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冒険者協会
第五話
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ったく、まさかあんな事になるとは思いもしなかったぜ。誰だって、命を奪うのに抵抗がないわけがない。それが初めてなら尚更だろ? だからアイリスには驚かされた。いや、初めて故の反動だとしたら納得が出来る、ストレスによるものか? 過去に戦争において死亡した敵兵を、何度も何度も突く兵士を見たことがある。まるで壊れた鳩時計のようだな? あぁ、まぁ確かにあの瞬間、あいつの何かが、何かあいつをあいつたらしめる何かが壊れたんだろうよ。
あの二人に初めて声をかけた時に抱いた印象は、アイリスには子供がそのまま大人になっちまった、って印象だ。良くも悪くも、だ。二十年も生きているはずなのに、まるで純粋な雰囲気には何かが欠如しているようにも感じる。
あのクソビッチにはこいつをキレさせたらやばい、てな感じであたしの危険察知センサーが、ビービーと警報をけたたましく鳴り響かせてやがる。それほどにあいつは危ない。だが信頼に足る奴なのは間違いねぇだろうな。アイリスといる時だけだがなぁ。
さて、協会に報告に行かなきゃならないが、気が重いな。生死問わず、というが実際殺すやつなんざ少ないからな。だが、依頼書には生死問わず、と書いてるんだから、悪い事じゃねぇ。コソコソ話されるけどな。
あたしは協会の扉を開けて、依頼書と共に盗賊達の証であるバンダナを引渡し所である、カウンターに持っていった。血塗れだがな。勿論、顔が引きつってやがる。
「森の盗賊団、十名のバンダナだ。死体はそのままにしてあるが、そっちで後始末はしてくれ」
かしこまりました、とそのバンダナを袋で包み奥へと持っていく協会員は、報酬である貨幣を持ってきた。対人間類の依頼は報酬が高いようだな。袋が重たいぜ。こいつは人の命と引き換えに貰うもんだ、軽いわけがない。あたしは人が死ぬのは見たくないからな、甘いだろうがそうなっちまったのは仕方ねぇ。
さて、今頃あの二人は宿でベッドに入ってるぐらいか? アイリスの状態も不安だし、寄り道せずに帰るか。
私はマッチでタバコに火をつけながら協会をあとにした。外に出ると、既に空は真っ赤だった。
町は変わらず騒がしい。朝はあんなにも静かなのにな。昼とはまた違った喧騒だ。人の波だな。
そういえば、前に子供らしくない、とアイリスに言われたか、あぁ確かに年相応じゃないだろうな。年相応の生活をしてきていない、自分には過去の記憶がない。人に言える過去なんざ元より無いのさ。
だがまぁ、苦労はしていない。過去は無くとも未来があるからな。アイという名もレオンから貰ったもんだ。だからあたしはこの名前が好きだ。あいつが好きなわけじゃねえけどよ。
あたしは宿の前に立った。なんだか入るのが躊躇われるな。中に入ると、店主が腕を組んでうーん、と唸る仕草をしていた。どうしたのかと聞くと二時間ほど前に、血塗れの女をおんぶしている女が帰ってきてどうしたものかと、考えていたそうだ。あぁ、あの二人の事かよ。
血塗れの客が帰ってきたらそれはそれはびっくりするよな。あたしだってびっくりしちまうよ。
「おーいアイリス、調子は──」
アイリスに声をかけながら二人がいる部屋を開けると、口の前で人差し指を立てているアリスの姿と、それに抱き着いて子供のように寝息を立てているアイリスの姿が、ベッドの上にはあった。
「さっき寝たところなのよ」
「……そうか、ってアリスお前随分と顔色が悪いじゃねぇか」
体調が優れないアリスの顔色はかなり悪く、今までよく耐えていたな。アイリスは気持ちよさそうに寝てやがる。ったく人の気も知らねぇでよ。アリスといると気が安らぐのか? それとも、ただ呑気なだけか?
