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ジョウタロとハルタロ(1)
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玄関のチャイムがなる。多分宅配便だ。昨日即売会会場から発送した在庫だ。
ドアを開けると台車に積んだ大量の段ボール。宅配のお兄さんは上段の段ボールを二つ渡してきた。伝票に印鑑を押して受け取る。
後ろに見えた大量の段ボール。印刷会社のロゴが見えた。同じマンションに同人をやって入る人がいるのか。
段ボールを部屋にしまい込もうと思ったら、そのうちの一つが覚えのない印刷会社の段ボールだった。会場から送った段ボールは二つ。伝票を確認すると隣りの角部屋宛ての荷物だった。段ボールが沢山で入れ替わってしまったのか。
箱に貼ってある特長のあるガムテープは魔法少女ゆりりんのものだ。ゆりりんはアイドル3Kと同じデベロッパーが出しているソシャゲだ。
この段ボールとテープの組み合わせはあの素敵なジョウタロ本を出している巳年屋のサークルで見かけていた。もしかしてこの段ボールの主は巳年屋さん?
俺は部屋に戻ると急いでジョウタロの同人誌を開いた。段ボールと同じ印刷会社で可能性が高まる。
隣りの人は廊下で時々すれ違ったことがあった。オタク風ではない眼鏡姿の男性だった気がする。
人違いかもしれない、けど、とりあえず段ボールを届けに行くことにした。
ピンポンとチャイムが室内で鳴り響く。怪しまれて出てきてくれないかも。なかなか出てこないので部屋に戻ろうとしたところ、ドアが少し開いた。
「はい? 何でしょう 」
中から警戒しながら顔を出てきたのは眼鏡を掛けた俺より年上の男の人。アラサーくらいか。
「すみません、201のものですが、さっきそちらの荷物が間違えて届いたみたいで…。うちの段ボールも間違えて届いていないでしょうか?」
俺が手にしている段ボールを見て状況を理解したようだ。
「あ、ありがとう。そこに置いて、おいてください。今、見てきます」
しばらくすると見覚えのある段ボールを抱えてきた。
「これかな」
「それです。ありがとうございます」
渡されたいかにも同人くさい俺の段ボール。お互い同人野郎ってばれてしまった。
「こんなこと、またあったら困っちゃいますよね」
「ホントに」
俺の距離感を間違えた世間話に面倒がらずに対応し、照れくさそうにしている様子に親近感を抱いてしまう。だからこそなのか、普段ならしないであろう、踏み込みをしてしまった。
「失礼ですが、巳年屋さんですか?」
否定も警戒もされなかったので、俺は受け取ったばかりの段ボールをその場で開けて、ストック用に残していたジョウタロ本を渡した。
「俺もジョウタロが好き過ぎて、本を出してしまいました。良かったら、もらってください」
その男性に強引に本を押し付けて、部屋を後にした。
それから俺の生活にほとんど変化はない。講義を受け帰ってきたら原稿をする。
変わったことといえば、ジョウタロの絵を鳥にあげると巳年屋さんがいいねを押してくれ、リツイートをしてくれるようになった。
本の奥付をみて、いつの間にか俺のアカウントをフォロバしてくれたらしい。俺のジョウタロ本を見てくれたんだ。なんだか嬉しい。
万単位のフォロワーを持つ巳年屋さんのリツイートで、俺のジョウタロ絵のいいねやリツイート数が伸びていく。俺自身のフォロワーも増えた。皆、本当にジョウタロが好きなんだな。俺と一緒だ。
冬コミは受かるか分からないけれど、ジョウタロ本の再版と新刊を出そうと決めた。カットはアユメで申し込みをしていたから、ジョウタロを反映出来なくて残念に思えた。
新刊について、ジョウタロをどんな風に見せるか悩んでいた。
考えていたものは3つ。イベント会社への枕営業もの、学校の教師と絡ませる学園もの、童話もの。浮かんだイメージは、どれも自分好みで、好きすぎて選べなかった。鳥にイメージイラストを付けてアンケートをしてみた。
速攻付くリプライ。
[絶対学園一択。しちょり君のジョウタロをセーラー服でみたい!]
