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澪ちゃんとガーディアンに乗って
その2
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次の日――
「うちの店は狭いから、二人もいらないんだよな……」
――やっぱり。
澪ちゃんも分かってたらしく、「そうですか」と受け入れるけど明らかにしょげている。
「俺の店は無理だけど、実は人手が欲しいからいい人いないか、というのはある――」
「――あるんですか!?」
私と澪ちゃんでウィルドさんを問いつめてしまった。
「図書館なんだけど。今度小さいながら喫茶を併設するんだと。それで給仕兼調理ができる人を募集するんだ。けれど、紹介のない身元の怪しい人は採用できないからいい人いたら紹介してくれって――さ。ミオなら平気だろう」
おー、と私。
「澪ちゃん、図書館ならここから歩いて二十分くらいだし、それに館長さんも髪の毛後退してるけど、いい人だよ」
「後退してるのはよけいだぞ」とウィルドさんがつっこみをいれる。
「あ、あの……下宿は……?しばらくここをお借りしていいでしょうか?お給金もらったらきちんとお支払いしますから」
「ミサトもそうだがミオもきちんとした子だなあ」
ウィルドさんは感心しながらうんうん、と頷く。
「お兄さんは礼節を重んじるので、若いのに礼儀正しい子は好きなんだ。下宿代はかまわんよ」
「えっ?でも……宿の稼ぎが……」
そう、四部屋しかないのに私と澪ちゃんが使ってしまっては半分しか稼働しない。
「うちの看板娘で稼ぎがしらのミサトの友達に、金払えとは言えねーな」
「いや!だから、私も下宿代を払えば済むことですよね?」
「だからいらねーって」
こほん、とウィルドさんは一つ咳払いをする。
「俺は長くここに住んでるから、今の城下街の賑わいがどの程度か分かる。んで、この国が滅びると予言があったからこうしてお前達が召喚されたわけだ。そういう噂は周辺に広がるのは早い。当然業者や冒険者や、物見遊山の奴らは平和になるまでこの国を避ける。だから今は客が少ないんだ」
そういえば――私がウィルドさんのお店で住み込みで働くようになってから、旅行者でお泊まりって数人しかいなかったし、食べにくるのも常連さんがほとんどだった。
「とにかく国の危機が終了しなければ下宿も店も暇な状態が続くんだから、ミサトもミオも気にせずに部屋を使ってくれていいんだ」
私と澪ちゃんは顔を見合わせると、
「すいません。ではお言葉に甘えさせていただきます」
と礼儀正しいお辞儀をした。
◇◇◇◇◇
その後、ウィルドさんに一筆書いてもらい、澪ちゃんはすぐに図書館に向かった。
なかなか戻ってこなくてやきもきしていた私に気遣ってウィルドさんは「差し入れを~さんに持って行ってくれ」とサンドイッチとクッキーを持たせて図書館に配達を命じてくれる。
この人、本当に気の利くおじさんだわ。
差し入れを籠にぶっこんでガーディアンで図書館に向かうと、ちょうど澪ちゃんが出てきた。
すぐに採用が決まり、荷物を運ぶのを手伝っていたと。
――ただ、しばらくは店員を少なく回すようだ、とのこと。
理由は朝にウィルドさんが話してくれた、この国の現状を考えてということだ。
「思ったより逼迫してる状況だったんだね……この国」
「……うん、人口が多い国かと思っていたし、街を練り歩くとみんな普通に生活してるから気がつかなかった」
「このまま続けば、いずれ経済状態が悪くなるよね」
――これは
「早く、魔王だか魔獣だか瘴気だかを倒さないと先に国が立ちいかなくなって死ぬね」
「うん。ここは澪ちゃん」
「うん。城から出て行った仲間を探すべき!」
私達は頷きあうと、まず休みを合わせることにした。
そうして同じ日に休みを取って、二人で出て行った仲間の行方をつきとめる計画だ。
(よし! 帰るまでの目標ができたぞ!)
澪ちゃんと二人なら、大丈夫!
何せ、同じ日本人で高校生!
一人じゃないってことが、どれだけ力を与えてくれるのかよく分かる。
(いや、ガーディアンもいるけどさ……あれは相棒だし)
――修正修正。
(ガーディアンと三人で頑張ろう!)
私は澪ちゃんに「おやすみ」と挨拶をして、明日の仕事の鋭気を養うためにベッドに入ったのだ。
「うちの店は狭いから、二人もいらないんだよな……」
――やっぱり。
澪ちゃんも分かってたらしく、「そうですか」と受け入れるけど明らかにしょげている。
「俺の店は無理だけど、実は人手が欲しいからいい人いないか、というのはある――」
「――あるんですか!?」
私と澪ちゃんでウィルドさんを問いつめてしまった。
「図書館なんだけど。今度小さいながら喫茶を併設するんだと。それで給仕兼調理ができる人を募集するんだ。けれど、紹介のない身元の怪しい人は採用できないからいい人いたら紹介してくれって――さ。ミオなら平気だろう」
おー、と私。
「澪ちゃん、図書館ならここから歩いて二十分くらいだし、それに館長さんも髪の毛後退してるけど、いい人だよ」
「後退してるのはよけいだぞ」とウィルドさんがつっこみをいれる。
「あ、あの……下宿は……?しばらくここをお借りしていいでしょうか?お給金もらったらきちんとお支払いしますから」
「ミサトもそうだがミオもきちんとした子だなあ」
ウィルドさんは感心しながらうんうん、と頷く。
「お兄さんは礼節を重んじるので、若いのに礼儀正しい子は好きなんだ。下宿代はかまわんよ」
「えっ?でも……宿の稼ぎが……」
そう、四部屋しかないのに私と澪ちゃんが使ってしまっては半分しか稼働しない。
「うちの看板娘で稼ぎがしらのミサトの友達に、金払えとは言えねーな」
「いや!だから、私も下宿代を払えば済むことですよね?」
「だからいらねーって」
こほん、とウィルドさんは一つ咳払いをする。
「俺は長くここに住んでるから、今の城下街の賑わいがどの程度か分かる。んで、この国が滅びると予言があったからこうしてお前達が召喚されたわけだ。そういう噂は周辺に広がるのは早い。当然業者や冒険者や、物見遊山の奴らは平和になるまでこの国を避ける。だから今は客が少ないんだ」
そういえば――私がウィルドさんのお店で住み込みで働くようになってから、旅行者でお泊まりって数人しかいなかったし、食べにくるのも常連さんがほとんどだった。
「とにかく国の危機が終了しなければ下宿も店も暇な状態が続くんだから、ミサトもミオも気にせずに部屋を使ってくれていいんだ」
私と澪ちゃんは顔を見合わせると、
「すいません。ではお言葉に甘えさせていただきます」
と礼儀正しいお辞儀をした。
◇◇◇◇◇
その後、ウィルドさんに一筆書いてもらい、澪ちゃんはすぐに図書館に向かった。
なかなか戻ってこなくてやきもきしていた私に気遣ってウィルドさんは「差し入れを~さんに持って行ってくれ」とサンドイッチとクッキーを持たせて図書館に配達を命じてくれる。
この人、本当に気の利くおじさんだわ。
差し入れを籠にぶっこんでガーディアンで図書館に向かうと、ちょうど澪ちゃんが出てきた。
すぐに採用が決まり、荷物を運ぶのを手伝っていたと。
――ただ、しばらくは店員を少なく回すようだ、とのこと。
理由は朝にウィルドさんが話してくれた、この国の現状を考えてということだ。
「思ったより逼迫してる状況だったんだね……この国」
「……うん、人口が多い国かと思っていたし、街を練り歩くとみんな普通に生活してるから気がつかなかった」
「このまま続けば、いずれ経済状態が悪くなるよね」
――これは
「早く、魔王だか魔獣だか瘴気だかを倒さないと先に国が立ちいかなくなって死ぬね」
「うん。ここは澪ちゃん」
「うん。城から出て行った仲間を探すべき!」
私達は頷きあうと、まず休みを合わせることにした。
そうして同じ日に休みを取って、二人で出て行った仲間の行方をつきとめる計画だ。
(よし! 帰るまでの目標ができたぞ!)
澪ちゃんと二人なら、大丈夫!
何せ、同じ日本人で高校生!
一人じゃないってことが、どれだけ力を与えてくれるのかよく分かる。
(いや、ガーディアンもいるけどさ……あれは相棒だし)
――修正修正。
(ガーディアンと三人で頑張ろう!)
私は澪ちゃんに「おやすみ」と挨拶をして、明日の仕事の鋭気を養うためにベッドに入ったのだ。
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