Sonora 【ソノラ】

文字の大きさ
上 下
67 / 235
アフェッツオーソ

67話

しおりを挟む
 以前、放課後一緒に行ったカフェでいきなりシルヴィに言われた。

「あたしさ、ピアノってよくわかんないけど、ベルのは温かくて好きだったんだ」

 あまりにもいきなりのことで、あたしはびっくりした。もうピアノを止めてしばらく経っていた。最近知り合ったばかりの彼女が、自分の演奏を知っていることに驚いた。ピアノとかよりもギターやドラムを好みそうなのに。

「だってお前、自分が思ってる以上に有名なんだぞ。少なくとも名前くらいは皆知ってるんじゃないか?」

「ええ、私も聞いたことはあるわ。コンクールを総ナメにしてる『ベル・グランヴァル』と言えば、ちょっとした有名人よ。確か同じ学年にファンだっていう子もいたはずだもの」

 同意するレティシアにもちょっとびっくりした。でも、美人なレティシアの方がファンとかいそうだけど。

「興味ないわね」

 一刀両断ですか。

「あたしのファンは?」

「そんなの幼馴染に男子が多いんだから、そっちに聞きなさい」

 うーん、あたしはシルヴィみたいに元気な子がタイプの子もいると思うよ! 元気出して!

「ホントか!? なら、この三人なら向かうとこ敵なしだな! でもそれじゃ二人はどんなのがタイプなんだ?」

 いきなりそう言われても……レティシアは?

「そうね、『好き』って言ってくる男性より、自分から盲目的に愛せる男性かしら。とりあえず今のところはいないわね」

 なんか……すごいイメージ。でももし現れたら、その人って他の男子から妬まれそう。

「身長とか高くてワイルドで年上に五ユーロ!」

 え、レティシアの恋人予想にお金賭けるの!?

「勝手に予想立てないの。でもなら、シルヴィは……スポーツ万能のバリバリ体育会系に五ユーロ賭けるわ」

 レティシアまで! じゃあ……あたしはどんな人だと思う?

「太鼓とか叩く人」

「ソリストかしら」

 やっぱり音楽なんだ。でもごめん、あたしもうピアノは――

「止めたらしいわね。ファンの間でも理由解明がなされていないらしいわね。なにしろいきなりだったから」

「もったいないなー、せっかくそこまで練習したのに。あたしだったらピアノ練習とか絶対発狂してるぞ!」

「シルヴィには絶対に『演奏する』という動詞を使うことはないわね」

 そ、そこまで……? でもごめん、やっぱりあたしは……わかんない。でも音楽に関する人ではないと思う。

「だったらクラスのギィ君なんて合ってるんじゃない? なんか知らないけど『胸は手に収まるくらいが』とかなんとか言ってたじゃない」

 それって、あたしが胸が貧しいってこと!? 確かにレティシアは大きいけども!

「まぁそれが好きなヤツがいるってわかっただけでも収穫だろ」

 ていうか……案外シルヴィも胸、あるよね。レティシアはともかくシルヴィまで……。

「そうか?」

 ちょ、ちょっと! 公共の場でいきなり自分の胸揉むのは!

「やらない方がいいわね。さすがに」

「じゃあレティシアのならいいか?」

 余計ダメに決まってるでしょ!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蝙蝠怪キ譚

なす
キャラ文芸
「埋め合わせなんて、考えないでよね」   十七歳、奪われた群青の夏。   蛇鹿学園に通う少年、氷雨レイは同級生の白野つくし、木先はるかと共に、不思議部としてこの世界の幾多の不可解を紐解いてきた。  一角獣の末裔、死人を映す絵画、五感の王、乾ききった幽霊、人間と人間でない怪奇の、その全てを。だが、最後の七不思議を解いた不思議部は、その代償に永劫の眠りに囚われてしまったのだ。つくしとはるか、二人の部員が目覚めぬまま、氷雨レイの灰色の夏が始まる。  どん底の彼に差す希望は"蝙蝠の欠片"。人間蘇生にクローン生成、取り込むだけで人間と怪奇の欲望を叶えられる欠片。二人の眠りとレイの出生、欠片が左右するこの世界の本当の\"怪奇"とは──?  これは、かつて蝙蝠少年と恐れられた彼の軌跡と、怪奇に取り憑かれたその未来へ進む物語。 「氷雨レイ、お前にボクは救えない」   輝いた、君の瞳に見た夢を──。 過去と未来が交錯する、新感覚の学園怪奇ミステリー。 ※同作は 小説家になろう にて重複投稿しています。

かの子でなくば Nobody's report

梅室しば
キャラ文芸
現役大学生作家を輩出した潟杜大学温泉同好会。同大学に通う旧家の令嬢・平梓葉がそれを知って「ある旅館の滞在記を書いてほしい」と依頼する。梓葉の招待で県北部の温泉郷・樺鉢温泉村を訪れた佐倉川利玖は、村の歴史を知る中で、自分達を招いた旅館側の真の意図に気づく。旅館の屋上に聳えるこの世ならざる大木の根元で行われる儀式に招かれられた利玖は「オカバ様」と呼ばれる老神と出会うが、樺鉢の地にもたらされる恵みを奪取しようと狙う者もまた儀式の場に侵入していた──。 ※本作は「pixiv」「カクヨム」「小説家になろう」「エブリスタ」にも掲載しています。