よく見ると巳年屋さんからだった。残念ながらアンケートは童話ものが1位で、新刊はそれがテーマになった。
俺は巳年屋さんにDMでフォロバやリツ、リプのお礼を言って、セーラー服の良さを語った。
この時から鳥上で巳年屋さんと絡むようになる。
くだらない事にはくだらない事で、エロにはエロいリプをくれた。
巳年屋さんは徹夜明けなのか時々ヒャッハーと訳の分からないDMをくれることがあったが、俺は好意的に解釈して返信をした。
廊下で見かけると恥ずかしそう頭を下げて挨拶する巳年屋さん。鳥のハイテンションとは違うリアル。普段の巳年屋さんは落ち着いていて、普通のサラリーマンをしていてもおかしくなさそうに見えた。
巳年屋さんはメインの同人の他に商業イラストやエロ系商業誌でも時々描いているらしい。マニア向けのwikiにも項目があって凄いな。
ツイートで聞いた新刊の中身アンケートはジョウタロの童話ものが1位だった。ヘンゼルとグレーテルを題材にして、俺はタブレットに妄想を描き出した。
*
光が射しこむことのない闇が奥まったような部屋。扉が開いて一人の男が入ってきた。男はわら敷きのベッドに横たわるジョウタロの粗末なスカートをいきなりまくり上げ、脚を開かせた。
手に唾液を吐き出し、その手を奥まった窄みに乱暴に差し入れる。前の客の吐き出した体液が指の動きをスムーズにさせていた。
前後に出し入れする指に合わせくちゃくちゃ響く水音。男は頃合いを見てジョウタロの穴に自分のイキった性器を押し込んだ。
「うっ……、うっ……」
乱雑な扱いに苦しげなジョウタロ。男はそんなジョウタロに構わず、一方的に腰を動かし始めた。
さわさわいう衣擦れの音。時々混じる尻を叩くような乾いた音。部屋の外に控えたハルタロには、風の音に混じりジョウタロのすすり泣く声が聞こえた気がした。
細い骨張った身体を後ろから組みしき、激しく揺さぶる。極まった男は上体を振るわせジョウタロの中に欲望を吐き出した。
男を出口で待ち構える父と母。彼らの商品はジョウタロで、訪う男たちからは料金を徴収していた。ジョウタロの1回分の行為と引き換えに彼らが手にする金は家族全員のスープ代にも満たなかった。
一家は元々貧しい小作農だった。特に今年は天候不順でこの辺りで穫れる穀物は不作。家には食べるものが殆ど無く、木の根や皮、草をむしり、森に棲まう小動物を捕まえてしのいでいた。
長男のハルタロは力仕事に役立ちそうながっちりとした体躯ゆえに大切にされていた。次男のジョウタロはチビで痩せっぽっち。荒々しい野良仕事には到底役立ちそうになかった。
役立たないのなら役立つようにすればいい。その判断のもと、髪を伸ばしスカートを強要され、色を売らされるようになった。
当時は女色は婚姻以外には許されていなかった。スカートを履いたジョウタロは、そんな男たちの性の受け皿になっていた。
ハルタロが部屋に入る。
「……兄さん」
「今のが最後の客だ」
兄の言葉を聞いたジョウタロは、ほっとした表情を浮かべていた。
「脚を開いて」
ジョウタロは布をまくり上げて脚を開く。ハルタロはジョウタロの奥の窄みに顔を近づけ、指で中の精をかき出し、尻周りを濡れた布で拭った。
