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揚羽の里へ……✨✨✨

清基……✨✨✨✨

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 揚羽の里の分家、清継の邸内。蝉の声が耳を煩わせる。
 清継の長男、清基キヨもとが部屋で刀を改めていた。
 熟した果実の甘い薫りに誘われるように細かな羽虫が数匹舞っている。

 気づくと影が天井からコウモリのようにぶら下がっていた。土蜘蛛衆だ。

「清基様……。奴等が里まで辿り着きました」
 頭目の将宗が報告した。

「フフゥン、ご苦労。ッで父上は……」
「ハイ、御前様は、途中の旅籠で逝去なされました」

「フフゥン、なるほど、ッで将宗……、お前の一存で奴等をここへ招いたのか」
「申し訳ございません。如何いかんせん、清雅殿には財宝の在り処を解き明かして貰わねばなりません」

「フフゥン、つまらんな。いっそまとめて面倒を見てくれれば良いものを……」
 刀がキラリと妖しく輝きを放った。

「ですが、一行には一人腕の立つ侍が居りまして」

「侍かァ……。聞けばあの邪鬼が遅れを取ったそうだな」
「ハイ、信乃介と申す傾奇者でございます。よもやあの邪鬼が遅れを取ろうとは……」

「フフゥン……、信乃介か」
「ハイ自称、信長の末裔とか申す侍でございます」


「フフゥン……、信長の末裔か。そいつは愉快だ。暇つぶしにはちょうど良い」
 清基の目が妖しく閃光を放った。

「うッりゃァ!」
 居合い抜きのように刀を振るった。常人には見えぬほどの瞬間業はやさだ。
 熟した果実の周りを舞っていた小さな羽虫が三匹、不意に真っ二つに斬れて畳に落ちた。それでもまだ羽根を動かそうとした。

「フフ……、信長の末裔、信乃介か。そいつは愉しみだな」
 清基は不敵にニヤリと笑みを浮かべた。


「……」
 将宗は無言で畳に落ちて死んだ羽虫を見つめた。









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