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第3話 美優とひかり

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 教室に朝、入るとクラスメイト達が一瞬だけ俺と目があって、沈黙する。そして何もなかったかのように会話をはじめた。なんだったんだ今の一瞬の間は?なぜか俺はクラス中から注目を浴びているという錯覚に陥った。


 そんなはずはないだろう。俺は今までひっそりと暮らしてきた。それが何も取柄もなく、平凡な男子をしている俺の運命だ。俺は自分の身の丈くらいは知っているつもりだ。カーストの底辺は照明が当たるのを避けなければならない。俺達はひっそりと暮らす農民ですだ。


 俺はそーっと教室を歩いて、自分の席に着く。そして鞄を枕替わりにして顔を鞄の上に置く。今日も1日平和でありますように。


 昨日は良かったなー。背中に残っている胸の感触をまだ忘れてはいない。そのうえ、おんぶにはもう一つ隠れた特典があった。美少女が落ちないようにしっかりと太ももを持たないといけないということだ。


 あのスタイルの良い太ももを、家に帰るまで持ち続ける。至高のひと時、俺はあの時を忘れない。


 ああ、今日はこれだけで、1日、ゆっくりと幸せを噛みしめて、授業中、寝ることができる。今日は幸せだ。


 そんなことを思っていると、目の前に影ができる。どうせ仁だろうと思って、のろのろと顔をあげると、満開に笑んだ美少女と、もう1人の可愛い子が立っていた。


 2人共、シャツのボタンを2つまで外して、スカートの丈がやたら短い。


「やっほー童貞君。私のこと覚えてくれてるかな」


 美少女はニヤニヤと笑って、俺の前で前かがみの体制になって顔を近づけてくる。前かがみになるとシャツのボタンが2つ外れているから、俺の位置からは胸の谷間まで見える。今日は赤のブラジャーが色っぽい。色白の肌に赤のブラジャーは扇情すぎる。艶やかだ。この目に焼き付けておかねば。


「本当に童貞君は私の胸が好きなのね。これくらいいつでも見せてあげるけどさ」


 声を聞いて、俺は視線を胸から美少女の顔へ向けると、鼻と鼻がぶつかるような距離で、美少女がニヤリと笑っている。息をするたびに甘い吐息が漏れるのが聞こえそうだ。これは何かのサービスか。料金は発生するんだろうか?


「私の名前は綾瀬美優《アヤセミユ》。ちゃんと覚えてよ。童貞くん。私の隣にいるのが、私の親友で二階堂ひかり|《ニカイドウヒカリ》、私の事は美優って呼んでよ。ひかりのことはひかりって呼んで。今日は童貞くんにお礼をいいにきだんだよ」


 二階堂ひかりは茶髪のマッシュミディの髪型が可愛い。切れ長の二重で、切れ上がった目尻が特徴。少し鼻は低く、情熱的な唇をしている。胸は美優ほど大きくないが、普通より大きいと思う。美優が規格外なんだ。小顔なのでスタイルがきれいで、8等身の綺麗な肢体をしている。美優と比べなければ十分美少女の枠にはいっているだろう。


「あんたが美優を事故から助けてくれた童貞くん。さっきから、美優の胸をガン見してるし、美優の顔をガン見して、鼻が膨らんでるよ。私のも見る?美優より小さいけど、形はいいよ」


 二階堂ひかりはシャツをひぱって、胸元をちらりと見せる。ピンクのブラジャーのヒモが見える。おお奇特な2人よ。哀れな童貞におかずをくれるなんて、ありがたや。ありがたや。


「それでさー。童貞くんの名前って何だったけ?」


 あれだけ、昨日、自己紹介しただろう。アピールしまくったよな。全く覚えてないのかよ。やっぱり俺ってそんな扱いが似合う男なのか……クソッ


「ごめんね。美優ってさ、興味のない男子の名前って、いくら言っても覚えないんだよね。だから童貞くん、落ち込まないでね」

「俺の名前は蒼井奈留。よろしく」

「これからはナルって呼ぶね。これなら簡単。ナルなら覚えやすい」


 美優は俺とチョー至近距離で向日葵のように笑った。笑った顔もきれいで可愛いなー。至近距離でこんな笑顔を見えるなんて、今日で俺の運は尽きるのか。そんなことはないよな。


