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「ループアウトの自動使用を行いました。CPの自動回復を確認、ストレージからライトを出します」
耳から聞こえるキョウスケの声で目を覚ます。
水の音と何か巨大なものが動く音、地表世界とは違う恐怖と自分の小ささを感じた。
気圧差か、耳が潰されそうだ。
「ん?重い」
出現した球体の浮遊型の発光体が辺りを照らす。
寝ている僕の上に乗っているのはヒエンだ。
出血した血が僕に張り付いている。
粘性をもつ血を剥がしながらヒエンを退ける。
「キョウスケ、ヒエンって奴は?」
「ギリギリ生きてますよ」
僕が下敷で、クッションになったのだろうか、ありえないな。
僕は委員全員に一本は支給される『ポーションLV.2』を持っていた。
レベル2は、最悪の状態でも、HPを30%までは回復できるアイテム。
この世界で二番目に流通量の多い回復アイテムだ。
僕は、それをストレージから出して、ヒエンの口に少しずつ流し込む。
「ルーイの時は逆だったな」
目の前で死にそうな人間を見捨てることはできない。先まで斬り合いをしていたけれども。
「強くなりましたね」
「……あぁ」
血の気を取り戻していく過程を見つつ、意識を取り戻すまでは見つめていた。
こんなに女性を近距離で見る機会は無かった。
血色を取り戻した潤いのある唇。
穢れを知らない滑らかな肌。
長く青い髪は触れているだけでも心地が良かった。
何かキリカに似ている気がする、骨格だろうか眉毛だろうか?
「死ぬのは、ダメだ」
自分で斬っておいて、自分で回復させる。
しかも敵を。
ツルギさんに見られたら何て言われるのだろうか。
「……うっ……私は……ここ……っ!オトメキョウスケ!」
「おぉ、起きたか────って動くなって、HP2%なんだから、落ち着くまで……ね?」
急に起き上がって痛みに止まるヒエンを僕は両腕で止める。力が弱い、もう少し安静にしていてほしい。
「聞け、多分ここは地下……水面下?まぁそこだ。暗いし、出口も分からない。僕は死にたくないし、目の前で誰かが死ぬのは嫌だ。だから、ここを出るまでは俺はあんたを攻撃しない。よかったらあんた……君もー……貴女も?……そうしてくれないか?」
「……義理はない」
「ま、まぁそうだよなぁ。でも、ここを出たらお互い敵同士、それでいいじゃん?ここ出れないよりは!」
「……お前は本当にD9なのか?」
承諾してくれたみたいだ。殺意が若干収まった……気がする。
本当にとはどういった意味なのだろうか。疑いのある台詞でも言っただろうか。PEに似つかわしくないにだろうか。
「D9ってのはよくわからないけど、PEだよ。僕はそいつをキョウスケって呼んでるよ」
「オトメとキョウスケか……この世界に相応しい名前の配分だ。名前はもう知っていると思うが、私はヒエン。ライヴの兵士だ。S5のPEを持っている。この剣はその所有者の証だ」
ヒエンは青の宝剣を手に取る。
僕と同じで、ストレージが使えるのだろう。折れた剣を見せてくれた。
「何だか敵だけど、親近感が湧くな。僕PEに会うのは初めてなんだ」
「そうか……お前は純白だな。無垢といってもいい」
「ん?どうして?」
ヒエンの剣は再生を続けている。
少し羨ましいと聞こえた。
「我らPE使いは適合率によってPEに意識を乗っ取られる。お前からはあまり感じない。私はな、もう記憶が曖昧で、1年以上前の事が思い出せない。自分が誰なのか、何故剣を振るのかはもう分からない。ただ、死んだことはないらしい、我のPEがそう言っていた。本当に私は誰なのだろう?一人称も定まらない」
折れた剣は元の形に戻る。時間を巻き戻したように完璧な姿になった。
「この剣は青の宝剣、破壊と再生を繰り返す循環世界の象徴、ただ、もう一つS5には能力があるのだが、数ヶ月前に盗まれてしまった。方法は不明だ。PEが言ったことだからな、本当なのだろうが……本領発揮できなくて済まぬ」
「盗まれた?何て能力だ?」
「名前は無かった。元々、青の宝剣の追加効果として付与されているものだったからな。しかし、誰かの命名権利によって名づけられたみたいだ」
命名権利という単語に記憶がある、そして青というコトバにも記憶がある。
本領発揮していたら殺されていたかもしれませんね。
「PEによると、それは『青の剣閃』というらしい」
体が震えたのがわかった。
「効力は!?」
「万物切断。射程距離の自由化だ」
完全にキリカのユニークスキルと一致する。
盗んだ?キョウスケは覚醒と言っていたが。
「その力、僕の仲間が持ってる……」
「……なんだと?私の力を盗んだと言うのか!?」
「方法は分からない……キョウスケは覚醒したって言ってたし」