学園戦記三国志~リュービ、二人の美少女と義兄妹の契りを結び、学園において英雄にならんとす 正史風味~

トベ・イツキ
キャラ文芸
 三国志×学園群像劇!  平凡な少年・リュービは高校に入学する。  彼が入学したのは、一万人もの生徒が通うマンモス校・後漢学園。そして、その生徒会長は絶大な権力を持つという。  しかし、平凡な高校生・リュービには生徒会なんて無縁な話。そう思っていたはずが、ひょんなことから黒髪ロングの清楚系な美女とお団子ヘアーのお転婆な美少女の二人に助けられ、さらには二人が自分の妹になったことから運命は大きく動き出す。  妹になった二人の美少女の後押しを受け、リュービは謀略渦巻く生徒会の選挙戦に巻き込まれていくのであった。  学園を舞台に繰り広げられる新三国志物語ここに開幕!  このお話は、三国志を知らない人も楽しめる。三国志を知ってる人はより楽しめる。そんな作品を目指して書いてます。 今後の予定 第一章 黄巾の乱編 第二章 反トータク連合編 第三章 群雄割拠編 第四章 カント決戦編 第五章 赤壁大戦編 第六章 西校舎攻略編←今ココ 第七章 リュービ会長編 第八章 最終章 作者のtwitterアカウント↓ https://twitter.com/tobeitsuki?t=CzwbDeLBG4X83qNO3Zbijg&s=09 ※このお話は2019年7月8日にサービスを終了したラノゲツクールに同タイトルで掲載していたものを小説版に書き直したものです。 ※この作品は小説家になろう・カクヨムにも公開しています。

ショタパパ ミハエルくん

京衛武百十
キャラ文芸
蒼井ミハエルは、外見は十一歳くらいの人間にも見えるものの、その正体は、<吸血鬼>である。人間の<ラノベ作家>である蒼井霧雨(あおいきりさめ)との間に子供を成し、幸せな家庭生活を送っていた。 なお、長男と長女はミハエルの形質を受け継いで<ダンピール>として生まれ、次女は蒼井霧雨の形質を受け継いで普通の人間として生まれた。 これは、そういう特殊な家族構成でありつつ、人間と折り合いながら穏当に生きている家族の物語である。     筆者より  ショタパパ ミハエルくん(マイルドバージョン)として連載していたこちらを本編とし、タイトルも変更しました。

千切れた心臓は扉を開く

綾坂キョウ
キャラ文芸
「貴様を迎えに来た」――幼い頃「神隠し」にあった女子高生・美邑の前に突然現れたのは、鬼面の男だった。「君は鬼になる。もう、決まっていることなんだよ」切なくも愛しい、あやかし現代ファンタジー。

うらにわのこどもたち

深川夜
キャラ文芸
人の寄り付かない、ひっそりと佇む秘密の研究施設。 そこには自らの研究施設を〝はこにわ〟と呼ぶ風変わりな女所長と、マスク姿の見目麗しい青年研究員、そして六人の「実験体」の「こどもたち」が住んでいる。 研究施設の謎、絡み合ういびつな愛情、物語が始まる前から始まっていた悲劇。 あなたに愛と正しさを問うヒューマンドラマ。 ――小さな傷を、あなたに。 ♝表紙イラスト:くらい様

生命の樹

プラ
キャラ文芸
ある部族に生まれた突然変異によって、エネルギー源となった人。 時間をかけ、その部族にその特性は行き渡り、その部族、ガベト族はエネルギー源となった。 そのエネルギーを生命活動に利用する植物の誕生。植物は人間から得られるエネルギーを最大化するため、より人の近くにいることが繁栄に直結した。 その結果、植物は進化の中で人間に便利なように、極端な進化をした。 その中で、『生命の樹』という自身の細胞を変化させ、他の植物や、動物の一部になれる植物の誕生。『生命の樹』が新たな進化を誘発し、また生物としての根底を変えてしまいつつある世界。 『生命の樹』で作られた主人公ルティ、エネルギー源になれるガベト族の生き残り少女グラシア。  彼らは地上の生態系を大きく変化させていく。 ※毎週土曜日投稿

ショタパパ ミハエルくん(耳の痛い話バージョン)あるいは、(とっ散らかったバージョン)

京衛武百十
キャラ文芸
もう収集つかないくらいにとっ散らかってしまって試行錯誤を続けて、ひたすら迷走したまま終わることになりました。その分、「マイルドバージョン」の方でなんとかまとめたいと思います。 なお、こちらのバージョンは、出だしと最新話とではまったく方向性が違ってしまっている上に<ネタバレ>はおおよそ関係ない構成になっていますので、まずは最新話を読んでから合う合わないを判断されることをお勧めします。     なろうとカクヨムにも掲載しています。

処理中です...