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蜘蛛の処刑台

115. 待てが苦手な猟犬の収獲*

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「あ―――あ、あぁ―――……!」
「ン……」
「だめ、だめだ……!」

 尻の孔には、数本の指。そして股間には、アレッシオの頭が埋まっていた。
 閉じられないよう膝裏を掴んで開かされた足が宙を掻き、つま先がぎゅっと丸まっている。
 やめて欲しいのに、髪を掴んで痛い思いをさせたくなくて、力なくサラサラと撫でることしかできなかった。

 アレッシオの口に中心を含まれている。
 裏筋を舌がねぶり、喉奥が亀頭に纏わりついて絞る動きをしていた。
 だめだ。これ、だめだ。頭がおかしくなる。飛んでしまう。

「だめ、だめ、だめ……ぁっ……!」

 頭を振りながらのけ反り、足をぴんと突っ張った瞬間―――ふ、と口が離れた。
 果てる寸前だった。あと数秒も続けられたら、彼の口の中に出すところだった。
 解放された自分のものが、アレッシオの唾液と先端から滲む液とでぬらりと光り、後孔を貫く指はたっぷりと香油を纏っていて……。

 俺は、ナイトガウンがなぜ人気商品になったのか、『使い勝手の良さ』の一端をこんな時なのに察してしまった。
 これのおかげで、ソファが汚れない。ソファだけじゃなく、これがあればベッドのシーツだって汚れにくい。
 そんなつもりで作らせたわけじゃないのに、絶対ほかにもこの用途で使っている奴いるだろ……!!

 たっぷりと俺のを愉しんだアレッシオは、スウと目を細め、ペロリと唇を舐めた。肉食獣めいた表情に、ぞくりと全身が粟立った。
 彼は俺の両方の膝裏に手を添え、先ほどよりぐいと高く持ち上げてきた。
 慌ててひじ置きを掴み、はたと気付く。
 ……この一人掛けのソファ、やばい。
 フィット感があり過ぎる。この体勢がぴったりまり過ぎてやばい。
 職人さん、絶対この用途で作ったわけじゃないのに……!

 ほころんだそこに亀頭が当てられ、ずぷり、と沈み込んだ。
 それから、浅い部分を……指でいじられたら悶絶するほど感じるしこりを狙い、ぬぐぬぐと行き来を始めた。

「あっ、いやっ、いやっ、あっ、あっ……だめっ、そこっ、いやっ……」
「嘘は、いけませんよ。ここ、好きでしょう……?」
「あんっ! やっ! そこっ、だめだっ、いやっ、いやぁっ……!」
「ほら、ちゃんと見なさい。ここが、どうなっているのか。目を閉じないで」
「や、や……!」
「見るんだ」
「っ……」

 おそるおそる、そこに目をやった。
 アレッシオの長大なものが、俺のそこに……みっちりと埋まって、ぬち、ぬち、と音を立てながら、行き来している……。
 ぶわわわ、と強烈な羞恥に襲われ、涙がこぼれた。クスリと笑いながら、彼は俺のふくらはぎを舐めた。

「可愛い……」
「あ―――」

 舐められた瞬間、きゅっとそこが収縮したのが見えてしまった。
 意識を逸らせず凝視していると……それはどんどん、奥へ奥へと侵入を始めた。

「ぁ……あぁああ!」

 ズン、と奥を突かれた。たまらず、自分を犯す男の背に縋りついた。
 抱きしめるというより、完全に動けないように全身を拘束され、己の先端から勢いよく液体が噴き出るのを感じた。
 しかも、中にいる男は萎えていない。彼は果てなかったのだ。最奥にまり込んだままで、俺が震えるたびに締め付けてしまい、そこから微弱な電流のような快楽が伝わり続けて、一度で終わらず断続的に達してしまった。
 あまりにも強い悦楽に、目の前で火花が散った。やっと落ち着いて息をついた頃には、情けないことに泣き出してしまった。
 アレッシオは俺の頬にキスをし、涙を吸いながら、何度も「可愛い」とささやいてくれた。……他人に言われたらムカつきそうなのに、こいつに言われたらなんでこんなに嬉しくてホッとするんだろう……。

「すみません……あなたが可愛らしくて、つい虐めてしまう。悪いくせだとわかっているんですが……」
「ぐす……」
「気持ち、いいですか?」
「……うん……」

 硬いままのアレッシオが、今もおなかの一番深いところにぴったり納まっている。こうして喋ったり、呼吸をしているだけでも、自然に軽く絞るというか……中が勝手に、吸い付くような動きをしてしまって……それがすごく、気持ちいいんだ。
 に奥を突かれると、頭がぐちゃぐちゃになって、わけがわからなくなってしまうんだけど。

