26 / 211
1.
26.すべからく共有されるもの
しおりを挟む
小さな王宮、チカプカムイ。
その船員用の食堂のテーブルに所狭しと料理が並べられていた。
美しく盛り付けられた色とりどりの花々、果物、焼き菓子、氷菓。
ワインやシャンパン、日本酒。
オードブルから肉料理、魚料理、パイ、寿司まで多彩だ。
「ちょっと!そのサーモン、私のよ」
「アンタはさっき鴨食べたでしょ、二羽も!」
「なんかこの薬味、苦くないか?」
「兄上、それ飾りの花じゃないですか?」
「・・・何だよ。食うもの以外皿に乗っけるなよ」
等々、家令達が大騒ぎしている。
コックテールを着た白鴎が銅鍋をしゃもじでがんがん叩いた。
「煩いぞ鳥共!聞け!いいか、時計回りに、伊勢海老のレモンバターソース、オッソブーコ、去勢鶏のバロティーヌ、子羊のノワゼットのチアン・・・お前ら!聞、け!」
家令共がご馳走を前に人の話を聞く訳もなく、それぞれが勝手に食べている。
結婚式のパーティーで出す料理の試食会らしい。
鵟にペンとファイルが回ってきた。
「これにおいしかったやつを書くの。・・・白鴎お兄様、採点って、点数?アルファベット?」
銀椋鳥がそう叫んだ。
「どうすっかな。・・・点数。十点満点で」
白鴎が銀椋鳥にペンを放り投げてきた。
銀椋鳥、彼女は今年二十二歳になる。
自分と同じように女家令の子供ではないらしい。
十七歳の時に家令になろうと思ってなったらしい変わり種。
しかも、すでにアカデミーの医局に在籍しているらしい。
家族に反対はされなかったのか聞いたが「食いっぱぐれないから、ならせて貰いなさいってママも言うし。それに大嘴お兄様が名前つけてくれたし」と嬉しそうに言う。
大嘴というのは、さっきから白鴎の隣で次から次へと飲み干す様に食べている家令だ。そうは見えないが、聖堂の司祭長らしい。
もっと味わえと白鴎にどやされている。
「司祭も神官もお坊さんもいるから、船で結婚式できるって企画を天河様が始めたんですってね」
「その後そのままクルージングでハネムーンってわけね」
「・・・そうそう。私たち、お城で設宴やってたからこういうの得意だしね」
妹弟子達に金糸雀が笑った。
「これ、うまいな。・・・しかしさ、結婚式に去勢鶏ってどうなわけだ」
「それを言うなら、おめでたい大海老をこんなでかいハサミでばきばき切って食うのも、何か縁起悪いじゃない。うまいけど」
雉鳩と緋連雀が、むしゃむしゃ食べながら点数ではなくバツをつけている。
宮廷では美貌で知られていた二人が並んでいると確かになんともはっとする物がある。
銀椋鳥が早くもデザートをあれこれと食べていた。
「デザートは、フランボワーズのスフレグラッセ、ガトー・ドゥー・ピエール・・・なあ!聞いてんのか?!」
白鴎が説明を続けていた。
「鵟は甘い物嫌い?」
鵟があまり進まないのに気付いて銀椋鳥が言った。
「・・・さっき、孔雀お姉様に、タルト・タタン頂いたばっかりでまだお腹いっぱい」
それもあるが、こういういかにも小洒落たデザートより、ここに来て以来、孔雀が食べさせてくれる焼き菓子や新鮮な果物の方が好きになっていた。
「ああ、あれおいしい。私も後で行こう。そっか、天河が来るからね」
「様、よ!銀!」
緋連雀が嗜めて、乱暴にナフキンを投げて寄越した。
鵟が驚くと、「飛んでくるのがナイフでないだけマシ」と銀椋鳥はナフキンを姉弟子に投げ返した。
「なんて小生意気なんだろ!大嘴!アンタの教育が足りないよ!」
「・・・銀椋鳥。そういうわけだからおばちゃんに合わせて」
「大嘴!」
緋連雀が、今度はナイフやフォークが飛んできそうな剣幕で怒鳴りつけた。
「・・・銀、俺が殺されそうだから、お行儀よくしなさい」
「はーい。・・・私、天河サマとアカデミーで一緒だったもんだから、ついね」
「いやー天才少女は違うなあ」
と大嘴が冷やかしたのに、銀椋鳥が頬を赤らめた。
銀椋鳥はこの兄弟子の事が好きなのか。
それに気付いて、金糸雀の方を見るとおかしそうに微笑んでいる。
「・・・燕、ビール持ってきな」
「塩辛もね。孔雀が漬けたやつが頃合よ」
金糸雀と緋連雀がそう言うと、燕が肩をすくめた。
「だからもうただの居酒屋になっちゃうって毎回言ってるのに」
結局、あちこちで酒盛りが始まっている。
「家令は十五で成人なんて言われるけど、アルコールはダメ。君はジュース飲みなさい。・・・それで、孔雀姉上から話聞いてきたって?どこまで聞いたの?」
仏法僧が淡いバラ色のぶどうのジュースの入ったグラスを手渡してくれた。
