仮想世界β!!

音音てすぃ

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65.白黒の剣斧

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 作戦会議!

「これで全員そろったな」
「お腹は減っています!」

 エイルは元気に手を挙げる。
 少し空腹なくらいが丁度いいだろう。

 今僕たちは四人で宿の机を囲んで座っている。
 滞在するのは今日か明日までだ。
 とりあえずマニーとカレーラとの会話を三人に話しておく。

「再生水の在処がわかった……少し残念なのが場所は南東、カエデが襲われた場所と一致する。PE持ちかは分からない。だけど、僕らの、というか主に僕の手掛かりになった」
「……」

 カエデが絶えずこちらを見つめて来る、怖い、どうしたの?

「それで……そこには片腕の剣士とかいう人間がいて、不可侵の約束をこの村と結んだらしい。いつかは……訊いてないや。で!僕はそこに行きたい、皆にも来てほしい、頼む!この願いをのんだ場合、村には滞在できなくなる、一応紙ぺら約束でも約束だから、村人に破らせるわけには……」

 ガタッっと椅子から立ち上がり、カエデは三回元気に頷いた。

「……!!」

 賛成でいいのかな?なぜだろう殺気を感じる。

「もちろん私も行きますよ、あまりこの村にいたら体力が持ちそうにありませんしね」

 そういえばエイルはやけに村人に可愛がられる。
 創造主マルエルに似ているとか、なんとか……そうなのか?
 一度外に出たなら、人だかりができ、挨拶の嵐。
 店に行けばサービスサービスで、それは疲れるだろう。

「ありがとうエイル」
「まてまて、私も勿論いくからね」
「キリカ……ありがとう」

 三人の了承は得た、これで湖探索に行ける。

「では、これより南東にあるとされる『マルエルの水たまり』に進行を開始する。間違えた、準備を開始する。明日の早朝に出発だ。目的は再生水の確保、PEの復活と……そういえばカエデも負傷者か、カエデの再生も必至だな。そして、その後は東に進行、ミルザンドを目指すため、一度ダンジョンにぶち当たる、そこを越えて、ミルザンドだ」
「質問です!」
「はい、キリカ」
「戦ってもいいんですか?カエデの話とオトメ君の話だと、二人程手練れがいるようだけど」

 それは今回の第二懸念事項だ。
 こちらは戦うつもりはないから、戦闘は避けたい。
 しかし、カエデを無言で殺しに来た奴らだ、ステルスステルスってカンジでいこう。

「戦闘は避けたい、でも……向こうが仕掛けてきたなら、撤退だね。逃げるための攻撃は許そうかな」
「オーケーです!」
「……フフフ……」

 隣のカエデの顔が怖くなってきた、これは復讐するつもりだと思う。
 ストレージから取り出したマガジンに丁寧に弾薬を込めているのを見る限り、彼女は発見しだい撃つのだろう。

 そういえば、カエデを襲った人間は、片腕の剣士なのか?
 会いたくないが、訊いてみたいな。

「私も、守るため、この切断魔法を唱えます!最近は魔術っていうんでしたっけ?それとクニテツのバジ・ヘルフレアも使えるので、期待してください!」
「ああぁ……ありがとう皆、君たちは心強いよ……ホント」

 エイルは性別を取り戻してから魔法を撃ちたがるようになった。
 膨大な魔力と強固なエーテル場、彼女ほどの魔術師はなかなかいないから、僕も扱いがわからない。
 定期的に放出しないとダメなのかも?
 いやいや、危ない。
 せめて……そうだ、魔水を大量に出してもらおう、それを液体硬化で固めて防御に使おう、良いね。

「いや……でも連携が……」
「私は、いつでも君を守るよ、オトメ君」

 キリカは親指を立ててニッコリ笑った。かなりイケメンだった。
 『黒打』は強化され『黒打・蒼天流』へと改名させられた。
 美しい白い刀身は変わらず、キリカが握ると、薄く青く光るようになった。
 『青の剣閃』の効果を受けやすくするように改造を施した一品。
 単純強化で終わらないカルマの心象。

 一方の『イノセント』は改名せず、修理と強化、より刃が鋭く切れ味を増した。
 以前同様に打ち合いにめっぽう弱く、上手く切り裂けなければダメになってしまう。
 『エフェクトシールド』はもはや剣の形をした盾だ。
 魔力を流して魔力反射シールドを得る、嘗て神格を守っていた剣だ。魔力反射といっても反射できるのは魔術。まったく、どうしてこんな剣を倉庫に隠していたんだろう。
 『愁と絶叫』はクニテツの形見の武器、魔力で作る魔性の糸?縄?が持ち味、生体を貫通するその性質に、一度は苦しめられた。
 僕が、全て上手く使ってやる。
 中古品ではあるが、僕にはもったいない品だ。
 ルーンナイフの形は嫌でも覚えた。合計18本。

「僕も、今は攻撃より防御が得意そうだからね、キリカを守るよ」
「おぉ……昨日のアレは見間違いでは……ゲホゲホ」
「ん?どうしたエイル?」
「いえ!?なんでもないです(カエデがオトメさんとキリカさんと木の上にいるのを見つけて、二人で見てたなんて言えない!)」
「あーそう」

 この後は各自で準備に取り掛かった。
 短い間だったが、いい休憩ができただろう。
 少しずつであるが目的に近づいてきた、あともう少しだ。

 エイルはカエデと仲良く食料調達、キリカはカレーラと何か話していた。
 僕は、ベッドの上に武器を並べて手入れをしていた。
 ルーンナイフが18本、二本フレッタにあげたことを思い出す。
 ハンドガンを分解しつつ、マニーにヨウド・テルのことを訊こうか迷った。

「僕はこのナイフを見るたびに、クニテツとフレッタのことを思い出すんだろうな」

 殺されてないといいな、いいな……本当に。
 キリカも面識がありそうな集団だ、会ったら切り刻むかもしれない、なわけないか。

 ナイフをくるくるまわしてベルトに装備する。
 腰には愁と絶叫、右の太股にはフックショット、左にはハンドガン、背中には並行している二本の剣。

「ファンタジーってカンジとは違うよね、この格好」

 そうして今日は終わり、僕たちは出発する。
 まるで関係ありませんといった様子で村を出る。
 それがお互いにとっていいだろう。
 また来たいな、今度は、ECFとしてでなく、ただの冒険者か旅行者として。

 亜人という少しモンスターに寄った人間を見た。
 それはやっぱり人間に見えた。
 だから僕は思う、彼らも死んだら記憶を無くして転生するのだろうか?
 出来ればそうであってほしい。



ーーーーーー



 森を抜けると、割と荒野。
 カエデが以前言っていたことに一致する。
 草原もチラチラと、足を取られることはないだろう、森より歩きやすい。

「オトメさん、索敵、任せてください」
「ん?うん任せた」

 ECFのガラスのように、魔力の高い者は自身の魔力を使って周囲の状況をある程度見るというか、感じることができるらしい。
 高濃度魔力感知とか、魔眼とかいうけど、なんでもいい。

「では」

 なんとなく感じるエイルの魔力、今周りを確認していると分かる。

「……そんな見ないでください。歩きながらでもできるので、行きましょう」

 これで僕らも脅威にいち早く対応できるというわけだ。

「ありがとうエイル、君にかかってる」
「……」

 カエデは紙を取り出してサラサラと書き、僕に叩きつける。

「何!」
「……」

『私は鷹の目というスキルが使える、千里眼には及ばないがな!』

「書くのはえーなカエデ」
「……」
「えーと、カエデにも索敵一緒に任せるよ」
「うんうん」

 さっさと再生水探そう。

 20分後、エイルが察知、カエデは双眼鏡を構えた。

「皆さん、巨大な魔力の塊を確認しました。とても……触りたい!」
「今なんて!」
「あ、誤解を招きますね。詳しく言うと、邪悪な気配がしないと言いたかったんです」

 それは特殊だ、普通強力な魔力を感知した場合、具合が悪くなったり、拒絶反応を示す人が多い。

「カエデはどうだ?」
「……」
「うん、なにかあったら呼んで……って!」

 襟を引っ張られて、双眼鏡を目に装着された。
 目に映ったのは微かに見える違和感……水?
 ついに湖にきた!

「オトメ君、どう?」
「あったぞ、急ごう!」



 これ程、乗り物があったらと思ったことはない。


ーーーーーー


「疲れた」
「本当ですね……」
「しぬぅ!」
「……」

 日光が僕らを照らし、体力を奪う。
 自前の飲み水を大量に消費した。
 頑張った結果、ようやく全体像が見えてきた。

 ここからでもわかる、だだ広い荒野の中心に位置する核、再生水の輝かしい光を放つ、天を映し出した湖。
 ザンゲノヤマ一つ、軽く沈めてしまう程の広さだ。
 そういえばECFのスギ博士は、空気に触れているとたちまち使い物にならなくなると言っていた。
 しかし、この輝き、偽りは無い。
 もしこれ全てが再生水なら、世界は救われるだろう。

