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32.黄金の師弟
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二人は望んでいた。
自分が強くなること、内臓を破壊する手の感覚を。
二人は望んでいた。
孤島である旧水神の都からの大海原を。
夕日が二人の容姿、を金色に染める。もう色なんてわからない。
一人の男はそうでなくても『黄金の拳』を持つ戦闘狂人。「ライヴ」においても指折りの力を持つ男。
もう一人の男は黄金の男の弟子。熱意と体力しか自信が無い男。
「来るかな、師匠?」
「来るぜ、絶対にな。D9が消えた、つまり奴ら倫理に堕ちたってことだ。必ずD9を使ってくる」
「D9って強いんですか?俺と師匠だったら楽勝じゃないですか?」
弟子は両拳をぶつけ合った。息を荒くして、足の筋肉が緊張している。早く殴り合いたいという気持ちが伝わる。
「お前、ヒエンに勝てないだろ?あれより強いって思ってた方がいいぞ」
「……燃えるじゃないですか」
「だな」
黄金の男は拳を眺めて呟いた。
それは何の意味なのか、この世界に生きる意味なのか。
「最強の力、戦ってみたいぜ。殺し合ってみたいぜ────」
ーーーーーー
ツルギさんと戦闘訓練をしていた。
回避補正の最終調整。
ルーム210のメンバーの相対レベルは越えた。
ほぼ同等。しかし、ギンジさん、アリエさんのレベルは変化しなかった。
強すぎるんだよな、きっと。
今回の戦闘訓練では、銃器の使用を許可された。
「……いい汗が出ているな、オトメ」
「はぁハァ……どうも、まだまだですけどね」
「210の四人では一番強いのか?」
「キョウスケのスキャンでは……ですけど」
「強靭な肉体とスピードのカワセミ、万屋の性能を持つサイケン、瞬間火力の魔術の才能があるガラス、オトメ、いいメンバーだ……そろそろやってみるか……」
ツルギは腰の左側に鞘がある。
しかし、パネル操作で、ストレージからもう一振りの黒い刀を出現させ、右側の腰に差した。
「二本?二刀流ってやつですか?」
「そんな立派なものではない」
刀を抜く、右には「白の零蘭」左には「干支詠」を装備、これがツルギの真骨頂。
「……」
ツルギの斬撃は二本でも威力が堕ちない。むしろ逆、二倍以上になっている。
僕はいつもの如く防ぐと、光化したイノセントが砕けた。
上から二本が僕を引き斬る。
「いっでぇ!つーか折れた!」
折れたイノセントは粒子になって浮遊、元通りになる。
「よ、よかっ……」
「戦場でやるなよ」
ツルギの斬撃は容赦しない。
瞬間移動のエーテルステップで死角に入り、僕の体を切り裂く。
「ぐっ!」
距離を取る。壁を背にして光化したハンドガンを構える。
射撃はもちろんツルギに当たることはない。
わかっている。
「ヘタクソだな」
瞬間移動使いには当たらない。
残りの弾は刀ではじかれる。
「(そこだ)」
発砲と同時にスキル「エリアル・マジック」を使用、初めてツルギさんに使った。
MP-25
ツルギの移動位置の予測は12個所。
その中で最も近い所にスキルを放つ。
下からかちあげる高速斬撃(移動速度上昇LV.3)、地面から三メートル浮いた位置にフォロースルー。
次に、制限距離3メートルの任意の位置に高速移動からのもう一度の高速接近と斬撃。
これが2から4回繰り出せる。
最大のメリットは移動速度上昇と空中での自由移動。攪乱にもなる。
僕が出せた斬撃回数は3回。最低値だ。
このスキルは、攻撃と攻撃の間が0.5秒。
ツルギさんの瞬間移動のクールタイムにはギリギリ間に合うかも。
なんと、一回目の斬撃がツルギにヒット、勿論防がれる。
二回目、これもいなされる。
三回目、渾身の斬撃を繰り出すが、タイミングを掴んだツルギに襟を掴まれた。
「あ」
「まだまだ、だな」
一直線に投げられ、壁に直撃……するところを、姿勢を直し、壁に着地するように足で衝撃を和らげる。
まるで、逆さまに落とされた猫の着地みたい。
「オトメ、お前は何の正義を持って人を殺す?」
「え?急に」
「作戦が開始すれば確実に誰かが死ぬ。勝手に死ぬんじゃない、誰かは誰かに殺される。その時にお前のように迷っていられると困る」
「僕の……正義?」
「死さえ忘れたら、人を殺せるのか?」
ポーカーフェイスで抑揚のないツルギさんでも、この台詞だけは他と違う重みを感じだ。
「僕は、仲間を守りたいから……」