なんとも優し気な様子で、議員から家令になったこれまた変異種。
二十八歳からという遅いスタートだったが、大変な努力家で、次の総家令候補らしい。
不用意に突けば割れるような空気いっぱいの風船とか、癇癪玉のように種が弾け飛ぶ鳳仙花の実のような家令達の中では珍しい物腰の柔らかさ。
「はい。ええと。・・・孔雀お姉様が、お城に上がったところまでです」
仏法僧以外の家令達が腹を抱えて笑いだした。
「あのコント、思い出すわね!」
「ありゃひどかったな!」
何事かと驚いていると、仏法僧が悲しそうな顔をしていた。
鵟が困惑していると、見かねた大嘴が口を開いた。
「あー、新人は知らないだろうけど。家令の情報というのはすべからく共有されるもんだからね。教えてあげよう」
思わせぶりに緋連雀が笑った。
「総家令と皇帝は一心同体。皇帝が望めば、・・・まあ、アレね、アレよ。そういうことも想定内なわけよ」
「でも、その時、孔雀お姉様は十五歳でしょ・・・」
鵟が驚いて顔を上げた。
「まあ、平たくいうと家令はなんでもありよね。家令は十五で成人だしねえ。|琥珀様は女皇帝でらしたわけだし、白鷹お姉様だって女でしょ」
金糸雀が苦笑した。
家令が節操なし、淫らと言われる所以だ。
「孔雀は真鶴お姉様がいろいろと、まあいろいろと。指南しているはずだったの。だから、私達、翡翠様が面白半分に孔雀をお召しになった時も別に何とも思わなくて」
「孔雀だって、呼ばれたから行ってきますなんて、黄鶲お姉様と手を繋《つな》いで元気に行ったしね」
思い出したらしく、また笑い出す。
「あ、ここで重要なのは。お召しには家令が誰か控えているという悪趣味な習慣があるの。更に言えば、黄鶲お姉様を指名したのは梟お兄様。・・・何でか?」
緋連雀がわざとらしく雉鳩に聞いた。
「大昔、陛下と黄鶲姉上が付き合ってたことがあるからだな」
「そうそう。悪趣味!」
「嫌がらせよね!」
家令達がまた笑い出す。
悪趣味、嫌がらせ。
「・・・では、新しい妹弟子にお聞かせしましょうか。総家令の初仕事。皇帝と若き総家令の初夜の事を」
緋連雀が燕に焼酎を注がせながら艶っぽく笑った。
この美貌で見つめられると心拍数が跳ね上がる。
どうしよう、とんでもない話が始まった、と鵟は絶句した。
その船員用の食堂のテーブルに所狭しと料理が並べられていた。
美しく盛り付けられた色とりどりの花々、果物、焼き菓子、氷菓。
ワインやシャンパン、日本酒。
オードブルから肉料理、魚料理、パイ、寿司まで多彩だ。
「ちょっと!そのサーモン、私のよ」
「アンタはさっき鴨食べたでしょ、二羽も!」
「なんかこの薬味、苦くないか?」
「兄上、それ飾りの花じゃないですか?」
「・・・何だよ。食うもの以外皿に乗っけるなよ」
等々、家令達が大騒ぎしている。
コックテールを着た白鴎が銅鍋をしゃもじでがんがん叩いた。
「煩いぞ鳥共!聞け!いいか、時計回りに、伊勢海老のレモンバターソース、オッソブーコ、去勢鶏のバロティーヌ、子羊のノワゼットのチアン・・・お前ら!聞、け!」
家令共がご馳走を前に人の話を聞く訳もなく、それぞれが勝手に食べている。
結婚式のパーティーで出す料理の試食会らしい。
鵟にペンとファイルが回ってきた。
「これにおいしかったやつを書くの。・・・白鴎お兄様、採点って、点数?アルファベット?」
銀椋鳥がそう叫んだ。
「どうすっかな。・・・点数。十点満点で」
白鴎が銀椋鳥にペンを放り投げてきた。
銀椋鳥、彼女は今年二十二歳になる。
自分と同じように女家令の子供ではないらしい。
十七歳の時に家令になろうと思ってなったらしい変わり種。
しかも、すでにアカデミーの医局に在籍しているらしい。
家族に反対はされなかったのか聞いたが「食いっぱぐれないから、ならせて貰いなさいってママも言うし。それに大嘴お兄様が名前つけてくれたし」と嬉しそうに言う。
大嘴というのは、さっきから白鴎の隣で次から次へと飲み干す様に食べている家令だ。そうは見えないが、聖堂の司祭長らしい。
もっと味わえと白鴎にどやされている。
「司祭も神官もお坊さんもいるから、船で結婚式できるって企画を天河様が始めたんですってね」
「その後そのままクルージングでハネムーンってわけね」
「・・・そうそう。私たち、お城で設宴やってたからこういうの得意だしね」
妹弟子達に金糸雀が笑った。
「これ、うまいな。・・・しかしさ、結婚式に去勢鶏ってどうなわけだ」
「それを言うなら、おめでたい大海老をこんなでかいハサミでばきばき切って食うのも、何か縁起悪いじゃない。うまいけど」
