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揚羽の里へ……✨✨✨

清継邸……✨✨✨

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「ええェ……、夫婦めおとに」
 この美女と俺が。


「フフゥン、そうよ。何を驚いているの?」
「そ、そりゃァ驚きますよ。俺と貴女は、たった今、会ったばかりなんですよ」

「関係ない事だわ。今会おうが、十年前に会おうが……」
「ええェ、でも……」
「お舘様の命令は絶対なの。おいそれと私だって拒《こば》めないわ。でも良かった。良い男で」
 突然、彼女は俺に抱きついてきた。

「ううゥ……」


「待ってよ。キヨさんはお蝶さんと夫婦同然なのよ。道中だってずっと一緒だったんだから」
 傍らからお蘭が口を挟んだ。
「おいおい、お蘭!  いらぬ事を」
 慌てて信乃介がたしなめようとした。


「フフゥン、そんな事は構わないわ。側室なら何人でも……、いずれにしてもお世継ぎを産まなければ」


「ううゥ……、お世継ぎ……」
「フフ、清国様にお目通りは?」

「お目通り……」
「これからです。真姫マキ様」

「そう、じゃァ、私もあとで窺うわ。こんなみっともない格好でお舘様にお目通りするワケにはいかないでしょう」

「ハァ……」充分キレイな格好だが。
「フフゥン、当分、ゆっくりしていきなさい。時間だけは、たっぷりあるんだから」

「そ、そうですね」確かに、時間だけはある。

「まァ、でも江戸のかたからすれば退屈かもしれなくてよ」

「ン、退屈ですか……」
「いやいやァ、こんなべっぴんさんがいるなら退屈しなくて済みますよ」
 ヒデは好色そうに微笑んだ。

「ああァら、そうね」真姫マキは背後を気にした。

「ン……」
 背後で何やら不穏な動きがあった。土蜘蛛衆が見張っているはずだ。

「じゃァ、清雅様。あとで、あちらでお会いしましょ」
 意味深に笑い屋敷へ入って行った。


「いやァ、良い女だねえェ……。江戸でもあれ程の上玉には、そうそうお目にかかれないぜ」
 ヒデは尻を見つめて嫌らしく笑みを浮かべていた。

「上玉なんて言葉は控えろよ」信乃介が肘でヒデの脇腹を小突いた。

「うッぐうゥ……、悪かったよ」ヒデは小さく呻いた。









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