久遠の海へ ー最期の戦線ー

koto

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最期の連合艦隊

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 戦後のソ連海軍史では、クリル戦線(日本名:占守島の戦い)を悲劇的に述べている。それは、大きくこの2つによるためだ。
 1つ目は占守島への強襲上陸である。上陸可能地点は占守島唯一の竹田浜で、そこでは日本軍部隊が既に防衛戦闘の準備を終えていた。硫黄島、沖縄と防戦を経験した日本軍は、その経験を活かしてより一層強固な防衛陣地を作り上げていたのだ。そこに強襲上陸せざるを得ないのは、余りにも酷な話であった。
 もう1つは、別名“占守島の悲劇”と呼ばれるものだ。これは、ソ連海軍が迫る日本海軍に気が付けず、その結果第1クリル海峡(日本名:占守海峡)で上陸中だったソ連軍の兵員輸送艦と揚陸艇が壊滅したもことである。
 
「主砲撃ち方はじめ!!!」
 パラムシル沖海戦の第二幕である艦隊戦。その始まりは、まぎれもなく奇襲であった。
 濃い霧に包まれた中にもかかわらず、駆逐艦響の艦橋からは敵艦に着弾したことを証明する爆炎をハッキリと視界に入れることができた。確実に有効弾を与えられたのだ。
 
 ――この濃霧の中で初段命中、さすが歴戦の駆逐艦だ。
 
 艦長の宇久奈はそう思わずにはいられない。今の響は主砲2基4門と言えど、それは艦の前部と後部にそれぞれ設置されている。占守島へ前進する響は、つまり前方の敵艦を攻撃するために使えるのはたった1基2門のみだということだ。
 一方、残り3隻の海防艦が搭載している主砲は第1次大戦時から存在するもので、退役した駆逐艦の主砲を移し替えたものでしかない。そもそも敵艦隊との戦いを想定していない海防艦なのだから、武装は主砲以外には機銃と対戦用の爆雷投射機しかない。当然のこと、魚雷も搭載していない。それだけに、強力な武装を有する響に与えられた責任は重大だった。

「敵艦、探照灯点灯!」
「構わん、同目標への攻撃を続けろ」

 響からの砲撃を直撃された敵艦は、即座に探照灯を点灯させていた。
 ソ連海軍の分艦隊は海上挺身隊の事を知らされておらず、それゆえに片岡湾への攻撃における脅威は陸上からの砲撃のみであると考えていたのだ。だからこそ、予想外の砲撃に混乱をきたしていた。その証拠に探照灯の光は四方八方を照らし、的外れな方向へ砲を放っていた。
 その混乱に乗じて、響の分間10発射撃可能な連装砲は火を噴き続ける。海防艦も発砲を開始しており、被弾艦の黒煙がより一層目立つようになっていた。

 海上挺身隊は占守島からソ連海軍の艦艇数について事前に連絡されており、彼らは4隻で航行していることを知っていた。同時に、占守島からの砲撃を避けるために艦列が乱れている事も予想していた。
 だからこそ、海上挺身隊は響を先頭に“ひし形”に展開し、3隻が同時に前方へ攻撃可能な艦列を取っていたのだ。初弾を受けた敵艦艇は集中砲火を受け、わずか数分で沈黙した。
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