【本編完結】繚乱ロンド

由宇ノ木

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30. 見え隠れするもの (1)

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松田会長から連絡があった。

花屋の堀内社長には釘を打っておいたと。
万が一、堀内が約束を破るような真似をわずかでもしたならば、次は自分が始末をつけるとまで言っていた。

それでも堀内は油断のならない男だ。こちらでも十分目は光らせておくが。

しかし、参ったな。
俺を芍薬の花に例えていたと聞いて、信頼を得るのは容易いと思っていたんだが。

信頼のしの字も彼女からは見えない。

黒岩も、松田会長でさえあの娘は少し不思議だと言う。
何があるというのか。
俺にはそれすら見えてこない。

会長は事情を知っているようだが、簡単には教えてはくれないだろうしな。

「仙道さん、花屋のお嬢さんがおみえになりました」

「ああ、勅使河原てしがわらのところに案内してくれ。俺と会長は寺に行く。あとは頼む」

「はい」

会長と俺は別・・か。

あの娘を甘く見てかかったのはまずかったな。








「ベリー君、これは摘んでもいいの?」

わたしは葉の陰に連なる、深い藍色に白い霧がかかったような実を指して言った。

「いいですよ。粒は小さいけど多分味が濃いと思います。ちょっと酸っぱいかも」

「酸っぱいの好き」

「じゃあ、似たようなのを摘むといいですよ」

わたし、青木みふゆは本日組長先生の敷地内にあるブルーベリー園でブルーベリーの収穫体験をさせてもらっている。
教えてくれているのは19歳のベリー君。名前が難しくて長い(勅使河原蔵之介だったか鞍馬山新之助だったか)ので、ベリー君と呼んばせてもらっている。農業部門の担当者的存在で、イチゴ類が専門だというのでベリー君と呼ぶようになった。
農業高校を出て、就職したが会社が倒産し、ヤケになってケンカしていたところを拾われたのだという。


組長先生のお屋敷が建っている敷地は大変広い。広いなんてもんじゃない。何十人住んでいるんだというお屋敷に広い広い広い広い日本庭園、大きな大きな大きな大きな池があり、畑があり、果樹栽培もやっている。田んぼもある。田んぼの向こう側はお魚が釣れる川があり、山があり、山も組長先生の持ち物だと最近知った。
どうも農業、林業、水産業も事業として手掛けているらしい。
土木・建築、不動産業は知っていたけど、すごいな、組長先生。

収穫しながら、ベリー君の高校時代の話を聞いていた。農業高校ってなんて人生に役に立つ教育機関なんだろうと思った。

わたしも農業高校行けばよかった。

「ベリー君はいつも一人で収穫してるの?」

「いえ、手伝ってもらってます。さすがにこの広さを一人ではきついから」

「・・・もしかして、わたし、邪魔した?」

「いえ、いえ!今日は元々俺一人だったんです。だからすごく助かりました」

「それならいいけど」

「早朝の作業はだいたいいつも若頭が手伝ってくれてるんですけど、いま忙しいから」

「・・・若頭?」

「?はい、若頭」

「若頭って・・、あの若頭?」

「はい、あの若頭です」

ええーーーーっ!?

今年一番の衝撃かもしれない。

「???そんなにびっくりですか??」

「びっくりというか・・びっくりです・・」

「若頭は野菜の収穫も手伝ってくれたりしますよ。田植えとかもするし。なにせ料理のプロですから食材の質には厳しいんですよ。イタリアとフランスにお店持ってますからね」

「─────」
衝撃の事実は二度目の方が衝撃度大きいーーー!


若頭がプロの料理人ってことはシェフ?!
包丁持たせて大丈夫なのだろうかと思ってしまう。

組長先生の命令で裏で暗躍してるだけじゃなかったのか。
もしかして、スーパーに出没している理由も料理の為だった?






今朝は花屋のお嬢さんのみふゆさんが収穫に参加だ。
花屋のお嬢さん、と呼ぶと『くすぐったいからやめて』と言われ、みふゆさんと呼ぶことにした。
みふゆさんにブルーベリーの収穫を手伝ってもらったおかで、今日『澤山』に納める分が間に合った。

収穫しながら高校の話になった。農業高校だというとたいていの、特に女の子は『ダッセー』と笑うが、みふゆさんは違った。
『羨ましい』と、彼女は言ったのだ。

収穫が終わり、袋にたくさんのブルーベリーをつめて渡すととても喜んでいた。たくさんあるから店に持っていってみんなで分けると、自転車に乗って彼女は帰って行った。
それならもっと詰めればよかったな。
そうだ。花屋さんに届けに行こう。
時間がある時行ってもいいか若頭に聞いてみよう。
みふゆさんは今日は公休日やすみだから明日にでも、と考えていたら、会長と若頭が帰ってきた。

二人は、みふゆさんの様子がどうだったかを聞かせてほしいと言った。








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