陰陽師と伝統衛士

花咲マイコ

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あやかしと幽霊の恋愛事情

14☆薫の過去の夢☆虚夢の始まり

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 高校合格して、ついに二人は結ばれる。
 この人しか愛せる人はいない大切にしたいと強く思う程愛おしく愛し合えば合うだけ、大人になった気分だった。
 他の同い年とは精神年齢は高いと自負した。
 そして、まゆと結婚したいと思った。
 愛のある家族を作りたい…それは互いの共通の夢になった。
「今度は高校卒業したら…俺と結婚をして欲しい…まゆとずっとこうしていたい……」
 薫は優しくまゆを腕の中に抱きしめる。
「薫くん…私もよ…結婚してずっといっしょにいようね。」

 死ぬまでずっと……寄り添える夫婦になって家族になろうと指切りげんまんした。
 この三年間はお互いやりたいこと、したいことは尊重をすることも約束した。

 まゆも生活費を稼ぐために大学をあと一年通いながらバイトをしていたし、薫も宮中のあやかしの四神に任された。
 安倍家で狐のあやかしとして生まれてきた者の密かな任でもあった。
 永遠に定められたものではないので、いずれは狸のあやかしのポンタに任せるつもりだが陛下のお住いをお守りできる任は誇らしかった。
 薫は人間とはなかなか真の友になるのは難しかったがポンタとすぐに友達になった。
 そのことをまゆに言ったら、
「人間のお友達も必要よ?」
 と心配された。
 そういえば中学のときも一匹狼ぽかった、と思う。
 親しくなれば、純粋なほど信用して甘えてくれるカワイイ子なのに……。
 子供っぽく思っているのが伝わると少しムッとして、
「そしたら、まゆとの時間がさらになくなっちゃうじゃないか……」
「ふふ、そうね……」
 まゆはそういい、微笑むが少し困った顔をした。
 それは薫の言葉に困ったわけではなかったが……
 まゆは薫が愛おしくて唇を重ねれば、愛し合って幸せな時を過ごす。
 やっぱり二人だけの世界が幸せだった。
 高校で適当に友達を作るが、桜庭李流が気になった。
 三学期になるのにまともに話した事もない。
 優等生はあの事件以来苦手だ。
 裏表あるやつかもと警戒していて、心や記憶を読むと、陛下を敬愛し、父が務める陰陽寮職員にもなっているらしい。
 興味があるが父に関係すると思うと近づきたくなかった。
 だが、母に李流の母の雪と陰陽寮長の晴房の、縁を結ぶ手伝いをさせられて、三学期には親友になり、父とも和解した。
 その事をまゆはとても喜んでくれた。
 そして、
「私も父を探して気持のケリを付けたい。」
 薫に感化されてまゆは決意したようだ。まえから父親の住所は知っていて、父親もまゆの存在を知り、会いたがっているという。
「虫のいい話よ……」
 と呆れてはいたが、一度でいいから会ってみたいという気持ちになったようだ。
「私を孕んだ母をよく捨ててくれたわね!って、そんで、ありがとうって言ってやるの!
 だけど、生まれてこれて、薫くんと出会えた幸せを暮れてありがとうって……。」
 薫を見つめて微笑んだ。
「そうか、俺のことも宜しくいってくれ。今度は孫を見に日和国に来いってな!」
 薫はニッとわざとドヤ顔をした。
「それは、気が早いわよ……」
「早くないよ……」
 優しくまゆを引き寄せて情熱的なキスをして、留学して会えない分、狂おしく愛しあった……
 もしかして本当に子供を宿させてしまったかもしれないほどに……

 三日後、まゆは父親探しを兼ねたコメリカ留学しに行った。

 そして……訃報が届いた…

 まゆの母が、薫に伝えた…

 薫は、頭の中が
 真っ白になった……。
 信じたくなかった……
 考えたくなかった……


いや……

 まゆは帰ってきたんだ…無事に……
 帰ってくるはずだ……と強く思いながら反魂香を焚く。

 これでまゆが現れたなら………

 まゆは本当に亡くなったということだ……

 どうか、現れないでくれ……

 だけど、

 もし、

 この世にいないというのなら……

 逢いに来てほしい……

 希望と絶望に葛藤しながらくゆる煙を眺める。

 煙が揺れてまゆの香りがする…
 好んでつけていた甘い、マリンの香水の香り……。


ああっ……!まゆ!


 薫の心が悲しみに満ちて絶望するのを李流は感じて胸が痛い。

 薫と同調していた魂が離れる感覚がする。

 俯瞰して、薫と煙の様子を眺める。

 煙が揺らいで、裸のまゆが半透明に形作られて現れた。
 せつなげに薫の頬に触れる。
「まゆ……」
「薫くん……」
「まゆ!まゆ!まゆ!やっばり!
 生きていたんだ!死んだなんて嘘だったんだ!」

 薫の記憶は塗り替えられていると李流は察した。
 それが原因で目を覚まさない命の危機の出来事。
 薫のまゆへの愛おしさを知ってしまえば仕方のないことだと切なく思う……現実を信じたくないのだから……

「これからは家族三人、幸せに暮らす夢を見ましょう。」
 まゆに瞳の合わせると薫の瞳に光が失った。
 まゆとの夢を紡ぐ記憶が煙が力を貸して薫を魂から引きずり込むようだ。

「そうだな……それが俺達の望んだ夢なんだから……」
 薫の身体も煙のように半透明になる。

 それは、もう、魂の世界。

 薫の妖力と神の化身が作った反魂香とこの土地の特殊な思いとリンクした異界が出来上がった。
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