剣を握りしめたヒエンが一歩踏み込もうとしている。危ないです。目線が首にいってます。
「そうか、ならば、その人間に能力を返してもらおうか」
「おいおい、何するつもりだ?やめて!」
「この剣の真価はそのスキルだ。全てを斬る剣と再生する剣。我は力を取り戻す!それからもう一度戦え!」
「ダメだ!」
「何故だ?」
ダメだというか、元々の持ち主がいるのなら返さないといけない。けど、明確な殺意をもった人間をキリカに会わせるわけにはいかない。だからこれはお願いになる。
「お願いだ、大切な仲間なんだ。でも、外に出たら敵同士だったな……スマン今の話は聞かなかったことにしてくれ。でも、僕の仲間を斬ろうものなら、記憶の準備はしておけよ?」
ヒエンは苦笑した。
何の意味だったのだろう。
理解はできなかった。
「まるで、私のPEみたいにうるさいヤツらだ。オトメ、私の傷は時機良くなる。あと数分で歩けるだろう。そうしたら──────歩こう」
「あぁ、そうしよう」
ヒエンのHPが65で安定した。
そろそろ出発がいい。とにかく上を目指せばいいかな?
「オトメ、安心しろ。地下にいる限り、我はお前を攻撃しない」
「よろしく頼むよ?少し怖いです」
「しかし、原生生物がいる。そいつらとの交戦は許可してもらおうか、命の恩人」
「原生生物?」
「トカゲがいたりする」
「デカい?」
「そりゃもう」
憂鬱になってきた。
地下を迷路にしたのはトカゲだけではないだろう、他にもいそうだ。聞こえた音がトカゲなら全長何メートルかわからない。気を引き締めていこう。
どれくらい歩いたのか、体は熱を持つが、流石の水面下で気温が低い。放冷は完璧だ。
だがここで寝泊まりは考えられない。ストレージに寝袋とかあればいいけど。
順調に上へは向かっている。大丈夫だ、まだ登れる。
「オトメ」
「何だ?」
「私はこうやってPE所有者とゆっくり語り合うのは初めてというか、久しぶりなのだ。敵とはいえ、ワクワクしている」
「僕は仲間がヒエンに殺されそうでヒヤヒヤしてるよ」
広い足場を見つけた。これでかなり上昇出来そうだ。
「オトメの仲間というのはそんなに大切なものなのか?」
「仲間は大切だ。何言ってんだ、ヒエン……あんただって、仲間は大切だろ?いくら記憶を無くして復活するっていったってさ」
「……分からない」
すごく困った顔をされた。
「ヒエンは、僕を殺すように命令されていたのか?」
「まあそんなところだ。詳しくは言えない」
そうして、ヒエンが話し終わった時、前の暗闇で動く影があった。
半分反射で剣を構えた。
ヒエンも構える。
先の戦闘の傷が半分くらい回復している僕が戦うべきだ。
「ヒエン、見える?」
「トカゲ……リザードマンだ」
「聞いた事ないな」
「四体、会敵」
気がつくと、四方を囲まれていた。
見たことの無い生物。
二足歩行で、表面が鱗で包まれている。
人間の服、というよりは鎧を着ていて、顔が爬虫類に酷似。
尾骶骨から伸びる何かは尻尾というやつだろう。
手には剣が握られているのが二匹、もう二匹は斧を持っている。
声帯があるのか、奇妙な音を出している。
「キィィー!」
うるさい。
身長は2メートルを超える。絶対に防御力が高い。
「暗闇ではPEのスキャン精度が落ちる、オトメ、彼に頼らず殺れ!」
「わかってる!」
先制を取ったのはリザードマン。
人間を上回る巨体から放たれる斬撃は速く重く、僕の横で空を斬る。
やはり人でなしは力が強い。
マトモに正面からの殴り合いは避ける。
僕は一歩下がり、ルーンナイフを三本投げる。
実はナイフ投げも訓練した。
それらは頭、胴体、足にヒットした。
「ギィ亻ヤー!!」
多分そういう声だった。
斧を持ったリザードマンは憤怒。
そこに割こむ青剣。胴体から頭まで切り上げ両断すると、花のように開花した。
ヒエン綺麗にトドメを刺した。
「私が剣のトカゲを一匹引き受ける、残りを頼めるか?」
「あぁ、無理すんな」
僕は二匹、剣持ちと斧持ち。
二匹は互いのリズムを合わせて僕に切り掛る。
「(左右からの連携か)」
距離を取って回避することなく、リザードマン(剣)の体に飛びつき巻き付く。
これくらいの芸当は出来るようになった。
そして、暴れる体上でバランスを取り、剣を力いっぱいに胴体突き刺す。
厚い皮膚と、硬い鱗が邪魔する、その感覚が手に伝わる。
人とは違う。
僕の中の残虐性が、人外の嗜好を持ったかもしれない。
もがいた結果、リザードマン(剣)は絶命。
もう一体は構わず僕に斧を振り下ろす。
よく見えなかったが、ギリギリ僕はそれを剣で防ぎつつ体で受け止める。
「ぐっ……重い」
体の大きさの差が、上から僕を潰そうとする。ギンジさんに匹敵している。あの人本当に人か?
