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澪ちゃんとガーディアンに乗って
その1
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そうして夕方から、私は仕事をするために一階へ。
もちろん、澪ちゃんも一緒だ。
仕事の手伝いをさせてもらえるか、お願いをするのだ。
「でも、小さなお店だから私、いらないって言われそうだな……」
「もしかしたら他のお仕事を紹介してくれるかもよ?」
「だったらいいな~」
なんて気楽なことを言いながら、ウィルドさんがいる厨房へ。
「あ、ミサト、それとミオ」
ウィルドさんは、私達が声をかけるより先に言ってきた。
「今日は貸し切りなんだ。俺の友人達が集まって適当に飲み食いするから仕事はいいぞ」
「そうなんですか? 知らなかったです」
と私。
「ついさっき決まったからな。うるさくなるだろうからミオを連れて街を案内がてらどっかで飯食ってこいよ」
そう私に、硬貨の入った袋を渡してくれる。
「え……? お金? いいんですか?」
「金なしで街を案内させて飯をくってこいなんて、そんな鬼畜じゃねーよ俺は。それに働いてもらって駄賃の一つもやれないのは男がすたる。それで買い物したりミサトが言ってる『女子飯』ってーの? うまい飯でも食ってきな」
ニヤッと口の片端を上げて、親指を立てるウィルドさんの決めポーズ。
私は澪ちゃんと顔を見合わせてから、二人でウィルドさんに頭を下げた。
「では、お言葉に甘えさせていただきます」
「おう! 裏の細い通りに行くんじゃねーぞ。小汚くて暗いからすぐに分かる。あと、ガーディアン連れて行け。番犬がわりだ」
「ウィルドさん、お父さんみたい」
あまりに口やかましいくて、つい言ってしまう。
「こんな若くてかっこいいお父さんいるのか?」
――本気で不思議がってる。
「間違えました~! お兄さんです!」
じゃあ、行ってきます! と私達はウィルドさんに手を振ってお店を出た。
「面白い人だね、ウィルドさん」
「うん、それに厳ついけど優しいよ。――あ、澪ちゃんのお仕事について、聞くの忘れてたね」
ガーディアンに乗り込んでから今更思い出す。
澪ちゃんは後ろの荷台にお嬢様乗りだ。
「帰ってきてからでいいよ。もしかしたら街をぶらついていたら求人がみつかるかもだし」
「そうだねー。それもチェックしながら街ぶらつこう」
私は澪ちゃんに図書館や商店街、朝市がある場所や公園に噴水広場を案内し、それからちょっと立ち席の串屋さんを見つけ、そこで食事をとる。
食材を串にさして、それを揚げるか焼くか味付けを選択して提供するという食べ物屋さんだった。
串ものだけじゃなくて、出来合いもののサラダやパン、焼き菓子も売っていた。
「雑誌の写真でこういうの見たことある。イタリアの一角でこういうお店の載ってた」
と澪ちゃんがエビ串にパクつく。
エビといっても伊勢エビなみの大きさだ。なのにやっすい!
なんでもエビの形してるから私達はエビと呼んだけど、海にいるわけじゃなくて湖や川に生息している淡水の生物らしい。
私は、何かのブロック肉を焼いたもの。
そして二人で食べる、ガーリックライスもどきとスティックサラダ。
これでも年頃の娘で、きっと日頃は「匂いの強い食事は……」なんて選ばないけど、今日は違うもの。
気にする相手もいない、気のいい友達というシチュエーションで、思いっきり匂いのするものを食べて、串ごとかぶりついちゃう。
「はー! 美味しい!」
二人同時に感激する。
「この世界って食べ物美味しいよね! まさかお米まであるなんて!」
「今までやってきた勇者と仲間が普及してくれたらしいよ」
「それだけは感謝だわー」
「ですです」
もしゃもしゃと食べて喋って飲んで(ノンアルコールね)
それからウィルドさんにおみやげを買って、カロリー消費のためにガーディアンを押して帰ってきた。
「……あ、もうお店閉めちゃってる」
店の前に着いたら、真っ暗だった。
「飲み会、早く終わったのかな?」
ガーディアンに元の場所に戻るように言うと、私達は二階へ続く階段を上る。
二階へ上がるのには、屋内と外からの二つの方法がある。
いつもは屋内の店内から上がるけど、閉まってる時は外に設置された階段を利用するのだ。
――それも、ごくたまにしか利用しない。
いつもウィルドさんが店を開けているし、私も閉店まで働いているから。
時々、ウィルドさんが早じまいをしてどこかへ出かけて、外の階段を使っているのを知ってるだけだった。
「そういえば、開いてるかな……」
鍵が締まってたらどうしよう?
