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64.名ばかりの二刀流
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「マニー、再生水手掛かりを教えてほしい」
僕は一人でマニー宅を訪れた。
三階の木造建築、デカい。
やはり村長役の亜人の家ってカンジだ。
漂う魔力も強い。
「んー?そうだね、あまり言いたくないねぇ」
「どうしてー」
マニーは本を開いてどこかを見る、そこには特に気になるものもなく、僕は再度マニーを見る。
「なんだ、やましいことでもあるんです?」
「捉え方によればね」
「あらま」
昨夜の熊肉祭りの後、マニーとカレーラが会話しているのを目撃した。
綺麗な紙を取り出して、気落ちした顔つきだった。
「どうしてか、教えてくれませんか?」
「……いいよ、でも……ちゃんと聞いてね」
マニーは近くの机に移動、僕にこっちにこいと手を仰ぐ。
そこに叩きつけられる一枚の紙きれ。
美しい文字の下には印が押されてある。
正式な紙。
「これは?」
「これは条約を締結した紙、これにより私たちは南東の湖に近づくことすらできない。もっとも私たちは縁のない場所だから、断る理由はなかった」
「それは、どういう?……いや、聞いたことがあります、この村は南東の村?湖?と不可侵条約を結んだとか」
「なんだ、話は知っているんじゃないかオトメよ。いくら紙きれの約束でも、やってしまったことだからね、守らないといけないんだ」
「それは分かります、でも……」
マニーは僕の口に指を置く、いやいや、触れてます。
僕の唇より暖かい指に緊張……したが顔には出さないぞ!
場数踏んどりますねぇ。
「でも、それは再生水とは関係ない、と言いたいんだろ?」
「……はい」
「残念だ、ぶっちぎりで関係大有りなんだすまない……というのも」
「というのも?」
「南東の湖なんだが、あれ自体が君の求める再生水のそれ……の可能性が高い。アレは千年も昔から存在する神の所業が生み出した奇跡とこの村では言い伝えられている。名を『マルエルの水たまり』どうしてかこの村を作った人間と同名だ。そんなことはいい、そういうことだ、我々はあそこを侵すわけにはいかないんだ」
話は聞いた通り、彼らは近づけない、きっと僕が行けば向こう様が怒るかもしれない、そんなことを心配しているのだろう。
「なーに、気にすんなよ。僕らだけが行けばいいだろ?この村なんて知らんふりして近づいて、少しその水を頂いてくるよ」
「おい!」
キャラにもなくマニーが声を上げた。
威圧で魔力を周囲に散布したらしい、部屋の内装が揺れる、難しそうな書物、瓶類がダンスする。
「はい?」
「いいか?オトメは知らないと思うが、あの湖に住む人間は……なんて言えばいい?並みの人間じゃない。舐めてかかってはいけないんだ!」
「……え」
こんなに強い亜人のエルフがここまで人間を恐れた発言をしている、僕も少し恐怖を感じた。
いや、だってでも……そうしないと目を。
「いいかオトメとやら」
「あ、カレーラさん……」
部屋にカレーラさんが登場、窓から参戦である。
器用に木製フレームに足を乗せしゃがんでる。
そこから華麗に床に着地、僕の近くへ。
「我々は亜人……というらしいが、人間ではないことはわかるな?まぁ子供はできるらしいが……ではなく、我々は人間と違って免疫も再生能力も人間を優に超える、魔術による回復で十分なんだ」
「だから素直に条約を?」
「あぁ、それにはもう一つ理由があったんだ」
「どんな?」
「申し出たのが、片腕の剣士だったからだ。マニーはこの村に来た人間は5人と言ったと思うが、本当は7人だ」
「もう二人?てかなんで片腕の剣士が出て来るんだ?」
「彼らはこの村で育った、彼らの腕を無くしてしまったのは私とマニーだ。狩りの途中だったのだ……本当に悪いことをした……彼らはそれに怒りはしなかったが、一つの要求、条約を押し付けて、腕の回復をすると言ったのだ。勿論我々は素直に受けたさ、それで罪が少しでも償えるなら」