「もう……くたばれよ!」
剣をずらして回避、足、首の順番で斬撃、しかし、あまりダメージになっていないのか、もう一度リザードマンは、斧を振り下ろす。
ブンッという音が顔を通って行った。一撃で顔が飛んでいたかもしれない。
「回避出来るけど、攻撃が効かない!どうするキョウスケ?」
「銃器の使用はオススメ出ません。他にリザードマンが出現する可能性が高まります。よって、ヒエンとの二人がかりで一匹倒すのがいいでしょう。ヒエンの攻撃力はオトメの3倍です」
サンバイ?強い。少し悔しい。
それなら、まずコイツの動きを止めよう。
僕はルーンナイフを数本リザードマン(斧)に投げる。的は目だ。
一本が命中。数秒なら足止め出来るだろう。
ヒエンに加勢する。
どうやら劣勢、攻撃のチャンスが無いようだ。
「コッチ、見やがれ!」
リザードマン(剣)の後方から切りつける。
やっぱり突き刺しじゃないと効かん。
「オトメ、ありがとう」
リザードマンの気を引いて、一瞬の隙を使って、ヒエンがリザードマンの体を三等分にする。
「もう一体はアッチだ──────」
僕とヒエンは、まるでキリカと組んでいるようにスムーズなコンビネーションだった。
耳から聞こえるキョウスケの声で目を覚ます。
水の音と何か巨大なものが動く音、地表世界とは違う恐怖と自分の小ささを感じた。
気圧差か、耳が潰されそうだ。
「ん?重い」
出現した球体の浮遊型の発光体が辺りを照らす。
寝ている僕の上に乗っているのはヒエンだ。
出血した血が僕に張り付いている。
粘性をもつ血を剥がしながらヒエンを退ける。
「キョウスケ、ヒエンって奴は?」
「ギリギリ生きてますよ」
僕が下敷で、クッションになったのだろうか、ありえないな。
僕は委員全員に一本は支給される『ポーションLV.2』を持っていた。
レベル2は、最悪の状態でも、HPを30%までは回復できるアイテム。
この世界で二番目に流通量の多い回復アイテムだ。
僕は、それをストレージから出して、ヒエンの口に少しずつ流し込む。
「ルーイの時は逆だったな」
目の前で死にそうな人間を見捨てることはできない。先まで斬り合いをしていたけれども。
「強くなりましたね」
「……あぁ」
血の気を取り戻していく過程を見つつ、意識を取り戻すまでは見つめていた。
こんなに女性を近距離で見る機会は無かった。
血色を取り戻した潤いのある唇。
穢れを知らない滑らかな肌。
長く青い髪は触れているだけでも心地が良かった。
何かキリカに似ている気がする、骨格だろうか眉毛だろうか?
