仮想世界β!!

音音てすぃ

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112.四日目開始

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 四日目。飛空艇内部。

「エイルちゃん、その……大丈夫なの?」
「ん?ええぇ!大丈夫ですよ!文字通り弾避けにでもなんでもなりますとも!」

 訓練の結果、アリエ隊にエイルが参加している。
 キリカは腰に帯刀している白打を見た。やる気は分かるし、前線に出たい気持ちもわかる。出来れば後方支援に当たってほしかった。持ち前の魔力を生かしたレーダーとか色々あるじゃん。
 エイルを弱いと思っているわけではないが、どうしても死んでしまうのではないかと思ってしまう。

「た、弾避けはやめようね?」
「心配ご無用です。ツルギさんにしごかれておりますので」

 キリカが横眼でツルギを見た。

「疑う目で見るな。エイルは強いぞ。オトメよりよっぽどな」
「へぇ」

 本当に心配無用だった。魔力総量も上がっているのだろう。
 知らないうちに成長してんだなぁ。

「一度に10隻の投入だ。約30分で着く、増援は1時間置きに到着する。作戦終了後、10隻しかないこの船で帰る。人数制限もある。二往復させてやるぞ」

 キリカには、ツルギが本質的に死ぬなと言っているのが分かった。
 二往復させてやるよ。

「カワセミに二往復はキツイだろうな」
「どして?」
「吐くんだ」
「うぇ。そりゃ可哀想だ」

 キリカ、サイケン、カリンの順で並び、一人分の席を空けている。カエデが座っている。
 サイケンがいつまでもカワセミとガラスのことを引きずっていた。カリンが同情した。
 正面にはエイル、アリエ、ミセット、セツナの順で並んでいる。

「セツナって、二本使うの?」

 アリエがセツナの腰にある二本の刀を見ていた。

「使えるものは何でも使おうと思って」
「つ、ツルギさんみたいだね……」
「師匠ぉ……いつまで拗ねてるんです?貴女の方が付き合い上ですって。あぁもう泣かないで」
「だって最近喋ってないもん!」

 再度キリカがツルギを横目で見た。そっぽ向かれた。

「ステルスモードに移行します」

 SEに通達が入る。浮遊感が伝わってくる。
 一度目はスイセンドウ、二度目は再生湖から帰るとき。
 四度目で最後にしよう。

 10隻の小型飛空艇が北へ発進した。

ーーーーーー

 廃ビルの中で一番高い建物の上で遠くを眺めていた。
 西側、つまりはライヴ本拠地、マルエルの庭園。数百人規模の軍隊がやってくる。飛空艇、車、乗り物は何でも使っていた。
 やる気が伝わってくる。全勢力投入って感じかな。
 パララミローでかなり人が死んでいる、1000人は用意できなかったのだろう。
 私は庭園に残らずに、温情をかけるように廃ビル群に来たのだ。決戦の誘いに乗らないわけがない。向こうもメリットしかないのだから。

 ライヴの方が早く到着するだろう。ECFはきっと飛空艇で突っ込んでくる。来ても一回に、二から三百人程度。そう戦力的にはライヴに軍配が上がる。あのデカ物も来るだろう。

「噂をすればかな?」

 キョウスケの正面と左右に黒い金属の塊、ビヨンドが現れた。
 三機だ。二機も増えている。これはECFが不利だ。きっと先行してきたのだろう。
 おやおや、三機同時にかかれば私を殺せると思っているのかな?

 ブースター音が聞こえる。
 三機同時にショットガンを構えた。
 爆発音が聞こえた時、キョウスケの体が粉々になった。
 ビルの屋上に硝煙と肉の臭いが漂った。それを私は確かめる。

「ふー……!」

 全力で呼吸する。体は1秒で再生した。
 第二波が来る。左右のビヨンドが高出力ブレードを突き刺してくる。
 脳が焼ける。肉が焼ける。指先が黒焦げで残った。

「むー、かなり痛い」

 この攻撃も1秒で復活した。
 正面のビヨンドがライフルを発砲した。
 手から骨の盾を作り出して防ぐが、当然のように防御力が足りずに頭がはじけた。

「ハッ……!」

 またしても1秒で復活。
 真面目に攻撃しよう。
 ライフルの銃口が向く。攻撃予測はとっくに見えている。足さばきのみで全て回避していく。
 風圧で体が吹き飛ぶ。浮遊した所をショットガンで砕かれた。血がビヨンドにかかった。
 キョウスケはその地点で再生し、手から剣を作り出し、脳天から真下に突き刺した。

「防御力が足りないよ」
「……あ」

 内部から声が聞こえた。ビヨンドが落下していく。絶命しただろう。
 離脱するように兜割・天を発動し、後方のビヨンドに斬りかかった。空中でヒット。コックピット内部を両断した。大きな隙間から血がはじけた。そして当然のように腕が飛んで行った。

「うーん、ECF有利にしちゃったな」

 三機目の内部から声がうっすら聞こえた。
 キョウスケは浮いている。屋上に戻りたい。攻撃するなら今だ。だがビヨンドは逃走した。

「怖気づいてしまったか、おかげで安全に着地できたが……バランスはちょうどいい」

 キョウスケがフックショットで屋上に着地、その時下から二つ音がした。ビヨンドが着地したようだ。この高度から落ちたのだもう動けないだろう。
 もっと強い人間が来てほしい。

「そう、サタン、お前に来てほしいのだ」

ーーーーーー

「先行したビヨンド、二機、破壊されました!サタンさん!」
「そうか、殺して再生を繰り返せと言ったのだが……ふむ、奴の方が一歩以上上手か」

 進軍しているライヴの先頭、サタンが全員に告げた。

「D9は俺が仕留める。今から指定する3班のみついてこい。屋上の倫理委員を掃討する。残りは地上をやれ」

 サタンにメッセージが届いた。

「あ?お前は地上だろヒノキ」
『屋上はいいよ。俺が地上で一番先頭、でいいよね』
「いいぞ。全員は殺すなよ。特にツルギ」
『了解、じゃあキリカは俺がもらう』

 ライヴ到着まで残り20分。
 ECF到着まで残り25分となった。




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