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第3章 裏世界
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「ワイらも連れてってや!」
そのとき、とつぜんぼくらの背中に声がかかった。
ふり返ると、チャーシューと優斗くんが立っている。
ふたりとも走り回っていたみたいで、かなり肩で息をしていた。
「黒崎はん、悪かったな。ごっつ走り回ったけど、夜中にとつぜん押しかけて、お札をくれる神社なんて、どこにも見つからんかってん……。
だが、話を聞いた限りじゃ、七海はんを助けるには、このおっさんに協力すればええのやろ? なんや、後半はおっさんのひとり言が多かったけども」
優斗くんも、チャーシューに続く。
「ぼくだって、黒崎さんに足手まといと言われたままじゃ、男としてしめしがつかない。
絶対についていくよ!」
しかし美玲ちゃんは、両手でふたりを制した。
「だめよ! この人、不思議な力はありそうだけど、ちょっと頭がおかしい人なの。絶対に関わらないで!」
おっさんだの頭がおかしい人だの散々言われて、ヒゲのおっさんはかなりヘコんでいるようだ。
「勝手に話を進めないでくれ。ぼくが協力してほしいのは美玲さんだけだ。だいたい、きみらみたいな子どもに、何ができるって言うんだ」
「ぼくらはっ!」
優斗くんが胸を張って、いつになく大きな声で言った。
「友だちの七海さんを誰よりも助けたいと強く願っている友だちだ! その思いは、大人だろうが、子どもだろうが、関係ないっ!」
「よう言うた、蜂谷! ワイだって、七海はんを想う気持ちは誰にも負けんつもりや!」
チャーシューも、湯気が立つほど顔を真っ赤に染めながら叫んだ。
ふたりの決意表明に、無精髭の男は、ぶつぶつと愚痴をこぼしながらも納得したようだった。
「仕方ないな。まあ、子どもだって大人扱いすれば、大人以上に役に立つときもあるかもしれない……。だがね、このさきは、いままでのような幽霊退治ごっこじゃあないんだぜ。いいのかい?」
力強く、うなづくふたり。
「で、きみらの名前は?」
「蜂谷 優斗」
「綾小路 薫。チャーシューって呼ばれてる。おっさんは?」
「ぼくはシショウススムだ。……もう、おっさんとか言うな」
「師匠(シショウ)~?」
三人が同時に眉をしかめる。ぼくだって眉をしかめた。
このおっさん、どこまでえらそうなやつなんだ。
「ああ、ちがうちがう。数字の四に、聖徳太子の聖で、四聖。そういう名字なの」
ぼくらのいぶかしげな視線に見つめられながら、シショウは続けた。
「では、急ごうか。
これから行く世界は、とても不安定な別の世界だ。
夜明けまでに助け出さないと、萌さんの魂は、二度とこちらの世界に戻れなくなってしまう」
そのとき、とつぜんぼくらの背中に声がかかった。
ふり返ると、チャーシューと優斗くんが立っている。
ふたりとも走り回っていたみたいで、かなり肩で息をしていた。
「黒崎はん、悪かったな。ごっつ走り回ったけど、夜中にとつぜん押しかけて、お札をくれる神社なんて、どこにも見つからんかってん……。
だが、話を聞いた限りじゃ、七海はんを助けるには、このおっさんに協力すればええのやろ? なんや、後半はおっさんのひとり言が多かったけども」
優斗くんも、チャーシューに続く。
「ぼくだって、黒崎さんに足手まといと言われたままじゃ、男としてしめしがつかない。
絶対についていくよ!」
しかし美玲ちゃんは、両手でふたりを制した。
「だめよ! この人、不思議な力はありそうだけど、ちょっと頭がおかしい人なの。絶対に関わらないで!」
おっさんだの頭がおかしい人だの散々言われて、ヒゲのおっさんはかなりヘコんでいるようだ。
「勝手に話を進めないでくれ。ぼくが協力してほしいのは美玲さんだけだ。だいたい、きみらみたいな子どもに、何ができるって言うんだ」
「ぼくらはっ!」
優斗くんが胸を張って、いつになく大きな声で言った。
「友だちの七海さんを誰よりも助けたいと強く願っている友だちだ! その思いは、大人だろうが、子どもだろうが、関係ないっ!」
「よう言うた、蜂谷! ワイだって、七海はんを想う気持ちは誰にも負けんつもりや!」
チャーシューも、湯気が立つほど顔を真っ赤に染めながら叫んだ。
ふたりの決意表明に、無精髭の男は、ぶつぶつと愚痴をこぼしながらも納得したようだった。
「仕方ないな。まあ、子どもだって大人扱いすれば、大人以上に役に立つときもあるかもしれない……。だがね、このさきは、いままでのような幽霊退治ごっこじゃあないんだぜ。いいのかい?」
力強く、うなづくふたり。
「で、きみらの名前は?」
「蜂谷 優斗」
「綾小路 薫。チャーシューって呼ばれてる。おっさんは?」
「ぼくはシショウススムだ。……もう、おっさんとか言うな」
「師匠(シショウ)~?」
三人が同時に眉をしかめる。ぼくだって眉をしかめた。
このおっさん、どこまでえらそうなやつなんだ。
「ああ、ちがうちがう。数字の四に、聖徳太子の聖で、四聖。そういう名字なの」
ぼくらのいぶかしげな視線に見つめられながら、シショウは続けた。
「では、急ごうか。
これから行く世界は、とても不安定な別の世界だ。
夜明けまでに助け出さないと、萌さんの魂は、二度とこちらの世界に戻れなくなってしまう」
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