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グルドフ旅行記・2 お宝を盗んだ犯人は
張り込み・2
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その後二時間ほど二人は張り込んでいたが、何も現れなかった。
「さすがに嫌になってきたね。一人ずつ交代で見張ることにしないかね?」
ポポンがあくびをしながら言った。
「もし盗人が現れた時、追いかけるのには人数が多いほうがいいのです。何せ相手は空を飛んでいく奴の可能性が高いので」
「何か暇つぶしの道具でも持ってくればよかったな」
「昔、冒険をしていた頃は、何時間でもこうしていることなど、平気だったじゃないですか」
「年を取るとどうもね。色々と我慢ができなくなるらしい」
「はあ」
その時、一羽のカラスが舞い降りてきて、祠の周りを歩き回り始めた。
「来た来た。来ましたよ」
グルドフがさらに声を潜めて言った。
カラスは祭壇にぴょんと飛び乗ると、お供え物の果物をくわえた。
そしてバサバサと飛び立っていった。
「やっぱり盗人はカラスらしいですな」
「まだお宝の箱は残っとる」
「もう少し様子を見ましょう」
しばらくするとまたカラスが現れ、お供え物の野菜を突いた。そして口にくわえると飛び立った。
すぐに別のカラスがやってきて祠の周りをピョンピョンと歩き、祭壇に飛び乗った。
お供え物用のお皿にはもう何も残っていない。
するとカラスは祠にある箱をコンコンと突いた。
箱はひもで縛って蓋を止めてある。カラスはそのひもの間に器用にくちばしを入れ、箱を引きずり出した。
そしてそのまま箱のひもをくわえ、バサバサと飛び立った。
「それ、追いかけろ!」
グルドフとポポンは家の陰から飛び出してカラスを追った。
カラスは大きな箱をくわえて飛んでいくが、そこは空を飛ぶものと地上を走る者の違い。カラスとの差はどんどん開いていく。
ポポンは十数メートル走っただけですぐに脱落した。
そこへいくとグルドフは引退して間もない元勇者。村の中を猛烈な勢いで駆け抜け、畑の中の一本道も、全力で走ってカラスを追いかけていく。
土煙を上げる程の勢いで走っていく中年の男を見て、畑仕事をしていた人々は驚いて手を止めた。
グルドフは畑が終わる辺りまで走ると、急にぱたりと倒れた。
村人たちはびっくりしてグルドフの所へ駆け寄った。
「お怪我はありませんか?」
村人たちの問いかけに、グルドフは何事もなかったかのように起き上がり、服に着いた土をパンパンと払った。
「盗人はわかりました。お宝を取り戻せるかどうかはわかりませんが、取りあえず探してきます。その前に、お宝を入れていた箱が落ちていた場所を、詳しく教えていただけますか?」
土埃で、グルドフのちょび髭は茶色くなっている。
「そうですな」
その場に駆けつけてきた村長は、そこに集まる村人の中から一人を指名した。
「この道をここから四百メートルほど行き、右の岩山に数メートル入った所です」
昨日壊れた箱を持ってきた男が言った。
「私たちも一緒に行きましょうか?」
村長が尋ねた。
「いや、それには及ばないでしょう」
魔物の潜む地を、歩き慣れていない者たちを連れて歩くとなると、別のことにあれこれと気を使わなければならなくなる。
「それでは、ちょっと探してきます」
「おいおい、ちょっと待ってくれ」
グルドフが歩きかけた時、やっと息を切らしたポポンがやって来た。
「さすがに嫌になってきたね。一人ずつ交代で見張ることにしないかね?」
ポポンがあくびをしながら言った。
「もし盗人が現れた時、追いかけるのには人数が多いほうがいいのです。何せ相手は空を飛んでいく奴の可能性が高いので」
「何か暇つぶしの道具でも持ってくればよかったな」
「昔、冒険をしていた頃は、何時間でもこうしていることなど、平気だったじゃないですか」
「年を取るとどうもね。色々と我慢ができなくなるらしい」
「はあ」
その時、一羽のカラスが舞い降りてきて、祠の周りを歩き回り始めた。
「来た来た。来ましたよ」
グルドフがさらに声を潜めて言った。
カラスは祭壇にぴょんと飛び乗ると、お供え物の果物をくわえた。
そしてバサバサと飛び立っていった。
「やっぱり盗人はカラスらしいですな」
「まだお宝の箱は残っとる」
「もう少し様子を見ましょう」
しばらくするとまたカラスが現れ、お供え物の野菜を突いた。そして口にくわえると飛び立った。
すぐに別のカラスがやってきて祠の周りをピョンピョンと歩き、祭壇に飛び乗った。
お供え物用のお皿にはもう何も残っていない。
するとカラスは祠にある箱をコンコンと突いた。
箱はひもで縛って蓋を止めてある。カラスはそのひもの間に器用にくちばしを入れ、箱を引きずり出した。
そしてそのまま箱のひもをくわえ、バサバサと飛び立った。
「それ、追いかけろ!」
グルドフとポポンは家の陰から飛び出してカラスを追った。
カラスは大きな箱をくわえて飛んでいくが、そこは空を飛ぶものと地上を走る者の違い。カラスとの差はどんどん開いていく。
ポポンは十数メートル走っただけですぐに脱落した。
そこへいくとグルドフは引退して間もない元勇者。村の中を猛烈な勢いで駆け抜け、畑の中の一本道も、全力で走ってカラスを追いかけていく。
土煙を上げる程の勢いで走っていく中年の男を見て、畑仕事をしていた人々は驚いて手を止めた。
グルドフは畑が終わる辺りまで走ると、急にぱたりと倒れた。
村人たちはびっくりしてグルドフの所へ駆け寄った。
「お怪我はありませんか?」
村人たちの問いかけに、グルドフは何事もなかったかのように起き上がり、服に着いた土をパンパンと払った。
「盗人はわかりました。お宝を取り戻せるかどうかはわかりませんが、取りあえず探してきます。その前に、お宝を入れていた箱が落ちていた場所を、詳しく教えていただけますか?」
土埃で、グルドフのちょび髭は茶色くなっている。
「そうですな」
その場に駆けつけてきた村長は、そこに集まる村人の中から一人を指名した。
「この道をここから四百メートルほど行き、右の岩山に数メートル入った所です」
昨日壊れた箱を持ってきた男が言った。
「私たちも一緒に行きましょうか?」
村長が尋ねた。
「いや、それには及ばないでしょう」
魔物の潜む地を、歩き慣れていない者たちを連れて歩くとなると、別のことにあれこれと気を使わなければならなくなる。
「それでは、ちょっと探してきます」
「おいおい、ちょっと待ってくれ」
グルドフが歩きかけた時、やっと息を切らしたポポンがやって来た。
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