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最期の連合艦隊
3-4.5
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今、もしこの時この場を切り抜くとしたら、その題名は間違いなく“轟音響く戦場”であろう。
砲が大きければ大きいほど、その射撃音もまた大きくなる。
――連合艦隊が誇る最強の戦艦“長門”の主砲は41cmだそうだ。射撃時の轟音は想像できない。
砲兵として配属された兵士は皆、同じことを考える。皮肉なことに、敵軍から砲撃を受けることはいつでも想像してしまうのに。
さて、占守島四嶺山に展開する2門のカノン砲はそれぞれ10cmと15cmだ。戦艦の主砲と比べると確かに小ぶりだ。しかし、だからといって射撃音が彼ら軍人にとって優しいかと言えばそうではない。
両耳を押さえても、脳内にはキーンと音が鳴り響く。その後は、たとえ上官の怒声であろうが脳に届くことはない。それほど強烈なのだ。
合図とともに、約8mもの砲身長を持つ96式15cmカノン砲が轟音を響かせる。前日までにカムチャッカ半島のロパトカ岬にあるソ連軍の砲台を無力化し、その後には竹田浜へ強襲上陸してくるソ連軍部隊を砲撃するなど奮戦が続いていたが、今となっては海軍艦艇へ攻撃を加えるに至っている。
要塞砲とも呼ばれる96式は、たとえどれほど熟練した兵士が扱ったとしても1分間に1発か2発しか撃ち出すことができない。その間をおぎなうかのように、別砲台に展開する92式10cmカノン砲が火を噴く。
波に揺られ、照準が安定しない海軍艦艇と違い、要塞砲は陸上に設置されている。戦艦が敵軍港へ攻撃する場合、真っ先に恐れるのは軍港の要塞砲からの砲撃に他ならない。真珠湾攻撃が戦艦を中心にした強襲作戦ではなく、空母を中心とした航空作戦となったのはこれによるところが大きい。
ただし、それは要塞へ突入するからこその話である。要塞砲は要塞を守るために展開しているのであって、付近を航行する艦艇を攻撃することは限りなく想定外に近い話だ。
「誤差修正よし!」
「次弾装填よし!」
「撃てぇぇっ!」
残念だが、彼らの砲撃はほとんど当たる事はなかった。そもそも要塞砲はこちらへ向かってくる敵戦艦を”迎え撃つ”ためのものだ。最大20ノット(時速40キロ)で航行できる艦艇、それも全長約110mしかない駆逐艦へ直撃させることはそもそも想定外であり、もはや神業の領域である。不可能と言ってもいいだろう。
さらに、濃い霧が視界を悪化させている。海岸沿いからの無線連絡でなんとか誤差修正をしているのだ。
では、彼らの行動は全て無駄だったのか。それは決して違う。
この砲撃がソ連軍艦艇の乗員を大きく怯ませ、それによって海上挺身隊の被害が抑えられた。要塞からの砲撃に集中しきっていたソ連軍艦隊は、日本海軍の艦隊が迫っていることなど考えもしていなかったのだ。結果、突如目前に表れた響たち4隻に気付けず、挺身隊に貴重な先制攻撃の機会を与えた。
パラムシル沖海戦の第2幕、艦隊戦の始まりである。
砲が大きければ大きいほど、その射撃音もまた大きくなる。
――連合艦隊が誇る最強の戦艦“長門”の主砲は41cmだそうだ。射撃時の轟音は想像できない。
砲兵として配属された兵士は皆、同じことを考える。皮肉なことに、敵軍から砲撃を受けることはいつでも想像してしまうのに。
さて、占守島四嶺山に展開する2門のカノン砲はそれぞれ10cmと15cmだ。戦艦の主砲と比べると確かに小ぶりだ。しかし、だからといって射撃音が彼ら軍人にとって優しいかと言えばそうではない。
両耳を押さえても、脳内にはキーンと音が鳴り響く。その後は、たとえ上官の怒声であろうが脳に届くことはない。それほど強烈なのだ。
合図とともに、約8mもの砲身長を持つ96式15cmカノン砲が轟音を響かせる。前日までにカムチャッカ半島のロパトカ岬にあるソ連軍の砲台を無力化し、その後には竹田浜へ強襲上陸してくるソ連軍部隊を砲撃するなど奮戦が続いていたが、今となっては海軍艦艇へ攻撃を加えるに至っている。
要塞砲とも呼ばれる96式は、たとえどれほど熟練した兵士が扱ったとしても1分間に1発か2発しか撃ち出すことができない。その間をおぎなうかのように、別砲台に展開する92式10cmカノン砲が火を噴く。
波に揺られ、照準が安定しない海軍艦艇と違い、要塞砲は陸上に設置されている。戦艦が敵軍港へ攻撃する場合、真っ先に恐れるのは軍港の要塞砲からの砲撃に他ならない。真珠湾攻撃が戦艦を中心にした強襲作戦ではなく、空母を中心とした航空作戦となったのはこれによるところが大きい。
ただし、それは要塞へ突入するからこその話である。要塞砲は要塞を守るために展開しているのであって、付近を航行する艦艇を攻撃することは限りなく想定外に近い話だ。
「誤差修正よし!」
「次弾装填よし!」
「撃てぇぇっ!」
残念だが、彼らの砲撃はほとんど当たる事はなかった。そもそも要塞砲はこちらへ向かってくる敵戦艦を”迎え撃つ”ためのものだ。最大20ノット(時速40キロ)で航行できる艦艇、それも全長約110mしかない駆逐艦へ直撃させることはそもそも想定外であり、もはや神業の領域である。不可能と言ってもいいだろう。
さらに、濃い霧が視界を悪化させている。海岸沿いからの無線連絡でなんとか誤差修正をしているのだ。
では、彼らの行動は全て無駄だったのか。それは決して違う。
この砲撃がソ連軍艦艇の乗員を大きく怯ませ、それによって海上挺身隊の被害が抑えられた。要塞からの砲撃に集中しきっていたソ連軍艦隊は、日本海軍の艦隊が迫っていることなど考えもしていなかったのだ。結果、突如目前に表れた響たち4隻に気付けず、挺身隊に貴重な先制攻撃の機会を与えた。
パラムシル沖海戦の第2幕、艦隊戦の始まりである。
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