グルドフ旅行記

原口源太郎

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グルドフ旅行記・2 お宝を盗んだ犯人は

お宝のありか

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「これは、昨日私らが歩いてきた道だね」
「そうですね」
 その道を言われた辺りまで歩くと、右手は岩だらけの山だった。
「カラスの奴め。この岩の上に箱を落として壊し、中身を持っていったのですな」
 グルドフが言った。
「カラスは食べ物以外の物も持っていくのかな」
「多分箱の中身は食べ物と考えて持っていったのでしょうが、あ奴らは食べ物でなくても何か興味があるものだと、どこかへ持っていってしまう習性がありますからね」
 そう言いながらグルドフは道からそれ、岩山に登っていった。
 探すほどもなく、壊れてバラバラになった箱を見つけた。
「やっぱり。あとはカラスの巣がどこにあるかを突き止めなければなりません」
「しかし、ドラゴンの玉をカラスがくわえて飛ぶのは難しいと思うが」
 ドラゴンの玉はサイズが決まっているわけではないが、大体大人のこぶしくらいの大きさだ。つるつるしているから、カラスがそれをくわえていくのは難しいだろう。
 グルドフもポポンの言葉に同意した。
「そうですね。それではお宝はドラゴンの玉ではなかったのですかな?」
「取りあえず、この辺りをもう一度よく探してみよう」
「ドラゴンのお宝、ドラゴンの・・・・」
 グルドフはぶつぶつ言いながら考えている。
「あっ!」
 不意にグルドフが声を上げた。
「どうした?」
「お宝のありかがわかりました」

 グルドフとポポンは谷底にチョロチョロッとわずかに流れる川の水を見ていた。
「あそこにお宝があるというのかね?」
「多分・・・・」
 そこから谷底まで、岩だらけの急斜面を三十メートルほど降りていかなければならない。
「ポポン殿はこの辺りから、左右をよく見ながら降りていってください。お宝が途中にある場合も考えられますから。私はもう少し下から降りていきます」
「それでお宝は何なのかね?」
「ドラゴンのツノです」
「ツノ? よくそれまでわかったね」
「訳は後で話します。取りあえず探しましょう」
 グルドフとポポンは周りを見ながら、ゆっくりと谷底へ降りていった。

 小川のような小さな流れの近くで、グルドフはドラゴンのツノを見つけた。
「ありました。ありましたよ」
 グルドフは嬉しそうにポポンに告げた。
 ツノをよく見てみると、切り取った付近の太い所に小さな文字が彫ってある。
「勇者より寄贈」
 グルドフは目を凝らしてその小さな文字を読んだ。
「裏側にも何かあります。ソラテ村所有。紛れもなく村のお宝ですな」
「それで、なぜ村のお宝がドラゴンのツノで、それがここにあるとわかったんだい?」
 ポポンは早く答えを聞きたいといった風に尋ねた。
「だって、私がここに捨てたのですから」
「何と。おぬしが盗人だったとは」
「盗んだわけじゃありません。勇者に向かって盗人呼ばわりはないでしょう」
「勇者じゃなくて元勇者」
 ポポンはグルドフに聞こえないくらいの小さな声で言った。
「昨日この上の道でポポン殿を待っている時、何か落ちている物に気が付いて、拾ってみたらドラゴンのツノだったのです。なんだ、只のツノかと思って何気なくポイッと・・・・」
「何気なくこの谷に捨てた?」
「そうです。よく考えたら、私達にはドラゴンのツノなど珍しくもなんともないのですが、魔物をろくに見たこともない人たちにとっては、ドラゴンのツノでも貴重なお宝となるのですね」
「そう言われてみればそうだね」
「カラスにとっても、ドラゴンのツノは興味の対象にはならなかったようです」
「それはそうだろうね」
「さ、それでは村に戻りましょう。皆さん大喜びしますよ」
 グルドフとポポンは急な斜面を登っていった。
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