「おまえ、こそ……きもちい、のか……?」
「最高ですね。理性が吹っ飛ぶぐらい、いいですよ……」
「……本当に? 私に、気遣いは、いらないぞ?」
「最高ですよ。私を待つ時、下着を穿くかどうか葛藤しているあなたを想像すると、かなります」
「ぐ」
「それに私は、こう見えて育ちが悪いので。重い上に粗野な部分を出し過ぎて、せっかく手に入ったあなたに、今さら嫌われたくはないんですよ……」

 は? 俺がおまえを嫌うだと? それこそ何を言っているんだ。

「見くびるな。私は、おまえがブルーノを今も平民言葉で『父さん』と呼ぶのも好きだし、意外と意地悪なのも好きだし、性格が荒っぽいのも、執着してくれるのも、こういう時に粗野な口調が出るのも、全部好きだぞ。今さら、おまえのどこをどうやって嫌えと?」
「―――……」
「あっ? お、おおきく、なっ?」
「あなたね……」
「やっ、おおき、おおきいっ? おく、そんな、おくっ?」
「本当にもう……俺を煽って自滅するそのくせ、どうにかならないのか……!!」
「あっ!? あっ、あっ、ひんっ、あぁっ、あぁあ!」

 煽る!? いつ!? 知らねぇよ、そんな高等テクニック、俺にあるもんかーっ!
 ……あ、だめ……ちくびなめな……おく、ずんずんて……あぁあ……あたまおかしくなる……。



   ■  ■  ■ 



 ソファで何やらスイッチの入ったアレッシオに徹底的に虐められ、中に出された後。
 ベッドに運ばれ、インターバルを置かずに後ろから……あれ、さっき出されたような、なんて首を傾げる間もなく第二戦。
 さっきまでと違う角度で、中のまずいところを漏れなくえぐられ、さんざん鳴かされ。何回果てたのか、もはや数えていない。

 さらに今回、普段は俺の意識が朦朧もうろうとしている間に済ませていた、後ろの『後始末』をされてしまった。
 たっぷり出されたのを、なんというか、こうね……。
 アレッシオが、それはそれは愉しそうだったとだけ言っておこう……。

 さらりと乾いたガウンとシーツが心地良い。現在、満腹になった猛獣の腕の中だ。
 骨までおいしくしゃぶられた感じがすごい。いや、やはり骨すらも残っていないかもしれない。彼の腹が満ちたような表情は、あらかじめ準備していた軽食を平らげたからではなかろう。

「身体、つらくはありませんか?」
「う、うん……」

 俺の目尻に口付けをし、髪を撫でながら、愛しげな声で労られる。この声も好きだ。ああもう、好き……。

「先にお話をしておいてから、こうしたほうがよかったのかもしれませんが。申し訳ありません、堪え性がなく」
「あ、いや、それはいいんだが」

 ―――おっと、そうそう、そういえば憶測とか言ってたんだっけ? 忘れてたわ。

「何か調べていたのか?」
「……フェランドという男が、どのように見えていたのか、証言を収集していました」

 撫でられる心地良さに落ちかけていた瞼が、ぱちりと開いた。

「メイド、従僕、家庭教師、庭師、料理人、当時の学園の教師だった者、当時の後輩……あの男が眼中に入れなかったであろう人々は特に、あの男がどのように見えていたのか、聞き取りをしていました。私だけではもちろん手が足りませんので、部下や商会の人員にも手を借りて」

 お祖父様とお祖母様、アンドレア、エウジェニア……俺は彼らの再調査を命じ、『当時の詳細を知ることは不可能』『証拠を発見することは不可能』という結論ばかりを目にしていた。
 だがアレッシオは、証拠能力の有無はとりあえず抜きにして、あくまで人々の『個人的な感想』を集め、フェランド=ロッソがどのように育ち、どのような人物で、いったい何をしてきたのか仮説を立てる……ということを試してみたそうだ。

「不明な部分は想像で補うことになるので、裁判に持ち込めるほどの証拠にはならないと思いましたが。我々の知るあの男の性格や気性、思考の傾向などを合わせれば、『これはこういうことなのではないか』というものが形になりました。それをニコラ殿にまとめてもらい、ラウル殿が戻れば修正を加える予定です」

 早ければ、二~三日中には俺に見せられるものができるという。

「役に立つものかどうかは不明ですし、勝手な真似をしてしまいましたが」
「いや―――そんなことはない」

 そんなことはない。
 限定的な範囲で調査をさせていた俺よりも、彼はきっと、核心に迫ることができている。


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