「とにかく、扉確認しよう?」
と澪ちゃんに促されて、二人で階段に上がる。私が先で澪ちゃんは後ろ。
扉の取っ手に手をかけようとした瞬間――扉が開いた。
「ウィルドさん」
丁度出掛けるところだったのか、ウィルドさんと鉢合わせした。
「おっ、帰ってきたか。ちょうどよかった。出かける直前に帰ってきてくれて」
茶色の、優しい目を向けて笑ってくれる。
「ただいま。ウィルドさんは今から出かけるんですか?」
「ああ、飲む店を移動しようってな。そういやあ、鍵渡してなかったなって思ってどうしようかと思案してたところだったんだ。タイミングよくて助かった。じゃあ、留守番頼む」
「はい、いってらっしゃい」
二人で手を振ると、ウィルドさんはポスッと頭に手を乗せてきた。
「俺は鍵持ってるから、自分で開けて入ってくる。俺以外の奴が「開けてくれ」と言っても開けるんじゃねーぞ?」
「分かってます! もう、子供扱いだな!」
二人でプリプリしてみるも、本気で怒れない。
だって頭に置かれた手が、とても優しくてホッとするから。
実は扉が開かなかったらと不安だった。
ウィルドさんの店は異世界にきて追い出されて、追いかけ回されて、どうしていいか分からなくて泣いていた私を、何も要求なしで受け入れてくれた最初の人で場所だった。
店が暗くて開いてないと分かった時、もしかしたら仲間ができたから「もう大丈夫」と放りだされるのかと――頭をよぎった。
「遅くても明日の朝には戻ってくる。じゃあな」
ちゃんと帰宅の目安まで告げて出かけたウィルドさんを見送ってから澪ちゃんが、
「あの人、優しいね」
と呟く。
その声音に、澪ちゃんも私と同じような安堵感が含まれていて、自分と同じ気持ちなんだと嬉しくなった。
もちろん、澪ちゃんも一緒だ。
仕事の手伝いをさせてもらえるか、お願いをするのだ。
「でも、小さなお店だから私、いらないって言われそうだな……」
「もしかしたら他のお仕事を紹介してくれるかもよ?」
「だったらいいな~」
なんて気楽なことを言いながら、ウィルドさんがいる厨房へ。
「あ、ミサト、それとミオ」
ウィルドさんは、私達が声をかけるより先に言ってきた。
「今日は貸し切りなんだ。俺の友人達が集まって適当に飲み食いするから仕事はいいぞ」
「そうなんですか? 知らなかったです」
と私。
「ついさっき決まったからな。うるさくなるだろうからミオを連れて街を案内がてらどっかで飯食ってこいよ」
そう私に、硬貨の入った袋を渡してくれる。
「え……? お金? いいんですか?」
「金なしで街を案内させて飯をくってこいなんて、そんな鬼畜じゃねーよ俺は。それに働いてもらって駄賃の一つもやれないのは男がすたる。それで買い物したりミサトが言ってる『女子飯』ってーの? うまい飯でも食ってきな」
ニヤッと口の片端を上げて、親指を立てるウィルドさんの決めポーズ。
私は澪ちゃんと顔を見合わせてから、二人でウィルドさんに頭を下げた。
「では、お言葉に甘えさせていただきます」
「おう! 裏の細い通りに行くんじゃねーぞ。小汚くて暗いからすぐに分かる。あと、ガーディアン連れて行け。番犬がわりだ」
「ウィルドさん、お父さんみたい」
あまりに口やかましいくて、つい言ってしまう。
「こんな若くてかっこいいお父さんいるのか?」
――本気で不思議がってる。
「間違えました~! お兄さんです!」
じゃあ、行ってきます! と私達はウィルドさんに手を振ってお店を出た。
「面白い人だね、ウィルドさん」
「うん、それに厳ついけど優しいよ。――あ、澪ちゃんのお仕事について、聞くの忘れてたね」
ガーディアンに乗り込んでから今更思い出す。
澪ちゃんは後ろの荷台にお嬢様乗りだ。
「帰ってきてからでいいよ。もしかしたら街をぶらついていたら求人がみつかるかもだし」
「そうだねー。それもチェックしながら街ぶらつこう」
私は澪ちゃんに図書館や商店街、朝市がある場所や公園に噴水広場を案内し、それからちょっと立ち席の串屋さんを見つけ、そこで食事をとる。
食材を串にさして、それを揚げるか焼くか味付けを選択して提供するという食べ物屋さんだった。
串ものだけじゃなくて、出来合いもののサラダやパン、焼き菓子も売っていた。
「雑誌の写真でこういうの見たことある。イタリアの一角でこういうお店の載ってた」
と澪ちゃんがエビ串にパクつく。
エビといっても伊勢エビなみの大きさだ。なのにやっすい!
