Sonora 【ソノラ】

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トランクイロ

192話

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「終わったか? しかし遅い、減点だな。なので三回回って『ワン』と鳴け」

 数分後、再度店内に降りてきたベアトリスが、まず最初にルールを作り出す。今思いついた。

 しかしそれにはベルも待ったをかける。

「いや、減点の仕方のクセが強い。それに罰じゃなくてもそれくらいならやれますよ」

 と、回ろうとしたところで、冷ややかな目のシャルルが止めに入る。

「なにやってるんですか二人とも……」

 ここで言い出したはずのベアトリスが、ドカッとイスに勢いよく座る。

「そんなことはどうでもいい。もうすぐ次のお客さんが来る。さっさとやれ」

 気は短いほうなんでな、と背もたれに寄りかかりだらける。あまり期待はしていない、と態度で示す。

 そうこなくっちゃ、と内心ベルは嬉しい。

「はい、じゃあシャルルくん。アレ、持ってきて」

 対面に座り、指を鳴らして指示。そんなことを打ち合わせてはいないけど。今思いついた。

 嫌な予感がしていたシャルルだったが、それは当たってしまう。

「なんで僕まで巻き込まれるんですか……」

 さっきから気が重い。予想する『なったら嫌な流れ』が続く。なすすべなく濁流に飲み込まれる。

 トレンチに乗せて運ばれてきたもの。全てテーブルに置くベル。三種類の花。

「ありがと。これが私。私の原点であり、そのものです」

 持ってきてくれたシャルルに感謝しつつ、目線を目の前へ。

 その鋭き双眸を受け止めたベアトリスは、綻びつつ今を楽しむ。

「……ほぅ。説明を」

 一ヶ月でどれだけ成長したのか。確認するにはちょうどいい。

 すぅ、っと静かに空気を吸い込み、ゆっくりと吐くベル。

「はい。まず、フローリストである私自身を客観的に見た時、構成するものはなんだろう、というところから始めました」

 芯の通った声。自信があることを示している。何度も何度も多方面から観察し、今出せる最適なものを用意した。

 もったいぶった言い方は好きだ。じっくりと進む時間。ベアトリスはひとつひとつ確認しながら次へ進む。

「それで? どう見えたんだ?」

 心臓の鼓動が速い。やっぱりなにもかも見透かされているようで、ベルは怖さも感じる。手汗がひどい。目も充血しているかも。でも、それでも伝えたい気持ちが勝つ。

「見えたもの。それはシャルルくんと、ベアトリスさん。二人がいてこその自分だと」

 さらにいえば、ここを紹介してくれたシルヴィやレティシア、ピアノ専攻の友人達などもいるのだが、流石に多いため割愛。メッセージ性がなくなってしまう。

 今のところは順調、というところか。本当は口を挟みたいところもあるが、ベアトリスは先へ促す。

「悪くない。続けろ」

 自分自身、というテーマで自分を含めた三人ぶんを作る。中々に興味をそそられる。
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