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31. 見え隠れするもの(2)
しおりを挟むベリー君にたくさんブルーベリーをもらった。超ラッキーである。
わたしはご機嫌で自転車をこいで、りんちゃんと七十先輩がいる本店へと向かった。
本店につくと、りんちゃんがお花の水替えをしていた。
「わあ、とれたてブルーベリーですか?美味しそう!」
「たくさんもらったから、冷蔵庫に入れていくね。こっちの袋に社長達の分も入れていくから」
わたしは冷蔵庫にりんちゃんと七十先輩と社長の分とを袋にわけて入れた。社長は食べないかもしれないけど、奥さんが好きなんだよね。
「何を入れていくって?」
社長があくびをしながら、のっそりとだるそうに出勤してきた。
「社長、どうしたんですか?こんなに朝早く。まだ朝の7時半ですよ。開店前なのに」
「俺だってたまには朝早くから仕事する時だってあるんだよ」
と、言いつつ、めんどくさそうにティーテーブルにつく。
「あー、アタマ痛ぇ・・。コーヒーくれコーヒー」
七十先輩が「また二日酔いかい?しょうがないねぇ」と言いながら、コーヒーをいれに真新しいミニキッチンに向かった。
りんちゃんがカウンターにおつまみ用に別にしたブルーベリーをつまみながら、
「急な注文が入ったんですよ。スタンド花」
と教えてくれた。
「山本建設の社長の親父さんが亡くなって今日午後一時から葬式だそうだ。この前会った時は元気そうに見えたんだけどな。心筋梗塞だと」
「何があるかわかりませんね。社長も気をつけてください」
わたしも従業員らしく気遣ってみた。
「なんだ?心配してくれんのか?」
「雇い主ですから。女に刺されるとか、奥さんに刺されるとかで死なれたら・・」
「そうですよ。今急に死なれたら困りますよね。給料とかボーナスとか。どうなるのかなって」
りんちゃん、相変わらず容赦なし。
「お前らホントにボーナス出さねーぞ!」
社長、思わず椅子から立ち上がる。
日頃の行いが悪いからそんな言われ方をするのだと気づいてほしい。
「辞める覚悟はいつでも出来てます」
青木は本気です。握りこぶしつくっちゃいます!
「みーちゃん先輩が辞めるならあたしも辞めますぅ!」
「わかったわかった、給料もボーナスもちゃんと出すから辞めるのは止めろ」
社長はふてくされたように再び椅子に座ってコーヒーを飲み始めた。
「じゃあ、社長、冷蔵庫に今朝収穫したブルーベリーが入ってますから。社長は食べなくても奥さんに食べさせてください。奥さん、ブルーベリー好きだから」
そうしてわたしは帰ろうとしてたのに。
「・・・組長のところのか?」
社長がやけに真面目な顔で聞いてきた。
「はい。前から約束してたので」
これは本当。若頭を知らなかった頃から約束してた。
「仙道はいたか?」
「?どうでしょうか?今朝は組長先生にも会いませんでしたし」
「前にも言ったが、仙道には近づきすぎるなよ」
「近づく理由がありません」
向こうは何かを知りたくて近づいてこようとしてますが。
「それならいいんだがな」
仏頂面でコーヒーを飲む社長。
元々知り合いみたいだから過去に何かあったと推察できる。女をとられたとか。
「そういえば、若頭がプロの料理人って話を聞きました。イタリアとフランスにお店持ってるって」
「えー?!カッコいい!!あの人怖いだけじゃないんですね!」
りんちゃんの瞳が輝いている。
「料理ができる男っていいよねぇ」
七十先輩も賛同する。
「おい、青木、俺の話を聞いてたかお前」
社長が凄む。
「聞いてましたとも」
社長への嫌がらせに話しただけですから。
「だったらあいつに妙な興味持つんじゃねーぞ」
「興味は持ちませんが、社長が嫌がるので」
「!?お前・・!」
社長が怒る前にわたしは本店を飛び出した。
後ろからりんちゃんの「ブルーベリーありがとー」と叫ぶ声がしたので、わたしは「どういたしまして」と手を振って答えた。
自転車で走っていると、どこまでもいけそうな気がする。
二連休だから、少し遠くまで行こうかな。
その前にブルーベリーを家に置いてこなければ。せっかくの摘みたてが、自転車のガタゴトでつぶれてしまう。
わたしは行きかけた道をUターンした。
「いま、花屋のお嬢さんとすれ違いましたよ。仙道さん」
運転手の三上が書類を読んでいた俺に話しかけてきた。
「ん?ああ、家に帰る途中だろう。花屋のみんなに分けると言ってたみたいだから」
「あのお嬢さん、ちょっと不思議ですよね」
「・・・何がだ?」
「以前、屋敷に花を届けに来た時に、何かついてるって言われて・・、首の後ろ側なんですけどね、ぽんぽんと払ってくれたことがあるんですよ。そしたらそのあとから体が妙に軽くなって・・」
「軽くなった?」
「偶然かと思ったんですけど、他の連中も何人か似たような体験してるんですよ」
「で?」
「あのお嬢さん、憑いてる霊を祓う力があるんじゃないかって」
「ほう・・」
なるほど・・・。
疑問がひとつ、解けた瞬間だった。
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