「……アイ、多分、寝たら目を覚まさないわ」
「あたしにアイリスのお守りをしろってんのか? 笑わせんじゃねぇぞカス」
ふふ、と軽く笑みを浮かべるアリスはよろしく頼むわ、と冗談では無い目付きをしていた。そうか、わかったよ。はいはい、わかったわかった。
あたしはアリスのそばに立ち、ため息を吐きながら相手の胸に手のひらを当てた。
「深呼吸しろ」
目を瞑り、アリスの魔力を調べた。すると案の定こいつの魔力は底を尽きかけていた。
通常、魔力を使用するアリスのような魔法使いは、大地にある魔力の源を供給し、魔力を生成しているはずだ。無意識に、だ。だが、それが尽きかけているという事は、それが出来ていない。魔力生成回路が機能していない、魔法使いからすれば死活問題だろうな。なんせ、魔力は魔法使いの体を作っている、と言っても過言ではないほどだからな。
魔力はいわば血液のようなものだ。それが欠乏してんだ、重体だろう?
「……なんでここまで放ってたんだよバカ」
「人に弱みを見せるのは慣れていないのよ。昔から、ね」
「あぁそうかよ。わぁったよ、このクソ頑固尻軽ビッチめ。アイリスはあたしに任せとけ。お前はさっさと体を休めてすぐに起き上がってこい。それまであたしがアイリスを、お前の大事な大事なヘヴィスモーカーを守ってやるからよ」
あたしはニッと歯を見せて笑い、あたしを見たアリスは安心したのか、ゆっくりと目を瞑っていった。あぁ、クソ野郎、ちょっとの間寝とけ。
二人の間に入るのも悪いな。そう思いあたしは椅子に座り机に突っ伏した。あたしも疲れていたのか、目を閉じるとすぐに寝てしまった。
目を覚ましたのは翌日の太陽が落ちかけている頃だった。色々とあたしも疲れてたんだろうよ。目を覚ましたのはアイリスの声が聞こえたからだ。
「アリスさん、アリスさん、まだ起きないの?」
昨日のアリスが言っていた通り、起きる気配の無いアリスをゆさゆさと揺らすアイリスの姿があった。
残念な事にそいつは起きねぇぞアイリス、とあたしが言うと冗談だと思ったのか、眉をひそめてこちらを睨んできた。
「アイ、冗談でもそんな事言っちゃってだめだよ」
「冗談じゃねぇぞ」
「アイ! いい加減怒るよ!」
ったく、どんだけアリスが好きなんだよ。あたしは怒るよ、と言いながら既に怒っているアイリスに昨日の出来事を説明した。
勿論、反応は思った通りの困惑だった。どうすれば治るのか、と問われたがそればかりは専門医が診なきゃ分からない。あたしは医者じゃねぇしな。レオンが居てくれたら何か分かったかもしれないが、居ないもんは仕方ねぇ。自分の足で調べるしかねぇな。
アイリスにはアリスのそばに居てもらうことにして、あたしはどうしようか? 医者か? いや、ただの町医者に魔法使いの事はわからないな、となると協会か? 確か協会に金を払えば医者を紹介してくれるはずだ。法外だが、今はワガママは言ってられねぇ。
あたしは再び協会へと向かった。まさかあいつのためにここまで動く事になるとは、思いもしなかったぜ。
意外と良い奴らなんだが、依存が強すぎんだよな、アイリスのアリスに対する依存がな。あれはちょっとしたもんじゃねぇ、ありゃぁ何かあれば命までかける勢いだぜ。危険だ、かなり危険だ。
何があいつをあそこまでアリスに付き従わせているんだ? 魔法での洗脳? いや、違うな。あたしにはよく分からない関係だな、あの二人の関係は。
あたしは冒険者協会の建物内にある、掲示板近くのカウンター、相談窓口の前に立っていた。
「すまねぇ、連れの病気になって目を覚まさねぇんだ」
そう伝えると、一枚の紙を渡してきた。症状やら色々な項目が書かれていた。あたしはその紙にアリスの状態を記入した。
意識が無く、魔力も感じ取れない、いつからは分からないがあたしが気付いた昨日の体調は、かなり芳しくなかった。それでもアイリスを背負っていくほど、体力はあったんだろう。
紙に記入を終えて、それを窓口に提出すると一人の白衣を纏った男が出てきた。白衣の下は帝国の軍服で、見ただけで位が高いであろう階級章が、襟に付いていた。
医者はこの世界では重要な職業であり、誰からも羨ましがられるほどの高収入だ。それが軍医ともなれば、偉いんだろう。
「患者の所に連れていきたまえ」
顎が上がったその軍医はとても偉そうだ。歳は四十前後だろうか。
あたしは舌打ちを耐えながら、アリスの元へと連れていった。アイリスは最初驚いていたが、医者だと説明するとすぐに少し離れた。
軍医はアリスの頬に手を置き、何やら呪文を唱えた。呪文を唱えるのは珍しいな。随分と古いやり方だぜ?