精液を放置すると異臭がして腹痛を起こしてしまう。明日も客を取る以上、最低限の手入れは必要だ。
ハルタロのかき出す指が、ジョウタロの性器裏のよいところに当たる。
「あっ…」
ジョウタロが客相手では見せない艶めいた声を上げた。ハルタロはジョウタロの中の膨らんだあたりをぐりぐりと擦る。
「ああっ、兄さん、そこ気持ちいいよぅっ」
ジョウタロは上体をのけぞらせ悶えた。商売では出番のないジョウタロの性器は立ち上がり揺れている。ハルタロは中を指で擦りながら、ジョウタロの濡れた性器擦り立てた。
「ああっ、あ、ああっ…」
ジョウタロは甘い声を上げ続けている。目の前の揺れる弟のピンク色の性器。ハルタロの目には美味しそうに見えた。
口に咥えてみる。しょっぱくて男臭い味。含んでいると気にならなくなる。弟の甘い嬌声。段々味が濃くなったと思ったら口内でドクドクと吐き出されていた。その味はえぐみがあって、でも甘いような気がした。
*
お客を取った後のジョウタロの世話は、ハルタロの役目だ。一方的で辛い奉仕を行った弟をねぎらうため優しく愛撫する。あれから後始末後の口淫は毎日のルーティンになった。
首筋から唇を落としていく。ジョウタロは小刻みに震えている。胸をあらわにさせて突起を舌先で舐め、ちうっと吸いあげた。反対側も指でくにくにとつまみ上げる。
「はぁ。それをされると、なんだか……んっ。変な感じがするよ。兄さん」
頬が赤らみ目を潤ませているジョウタロ。ハルタロだけに見せる艶めいた表情。これを知ってからハルタロはジョウタロを蕩けさせることに夢中になっていた。
「おまえはただ、感じてればいいんだ。俺が気持ち良くしてやるから」
胸の愛撫だけでジョウタロの性器はすでに立ち上がっていた。中を擦りながら客の体液をかきだし、指の腹で性器の裏のしこりをくりくりと押しながら擦る。
「それっいいっ。んぁ、気持ちいい…ああっ」
ジョウタロの性器は透明の涙を流し、打ち震えている。涙を舌で舐めとり唇や舌先で愛撫をする。
「あ、あぅ、ああっ―――」
中を擦りながら上下にじゅるじゅるしゃぶると、ジョウタロは上半身をのけぞらせハルタロの口内でビクビクと精をこぼした。
全身が汗ばみ、はぁはぁと息をつくジョウタロ。落ち着くと粗末なズボンの下ではち切れそうになっているハルタロに気がついた。そして、下半身にそっと触れる。ハルタロは刺激にビクンと肩を揺らした。
「……兄さん」
まつげを震わし濡れた目で見上げる弟に、腰奥にゾクリと感じるものがある。ハルタロは慌ててジョウタロから身を離した。それを見たジョウタロは悲しそうな顔になる。
「…俺が、淫売だから?」
「違う。…兄弟でしてはダメなんだ」
兄弟間の性行為は教会に禁止されていた。そんな言い訳を残し、ハルタロは吐息で温んだ部屋にジョウタロを一人置いて、外にでた。
ひんやりとした夜の空気。すぐそばの森から暴れ鳥の啼き声がする。分厚い雲で覆われているのか普段天高く光る星は見えない。
ハルタロは家の壁を背に、先ほどの光景を反芻していた。痩せっぽっちであばらが浮いた細い身体。汗ばみ上気する青白い肌には、ほつれた髪が貼りついていた。ジョウタロは潤んだ目や濡れた唇、全身でハルタロを誘っていた。
ジョウタロのヒクつくぽっかりと口を開いた孔に入れたかった。いつも触れている温かいあの孔に入れたらきゅうっと締めつけられたらさぞ気持ち良いだろう。
性器で快楽のツボを擦られ、気持ち良さげに身体をくねらせ喘ぐジョウタロの姿が浮かんだ。
ハルタロは夢中で自分の性器を擦り立てていた。本当は自慰すら教会に禁止されている。ただ、罰は兄弟間の性行為より自慰の方がはるかに軽かった。
気持ち良さそうに上気するジョウタロの姿を思い浮かべていると、いつのまにかハルタロの手は体液でくっちゃりと濡れていた。
*
村に可憐で可愛らしい男の娘がいると噂になっていた。ジョウタロのことだ。噂は村外にも広まり、ジョウタロを求める客はさらに増え始めた。
男達の列を飲み込んだジョウタロは、仕事終わりにはぐったりするようになっていた。ハルタロによる秘密の身繕いも望まなくなっていた。
ジョウタロの噂は周り回って、領主の耳に入った。領主はスナッフの愛好者と噂があり、領内で行方不明になる子どもや若い娘は領主にさらわれたのではないかと黒い噂は絶えなかった。
館に呼ばれ五体満足のまま戻ってきたものはいない、とも噂されていた。親はジョウタロを派遣する対価として銀貨1枚を前金で受け取っていた。
働き詰めの両親に代わって幼い弟の面倒を見てきたのはハルタロだ。ジョウタロが言葉を覚え、最初に呼んだ名もハルタロの名前だった。
可愛い潤んだ瞳でみつめ、ハルタロのことを頼りにするジョウタロ。弟が快楽のために使い捨てにされ、切りぎざまれるのはハルタロには許せなかった。
ハルタロはジョウタロの仕事後の身繕いをする振りをしてジョウタロを外に連れ出した。街の方に向かうとすぐに見つかり連れ戻される。皆が忌み嫌う深い森の奥に入るほかに選択肢はないように思えた。
「痛っ、兄さん足が痛い」
深い森の奥まで進んだとき、ジョウタロが脚が痛いと言いだした。倒木に座らせ様子を見るが、暗くて詳細がわからない。木靴を脱がせ足首を掴むと、ぬるっとしたものに触れた。客たちに注ぎ込まれた精が脚を伝って落ちてきたのだった。
風に散らされるむうっとする雄の臭い。これだと獣が追ってきたら居場所がすぐにばれてしまう。洗うところと寝れそうな場所を探さねばならない。
村とは逆の遠方にちらりと灯りが見えた気がした。ハルタロは体重の軽いジョウタロを背負って、さらに森の奥へ進んでいった。
ドアを開けると台車に積んだ大量の段ボール。宅配のお兄さんは上段の段ボールを二つ渡してきた。伝票に印鑑を押して受け取る。
後ろに見えた大量の段ボール。印刷会社のロゴが見えた。同じマンションに同人をやって入る人がいるのか。
段ボールを部屋にしまい込もうと思ったら、そのうちの一つが覚えのない印刷会社の段ボールだった。会場から送った段ボールは二つ。伝票を確認すると隣りの角部屋宛ての荷物だった。段ボールが沢山で入れ替わってしまったのか。
箱に貼ってある特長のあるガムテープは魔法少女ゆりりんのものだ。ゆりりんはアイドル3Kと同じデベロッパーが出しているソシャゲだ。
この段ボールとテープの組み合わせはあの素敵なジョウタロ本を出している巳年屋のサークルで見かけていた。もしかしてこの段ボールの主は巳年屋さん?
俺は部屋に戻ると急いでジョウタロの同人誌を開いた。段ボールと同じ印刷会社で可能性が高まる。
隣りの人は廊下で時々すれ違ったことがあった。オタク風ではない眼鏡姿の男性だった気がする。
人違いかもしれない、けど、とりあえず段ボールを届けに行くことにした。
ピンポンとチャイムが室内で鳴り響く。怪しまれて出てきてくれないかも。なかなか出てこないので部屋に戻ろうとしたところ、ドアが少し開いた。
「はい? 何でしょう 」
中から警戒しながら顔を出てきたのは眼鏡を掛けた俺より年上の男の人。アラサーくらいか。
「すみません、201のものですが、さっきそちらの荷物が間違えて届いたみたいで…。うちの段ボールも間違えて届いていないでしょうか?」
俺が手にしている段ボールを見て状況を理解したようだ。
「あ、ありがとう。そこに置いて、おいてください。今、見てきます」
しばらくすると見覚えのある段ボールを抱えてきた。
「これかな」
「それです。ありがとうございます」
渡されたいかにも同人くさい俺の段ボール。お互い同人野郎ってばれてしまった。
「こんなこと、またあったら困っちゃいますよね」
「ホントに」
俺の距離感を間違えた世間話に面倒がらずに対応し、照れくさそうにしている様子に親近感を抱いてしまう。だからこそなのか、普段ならしないであろう、踏み込みをしてしまった。
「失礼ですが、巳年屋さんですか?」
否定も警戒もされなかったので、俺は受け取ったばかりの段ボールをその場で開けて、ストック用に残していたジョウタロ本を渡した。
「俺もジョウタロが好き過ぎて、本を出してしまいました。良かったら、もらってください」
その男性に強引に本を押し付けて、部屋を後にした。
それから俺の生活にほとんど変化はない。講義を受け帰ってきたら原稿をする。
変わったことといえば、ジョウタロの絵を鳥にあげると巳年屋さんがいいねを押してくれ、リツイートをしてくれるようになった。
本の奥付をみて、いつの間にか俺のアカウントをフォロバしてくれたらしい。俺のジョウタロ本を見てくれたんだ。なんだか嬉しい。
万単位のフォロワーを持つ巳年屋さんのリツイートで、俺のジョウタロ絵のいいねやリツイート数が伸びていく。俺自身のフォロワーも増えた。皆、本当にジョウタロが好きなんだな。俺と一緒だ。
冬コミは受かるか分からないけれど、ジョウタロ本の再版と新刊を出そうと決めた。カットはアユメで申し込みをしていたから、ジョウタロを反映出来なくて残念に思えた。
新刊について、ジョウタロをどんな風に見せるか悩んでいた。
考えていたものは3つ。イベント会社への枕営業もの、学校の教師と絡ませる学園もの、童話もの。浮かんだイメージは、どれも自分好みで、好きすぎて選べなかった。鳥にイメージイラストを付けてアンケートをしてみた。
速攻付くリプライ。
[絶対学園一択。しちょり君のジョウタロをセーラー服でみたい!]
よく見ると巳年屋さんからだった。残念ながらアンケートは童話ものが1位で、新刊はそれがテーマになった。
俺は巳年屋さんにDMでフォロバやリツ、リプのお礼を言って、セーラー服の良さを語った。
この時から鳥上で巳年屋さんと絡むようになる。
くだらない事にはくだらない事で、エロにはエロいリプをくれた。
巳年屋さんは徹夜明けなのか時々ヒャッハーと訳の分からないDMをくれることがあったが、俺は好意的に解釈して返信をした。
廊下で見かけると恥ずかしそう頭を下げて挨拶する巳年屋さん。鳥のハイテンションとは違うリアル。普段の巳年屋さんは落ち着いていて、普通のサラリーマンをしていてもおかしくなさそうに見えた。
巳年屋さんはメインの同人の他に商業イラストやエロ系商業誌でも時々描いているらしい。マニア向けのwikiにも項目があって凄いな。
ツイートで聞いた新刊の中身アンケートはジョウタロの童話ものが1位だった。ヘンゼルとグレーテルを題材にして、俺はタブレットに妄想を描き出した。