なんということだ、こんな事情でむやみに湖に突っ込んだらこの村に顔が立たない。
てか剣士も頑固者だな。
「話は分かった、りょーかいりょーかい、できるだけ湖には近づいてほしくないんだな?なら……あと一日、いや二日くれ、そしたら僕ら四人は出ていく。村には関わらない。で……いい?僕なんて目を回復したらさっさと出ていくし」
「どうしてもか、オトメ?」
「あぁ、どうしても、あの力が必要なんだ。まだやることやってないんだ、まだ……この力が必要なんだ」
僕はまだキョウスケが必要だ、マップリングもしてもらおう。
ずっとグダグダECFを追うのはツルギさんたちに悪いからな。
「……どうする?かみっぺらの約束を守るのはお前の仕事だ、マニー」
「……ううぅ……情報言っちゃったしなぁ……もぅ!好きにして!死んでも知らないよ!私たちは忠告したからね!」
「ふふっ、ありがとうマニー、カレーラ」
許しを得たわけではない、勝手にやれ、と言われただけだ。それよりも心配の方が勝っているだろう。優し人達だった。
それでいい、仲間に伝えよう。
僕はマニーの家を出た後、武器の具合を確認しに行く。
この村は地面がほぼ露出していて、ミルザンドほどに補装されていない。靴から伝わる感覚にも慣れてきた。
完璧に自然に溶け込んでいる村、木と魔法によって発展した集落か、ここで生活したら体が浄化されそうだ。
きっと村を作ったマルエルという人間は趣味がいいのであろう。
「おお、やってるな!」
「オトメか!出来たぜ、神格を守りし剣だ!」
渡されたエフェクトシールドは、少し輝いて見えた。
重心が変化してないはずだが、振り抜きやすさが向上しているようにみえる。
そして明らかに攻撃力が上がっただろう……ん?
「ほう、気づいたか?」
「おい、切れ味落ちてないか?」
「当たり前よ、その武器は守るための剣、攻撃力はほぼ鈍器だぜ」
変化なしだった。
「まぁありがとう、いい仕事だな」
「おう、また来てくれよ!」
「あぁ、必ず……一年くらい後かな?」
「……あ?」
新しい武器を背中に、僕はイノセントとエフェクトシールドの二本の剣をスイッチして使う剣士……というにはほど遠い人間。
兵士を語るには経験も精神も未熟、それでも僕は前にこの剣と仲間とともに進む。
「会いたくないな、片腕の剣士……今は腕あるのかな?ははは、そういえば両腕あるってマニー言ってたっけ」
『魔─:─フ──トシール─』
・不明
・不明
・不明
──────
キョウスケ、待っていてくれ、もうすぐ会える。
僕は一人でマニー宅を訪れた。
三階の木造建築、デカい。
やはり村長役の亜人の家ってカンジだ。
漂う魔力も強い。
「んー?そうだね、あまり言いたくないねぇ」
「どうしてー」
マニーは本を開いてどこかを見る、そこには特に気になるものもなく、僕は再度マニーを見る。
「なんだ、やましいことでもあるんです?」
「捉え方によればね」
「あらま」
昨夜の熊肉祭りの後、マニーとカレーラが会話しているのを目撃した。
綺麗な紙を取り出して、気落ちした顔つきだった。
「どうしてか、教えてくれませんか?」
「……いいよ、でも……ちゃんと聞いてね」
マニーは近くの机に移動、僕にこっちにこいと手を仰ぐ。
そこに叩きつけられる一枚の紙きれ。
美しい文字の下には印が押されてある。
正式な紙。
「これは?」
「これは条約を締結した紙、これにより私たちは南東の湖に近づくことすらできない。もっとも私たちは縁のない場所だから、断る理由はなかった」
「それは、どういう?……いや、聞いたことがあります、この村は南東の村?湖?と不可侵条約を結んだとか」
「なんだ、話は知っているんじゃないかオトメよ。いくら紙きれの約束でも、やってしまったことだからね、守らないといけないんだ」
「それは分かります、でも……」
マニーは僕の口に指を置く、いやいや、触れてます。
僕の唇より暖かい指に緊張……したが顔には出さないぞ!