「……ふむ、魔力欠乏症、及び魔力生成回路の損傷が見られるな」
軍医が言うには魔法使いによく起こる体中の魔力が尽きる魔力欠乏症、そして魔力欠乏症時に無理に魔法を使うと起こる魔力生成回路の損傷。軍医は複雑な顔をしていた。
聞くと、魔力欠乏症はよく見るらしいが魔力生成回路の損傷はまずありえないそうだ。
「魔法は魔力を消費し、発動する。故に魔力が無ければ本来ならば使えないはずなのだ。しかし、無理矢理、それも回路が焼き切れるほどの高出力の魔法を放てるとは思わんが……」
確かにそうだ、あたしと会う前に何かやったのか? アイリスに聞いてもわからないそうだ。
軍医は偉そうながらも、深く考え込んでいた。
「治療はする、しかしそう簡単には治らんだろう、治療費も高くなるが構わんか?」
アイリスに目をやると、どんなにかかってもいい、どんな事が条件でも治してほしい、という真面目な目でそんな事を言うもんだから、あたしも仕方なく頷くしかなかった。
それならば、と一枚の初めから出すつもりであったであろう依頼書を、あたし達に見せてきた。それはあたしにとっては、受け入れ難い依頼だった。
「……おい、手の込んだ冗談か?」
ライオンの頭を持ち、紅の鎧が特徴として書かれている。それはあたしの知る中で一人しかいない。
クソが、あたしはともかくアイリスには選択肢がねぇじゃねぇかよ。アイリスはただ、じっとアリスの方を見ていた。こいつのこの後のやる事はすぐに予測出来るぜ。
「アイごめん」
「レオンがそう簡単には負けてくれると思うなよ」
あたしはレオンが負けるところなんて想像出来やしない。だからこそ、アイリスを行かせた。そう、何も心配はない。レオンに任せよう、あたしはアイリスにそう言いながら、止めようとはしなかった。
あたしはレオンを信じているからな。
あの二人に初めて声をかけた時に抱いた印象は、アイリスには子供がそのまま大人になっちまった、って印象だ。良くも悪くも、だ。二十年も生きているはずなのに、まるで純粋な雰囲気には何かが欠如しているようにも感じる。
あのクソビッチにはこいつをキレさせたらやばい、てな感じであたしの危険察知センサーが、ビービーと警報をけたたましく鳴り響かせてやがる。それほどにあいつは危ない。だが信頼に足る奴なのは間違いねぇだろうな。アイリスといる時だけだがなぁ。
さて、協会に報告に行かなきゃならないが、気が重いな。生死問わず、というが実際殺すやつなんざ少ないからな。だが、依頼書には生死問わず、と書いてるんだから、悪い事じゃねぇ。コソコソ話されるけどな。
あたしは協会の扉を開けて、依頼書と共に盗賊達の証であるバンダナを引渡し所である、カウンターに持っていった。血塗れだがな。勿論、顔が引きつってやがる。
「森の盗賊団、十名のバンダナだ。死体はそのままにしてあるが、そっちで後始末はしてくれ」
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さて、今頃あの二人は宿でベッドに入ってるぐらいか? アイリスの状態も不安だし、寄り道せずに帰るか。
私はマッチでタバコに火をつけながら協会をあとにした。外に出ると、既に空は真っ赤だった。
町は変わらず騒がしい。朝はあんなにも静かなのにな。昼とはまた違った喧騒だ。人の波だな。
そういえば、前に子供らしくない、とアイリスに言われたか、あぁ確かに年相応じゃないだろうな。年相応の生活をしてきていない、自分には過去の記憶がない。人に言える過去なんざ元より無いのさ。
だがまぁ、苦労はしていない。過去は無くとも未来があるからな。アイという名もレオンから貰ったもんだ。だからあたしはこの名前が好きだ。あいつが好きなわけじゃねえけどよ。