*
光が射しこむことのない闇が奥まったような部屋。扉が開いて一人の男が入ってきた。男はわら敷きのベッドに横たわるジョウタロの粗末なスカートをいきなりまくり上げ、脚を開かせた。
手に唾液を吐き出し、その手を奥まった窄みに乱暴に差し入れる。前の客の吐き出した体液が指の動きをスムーズにさせていた。
前後に出し入れする指に合わせくちゃくちゃ響く水音。男は頃合いを見てジョウタロの穴に自分のイキった性器を押し込んだ。
「うっ……、うっ……」
乱雑な扱いに苦しげなジョウタロ。男はそんなジョウタロに構わず、一方的に腰を動かし始めた。
さわさわいう衣擦れの音。時々混じる尻を叩くような乾いた音。部屋の外に控えたハルタロには、風の音に混じりジョウタロのすすり泣く声が聞こえた気がした。
細い骨張った身体を後ろから組みしき、激しく揺さぶる。極まった男は上体を振るわせジョウタロの中に欲望を吐き出した。
男を出口で待ち構える父と母。彼らの商品はジョウタロで、訪う男たちからは料金を徴収していた。ジョウタロの1回分の行為と引き換えに彼らが手にする金は家族全員のスープ代にも満たなかった。
一家は元々貧しい小作農だった。特に今年は天候不順でこの辺りで穫れる穀物は不作。家には食べるものが殆ど無く、木の根や皮、草をむしり、森に棲まう小動物を捕まえてしのいでいた。
長男のハルタロは力仕事に役立ちそうながっちりとした体躯ゆえに大切にされていた。次男のジョウタロはチビで痩せっぽっち。荒々しい野良仕事には到底役立ちそうになかった。
役立たないのなら役立つようにすればいい。その判断のもと、髪を伸ばしスカートを強要され、色を売らされるようになった。
当時は女色は婚姻以外には許されていなかった。スカートを履いたジョウタロは、そんな男たちの性の受け皿になっていた。
ハルタロが部屋に入る。
「……兄さん」
「今のが最後の客だ」
兄の言葉を聞いたジョウタロは、ほっとした表情を浮かべていた。
「脚を開いて」
ジョウタロは布をまくり上げて脚を開く。ハルタロはジョウタロの奥の窄みに顔を近づけ、指で中の精をかき出し、尻周りを濡れた布で拭った。
精液を放置すると異臭がして腹痛を起こしてしまう。明日も客を取る以上、最低限の手入れは必要だ。
ハルタロのかき出す指が、ジョウタロの性器裏のよいところに当たる。
「あっ…」
ジョウタロが客相手では見せない艶めいた声を上げた。ハルタロはジョウタロの中の膨らんだあたりをぐりぐりと擦る。
「ああっ、兄さん、そこ気持ちいいよぅっ」
ジョウタロは上体をのけぞらせ悶えた。商売では出番のないジョウタロの性器は立ち上がり揺れている。ハルタロは中を指で擦りながら、ジョウタロの濡れた性器擦り立てた。
「ああっ、あ、ああっ…」
ジョウタロは甘い声を上げ続けている。目の前の揺れる弟のピンク色の性器。ハルタロの目には美味しそうに見えた。
口に咥えてみる。しょっぱくて男臭い味。含んでいると気にならなくなる。弟の甘い嬌声。段々味が濃くなったと思ったら口内でドクドクと吐き出されていた。その味はえぐみがあって、でも甘いような気がした。
*
お客を取った後のジョウタロの世話は、ハルタロの役目だ。一方的で辛い奉仕を行った弟をねぎらうため優しく愛撫する。あれから後始末後の口淫は毎日のルーティンになった。
首筋から唇を落としていく。ジョウタロは小刻みに震えている。胸をあらわにさせて突起を舌先で舐め、ちうっと吸いあげた。反対側も指でくにくにとつまみ上げる。
「はぁ。それをされると、なんだか……んっ。変な感じがするよ。兄さん」
頬が赤らみ目を潤ませているジョウタロ。ハルタロだけに見せる艶めいた表情。これを知ってからハルタロはジョウタロを蕩けさせることに夢中になっていた。
「おまえはただ、感じてればいいんだ。俺が気持ち良くしてやるから」
胸の愛撫だけでジョウタロの性器はすでに立ち上がっていた。中を擦りながら客の体液をかきだし、指の腹で性器の裏のしこりをくりくりと押しながら擦る。