場数踏んどりますねぇ。
「でも、それは再生水とは関係ない、と言いたいんだろ?」
「……はい」
「残念だ、ぶっちぎりで関係大有りなんだすまない……というのも」
「というのも?」
「南東の湖なんだが、あれ自体が君の求める再生水のそれ……の可能性が高い。アレは千年も昔から存在する神の所業が生み出した奇跡とこの村では言い伝えられている。名を『マルエルの水たまり』どうしてかこの村を作った人間と同名だ。そんなことはいい、そういうことだ、我々はあそこを侵すわけにはいかないんだ」
話は聞いた通り、彼らは近づけない、きっと僕が行けば向こう様が怒るかもしれない、そんなことを心配しているのだろう。
「なーに、気にすんなよ。僕らだけが行けばいいだろ?この村なんて知らんふりして近づいて、少しその水を頂いてくるよ」
「おい!」
キャラにもなくマニーが声を上げた。
威圧で魔力を周囲に散布したらしい、部屋の内装が揺れる、難しそうな書物、瓶類がダンスする。
「はい?」
「いいか?オトメは知らないと思うが、あの湖に住む人間は……なんて言えばいい?並みの人間じゃない。舐めてかかってはいけないんだ!」
「……え」
こんなに強い亜人のエルフがここまで人間を恐れた発言をしている、僕も少し恐怖を感じた。
いや、だってでも……そうしないと目を。
「いいかオトメとやら」
「あ、カレーラさん……」
部屋にカレーラさんが登場、窓から参戦である。
器用に木製フレームに足を乗せしゃがんでる。
そこから華麗に床に着地、僕の近くへ。
「我々は亜人……というらしいが、人間ではないことはわかるな?まぁ子供はできるらしいが……ではなく、我々は人間と違って免疫も再生能力も人間を優に超える、魔術による回復で十分なんだ」
「だから素直に条約を?」
「あぁ、それにはもう一つ理由があったんだ」
「どんな?」
「申し出たのが、片腕の剣士だったからだ。マニーはこの村に来た人間は5人と言ったと思うが、本当は7人だ」
「もう二人?てかなんで片腕の剣士が出て来るんだ?」
「彼らはこの村で育った、彼らの腕を無くしてしまったのは私とマニーだ。狩りの途中だったのだ……本当に悪いことをした……彼らはそれに怒りはしなかったが、一つの要求、条約を押し付けて、腕の回復をすると言ったのだ。勿論我々は素直に受けたさ、それで罪が少しでも償えるなら」
なんということだ、こんな事情でむやみに湖に突っ込んだらこの村に顔が立たない。
てか剣士も頑固者だな。
「話は分かった、りょーかいりょーかい、できるだけ湖には近づいてほしくないんだな?なら……あと一日、いや二日くれ、そしたら僕ら四人は出ていく。村には関わらない。で……いい?僕なんて目を回復したらさっさと出ていくし」
「どうしてもか、オトメ?」
「あぁ、どうしても、あの力が必要なんだ。まだやることやってないんだ、まだ……この力が必要なんだ」
僕はまだキョウスケが必要だ、マップリングもしてもらおう。
ずっとグダグダECFを追うのはツルギさんたちに悪いからな。
「……どうする?かみっぺらの約束を守るのはお前の仕事だ、マニー」
「……ううぅ……情報言っちゃったしなぁ……もぅ!好きにして!死んでも知らないよ!私たちは忠告したからね!」
「ふふっ、ありがとうマニー、カレーラ」
許しを得たわけではない、勝手にやれ、と言われただけだ。それよりも心配の方が勝っているだろう。優し人達だった。
それでいい、仲間に伝えよう。
僕はマニーの家を出た後、武器の具合を確認しに行く。
この村は地面がほぼ露出していて、ミルザンドほどに補装されていない。靴から伝わる感覚にも慣れてきた。
完璧に自然に溶け込んでいる村、木と魔法によって発展した集落か、ここで生活したら体が浄化されそうだ。
きっと村を作ったマルエルという人間は趣味がいいのであろう。
「おお、やってるな!」
「オトメか!出来たぜ、神格を守りし剣だ!」
渡されたエフェクトシールドは、少し輝いて見えた。
重心が変化してないはずだが、振り抜きやすさが向上しているようにみえる。
そして明らかに攻撃力が上がっただろう……ん?
「ほう、気づいたか?」
「おい、切れ味落ちてないか?」
「当たり前よ、その武器は守るための剣、攻撃力はほぼ鈍器だぜ」
変化なしだった。
「まぁありがとう、いい仕事だな」
「おう、また来てくれよ!」
「あぁ、必ず……一年くらい後かな?」
「……あ?」
新しい武器を背中に、僕はイノセントとエフェクトシールドの二本の剣をスイッチして使う剣士……というにはほど遠い人間。
兵士を語るには経験も精神も未熟、それでも僕は前にこの剣と仲間とともに進む。
「会いたくないな、片腕の剣士……今は腕あるのかな?ははは、そういえば両腕あるってマニー言ってたっけ」
『魔─:─フ──トシール─』
・不明
・不明
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──────
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