188 / 235
トランクイロ
188話
しおりを挟む
たしか、雑踏をずっと見ていた、気がする。自分だけが弾き出された輪の中のような気がして。レールから踏み外したような。
思えば色々あった、とシャルルは胃が痛くなる。現在進行形で、だが。
「あれからまだ一ヶ月くらいしか経ってないんですよね。もうすごく前のように感じます」
かなり密度の濃い一ヶ月。ランジス市場に行ったりもした。
そんな中、なにかとっかかりのようなものを感じるベル。再スタートをきったきっかけのこの店。今はそれが全て。
「……私の始まり……」
「? どうかしましたか?」
やはりいつもと様子の違う彼女に心配が勝る。シャルルは顔を覗き込んだ。こんな真面目な姿、初めて見たかも。
あとひとつ。なにかあとひとつ。様々な観点から次に手をかける位置をベルは探す。そんな時に頼りになるのはやはり他の人。
「……初めて会った時と、今の私。なにがどう変わったとか、なにかある?」
問われたシャルルは頭を揺らして思い返す。が、やっていること。自分への接し方。姉とのやりとり。結論。
「……あんまり」
変わっていない。だが、それが心地よかったりもするのだが。
とはいえ、そのことが逆にピースとなる場合もある。ベルは天井を見上げた。
「この店が私の全て。ピアノも花も。友人もなにもかも、ここが全て」
花の声。音が降り注ぐような感覚。こういう時はだいたいいい演奏ができる。気がする。
だが、今日に限ってのその変わりようにシャルルの表情が歪む。コロコロと変わるため忙しいが、原因はたぶん。
「……また姉さんになにか——」
「手伝ってもらっていいい? 今回のテーマは『自分自身』。でも、知識が足りない」
熱量と冷静さのちょうどいいバランス。そんな脳内でベルが描いた花の像。一部ボヤけているので力を借りたい。
なぜだかシャルルは、今から作られるであろうアレンジメントが「面白そう」と心の中で閃いた。そういうのは大歓迎。
「……わかりました。まず、どんな風にしようと思ってますか?」
その手助け。どこまでできるかはわからないけど、やれることをやってみたい。
花は決まった。だが、少し物足りなさを感じるアレンジメント。ゆえに、ベルとしては最後に締める部分。そこのバリエーション。
「なんかこう、個別に分けられるようにできる手法とか、あったら教えてほしい、かな?」
その提案に、自身ではまだ作ったことはなかったが、試してみたいと思っていたものがシャルルにはあった。そのすぐそばのバケツに水揚げされていた、葉の大きな植物を手にする。
「個別……となるとこのハランなんかいいかもしれないですね」
艶のある多年草。元々は中国の大きいラン、という意味でバランとも呼ばれていたが、いつの間にかハランと変わった植物。葉には殺菌効果もあり、食べ物を仕分ける時に使われることも。
思えば色々あった、とシャルルは胃が痛くなる。現在進行形で、だが。
「あれからまだ一ヶ月くらいしか経ってないんですよね。もうすごく前のように感じます」
かなり密度の濃い一ヶ月。ランジス市場に行ったりもした。
そんな中、なにかとっかかりのようなものを感じるベル。再スタートをきったきっかけのこの店。今はそれが全て。
「……私の始まり……」
「? どうかしましたか?」
やはりいつもと様子の違う彼女に心配が勝る。シャルルは顔を覗き込んだ。こんな真面目な姿、初めて見たかも。
あとひとつ。なにかあとひとつ。様々な観点から次に手をかける位置をベルは探す。そんな時に頼りになるのはやはり他の人。
「……初めて会った時と、今の私。なにがどう変わったとか、なにかある?」
問われたシャルルは頭を揺らして思い返す。が、やっていること。自分への接し方。姉とのやりとり。結論。
「……あんまり」
変わっていない。だが、それが心地よかったりもするのだが。
とはいえ、そのことが逆にピースとなる場合もある。ベルは天井を見上げた。
「この店が私の全て。ピアノも花も。友人もなにもかも、ここが全て」
花の声。音が降り注ぐような感覚。こういう時はだいたいいい演奏ができる。気がする。
だが、今日に限ってのその変わりようにシャルルの表情が歪む。コロコロと変わるため忙しいが、原因はたぶん。
「……また姉さんになにか——」
「手伝ってもらっていいい? 今回のテーマは『自分自身』。でも、知識が足りない」
熱量と冷静さのちょうどいいバランス。そんな脳内でベルが描いた花の像。一部ボヤけているので力を借りたい。
なぜだかシャルルは、今から作られるであろうアレンジメントが「面白そう」と心の中で閃いた。そういうのは大歓迎。
「……わかりました。まず、どんな風にしようと思ってますか?」
その手助け。どこまでできるかはわからないけど、やれることをやってみたい。
花は決まった。だが、少し物足りなさを感じるアレンジメント。ゆえに、ベルとしては最後に締める部分。そこのバリエーション。
「なんかこう、個別に分けられるようにできる手法とか、あったら教えてほしい、かな?」
その提案に、自身ではまだ作ったことはなかったが、試してみたいと思っていたものがシャルルにはあった。そのすぐそばのバケツに水揚げされていた、葉の大きな植物を手にする。
「個別……となるとこのハランなんかいいかもしれないですね」
艶のある多年草。元々は中国の大きいラン、という意味でバランとも呼ばれていたが、いつの間にかハランと変わった植物。葉には殺菌効果もあり、食べ物を仕分ける時に使われることも。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
後宮なりきり夫婦録
石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」
「はあ……?」
雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。
あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。
空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。
かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。
影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。
サイトより転載になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる