仮想世界β!!

音音てすぃ

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66.理想郷のレプリカ

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「キリカ……?どこに?」
「ウソ、消えた?」
「……」

 僕は今すぐにでもキリカを救出に行きたいが、あの二人の居場所がわからない。
 急すぎた、僕らにこの展開は急すぎたのだ。

「どうしてキリカなんだ?何故?」
「私にもわかりません」

 エイルも状況を頭で整理できていない、ただ一人だけ、冷静な人間がいた。
 その人間カエデは急ぎ足で僕の胸ぐらをつかみ上げて、何かを訴える。

「……!そい!」
?」
「……うん」

 そうだ、キョウスケさえ復活すれば、サーチしてくれる、僕は急いで湖に走る。
 もう頭は冷静に機能していない、重思考は無理だろう。

「……なにこれ……オトメさん、危ない!」
「ぼえっ!」

 湖を前にして何かに衝突した。
 硬質な壁にでもぶつかった気分だ、しかし、そこに壁はないよ。

「いてて……何だ?」
「結界です」
「もしかして、湖に?」
「はい……強力なバリア系統です」
「……」

 カエデも僕を奮いたてたのはいいが、上手い結果にはならなかったようだ。
 近づけないと、どうしようもない。

「ど、どうすれば……」
「……!」

 急ぐぞ、グダグダしてんじゃねぇ、そう言っているように、僕には見える。
 そうだ、この窮地、いち早く行動しなければ解決できない。
 僕はまだ甘かったのだ、キョウスケに頼ってばかりで、自分で解決しようとしていなかった。
 いやでも考えろ!

「……!」

 カエデがアサルトライフルを湖の方向にぶっ放す。
 見事に空中に出現、具現化した半透明の壁にはじかれる。

「強固な結界だな、壊せないか。そもそも壊したところで、キリカの居場所がわかるわけ……そういえばエイル、お前の索敵とか魔力レーダーには何か引っかかってないのか?」

 2秒間頭を伏せ、キョロキョロした後、僕を見る。

「いいえ、湖が強力過ぎて、私のレーダーには何も感知できません」
「クソッ!」

 目の前の結界を殴ってみた。
 イタイのはこちらだった。

「どうして……」

 あの二人の行動予想は幾つかある。
 一つ、湖の魔力の中で自分たちを誤魔化して遠くに逃走。
 二つ、瞬間移動でもできるか。
 三つ、単純にレーダーにかからないか。
 四つ、湖の中か。
 どれも適当過ぎる。

「どちらにせよ、手掛かりが薄すぎる。でも現実的に、エイルのレーダーにかからない方向は湖の方向しかない」
「なるほど……」
「ん?どうした?」

 エイルが何か思いついたようだ。

「彼らはと口にしていたのを覚えていますか?もし彼らの拠点のような、ホームのような場所があるならば、きっとそこに移動したと思います」
「なるほど」
「きっと彼らは私たちを完璧に見張れる場所から奇襲が出来て、そこは私たちが近づけない……そんなところ、どこにあると思いますか?」
「どこだよ……」
「考えにくいと思いますが、先程オトメさんが言っていた、湖だと私は思います。魔力が桁違いですし……」

 現実味のない話だが、筋はあるし、エイルが本気だ。
 でも、人が中に入って生活出来るほど、空間のある湖とは思えない。

「そんな話……いや」

 今は何でもやってみるべきだ、止まっている時間がもったいない。

「湖の中に、奴らの言うがある、エイルはそう言いたいと?」
「はい───」
「……」
「現実的に、瞬間移動のスキルや魔術は消費が大きすぎます。なのでこの湖のような魔力を使ったと考えて……瞬間移動ではないとすると……もしや」

 エイルは壁に手を当ててみる、そこから光が溢れ、何かを感じたようだ。

「オトメさん、詳しく説明できませんが、今すぐに彼らを追うことができます。行きますか?」
「何!よくわからないけど、行くよ」
「変な話だと思って聞いてください……この中に『世界』があります!私の予測では彼らはそこに逃げました。今からオトメさんとカエデさんを向こうに送ります。それくらいしかできませんが……」
「なんだか進展したな、ありがとうエイル……カエデも来てくれるよな?」
「……」

 当たり前だという顔で銃を装備した。
 別世界に逃げ込むなんて考えもできなかった。
 でも、敵の陣地はすぐそこなんだ、強制的にエイルがそこに二人を入れてくれる。
 待っていろキリカ。

「行先は再生水の湖ではありませんので、ご注意を。では、転送っぽいことしますね───」

 エイルの手の光が一層強くなると、体の感覚が一瞬消え、視界が奪われた。
 そして、目が良く見えるようになるころには、どこかわからない街へと来ていた。
 見渡す、隣にはカエデ、そして……アバンドグローリーのように中央に佇む城、巨体な砂時計が上についている。
 街の規模は小さく、100人が生活できるかどうかの街だ。
 発展しているようには見えないし、見たことない建造物が並んでいるのが分かるくらいだ。
 なんとなくここが結界の中のような気がする、だだの勘に過ぎないが。転送時の浮遊感かもしれない。
 理由はもう一つ、空の色が白がかっているからだった。青い空ではない、異世界を彷彿させる。

 道路は補装されている、どこまでも続くと思われる外は、永遠の空の世界に見えた。
 まるで水槽だった。

「カエデ、無事か?」
「……」

 大丈夫なようだ。
 分かる、ここに奴らはいる。
 きっとキリカもここにいる。
 エイルの力を信じて本当に良かったと安心した後、目の前の理想郷を呪った。

「進むぞカエデ!」
「にーちゃんだーれ?」
「おわぉぁ!ナニナニ!」

 決意の言葉は気の抜けた声で台無しになった。
 声の先には5歳くらいの子供が一人、キリカと同様に、真っ白い髪をしていた。

「子供?」
「はじめてのひとだ!」
「迷子か?ここは危ないぞ、帰りなさい……って帰れないか」
「ねぇなんでおにいちゃんは髪の毛が黒いの?マグナねえちゃんみたい!」
「マグナ?」

 ここが住宅地の真ん中だったからだろうか、次第に白い髪の子供が増えていった。

「な、なんだおまえら!」
「ねーどこから来たの?」
「一週間前に来たお姉さんとちがうー」

 一週間前?

「……」
「お前らっ、離れろー」

 暫くもがいていると、少し大人な人間が現れて、子供たちを優しく跳ねのけてくれた。

「コラー、お兄さんが困っているでしょ!」
「いや、お姉さんもいます……ってステルスで消えちゃったよ」

 助けてくれた女性は僕と年齢が近そうな人間、髪の毛は真っ白だった。
 後ろで束ねている、キリカにもやってほしい。
 ここの人間は全員シロカミだった。
 服装は田舎の集落の農村民のような恰好、決して裕福には見えない。
 本当に異世界に来た気分……亜人の村でもそうだったけどね。

「ええぇと、見ない顔ですが、どちら様で?」
「そうだった、僕の仲間がこっちに来た……と勝手に思ってるんだけど、そのに来たっていうやつの名前ってキリカですか?」
「えぇそうですが……」

 少し吹っ掛けた質問だったが、ビンゴだった。
 一週間前?ありえないが、自分をだまして質問してみたのだ。
 転送に一週間かかった……ありえない、空腹じゃないし。

「最近のお客人にしては珍しいですね、黒髪で……」
「髪?あぁそういえばどうしてここの子供と貴女はシロカミなんです?」
「え───」

 空気が気まずくよどんで見えた。
 お呼びでない人だ、そんな人間の質問に吐き気を覚えたのかもしれない。

「知らないでここにいるんですか?」
「ま、まぁ」
「お尋ねして申し訳ありませんが、この『イデアル』の王に許可をもってこの世界に来たのですか?」
「いや……そんなものは」

 まずいことをしたか?『イデアル』って何?
 お前誰だという目線を向けられる。この場から消えたい。

「ではどうやって?結界は強固で破られる心配はないと王は……」
「おいおい、そんな警戒すんなって、僕ってキリカの友達、無害ムガイ!」

 無害は噓だ。

「そうなんですか?」
「そうそう……」
「本当に?」
「うん……」

 自身なさげに言ったのだが、その女性は安心したように胸に手を置いて呼吸した。

「少しだけ安心しました、私はノウェ・スターマンと申します。私たちシロカミはここでないと自由に生活出来ないほどに迫害されているのはご存じですよね?だから警戒してしまって」
「いや、知ってる、すごく知ってる……いや、君程は知らないんだろうね。とりあえず信じてくれてありがとう、色々聞きたいことがあるんだ……僕オトメね、今は眼帯を……」

 転送によって行き着いた先は異空間のような異世界のような場所。
 数分しか経過していないはずなのにここでは一週間が経過している。
 そこで出会ったシロカミの子供たち。
 そしてなぜか警戒を解いてくれたシロカミのお姉さん。

 この人から情報を得て、早急にキリカを救う。
 そして、あの二人に一発拳でもぶち込まないと気が済まない。







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