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- 16章 -
-本番と恋の始まり-
しおりを挟む駅前で部員達と別れマックへと向かい3人で歩いていると、安積のポケットの中で携帯が揺れた。
取り出しディスプレイを見れば、そこには異母兄の名前が表示されており、緊急の用なら困ると開いてみるとー
From:聖
To:聖
Sub:
――――――――――――
明日部活の発表だよねっ!?
見に行って良い?
――――――――――――
メールの差出人と受取人の表示に笑える。
じゃなくて
「見に来るってどうやって」
思わず呟くと、聞こえたらしい班乃が不思議そうに振り返った。幸い市ノ瀬は気がついてないようだったので、無言で班乃へと携帯のディスプレイを向ける。
「来るって…どうやって来るつもりなんでしょう」
「そうだよなぁ」
画面の文字を目で追った班乃が安積と同じ感想を小さく口にした。いくら顔を見られないようにしていると言っても、女性ですら珍しいあの長髪だ。正体がばれる可能性は大いにある。
その旨を返信すると、直ぐにその返事が来た。
From:聖
To:聖
Sub:Re:
――――――――――――
大丈夫だ問題ない
変装してくっ!
――――――――――――
「これって、確か駄目だったセリフだよね」
「そう、ですね」
「「……………」」
その内容に2人して顔を見合わせ、静かに笑い合った。秘密にしてくれと言われればもちろんそうするが、本人の行動でばれてしまった事にまで責任を負う必要はないだろう。一応忠告はしたし、これ以上言うこともないと携帯をポケットに放り込んだ。
「それにしても、この表示紛らわしいですね」
「なんか、自演乙って感じだよねっw」
「いっそ撫子とか入れといたらどうですか?」
「はは、ありかもそれっ」
「……撫子?」
念のため前を歩く市ノ瀬に聞こえないよう小声で会話を交わしていると、それまでぼんやりと歩いていた市ノ瀬が急に振り返る。
「えっ、なに?」
あまりにも勢い良く振り返られたものだから、思わずどもって聞き返せばなにやら深刻そうな顔をしている。
「今、撫子の君って言った?」
「えっと…君、とは…」
「言ったとしたら、なんなんだよ?」
「…今日、居たんだよ。学校に。それで、撫子の君って奴のことで…少し聞きたいことがあって」
静創学園に通って居れば撫子の君を見るという事自体は不思議ではないのだが、市ノ瀬が興味を示すとは意外だった。
面倒なことになりそうな予感もするが拒否するのも不自然極まりなく、ここはなにを聞かれても知らぬ存ぜぬで通すしかないだろう。
「…わかりました、とりあえずお店に行ってからにしましょ?」
「分かった」
よほど撫子の君が気になっているらしく早足になった市ノ瀬を急いで追いかけ店へとつくと、この時間では運良く開いていた4人がけの席へとついた。
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