「死ぬのは、ダメだ」
自分で斬っておいて、自分で回復させる。
しかも敵を。
ツルギさんに見られたら何て言われるのだろうか。
「……うっ……私は……ここ……っ!オトメキョウスケ!」
「おぉ、起きたか────って動くなって、HP2%なんだから、落ち着くまで……ね?」
急に起き上がって痛みに止まるヒエンを僕は両腕で止める。力が弱い、もう少し安静にしていてほしい。
「聞け、多分ここは地下……水面下?まぁそこだ。暗いし、出口も分からない。僕は死にたくないし、目の前で誰かが死ぬのは嫌だ。だから、ここを出るまでは俺はあんたを攻撃しない。よかったらあんた……君もー……貴女も?……そうしてくれないか?」
「……義理はない」
「ま、まぁそうだよなぁ。でも、ここを出たらお互い敵同士、それでいいじゃん?ここ出れないよりは!」
「……お前は本当にD9なのか?」
承諾してくれたみたいだ。殺意が若干収まった……気がする。
本当にとはどういった意味なのだろうか。疑いのある台詞でも言っただろうか。PEに似つかわしくないにだろうか。
「D9ってのはよくわからないけど、PEだよ。僕はそいつをキョウスケって呼んでるよ」
「オトメとキョウスケか……この世界に相応しい名前の配分だ。名前はもう知っていると思うが、私はヒエン。ライヴの兵士だ。S5のPEを持っている。この剣はその所有者の証だ」
ヒエンは青の宝剣を手に取る。
僕と同じで、ストレージが使えるのだろう。折れた剣を見せてくれた。
「何だか敵だけど、親近感が湧くな。僕PEに会うのは初めてなんだ」
「そうか……お前は純白だな。無垢といってもいい」
「ん?どうして?」
ヒエンの剣は再生を続けている。
少し羨ましいと聞こえた。
「我らPE使いは適合率によってPEに意識を乗っ取られる。お前からはあまり感じない。私はな、もう記憶が曖昧で、1年以上前の事が思い出せない。自分が誰なのか、何故剣を振るのかはもう分からない。ただ、死んだことはないらしい、我のPEがそう言っていた。本当に私は誰なのだろう?一人称も定まらない」
折れた剣は元の形に戻る。時間を巻き戻したように完璧な姿になった。
「この剣は青の宝剣、破壊と再生を繰り返す循環世界の象徴、ただ、もう一つS5には能力があるのだが、数ヶ月前に盗まれてしまった。方法は不明だ。PEが言ったことだからな、本当なのだろうが……本領発揮できなくて済まぬ」
「盗まれた?何て能力だ?」
「名前は無かった。元々、青の宝剣の追加効果として付与されているものだったからな。しかし、誰かの命名権利によって名づけられたみたいだ」
命名権利という単語に記憶がある、そして青というコトバにも記憶がある。
本領発揮していたら殺されていたかもしれませんね。
「PEによると、それは『青の剣閃』というらしい」
体が震えたのがわかった。
「効力は!?」
「万物切断。射程距離の自由化だ」
完全にキリカのユニークスキルと一致する。
盗んだ?キョウスケは覚醒と言っていたが。
「その力、僕の仲間が持ってる……」
「……なんだと?私の力を盗んだと言うのか!?」
「方法は分からない……キョウスケは覚醒したって言ってたし」
剣を握りしめたヒエンが一歩踏み込もうとしている。危ないです。目線が首にいってます。
「そうか、ならば、その人間に能力を返してもらおうか」
「おいおい、何するつもりだ?やめて!」
「この剣の真価はそのスキルだ。全てを斬る剣と再生する剣。我は力を取り戻す!それからもう一度戦え!」
「ダメだ!」
「何故だ?」
ダメだというか、元々の持ち主がいるのなら返さないといけない。けど、明確な殺意をもった人間をキリカに会わせるわけにはいかない。だからこれはお願いになる。
「お願いだ、大切な仲間なんだ。でも、外に出たら敵同士だったな……スマン今の話は聞かなかったことにしてくれ。でも、僕の仲間を斬ろうものなら、記憶の準備はしておけよ?」
ヒエンは苦笑した。
何の意味だったのだろう。
理解はできなかった。
「まるで、私のPEみたいにうるさいヤツらだ。オトメ、私の傷は時機良くなる。あと数分で歩けるだろう。そうしたら──────歩こう」
「あぁ、そうしよう」
ヒエンのHPが65で安定した。
そろそろ出発がいい。とにかく上を目指せばいいかな?
