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第3章 裏世界
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しおりを挟む「きみの親友の萌さんの魂は、もうここにはいないよ」
無精髭の男の言葉に、美玲ちゃんの目からぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
認めたくなかった事実を聞かされたみたいに、両手で耳を塞いで、乱暴に頭をふった。
「もちろん、あの黒こげの男を救えたとしても、萌さんの意識は戻らなかっただろう。
興味本位に死者の魂をのぞこうとしたんだからね。当然の報いさ」
そのとたん、美玲ちゃんの号泣が、真夜中の交差点にこだました。
ぼくは美玲ちゃんに、かける言葉が見つからなかった。
この状況で、誰がなぐさめの言葉など、かけられるだろうか?
なのに無精髭の男は、そっと美玲ちゃんの肩に手をかけて言ったんだ。
「だが、助からない訳じゃない。望みは薄いが方法はある。今後、ぼくに協力してくれるのなら、いまから助けに行ってもいい。ついてきてくれるかい?」
「萌を助けられるの……?」
驚いて顔を上げた美玲ちゃんに、妖しい笑みを浮かべる無精髭の男。
美玲ちゃんは、涙を拭いて立ち上がった。
「わたしは、あなたの言っていることがわからない。たぶん、あなたとは考え方も違うと思う……。
でも、萌はわたしの大切な親友なの。萌を助けるためなら、わたしはなんだってする!」
こみ上げてくる涙を必死にこらえて、美玲ちゃんが誓った。
無精髭の男は満足そうにうなづくと、美玲ちゃんに手のひらを突き出した。
「さあ、美玲さんも左手を出して、ぼくの左手にかさねて……」
言われた通りにする美玲ちゃん。
すると、かさねた手のあいだで、ぼうっと青い火が燃えた。
「契約成立……」
驚いて自分の手のひらを見つめる美玲ちゃんをよそに、無精髭の男は、今度はぼくに視線を向けた。
「きみもくるよね、ミケーレ」
ぼくが見えることよりも、さっきからこの無精髭の男は、ぼくらのことを何でも知りすぎていて、正直、気味が悪い。
って、言うか……。
「ミケーレ? ぼく、ミッケだけど?」
「きみは何も覚えていないんだね。ぼくに協力すれば、きみはいずれ自分が誰だったか、思い出すことができるだろう」
さっきから、上から目線でえらそうなんだよね。
ちょっとぼくは、ムカムカしてきた。
「てゆーか、ヒゲのおっさん、あんたこそ誰なのさ!」
意地悪なときの美玲ちゃんを参考に、かなり無理してガラ悪く言ってみたけど、効果はてきめんだったみたい。
ヒゲのおっさんは、かなり動揺をかくせずにいた。
「お、おっさん……。ぼく、まだ十九歳なんだけど……」
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