「皆、もう少しだ、たどり着いて、飲んでやろう!」
「おおー」
「おお!」
「……」

 足を前に、ひたすら前に、やっとキョウスケに会える!
 汗を拭きつつ、着々と湖に近づく。
 目に入る輝きは一層強くなる。

「ようやく……たどりつき……」
「つかせないよ」
「……!」

 僕があと100メートルの所で、右足を出そうとしたとき、発砲音がした。
 耳に届いた声とほぼ同時だった。

「えあ?」
「かすった!」
「……!」

 先行した僕の上、黒い何かが見える。
 斧、人を二人分並べたくらい大きな大戦斧。
 カエデを襲った人間の特徴に酷似。

「ぶねー!脳天ぶち抜かれるとこだったね」
「……なんだ、お前」

 僕は音を避けるように前転して距離をとって、周囲を確認した。
 カエデがアサルトライフルを発砲したようだ。
 それに動揺している仲間二人は3秒後に武器を構えた。

 宙に浮かぶ大戦斧を持つ黒い少女、目視で年齢は14か15に見える、装備している防具はハイエンド探索者プレイヤーより強固なものだと予想できる。
 片目でもわかる、黒い髪と、若々しい白い肌のコントラストはやっぱり子供のそれだ。
 どうして僕の上に?浮遊魔術か。

「お前……まえに来た人間だなー?逃がした屈辱は忘れてないぞー」
「……」
「やっぱりお前が……全員、戦闘準備!」
「ほー、やる気あるねー、もっともー、私は君たちを逃がす気ないけどね!」

 この少女が湖の守護者のような人間なのだろうか?
 カエデと同じく、近づいた結果現れたみたいだ。
 殺しはしない、けど、仲間を襲った人間だ、それで十分。

「もしかして戦わないといけないのかも……そう思っていたけど、やっぱりそうか……ここで……決めてやる!」

 先発はカエデ、アサルトライフルを撃つ、しかし、大戦斧はそれを通さない。何か隠しているように見える。手加減してる。
 続いて、僕はスキル「エリアルマジック」を発動し、イノセントで斬りかかった──────。

「何っ!」
「ふふふ……」

 エフェクトシールドは空中で止められた。
 防いだのは黒い少女ではなく、どこからともなく現れた白い女性、長く白い剣を持ち合わせていた。
 姿がキリカに似ていたからか、一瞬見入ってしまった。
 その白い髪には見覚えがある。

「ありがと、おねぇちゃん!」
「怪我はないか?」

 僕は重力により落ちる。
 手の衝撃は忘れない、きっとあれはキリカにしか斬れない剣だ。
 着地はループアウトで回避した。

「二人か」
「我らが聖域に何のようだ?」

 二人とも浮遊術が使えるようだ、どうにかして地面に叩きつけてやりたい。
 そもそもどうやって姿を現した?

「まぁそれはいい、どうせ通してやることはないのだから……ん?お前は?」

 白い女性がキリカを見つめる。
 長いシロカミも相まって、激似だ。
 彼女は20歳くらいだろうか?

「どうしてシロカミがここに?」
「こちらが訊きたい……」

 キリカは刀を強く構えた。

「どうして君がこんな……シロカミを蔑む人間なんかといるのだ?もしかして、奴隷なんかやらされているのではないか?」
「違う。何言ってんだあんた、仲間を侮辱するな」
「そうか……そこまで従属魔術をうたれたか……」
「ん?なんかそこのお姉さん、勘違いしてない?」

 シロカミの女性は何かを呟く、炎天下の中、上を見るために目を細める、それは高貴に見えた。

「深淵具、召喚、ホワイトチェーン。お前ら、邪魔だ」

 言葉の後に出現した白い鎖、彼女の合図の後、周囲を暴れまわり、僕らをデコピンの如くはじき飛ばした後、キリカを拘束した。

「クソ……まだ……」

 パーティメンバーはまだ動ける、こんな攻撃ではまだ死なない。

「なにこれ!」
「洗脳を解いてやろう、我々と来い、理想郷へ……」

 拘束したキリカを宙に上げる。

「てめぇ……何しやがる!」

 僕も自前のアサルトライフルで応戦した。
 しかし、高速弾が白い女性のあと30センチというところでシールドにはじかれた。
 おそらく飛び道具のシールドか何か。

「チッ」
「あれは……武器召喚?」
「どうしたエイル!動けるか!」

 エイルは動揺して動けなくなった。
 それは無理ない、銃弾をはじき返す化け物だ、うかつに攻撃してヘイトをためたくない、その気持ちはわかる。

「少女よ、少し違う、これは武器召喚の派生、『深淵具召喚』だ、名ばかりで性能は大して変わらんが……まぁそれはいいとして、そろそろ行こうか、妹よ」
「りょーかい!命拾いしたな人間!」
「妹よ、少し違う、シロカミをたぶらかしたその頭蓋は……必ずスイカ割りにしてやる。そういう意味だ」
「どういう意味だ!」

 時が止まったような気がした。
 その後、空飛ぶ二人の少女と、キリカは姿を消した。

 暫く動くことは出来なかった。

 頭より目で見たことがすーっと体に染みる。

 キリカが連れていかれた。













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