【本編完結】繚乱ロンド

由宇ノ木

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159. 短命の一族 (1) 降霊 ①

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「あ、よかった、この写真探してたんです」
みふゆは楓から写真を受け取った。
「素敵なお写真ね。風見さんとみふゆちゃんの笑い顔がほんとに楽しそうだわ」
胡蝶が写真をのぞきこんだ。
「わたしのお気に入りなんです。写真の整理をした時にどこかに挟めたと思ってたんですけどみつからなくて、・・・。みつかってよかったです」
みふゆはアルバムの一番最後の台紙に写真を貼り付けた。隣のページには大人びたみふゆの母親の十二単姿があった。自信たっぷりの不敵な笑みを浮かべる写真だった。
見る者を威圧する、『水無瀬の邪眼』と呼ばれた水無瀬礼夏だ。
「このお写真はおいくつの頃かしら?」
「なんだか迫力あるわね」
「そうなんです。わたしも“この顔こわい”と言ったら“女王様ごっこよ”って言って。十八歳の時の写真です。十八歳これが最後のコスプレだって言ってました。この頃には化粧がうまくなって、顔を別人にしてみたりして遊んでたって。下手に笑うと化粧が崩れるから中途半端な笑顔になったって言ってました」
「女は化粧の仕方ひとつでいろんな自分をつくれるものね。このお顔も凜々しくて素敵だわ」
胡蝶は心中を隠す優しい笑みをみふゆに見せた。
『女王様ごっこ』『中途半端な笑顔』礼夏は娘にそう言ってごまかすしかなかったのだろう。水無瀬の当主を四年も務めれば、必要以上に凄味も迫力も増す。ある意味、水無瀬も『裏社会』に属するのだから。

「確かに最初の写真からは想像がつかないわね。別人って言ってもおかしくないもの。でもホントにいろんな十二単を着てるのね。すごいわ」
着ている十二単はすべて豪華だ。特に刺繍が素晴らしい。コスプレ用の代物ではないと楓は思った。
「順さんのお家が貸し衣装を扱う関係の会社を経営していたそうです。着物もたくさんあって、それで着せてもらえることが多かったって。でも順さんのご両親も早くに亡くなったので、会社はたたんだと聞きました」
「そうだったの、残念だわね」
「ねぇねぇ、みふゆちゃんのこの写真、爆笑してる顔だけど写したのはお母さんかしら?」
みふゆは笑った。
「はい。たぶんお母さんがふざけてたんだと思います。順さんもすごく笑ってますから。わたし、赤ちゃん時代の写真はこれが一番好きなんです。・・順さんが生きてたらきっとお母さんのこともいろいろ聞けたのにって正直今でも思います。順さんはお母さんよりすごかった人みたいで、だから早く亡くなったのだと聞きました」
みふゆの言葉に、胡蝶の背筋に冷たさが走った。

いま、みふゆは何を言った?

自分の言ったことの意味に気づいていないのか。
母親より強い霊能力ゆえに早くに亡くなったと?
では母親の礼夏も同じ、強い霊能力ゆえに早く亡くなったということか?
歴代の水無瀬当主で、水無瀬玄州に続く、高い霊能力を持っていたとされる水無瀬礼夏。
水無瀬の当主は皆、若くして交代している。その後の生存については明らかにされていない。
もしも、若くして亡くなっていたならば。
礼夏も例外ではなかった。三十代半ばで急に倒れ意識が戻らぬまま三年後に亡くなっている。
礼夏の両親も風見順の両親も早くに亡くなったとみふゆは言った。

もし本当なら━━━

血筋的に若くして亡くなる一族であれば、

みふゆにもその可能性が生まれる。






霊峰領れいほうりょう権現寺ごんげんじ

礼夏のためにつくられた祭壇は、上段に二本の大型の蝋燭ろうそくが立ち、炎を灯し揺らめいていた。一段下の中段には、細長い蝋燭が並んでいる。最後の一番下の段には小さな蝋燭が無数に並べられ炎を灯している。

惣領そうりょう一心いっしんの声が堂内に響いた。
一心が鐘を鳴らすと、あとから鈴の音が鳴る。

隣に座す副住職・惣領圭一が、数珠じゅずを持って一心の声に追随し、鐘に合わせて鈴を鳴らしていた。

貴之は一心から渡された数珠じゅずを手にし、貴之の斜め後ろには、百花寺ひゃっかじの住職・惣領早紀子が数珠を持ち拝んでいた。早紀子も鐘に合わせて鈴を鳴らした。


蝋燭の炎が高さを増してゆく。


一心が鐘を鳴らし、追って、圭一・早紀子が鈴を鳴らした。

やがて、うっすらと人の形が蝋燭の炎に浮かびあがった。

鈴の音が響く。

貴之は目を見張った。


十二単をまとった礼夏が現れた。


「礼夏・・!!」

前に出ようとした貴之を、惣領早紀子が後ろからとどめた。







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