仮想世界β!!

音音てすぃ

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83.決戦予定

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 プリズン戦闘の後、ノアオルタの中で数週間の生活が始まった、そうして終わった。
 今は上層部がライヴの情報を公開するそうなので、朝礼の時によく来る大ホールへ移動している。
 ここ最近のことでも語りながら歩こうと、キリカが言うのでそうしよう。

「調子はどうよ、オトメ君」
「体調は完璧、体力に自信が着いてきたし、総魔力量も上がったよ」
「ほうー、おめでとう」
「キリカはどう?ECF最強のツルギさんに並ぶかも……って噂じゃないか」
「そんなふうに言われてるの?こりゃ照れるね」
「それでは思い出話でも」


ーーーーーー


 ある日、食堂にココナッツバターチキンカレーが新メニューになった頃、キリカはスギ博士と謎の実験をしていた。

 訓練室より。

「キリカ、調子はどうだい?特に魔力量だが……」
「問題ないです、目の前の擬似エネミーから全て攻撃を防げばいいんですよね?」
「ああそうだ、それでは君のスキルの力、見せてくれ。あぁもちろん無理はするなよ、とっても危険が伴うからね」

 キリカの目の前には三体の擬似エネミーと称される、浮遊したドローンがある。
 それぞれにマシンガン、爆弾、小刀が搭載されている。
 訓練室なので、全ての武器は光化されている。
 スギ博士は外でモニタリングしてるらしい。

「3……2……1……」
「こい!」

 三体の擬似エネミーが発砲、同時にキリカは青の剣閃を発動、広範囲に展開した。
 自分を取り囲むように球形、オトメのエフェクトシールドのリフレクトに近い形。
 まるで盾のように張った青の剣閃は全ての弾丸を防ぎきった。
 止まない銃声の中、キリカは少し不安だった、さらに体から魔力量がかなり奪われる感覚を覚えた。

「……くっ、いやぁ意外と辛い」
「そこまで、よく頑張ったね、データは取れた。今日はしっかり休むように……って、もう回復の兆しが……君の魔力自動回復量は異常だねぇ。これはカエデ君から聞いた通りのことが起きたな」

 今回の実験は、キリカの青の剣閃の汎用性についてだった。
 イデアルでのキリカとカエデの戦闘は報告書には書かれていないが、カエデ自らがスギ博士に話したらしい。
 その時の青の剣閃は武器を必要としなかった、さらにはエーテル場が軟弱なキリカがこのような規格外の扱いをした上でほぼ自傷(魔力暴走)なしというのが驚きだったようだ。
 もうあのように特大面積に青の剣閃を展開するのは難しいようだが、このように盾のように扱うことができるようだ。

「ふむ、スイセンドウでのことを考えるとヒエンのいう少女の青の宝剣による回復力かな?すでに身体能力はトップクラスなのに……本当に人間か?」
「失礼なスギ博士、私は人間ですよ。そんなのでも、魔法は全然ダメなんですよ、私」

 キリカは右腕を摩った、ある日目覚めた力はここから溢れ出る、未だに謎だし、いつ体がどうなるか分からないのが少し怖かった。

「よし、じゃあこの素晴らしいデータから分かることは……うん、キリカ君は攻撃力だけでなく防御力もあるということだ。やっぱり君は前線向きだ。さぁおやつでも食べようか?」
「ふふ、そうですね……」

 この後、キリカの分隊が出来るのではないかと噂された。
 やはりECFの強者は何か特別な力を感じる。
 ギンジさんは……人じゃないかも。
 アリエさんは……目が凄くいい、銃も上手い、そして……なんでか分からないが強い。


ーーーーーー


 続きまして、僕のお話。
 ほぼココナッツバターチキンカレーの同日のことである、ルーム210のメンバーとの交流を深めつつ訓練を重ね、次の作戦でもツルギ隊に入ることが決まった。
 そんな昼食時のことだ。

「あまり美味しくないな」
「んー?不満かねサイケン。俺は結構美味いと思うんじゃが……って何か入れたな今!」
「激辛オイルだが」
「辛くすれば美味くなるんじゃないんだぜサイケン!」
「そ、そうか、しょうがない味わって食べることにする。うん……あまり美味しくないな」

 向かい合った席に座るサイケンとカワセミは新作カレーについてごちゃごちゃ言い合っている。
 僕はカワセミの隣で、ガラスはサイケンの隣だ。
 四人でカレーを食べようという話しになり、食べてみたのだが……僕は結構好きだ。

「そんなに不味いかな……ボクはとても美味しいと思うけど」
「そうじゃろガラス!ほら、サイケンももっと味わえば分かる!」
「ふむ……チキンは美味しいな。そういえば魔物級のデッカイ鳥がこの辺で目撃されて話題になっていたな。こんな荒野でよくも生きているな」

 僕はその話題に無意識に突っ込んだ。

「鳥?詳しく」
「人が五人くらい並んだ大きさらしい。高さは二メートルはあった……そうだ!」

 サイケンはスプーンを僕にさしながら言った。
 僕は何故かワクワクしたのを覚えている、何故か?丸鶏のローストチキンにしてやりたかったからだ!