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血塗れの客が帰ってきたらそれはそれはびっくりするよな。あたしだってびっくりしちまうよ。
「おーいアイリス、調子は──」
アイリスに声をかけながら二人がいる部屋を開けると、口の前で人差し指を立てているアリスの姿と、それに抱き着いて子供のように寝息を立てているアイリスの姿が、ベッドの上にはあった。
「さっき寝たところなのよ」
「……そうか、ってアリスお前随分と顔色が悪いじゃねぇか」
体調が優れないアリスの顔色はかなり悪く、今までよく耐えていたな。アイリスは気持ちよさそうに寝てやがる。ったく人の気も知らねぇでよ。アリスといると気が安らぐのか? それとも、ただ呑気なだけか?
「……アイ、多分、寝たら目を覚まさないわ」
「あたしにアイリスのお守りをしろってんのか? 笑わせんじゃねぇぞカス」
ふふ、と軽く笑みを浮かべるアリスはよろしく頼むわ、と冗談では無い目付きをしていた。そうか、わかったよ。はいはい、わかったわかった。
あたしはアリスのそばに立ち、ため息を吐きながら相手の胸に手のひらを当てた。
「深呼吸しろ」
目を瞑り、アリスの魔力を調べた。すると案の定こいつの魔力は底を尽きかけていた。
通常、魔力を使用するアリスのような魔法使いは、大地にある魔力の源を供給し、魔力を生成しているはずだ。無意識に、だ。だが、それが尽きかけているという事は、それが出来ていない。魔力生成回路が機能していない、魔法使いからすれば死活問題だろうな。なんせ、魔力は魔法使いの体を作っている、と言っても過言ではないほどだからな。
魔力はいわば血液のようなものだ。それが欠乏してんだ、重体だろう?
「……なんでここまで放ってたんだよバカ」
「人に弱みを見せるのは慣れていないのよ。昔から、ね」
「あぁそうかよ。わぁったよ、このクソ頑固尻軽ビッチめ。アイリスはあたしに任せとけ。お前はさっさと体を休めてすぐに起き上がってこい。それまであたしがアイリスを、お前の大事な大事なヘヴィスモーカーを守ってやるからよ」
あたしはニッと歯を見せて笑い、あたしを見たアリスは安心したのか、ゆっくりと目を瞑っていった。あぁ、クソ野郎、ちょっとの間寝とけ。
二人の間に入るのも悪いな。そう思いあたしは椅子に座り机に突っ伏した。あたしも疲れていたのか、目を閉じるとすぐに寝てしまった。
目を覚ましたのは翌日の太陽が落ちかけている頃だった。色々とあたしも疲れてたんだろうよ。目を覚ましたのはアイリスの声が聞こえたからだ。
「アリスさん、アリスさん、まだ起きないの?」
昨日のアリスが言っていた通り、起きる気配の無いアリスをゆさゆさと揺らすアイリスの姿があった。
残念な事にそいつは起きねぇぞアイリス、とあたしが言うと冗談だと思ったのか、眉をひそめてこちらを睨んできた。
「アイ、冗談でもそんな事言っちゃってだめだよ」
「冗談じゃねぇぞ」
「アイ! いい加減怒るよ!」
ったく、どんだけアリスが好きなんだよ。あたしは怒るよ、と言いながら既に怒っているアイリスに昨日の出来事を説明した。
勿論、反応は思った通りの困惑だった。どうすれば治るのか、と問われたがそればかりは専門医が診なきゃ分からない。あたしは医者じゃねぇしな。レオンが居てくれたら何か分かったかもしれないが、居ないもんは仕方ねぇ。自分の足で調べるしかねぇな。
アイリスにはアリスのそばに居てもらうことにして、あたしはどうしようか? 医者か? いや、ただの町医者に魔法使いの事はわからないな、となると協会か? 確か協会に金を払えば医者を紹介してくれるはずだ。法外だが、今はワガママは言ってられねぇ。
あたしは再び協会へと向かった。まさかあいつのためにここまで動く事になるとは、思いもしなかったぜ。
意外と良い奴らなんだが、依存が強すぎんだよな、アイリスのアリスに対する依存がな。あれはちょっとしたもんじゃねぇ、ありゃぁ何かあれば命までかける勢いだぜ。危険だ、かなり危険だ。
何があいつをあそこまでアリスに付き従わせているんだ? 魔法での洗脳? いや、違うな。あたしにはよく分からない関係だな、あの二人の関係は。
あたしは冒険者協会の建物内にある、掲示板近くのカウンター、相談窓口の前に立っていた。
「すまねぇ、連れの病気になって目を覚まさねぇんだ」
そう伝えると、一枚の紙を渡してきた。症状やら色々な項目が書かれていた。あたしはその紙にアリスの状態を記入した。
意識が無く、魔力も感じ取れない、いつからは分からないがあたしが気付いた昨日の体調は、かなり芳しくなかった。それでもアイリスを背負っていくほど、体力はあったんだろう。
紙に記入を終えて、それを窓口に提出すると一人の白衣を纏った男が出てきた。白衣の下は帝国の軍服で、見ただけで位が高いであろう階級章が、襟に付いていた。
医者はこの世界では重要な職業であり、誰からも羨ましがられるほどの高収入だ。それが軍医ともなれば、偉いんだろう。
「患者の所に連れていきたまえ」
顎が上がったその軍医はとても偉そうだ。歳は四十前後だろうか。
あたしは舌打ちを耐えながら、アリスの元へと連れていった。アイリスは最初驚いていたが、医者だと説明するとすぐに少し離れた。
軍医はアリスの頬に手を置き、何やら呪文を唱えた。呪文を唱えるのは珍しいな。随分と古いやり方だぜ?
「……ふむ、魔力欠乏症、及び魔力生成回路の損傷が見られるな」
軍医が言うには魔法使いによく起こる体中の魔力が尽きる魔力欠乏症、そして魔力欠乏症時に無理に魔法を使うと起こる魔力生成回路の損傷。軍医は複雑な顔をしていた。
聞くと、魔力欠乏症はよく見るらしいが魔力生成回路の損傷はまずありえないそうだ。
「魔法は魔力を消費し、発動する。故に魔力が無ければ本来ならば使えないはずなのだ。しかし、無理矢理、それも回路が焼き切れるほどの高出力の魔法を放てるとは思わんが……」
確かにそうだ、あたしと会う前に何かやったのか? アイリスに聞いてもわからないそうだ。
軍医は偉そうながらも、深く考え込んでいた。
「治療はする、しかしそう簡単には治らんだろう、治療費も高くなるが構わんか?」
アイリスに目をやると、どんなにかかってもいい、どんな事が条件でも治してほしい、という真面目な目でそんな事を言うもんだから、あたしも仕方なく頷くしかなかった。
それならば、と一枚の初めから出すつもりであったであろう依頼書を、あたし達に見せてきた。それはあたしにとっては、受け入れ難い依頼だった。
「……おい、手の込んだ冗談か?」
ライオンの頭を持ち、紅の鎧が特徴として書かれている。それはあたしの知る中で一人しかいない。
クソが、あたしはともかくアイリスには選択肢がねぇじゃねぇかよ。アイリスはただ、じっとアリスの方を見ていた。こいつのこの後のやる事はすぐに予測出来るぜ。
「アイごめん」
「レオンがそう簡単には負けてくれると思うなよ」
あたしはレオンが負けるところなんて想像出来やしない。だからこそ、アイリスを行かせた。そう、何も心配はない。レオンに任せよう、あたしはアイリスにそう言いながら、止めようとはしなかった。
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