仮想世界β!!

音音てすぃ

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111.辛いやつ

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 1日目。

 千人のECF隊員の前でナオヒト本部長が「オトメが見つかった」と告げた。キリカの足についていた血を解析した結果、100キロ以上北に反応を確認した。勿論ここにる全員が先日のメッセージを受け取っている。今度こそ敗北は許されない。残り3日、大半の笑顔が消えていた。

 2日目。

「あまり時間がない。当日の動きを確認しよう」

 ツルギがアリエ隊を含む数名を会議室へ集めた。

『アリエ隊』
・アリエ
・ミセット
・セツナ

『ツルギ隊』
・ツルギ
・ギンジ
・ミチル

『キリカ隊』
・キリカ
・サイケン
・カリン
・(カエデ)

「俺とギンジが統廃合したが……人が足りなさすぎる!おいどうなってる!」

 ツルギが吐き捨てた。カワセミとガラスは療養中、当然作戦参加はできない。

「大丈夫ですよツルギ隊長……じゃなかった。ツルギさん、人呼んでますから」

 アリエがなだめるように伝えた。
 その視線の先はツルギの真横に立つセツナへ向けられていた。そこをどけ。

「(ツルギさんめっちゃいい匂いする!)」
「師匠……お静かに」
「大丈夫だってミセット、私は冷静」

 カリンがサイケンの脇腹をつついた。

「よぉ、今回一緒だな」
「いてっ。ああ」
「あいつらいないと少し寂しいね……?」
「ハッ!バカにすんな。この二ヵ月何してきたと思ってんだ?キリカの隣に立てるくらいには強くなってるんだぜ?なぁキリカ!」

 強気なサイケン、カリンは少し安心した。
 またキリカに隊長の座を奪われたことに嫉妬しているようだ。

「ま、まぁ。やる気十分だね……」

 ミチルが笑っている。視線はキリカに、横のギンジが引いていた。

「ミチル、今回ツルギと一緒だ。実力を認めての起用だ」
「えぇどうもありがとうございます。キリカさんと同じ部隊でないのが心残りでありますが……ええぇ!横で!横目で見ていられるように頑張りますとも」
「そ、そう?よろしく」

 ツルギがドアを見つめた。人が来る。小隊最少人数5人の補充が来る。

「こ、こんにちわ……エイルと申します。アリエ隊の追加メンバーとして来ました」
「トキです、この度はツルギ隊メンバーとして参加します」
「アキタっていいます。ツルギ隊ですー」

 トキは短髪ムキムキ男の印象が強い。アキタは青みのかかった髪、左目に黒い眼帯をしている。
 女はエイルだけか。

 3人か?おい、足りないぞ。

「3人だけか?」
「そうみたいです。戦力の分散で配置されましたが、こりゃひでぇ人数ですね」

 アキタがトキの背中を押しながら部屋に入ってくる。

「ま、ビヨンドは俺ら5人でやるしかないみたいですしね」
「スギの兵器が間に合ったか。しょうがないこの人数で決定する。では……」

 作戦を確認する。
 パララミロー上空を飛空艇で突っ切り、目的の場所「廃ビル群」へ向かう。前日からオトメの座標に動きが無い。この地点を目指す。ビヨンドが現れた際は、ツルギ隊が対処する。他小隊は座標へ向かう。回収確認後は飛空艇の地点まで後退。

「ざっくり奪還作戦っぽいが、ライヴのゴールドグリップ辺りが出て来るだろう。敵将軍の首が取れたのなら十分以上、この2か月の成果を見せてくれ」

 キリカは自分に誓っていた。
 必ず連れ戻す。

ーーーーーー

 ライヴも準備を進めていた。キョウスケが気まぐれにも廃ビル群に向かったのは不幸中の幸いだった。
 生き残ったライヴ兵士にサタンが告げた。

「D9を殺して倫理も殺す」

 兵士たちの未来は明るい。単騎でPEを殺せる言われているサタンが今回作戦に参加してくれる。
 誰もが明日の希望を見出した。

 そして誰かが息を吹き返した。心臓は借り物、左腕が半分無い。紫色に光っている。頭はさえている。刀の軌道が見える。視界もはっきりする。

「起きた?」
「ハイ」
「じゃ、残りの人生、頑張っておいでレプリカ」


ーーーーーー

 3日目。

「入らなのかいサイケン君」
「いやぁ、いざとなると準備がですね」

 病室前のサイケンをスギが発見した。

「一緒に入ろうじゃないか」
「え、えぇ、助かります」

 うつむきながら、サイケンはスギ博士の後ろから病室に入る。
 一度お見舞いに来た時は二人とも意識が無かった。今は本当に安心している。

「よぉ。カワセミ」
「おぉ!サイケンじゃい!久しいな!」

 髪の色には慣れた。あと一か月、いや、二ヵ月もすれば一緒の戦場に立てる。だがそうはいかない。俺が3人分の働きをしないと。

「ガラス?」
「サイケン?」

 前より耳も聞こえている。目も見えているようだ。

「ガラス君、回復順調だね。明日、少し再生水を試してみようか」

 そうか、俺は明日戦場に行くんだった。
 こいつらが居たらどれだけ頼もしいか。本当は来てほしい。でももう?

「ハッ……はぁ」

 息が喉を冷やしては温めた。
 本当はもう来ないでほしい。ここで待っていてほしい。

『死なないで』

 声を飲みこんだ、変に体が震える。
 大丈夫だ、この二ヵ月を考えろ。俺は強くなった。

「カワセミ、ガラス、俺は明日オトメを連れ戻してくる。そしたらまた……カレーでも食べようぜ。辛いやつな?」

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