なんでもエビの形してるから私達はエビと呼んだけど、海にいるわけじゃなくて湖や川に生息している淡水の生物らしい。
私は、何かのブロック肉を焼いたもの。
そして二人で食べる、ガーリックライスもどきとスティックサラダ。
これでも年頃の娘で、きっと日頃は「匂いの強い食事は……」なんて選ばないけど、今日は違うもの。
気にする相手もいない、気のいい友達というシチュエーションで、思いっきり匂いのするものを食べて、串ごとかぶりついちゃう。
「はー! 美味しい!」
二人同時に感激する。
「この世界って食べ物美味しいよね! まさかお米まであるなんて!」
「今までやってきた勇者と仲間が普及してくれたらしいよ」
「それだけは感謝だわー」
「ですです」
もしゃもしゃと食べて喋って飲んで(ノンアルコールね)
それからウィルドさんにおみやげを買って、カロリー消費のためにガーディアンを押して帰ってきた。
「……あ、もうお店閉めちゃってる」
店の前に着いたら、真っ暗だった。
「飲み会、早く終わったのかな?」
ガーディアンに元の場所に戻るように言うと、私達は二階へ続く階段を上る。
二階へ上がるのには、屋内と外からの二つの方法がある。
いつもは屋内の店内から上がるけど、閉まってる時は外に設置された階段を利用するのだ。
――それも、ごくたまにしか利用しない。
いつもウィルドさんが店を開けているし、私も閉店まで働いているから。
時々、ウィルドさんが早じまいをしてどこかへ出かけて、外の階段を使っているのを知ってるだけだった。
「そういえば、開いてるかな……」
鍵が締まってたらどうしよう?
「とにかく、扉確認しよう?」
と澪ちゃんに促されて、二人で階段に上がる。私が先で澪ちゃんは後ろ。
扉の取っ手に手をかけようとした瞬間――扉が開いた。
「ウィルドさん」
丁度出掛けるところだったのか、ウィルドさんと鉢合わせした。
「おっ、帰ってきたか。ちょうどよかった。出かける直前に帰ってきてくれて」
茶色の、優しい目を向けて笑ってくれる。
「ただいま。ウィルドさんは今から出かけるんですか?」
「ああ、飲む店を移動しようってな。そういやあ、鍵渡してなかったなって思ってどうしようかと思案してたところだったんだ。タイミングよくて助かった。じゃあ、留守番頼む」
「はい、いってらっしゃい」
二人で手を振ると、ウィルドさんはポスッと頭に手を乗せてきた。
「俺は鍵持ってるから、自分で開けて入ってくる。俺以外の奴が「開けてくれ」と言っても開けるんじゃねーぞ?」
「分かってます! もう、子供扱いだな!」
二人でプリプリしてみるも、本気で怒れない。
だって頭に置かれた手が、とても優しくてホッとするから。
実は扉が開かなかったらと不安だった。
ウィルドさんの店は異世界にきて追い出されて、追いかけ回されて、どうしていいか分からなくて泣いていた私を、何も要求なしで受け入れてくれた最初の人で場所だった。
店が暗くて開いてないと分かった時、もしかしたら仲間ができたから「もう大丈夫」と放りだされるのかと――頭をよぎった。
「遅くても明日の朝には戻ってくる。じゃあな」
ちゃんと帰宅の目安まで告げて出かけたウィルドさんを見送ってから澪ちゃんが、
「あの人、優しいね」
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