「デカい……」
「それいつの話かねサイケン?」
「実は……昨日の話だ」
「何!実は二週間前ですーみたいなオチだと思っていたのに!サイケン……二週間前にも同じお話があったけど?」
「……二匹目だ!もしくは……同一個体。帰ってきたばかりのギンジ隊が討伐に向かったらしいが逃げられたらしい。どうしてまた現れたんだろうな?」
「ボクとっても気になる!というか食いてぇ」
「僕もだ!うん食べよう!」

 そして、どうしてか、僕ら四人はカレーを食べた後、完全装備の上で巨大な鳥を『スーパーチキン』と名を改めて、荒野に出撃許可を取ろうという話になった。

 たまたま食堂でツルギさんに会ったから、口頭でそのことを伝えたら「いいぞ、上には俺から言っておく。死なない程度にしておけよ……それと、出来たら俺にもそのローストチキンを食わせろ」と言われたから「はい!料理は僕の知り得る人材に託しますのでご安心を!」と伝えた。

『緊急!スーパーチキン討伐』

 四人で足りるのか?という話し合いから、もう四人呼ぶことにした。
 そこで僕がキリカとそのルームメンバーを誘った。
 ノアオルタの出口というか、出撃口で待ち合わせた。

「お待たせオトメ君、準備に時間かかった」
「急なメールにありがとう、えっと……え!ミセット」
「急に驚くな……どうした?」

 キリカは三人、人を連れてきた、まさかミセットがルームメイト!?何故今まで気づかなかった!

「もしかして……ミセットってキリカと同じ部屋?」
「そうだ、ツルギ隊長の計らいで、スイセンドウでの戦いでいなくなった分の再編成が行われた」
「なるほど……で、なんでカエデも一緒なんだ?ほぼツルギ隊じゃん!」
「俺もそう思う」

 サイケンは僕の肩にポンと手を当て、隣に並んだ。

「本当は入る気はなかった、だがツルギ隊長が初心を忘れるなと、入れてくれた」

 だが相変わらずの野戦服だ。

「そういうことだ、あまり突っ込むなサイケン」
「なんだか腹立つなミセット!俺にだけアタックがキツイのですが!」

 僕の知らない女性が一人、一歩前に出たと思うと、陽気、妖気に話始めた。

「まぁまぁサイケン、そんな怒んない怒んない。チョイとお久しぶりね、私はカリン、元々キリカとはルームメイト」

『カリン』Green
相対レベル:0(回避補正:-50)
・武器:アサルト・ヘヴン(攻撃強化Lv.9,魔導槍)
・防具:倫理委員会戦闘対応制服(赤)
・アクセサリー:黒魔石の腕輪(左)
他スキャンを実行していません。

 赤い髪のショートヘア、背丈がキリカと同じくらい、成長途中の少女!という感じ。
 溢れ出る元気を感じた、それにしても槍?ここでは義務のように刀を使っているが、大丈夫なのか。
 魔導槍か、気になる。人とか食べないよね。

「ということで、ルーム420のメンバーそろってお手伝いするよ」
「久しぶりな気がするな、カリン」
「サイケンは知り合い?」
「俺も知らないんじゃい」
「ボクも知らないよ、教えろサイケン」

 三人でサイケンの横腹をつついた。

「やめろお前ら!……ゴホン!カリンは俺と同期、昔あった試作部隊の一員だ。俺も元々はそっちの人だったんだがな……どうやら俺には槍よりも剣に才があったようだ」
「いやいや、サイケンは剣より銃でしょ。それより雑な説明ね」

 カワセミとガラスが困惑している、そうか、魔導槍を見抜いたのは僕だけだからか。

「サイケン、コイツら槍のこと分かってないよ」
「あぁそうか、すまない。ECFには一般的に刀を扱う文化のようなものがある。しかし時に多種多様な攻撃に対応するため、もちろんこちらからも多種多様に攻撃するために、刀以外の訓練、部隊編成が行われているのだよカワセミ君にガラス君」
「ほぇー知らなかった」
「若いって少し損だねカワセミ」

 僕だってしらなかった。

「まぁその試作部隊は解体されたから、今はカミカゼ隊長に着いてるよ」
「サイケンと同期ってことは」
「あぁもちろんタメ語で構わんよ」

 そうして、僕ら三人はカリンと握手を交わした。
 この人20歳か、もっと若く見えるけど。

「じゃあ挨拶終わりということで、行きますか」
「だな、座標は割り出した、少し範囲は広いが……健闘を祈る」

『おー!』







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