雉鳩と緋連雀が、むしゃむしゃ食べながら点数ではなくバツをつけている。
宮廷では美貌で知られていた二人が並んでいると確かになんともはっとする物がある。
銀椋鳥が早くもデザートをあれこれと食べていた。
「デザートは、フランボワーズのスフレグラッセ、ガトー・ドゥー・ピエール・・・なあ!聞いてんのか?!」
白鴎が説明を続けていた。
「鵟は甘い物嫌い?」
鵟があまり進まないのに気付いて銀椋鳥が言った。
「・・・さっき、孔雀お姉様に、タルト・タタン頂いたばっかりでまだお腹いっぱい」
それもあるが、こういういかにも小洒落たデザートより、ここに来て以来、孔雀が食べさせてくれる焼き菓子や新鮮な果物の方が好きになっていた。
「ああ、あれおいしい。私も後で行こう。そっか、天河が来るからね」
「様、よ!銀!」
緋連雀が嗜めて、乱暴にナフキンを投げて寄越した。
鵟が驚くと、「飛んでくるのがナイフでないだけマシ」と銀椋鳥はナフキンを姉弟子に投げ返した。
「なんて小生意気なんだろ!大嘴!アンタの教育が足りないよ!」
「・・・銀椋鳥。そういうわけだからおばちゃんに合わせて」
「大嘴!」
緋連雀が、今度はナイフやフォークが飛んできそうな剣幕で怒鳴りつけた。
「・・・銀、俺が殺されそうだから、お行儀よくしなさい」
「はーい。・・・私、天河サマとアカデミーで一緒だったもんだから、ついね」
「いやー天才少女は違うなあ」
と大嘴が冷やかしたのに、銀椋鳥が頬を赤らめた。
銀椋鳥はこの兄弟子の事が好きなのか。
それに気付いて、金糸雀の方を見るとおかしそうに微笑んでいる。
「・・・燕、ビール持ってきな」
「塩辛もね。孔雀が漬けたやつが頃合よ」
金糸雀と緋連雀がそう言うと、燕が肩をすくめた。
「だからもうただの居酒屋になっちゃうって毎回言ってるのに」
結局、あちこちで酒盛りが始まっている。
「家令は十五で成人なんて言われるけど、アルコールはダメ。君はジュース飲みなさい。・・・それで、孔雀姉上から話聞いてきたって?どこまで聞いたの?」
仏法僧が淡いバラ色のぶどうのジュースの入ったグラスを手渡してくれた。
なんとも優し気な様子で、議員から家令になったこれまた変異種。
二十八歳からという遅いスタートだったが、大変な努力家で、次の総家令候補らしい。
不用意に突けば割れるような空気いっぱいの風船とか、癇癪玉のように種が弾け飛ぶ鳳仙花の実のような家令達の中では珍しい物腰の柔らかさ。
「はい。ええと。・・・孔雀お姉様が、お城に上がったところまでです」
仏法僧以外の家令達が腹を抱えて笑いだした。
「あのコント、思い出すわね!」
「ありゃひどかったな!」
何事かと驚いていると、仏法僧が悲しそうな顔をしていた。
鵟が困惑していると、見かねた大嘴が口を開いた。
「あー、新人は知らないだろうけど。家令の情報というのはすべからく共有されるもんだからね。教えてあげよう」
思わせぶりに緋連雀が笑った。
「総家令と皇帝は一心同体。皇帝が望めば、・・・まあ、アレね、アレよ。そういうことも想定内なわけよ」
「でも、その時、孔雀お姉様は十五歳でしょ・・・」
鵟が驚いて顔を上げた。
「まあ、平たくいうと家令はなんでもありよね。家令は十五で成人だしねえ。|琥珀様は女皇帝でらしたわけだし、白鷹お姉様だって女でしょ」
金糸雀が苦笑した。
家令が節操なし、淫らと言われる所以だ。
「孔雀は真鶴お姉様がいろいろと、まあいろいろと。指南しているはずだったの。だから、私達、翡翠様が面白半分に孔雀をお召しになった時も別に何とも思わなくて」
「孔雀だって、呼ばれたから行ってきますなんて、黄鶲お姉様と手を繋《つな》いで元気に行ったしね」
思い出したらしく、また笑い出す。
「あ、ここで重要なのは。お召しには家令が誰か控えているという悪趣味な習慣があるの。更に言えば、黄鶲お姉様を指名したのは梟お兄様。・・・何でか?」
緋連雀がわざとらしく雉鳩に聞いた。
「大昔、陛下と黄鶲姉上が付き合ってたことがあるからだな」
「そうそう。悪趣味!」
「嫌がらせよね!」
家令達がまた笑い出す。
悪趣味、嫌がらせ。
「・・・では、新しい妹弟子にお聞かせしましょうか。総家令の初仕事。皇帝と若き総家令の初夜の事を」
緋連雀が燕に焼酎を注がせながら艶っぽく笑った。
この美貌で見つめられると心拍数が跳ね上がる。
どうしよう、とんでもない話が始まった、と鵟は絶句した。
2
あなたにおすすめの小説
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる