【本編完結】繚乱ロンド

由宇ノ木

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番外編 咲く花、散る花 (3) 御守り

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自室となった藤の間に戻り着替えたみふゆは、胡蝶からすぐにベッドに入るよう言われ、重圧から解放されたせいか、すぐに眠ってしまった。

目覚めるとすでに午後五時を過ぎていた。だるくて車椅子でリビングにむかうと、貴之と松田俊也が囲碁の対局をしていた。周りを黒岩三兄弟と松田家長男・隆聖が囲んでいる。どうやら貴之がまた負けているようだ。
貴之が唸りながらみふゆの姿に気づいた。
「おー、起きたか、みふゆ」と、みふゆにかこつけて対局を放棄。周囲からひんしゅくを買った。

夕飯はいつものメンバーに松田家が加わることになったが、京司朗がいない。

「京司朗は権現寺での修行に入るから仕事のスケジュール調整を事務所で三上としている。夜には戻る」
貴之がみふゆの頭にぽんと手を置いた。


夜、みふゆはベッドで、スケッチブックにまだ慣れない新しい自分の名前を書いていた。
堀内花壇を正式に退職することにしたが、退職願いにどうしても『青木みふゆ』と書いてしまい、何度も書き直すはめになり、新しい名前を覚え込む練習をしていた。

わたしの名前は?
━━━惣領みふゆ
お父さんの名前は?
━━━惣領貴之

自問自答して、書いてみるがやはり変な感じだ。自分じゃないみたいだ。

“事実は小説より奇なり”と聞いたことがあるが、みふゆの心境は何から何までまさにそれだ。



『惣領みふゆ』になったばかりなのに、結婚により『仙道みふゆ』になるのかと思っていた。
京司朗が婿に入ると聞き、驚いたが、みふゆが貴之と先に養子縁組をしてしまったのだから仕方がない。京司朗は嫌ではないのだろうかと訊いてみたが、京司朗はアッサリとしたものでこだわりはないと言った。

みふゆは貴之のことも気がかりだった。
こんなに急に結婚が決まり、貴之との間がぎくしゃくするのではないかと心配したが、貴之は変わらずみふゆを甘やかしてくれている。
『京司朗の嫁になろうがなんになろうが、みふゆ、お前は俺の娘だ』
貴之ははっきりと言いきって、みふゆは安心した。これからも惣領貴之の子供でいてもいいのだと。

それにしても貴之の態度はいつもいつも本当の父親のようだとみふゆは思う。
いや、本当の父親以上に━━━━━
だからみふゆは少しだけ誤解していた。
男としての愛情かと。
みふゆを一番に考えてくれる貴之の愛は。

青木家が全焼した翌日の夜、貴之は青木家の灰を集め、供養をしようと言ってくれた。

寂しくて、母・礼夏の骨を仏壇の下に隠し持っていたことを、京司朗から聞いたのかもしれない。

供養は惣領家の寺、権現寺で供養されることになっている。
承認式の前に供養したかったが、火災に事件性があると警察の捜査が終わっていない。

みふゆはお守りを手に持った。
みふゆの元に残った数少ない、母・礼夏の面影。
古くなり、少し擦り切れた箇所がある。これ以上傷まぬように気をつけなくては。
このお守りを手渡された時はまだ金糸の刺繍の模様がもう少しはっきりしていた。
みふゆは改めてじっくりとお守り袋の模様をみつめた。

「この模様・・・」

見覚えがある。

どこで見た?

つい最近の気がする。

違う。最近というよりも今日の。


『権現寺住職、惣領一心の袈裟と同じ』


みふゆの心臓がドクンと音をたてた。

母・礼夏と惣領家には接点がある。
 







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