「それっいいっ。んぁ、気持ちいい…ああっ」
ジョウタロの性器は透明の涙を流し、打ち震えている。涙を舌で舐めとり唇や舌先で愛撫をする。
「あ、あぅ、ああっ―――」
中を擦りながら上下にじゅるじゅるしゃぶると、ジョウタロは上半身をのけぞらせハルタロの口内でビクビクと精をこぼした。
全身が汗ばみ、はぁはぁと息をつくジョウタロ。落ち着くと粗末なズボンの下ではち切れそうになっているハルタロに気がついた。そして、下半身にそっと触れる。ハルタロは刺激にビクンと肩を揺らした。
「……兄さん」
まつげを震わし濡れた目で見上げる弟に、腰奥にゾクリと感じるものがある。ハルタロは慌ててジョウタロから身を離した。それを見たジョウタロは悲しそうな顔になる。
「…俺が、淫売だから?」
「違う。…兄弟でしてはダメなんだ」
兄弟間の性行為は教会に禁止されていた。そんな言い訳を残し、ハルタロは吐息で温んだ部屋にジョウタロを一人置いて、外にでた。
ひんやりとした夜の空気。すぐそばの森から暴れ鳥の啼き声がする。分厚い雲で覆われているのか普段天高く光る星は見えない。
ハルタロは家の壁を背に、先ほどの光景を反芻していた。痩せっぽっちであばらが浮いた細い身体。汗ばみ上気する青白い肌には、ほつれた髪が貼りついていた。ジョウタロは潤んだ目や濡れた唇、全身でハルタロを誘っていた。
ジョウタロのヒクつくぽっかりと口を開いた孔に入れたかった。いつも触れている温かいあの孔に入れたらきゅうっと締めつけられたらさぞ気持ち良いだろう。
性器で快楽のツボを擦られ、気持ち良さげに身体をくねらせ喘ぐジョウタロの姿が浮かんだ。
ハルタロは夢中で自分の性器を擦り立てていた。本当は自慰すら教会に禁止されている。ただ、罰は兄弟間の性行為より自慰の方がはるかに軽かった。
気持ち良さそうに上気するジョウタロの姿を思い浮かべていると、いつのまにかハルタロの手は体液でくっちゃりと濡れていた。
*
村に可憐で可愛らしい男の娘がいると噂になっていた。ジョウタロのことだ。噂は村外にも広まり、ジョウタロを求める客はさらに増え始めた。
男達の列を飲み込んだジョウタロは、仕事終わりにはぐったりするようになっていた。ハルタロによる秘密の身繕いも望まなくなっていた。
ジョウタロの噂は周り回って、領主の耳に入った。領主はスナッフの愛好者と噂があり、領内で行方不明になる子どもや若い娘は領主にさらわれたのではないかと黒い噂は絶えなかった。
館に呼ばれ五体満足のまま戻ってきたものはいない、とも噂されていた。親はジョウタロを派遣する対価として銀貨1枚を前金で受け取っていた。
働き詰めの両親に代わって幼い弟の面倒を見てきたのはハルタロだ。ジョウタロが言葉を覚え、最初に呼んだ名もハルタロの名前だった。
可愛い潤んだ瞳でみつめ、ハルタロのことを頼りにするジョウタロ。弟が快楽のために使い捨てにされ、切りぎざまれるのはハルタロには許せなかった。
ハルタロはジョウタロの仕事後の身繕いをする振りをしてジョウタロを外に連れ出した。街の方に向かうとすぐに見つかり連れ戻される。皆が忌み嫌う深い森の奥に入るほかに選択肢はないように思えた。
「痛っ、兄さん足が痛い」
深い森の奥まで進んだとき、ジョウタロが脚が痛いと言いだした。倒木に座らせ様子を見るが、暗くて詳細がわからない。木靴を脱がせ足首を掴むと、ぬるっとしたものに触れた。客たちに注ぎ込まれた精が脚を伝って落ちてきたのだった。
風に散らされるむうっとする雄の臭い。これだと獣が追ってきたら居場所がすぐにばれてしまう。洗うところと寝れそうな場所を探さねばならない。
村とは逆の遠方にちらりと灯りが見えた気がした。ハルタロは体重の軽いジョウタロを背負って、さらに森の奥へ進んでいった。
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