 俺は思わず顔を赤くする。しかし、美優の笑顔から目が離せなかった。


「童貞くん、もう美優の魅力にデレデレじゃん。面白ーい。私もナルで遊びたいー!」

「ひかりに貸してあげる」

「ありがとー!」


 するとひかりは、俺の顔の目の前に屈みこむ。するとシャツの隙間からピンクのブラジャーが見える。ひかりも色白なのでピンクのブラジャーが眩しくひかる。胸の谷間が色っぽい。そして段々と顔を近づけてくる。もう鼻と鼻がちかづくほどの急接近だ。そしてひかりは目をそっとつむる。


 これはキスをしてもいいっていうサインなのか? 朝から学校の教室の中でキスをしても問題ないのか? とうとう俺もカースト底辺から脱出か。でも本当に教室の中でいいのか? 後で怒られていい。今さえ幸せならば。


 俺は口を尖らせて、ひかりの唇に触れようとする。そして目をつむる。頭の上から力一杯の拳が叩き込まれた。


「ひかり。少しやりすぎよ。私を助けてくれたのはナルなんだから、ナルの最初をもらうのは私でしょ。童貞くんも鼻息を荒くして、朝から教室の中でチューしようだなんて、欲望丸出しー。今、教室の皆、童貞くんのことを見てるわよ」


 慌てて、教室を見回すと、クラスメイト全員が俺を見てニヤニヤと笑っている。俺が驚いている顔を見て、美優とひかりもケラケラと笑い転げてる。


 くっ、俺はからかわれていただけだのか。クラスの皆もそれを見て楽しんでいたのか。俺に味方はいないのか。仁、お前まで腹を抱えて笑ってるなんて、同じ童貞同盟のくせに……クソッ


「良い思いをしたんだから、これくらい良いじゃん。童貞くんも興奮したでしょ」

「俺はナルだ。童貞くんはやめてくれ」

「だって本当のことじゃん。童貞くん、可愛いよ」

「私も童貞くん、可愛いと思う」


 ああ、これからの俺の人生は2人のビッチに弄られる運命にありそうだ。でも良く考えてみよう。からかわれるのはイヤだけど、これだけきれいで可愛い2人の美少女から弄ばれるのは、お得なんじゃないか。別にクラスの皆にどう思われてもいい。俺はブラが見たいし、胸の谷間を見たい。俺、正直に生きよう。


「童貞くん、スマホ持ってる?」


 何にも考えずにポケットからスマホを取り出す。すると俺のスマホを取り上げて、何やらしている。そして、それが終わるとひかりに渡す。ひかりも俺のスマホを操作してにっこりと笑うとスマホを美優に渡した。


「童貞くんのスマホに私達の連絡先を入れておいたし、童貞くんの連絡先も私達のスマホに送っておいたから。これからもよろしくね」


 そして、スマホを返してくれるのかなと思っていると、俺のスマホを使って撮影会が始まった。


 美優が俺に腕を絡めて、体を密着させて微笑むと、ひかりが撮影する。どうしても大きな胸が当たるので俺の顔は真っ赤になったり、デレデレしたり忙しい。


 美優が終わるとひかりと交代。ひかりが俺の腕に絡ませて胸を強烈に密着させて、美優がケラケラ笑いながら撮影する。


 2人に体を密着されて、2人から頬にキスされている写真を美優が自撮りする。もう俺、ちょっと限界。すごく2人から良い香りはするし、体はすごく柔らかいし、胸の感触もたまりません。俺は限界を迎えて、前かがみになって、教室を出てトイレに向かった。


 教室からコソコソと前かがみで逃げていく俺を見て、美優が『私達をおかずにするのは禁止だよー』と大声をだした。その声は教室から廊下まで聞こえる。


 廊下を前かがみでトイレまで走っていた俺を皆が奇異な目で見る。後ろを振り返ると、教室から出てきた、美優とひかりとクラスの皆が笑ってる。


 朝から童貞で遊ぶな……クソっ。でも至福のひと時でした。ありがたや。ありがたや。俺はトイレの個室に駆け込んだ。何をしに行ったかは聞かないでくれ。
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