グルドフ旅行記

原口源太郎

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グルドフ旅行記・2 お宝を盗んだ犯人は

お宝返還

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 グルドフがお宝を持って帰ると、村は大騒ぎとなった。
「犯人はカラスでした。これからは鳥や獣に盗られぬよう、網を張るなどの対策をしたほうがよろしいかと思います」
 グルドフは村長にそう言いながらドラゴンのツノを渡した。
「わかりました。そのようにいたします。あなたは今までにドラゴンのツノを見たことがありますか?」
「初めてというわけではありませんが」
「私は初めて見ました。確かにこれは大変貴重な物ですね」
「はい、貴重な物です」
「これからは春と秋の祭りの時には、箱から出して皆で拝むようにしたいと思います」
「それはよいかもしれませんね」
「ところで、旅のお方。ぜひお礼をしたいのですが」
「お礼などとんでもない。それほどたいしたことをしたわけでもないですし」
「そう言われましても」
「気にしないでください」
「それでは今晩、宴を催すことにしましょう。あなた達もぜひ来てください」
 グルドフとポポンは顔を見合わせた。
「わかりました。それくらいなら」
 村長はすぐに周りにいた村民に指示を与え、村民たちは、たちまちあちこちへと散らばっていった。
 その夜は村人総出の大宴会となり、宴は夜遅くまで続いた。

 前日にたらふく飲み過ぎたグルドフとポポンは、その日の出発を諦め、次の日に村を発つことにした。

 翌日にグルドフとポポンが日の出前に村を出るときには、村長を始め大勢の人が見送りに来た。
「いい村でありましたな」
 村の家々が米粒に見えるくらいまで来た時、グルドフは後ろを振り向いて言った。
「私もあの村が好きになったよ」
「伝統を重んじ、人の絆を重んじる。気さくでいい人たちばかりでしたね」
「他に娯楽があまりないから、何かがあるとすぐにみんなで集まって料理を食べ、酒を飲む。それだからああいう村の風土ができあがったのだろうね」
「そうですね」
「そうだよ」
「さて。気を引き締めていきましょう」
 グルドフは前方にそびえる山々を見て言った。


 グルドフ旅行記・2話 終わり 
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