「オトメ、安心しろ。地下にいる限り、我はお前を攻撃しない」
「よろしく頼むよ?少し怖いです」
「しかし、原生生物がいる。そいつらとの交戦は許可してもらおうか、命の恩人」
「原生生物?」
「トカゲがいたりする」
「デカい?」
「そりゃもう」
憂鬱になってきた。
地下を迷路にしたのはトカゲだけではないだろう、他にもいそうだ。聞こえた音がトカゲなら全長何メートルかわからない。気を引き締めていこう。
どれくらい歩いたのか、体は熱を持つが、流石の水面下で気温が低い。放冷は完璧だ。
だがここで寝泊まりは考えられない。ストレージに寝袋とかあればいいけど。
順調に上へは向かっている。大丈夫だ、まだ登れる。
「オトメ」
「何だ?」
「私はこうやってPE所有者とゆっくり語り合うのは初めてというか、久しぶりなのだ。敵とはいえ、ワクワクしている」
「僕は仲間がヒエンに殺されそうでヒヤヒヤしてるよ」
広い足場を見つけた。これでかなり上昇出来そうだ。
「オトメの仲間というのはそんなに大切なものなのか?」
「仲間は大切だ。何言ってんだ、ヒエン……あんただって、仲間は大切だろ?いくら記憶を無くして復活するっていったってさ」
「……分からない」
すごく困った顔をされた。
「ヒエンは、僕を殺すように命令されていたのか?」
「まあそんなところだ。詳しくは言えない」
そうして、ヒエンが話し終わった時、前の暗闇で動く影があった。
半分反射で剣を構えた。
ヒエンも構える。
先の戦闘の傷が半分くらい回復している僕が戦うべきだ。
「ヒエン、見える?」
「トカゲ……リザードマンだ」
「聞いた事ないな」
「四体、会敵」
気がつくと、四方を囲まれていた。
見たことの無い生物。
二足歩行で、表面が鱗で包まれている。
人間の服、というよりは鎧を着ていて、顔が爬虫類に酷似。
尾骶骨から伸びる何かは尻尾というやつだろう。
手には剣が握られているのが二匹、もう二匹は斧を持っている。
声帯があるのか、奇妙な音を出している。
「キィィー!」
うるさい。
身長は2メートルを超える。絶対に防御力が高い。
「暗闇ではPEのスキャン精度が落ちる、オトメ、彼に頼らず殺れ!」
「わかってる!」
先制を取ったのはリザードマン。
人間を上回る巨体から放たれる斬撃は速く重く、僕の横で空を斬る。
やはり人でなしは力が強い。
マトモに正面からの殴り合いは避ける。
僕は一歩下がり、ルーンナイフを三本投げる。
実はナイフ投げも訓練した。
それらは頭、胴体、足にヒットした。
「ギィ亻ヤー!!」
多分そういう声だった。
斧を持ったリザードマンは憤怒。
そこに割こむ青剣。胴体から頭まで切り上げ両断すると、花のように開花した。
ヒエン綺麗にトドメを刺した。
「私が剣のトカゲを一匹引き受ける、残りを頼めるか?」
「あぁ、無理すんな」
僕は二匹、剣持ちと斧持ち。
二匹は互いのリズムを合わせて僕に切り掛る。
「(左右からの連携か)」
距離を取って回避することなく、リザードマン(剣)の体に飛びつき巻き付く。
これくらいの芸当は出来るようになった。
そして、暴れる体上でバランスを取り、剣を力いっぱいに胴体突き刺す。
厚い皮膚と、硬い鱗が邪魔する、その感覚が手に伝わる。
人とは違う。
僕の中の残虐性が、人外の嗜好を持ったかもしれない。
もがいた結果、リザードマン(剣)は絶命。
もう一体は構わず僕に斧を振り下ろす。
よく見えなかったが、ギリギリ僕はそれを剣で防ぎつつ体で受け止める。
「ぐっ……重い」
体の大きさの差が、上から僕を潰そうとする。ギンジさんに匹敵している。あの人本当に人か?
「もう……くたばれよ!」
剣をずらして回避、足、首の順番で斬撃、しかし、あまりダメージになっていないのか、もう一度リザードマンは、斧を振り下ろす。
ブンッという音が顔を通って行った。一撃で顔が飛んでいたかもしれない。
「回避出来るけど、攻撃が効かない!どうするキョウスケ?」
「銃器の使用はオススメ出ません。他にリザードマンが出現する可能性が高まります。よって、ヒエンとの二人がかりで一匹倒すのがいいでしょう。ヒエンの攻撃力はオトメの3倍です」
サンバイ?強い。少し悔しい。
それなら、まずコイツの動きを止めよう。
僕はルーンナイフを数本リザードマン(斧)に投げる。的は目だ。
一本が命中。数秒なら足止め出来るだろう。
ヒエンに加勢する。
どうやら劣勢、攻撃のチャンスが無いようだ。
「コッチ、見やがれ!」
リザードマン(剣)の後方から切りつける。
やっぱり突き刺しじゃないと効かん。
「オトメ、ありがとう」
リザードマンの気を引いて、一瞬の隙を使って、ヒエンがリザードマンの体を三等分にする。
「もう一体はアッチだ──────」
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