達の仲の良さを羨ましがった己が愚かに思えて口元を檜扇で隠して、フッと笑うのだった。
晴房は檜扇を口元に当ててため息をひとつついて呟いた。
「ハル様羨ましいのか?」
李流と一緒に勉強中の薫には晴房の呟きが聞こえてしまった。
西のあやかしの守護という仕事をしているのであやかし姿で呟きすら聞き逃さなかった。
「羨ましいと思ったことはなかったのだが、李流と薫の仲の良さを見たらつい言霊にだしてしまったのだ……」
そう言って、檜扇をパシンと掌で打って閉じ、苦笑する口元を見せた。
「学校に通ったからと言って、親友と言える縁が結ばれるとは限らないですけど……」
李流も薫も適当に話を合わせるクラスメイトはいたが、気がおける親友ができたのは高校一年の三学期だ。
もっと早く仲良くなれなかったのが互いに悔やまれるけれど、タイミングというものもあると悟る。
「だよな。オレ彼女の方が大事だったし…」
明るく薫は振る舞うが、寂しい気持ちが強い。
その分、李流に甘えるのもある。
彼女とは違う気やすさ同性の悩みも相談しやすい。
李流はさらにウブだから色々教えてやらねばと思っていたりするが父の瑠香に「二十歳まで余計なこと教えるな!」と言われている。
神の化身は純粋な子供が可愛くて仕方がないのだ。
それは晴房も同じらしく純粋で素直な李流を可愛がっている。
「ほぼ、宮中の陰陽寮住まいしかしていなかったのでな…外の世界というものはテレビで見た世界しかわからんのだ…」
陰陽寮には大型のテレビが置いてあって仕事に集中している時は消すが、ある程度暇な時は昼食中職員みんなで観たりして楽しんでいる。
それが唯一の外の情報なので晴房はテレビが大好きである。
ある程度の捏造は目を瞑っているが、ひどいものはメモをしている。
特に皇室に関する捏造は常にチェックするのも仕事のうちになっている。
「なんか寂しい人生でつね。」
野薔薇は遠慮なく正直に言霊にだした。
「まぁな!」
ふん!っと晴房は胸をわざと張る。
おちゃめなところをもった懐の深い優しい上司というより、若い家族のお兄さん的ポジションを晴房自身気に入っている。
仕事のときはきっちりしているつもりだが、陰陽寮自体実家のようなものなのだ。
「胸を張って言えることですか?」
真面目な李流は苦笑して言うが、晴房の明るい態度は嫌いじゃない、きらいじゃないからこそ野薔薇が言うように寂しさを思う…
「なんでハル様は学校通えなかったんだ?親父?」
薫は晴房たちの様子をお茶を飲みながら黙ってみていた父で副陰陽寮長の瑠香に尋ねる。
「そうだな…なんで私は学校に行けなかったのだ?」
晴房自身もわかっていなかったことに瑠香は飽きれて一つ大きなため息を吐いて、
「超能力ばかり発揮して、とんでもない事件起こされても困るからだ。」
瑠香は、はっきり言う。
「生まれた時から神の化身で陛下をお守りするのがお前の役割だったし学校生活なんぞ意味ないという判断だ。」
それは当然だと瑠香は思って揺るぎない。
「さらに、大人の今は人間としての分別はあるが、子供の頃はいたずらっ子でいつもはハルの神が体を乗っ取るし普通の生活できるわけないだろ」
そんな、晴房の生い立ちを知った李流、薫野薔薇は納得した。
「うーん。それもそうだな……クラスメイトが、陛下に対する悪態ついた時点でこの世から消してたかもな…」
晴房は怖いことをさらっという。
「ならどうやって常識や勉強を覚えたんですか?」
学校生活をしたことがないなら学習の基礎はどこでどうやって習ったのか疑問に思う。
「八歳までは瑠香に勉強を教わっていたが、途中で謹慎処分になってからは陰陽寮職員におそわったな。」
「ハルは私の弟のようなもので、私以外に世話されるのも私がやだった……」
瑠香はその時はあまり意識はしていなかったが今思えば独占欲と意地で幼いながらも晴房の世話を率先していたと思う。
対の神の化身として縁が深い仲なら当然のことだが……
「親父は生まれたときから世話焼きで、独占欲強かったんだな…」
母や自分たち子供にしていた事を思えば薫は納得がいった。
「勉強以外だと、宮様方、特に皇太子が、心配なされてな。お忍びで買い物とか付き合わせてくれたな。隠し子とも噂があったのは私のことだな。今も密かに皇太子の隠し子だと思い込んでる職員もいる。それはそれで良いと皇太子殿下は申されていてそれから私への陰口は減ったな……」
皇太子殿下の心配りをなさるのを知った李流は瞳を輝かせる。
「中務の宮の場合は宮中以外にあだ名す悪霊退治に連れて行かれたりしたな……お小遣いでお菓子を買ってもらったり殿下の手には負えないとかいいだして、今の陰陽寮の仕事を更に増やした原因になったな……」
そのめんどくさいことに晴房は憤っている。
「式部の宮はいろんな芸術ごとを暇を見つけては仕込んでくれたな。陰陽と関わりの深い知識も勉強を教えてくれたり楽しかった」
そのため、式部の宮と仲良しなのかと納得する。
「陰陽寮の職員にもついて買い物の練習して…心配なさった両陛下が後ろからついてきてくださったり、私の方がハラハラしたぞ。」
同い年の子供がいない分大人の雰囲気礼儀礼節はわきまえていたが、もともと子供っぽい明るい性格をしているので人と馴染めるのだと納得がいく。
特殊な人生だからこそ、人とは違う教養教育を受け今に至るのだと納得した。
高貴な方々に指導されていれば学校行かなくても事足りすぎる……
「なんて、羨ましいというか恐れ多い日常生活なさっているんですかっ!」
皇室大好き李流は両陛下殿下方の話を聞きたいというのと羨ましさで興奮して叫んでしまった。
「まぁな!」
さっきよりも堂々と腰を反り胸を張る。
「ハルは両陛下の孫……殿下方の末の弟みたいなものでもあり人であり守神だからな。
神が人間界で粗相なんぞされたら心配だという口実もあったな。私も十五までは陰陽寮と両陛下に可愛がられた……」
その時のことを思い出すと瑠香も幸せそうに微笑んだ。
神誓いを幼い時にし、成功するくらい祝皇陛下のことを愛している。
妻の葛葉子との愛とは別として、人として本当に敬愛している。
(ハルのように言霊には出せないほどにな……)
瑠香はそう自分の心にフッと一人笑う。
そんな父の強い祝皇陛下への芯ある敬意を、テレパシーで覗いていた薫は
(まだまだ敵わないなぁ…)
と思いながらもそんな父を尊敬する。
「まぁ、宮中の外にあまり出られない人生でもお前たちや雪に自由に会える人生を与えられたことにハルの神に感謝だな。」
子供達の仲の良さを羨ましがった己が愚かに思えて口元を檜扇で隠して、フッと笑うのだった。
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