「記憶の価値、お前がどう捉えるのか、それはお前の正義だ。誰も否定できない価値観だ。一旦決めたら今作戦は貫き通せ、修正はその後だ。それでいい」
「────はい。僕は、僕の正義を貫きます」
「それがいい。このクソな場所で一番信用できる唯一だ」
訓練はこれで終了、明日は作戦の日。
夜、210は部屋で円陣を組んでいた。
「えぇ、この度、ツルギ隊長の下につくのはここの四人だ。俺はとても嬉しく、誇らしく思う」
サイケンが司会を務めた。
「サイケンはツルギ隊長が大好きじゃからな!」
「うるさい!これ程の名誉はない!明日、きっと管理者達の首を跳ね飛ばして、この輪廻を終わらせるぞ!」
「ボクも魔術でがんばる!」
「俺も肉弾戦なら得意じゃい、気ぃ張ってこうや」
「……あぁ、終わらせよう」
就寝、僕の中で疑問が生まれた。
それは、ほんのちいさなもの。
死を超越できるなら、この世界を壊す意味はないんじゃないか。
でも、先の訓練でツルギさんに教えられた、今作戦が終わるまでは正義を変えない、これを守った。
守ろうと頑張っていた。
自分が強くなること、内臓を破壊する手の感覚を。
二人は望んでいた。
孤島である旧水神の都からの大海原を。
夕日が二人の容姿、を金色に染める。もう色なんてわからない。
一人の男はそうでなくても『黄金の拳』を持つ戦闘狂人。「ライヴ」においても指折りの力を持つ男。
もう一人の男は黄金の男の弟子。熱意と体力しか自信が無い男。
「来るかな、師匠?」
「来るぜ、絶対にな。D9が消えた、つまり奴ら倫理に堕ちたってことだ。必ずD9を使ってくる」
「D9って強いんですか?俺と師匠だったら楽勝じゃないですか?」
弟子は両拳をぶつけ合った。息を荒くして、足の筋肉が緊張している。早く殴り合いたいという気持ちが伝わる。
「お前、ヒエンに勝てないだろ?あれより強いって思ってた方がいいぞ」
「……燃えるじゃないですか」
「だな」
黄金の男は拳を眺めて呟いた。
それは何の意味なのか、この世界に生きる意味なのか。
「最強の力、戦ってみたいぜ。殺し合ってみたいぜ────」
ーーーーーー
ツルギさんと戦闘訓練をしていた。
回避補正の最終調整。
ルーム210のメンバーの相対レベルは越えた。
ほぼ同等。しかし、ギンジさん、アリエさんのレベルは変化しなかった。
強すぎるんだよな、きっと。
今回の戦闘訓練では、銃器の使用を許可された。
「……いい汗が出ているな、オトメ」
「はぁハァ……どうも、まだまだですけどね」
「210の四人では一番強いのか?」
「キョウスケのスキャンでは……ですけど」
「強靭な肉体とスピードのカワセミ、万屋の性能を持つサイケン、瞬間火力の魔術の才能があるガラス、オトメ、いいメンバーだ……そろそろやってみるか……」
ツルギは腰の左側に鞘がある。
しかし、パネル操作で、ストレージからもう一振りの黒い刀を出現させ、右側の腰に差した。
「二本?二刀流ってやつですか?」
「そんな立派なものではない」
刀を抜く、右には「白の零蘭」左には「干支詠」を装備、これがツルギの真骨頂。
「……」
ツルギの斬撃は二本でも威力が堕ちない。むしろ逆、二倍以上になっている。
僕はいつもの如く防ぐと、光化したイノセントが砕けた。
上から二本が僕を引き斬る。
「いっでぇ!つーか折れた!」
折れたイノセントは粒子になって浮遊、元通りになる。
「よ、よかっ……」
「戦場でやるなよ」
ツルギの斬撃は容赦しない。
瞬間移動のエーテルステップで死角に入り、僕の体を切り裂く。
「ぐっ!」
距離を取る。壁を背にして光化したハンドガンを構える。
射撃はもちろんツルギに当たることはない。
わかっている。
「ヘタクソだな」
瞬間移動使いには当たらない。
残りの弾は刀ではじかれる。
「(そこだ)」
発砲と同時にスキル「エリアル・マジック」を使用、初めてツルギさんに使った。
MP-25
ツルギの移動位置の予測は12個所。
その中で最も近い所にスキルを放つ。
下からかちあげる高速斬撃(移動速度上昇LV.3)、地面から三メートル浮いた位置にフォロースルー。
次に、制限距離3メートルの任意の位置に高速移動からのもう一度の高速接近と斬撃。
これが2から4回繰り出せる。
最大のメリットは移動速度上昇と空中での自由移動。攪乱にもなる。
僕が出せた斬撃回数は3回。最低値だ。
このスキルは、攻撃と攻撃の間が0.5秒。
ツルギさんの瞬間移動のクールタイムにはギリギリ間に合うかも。
なんと、一回目の斬撃がツルギにヒット、勿論防がれる。
二回目、これもいなされる。
三回目、渾身の斬撃を繰り出すが、タイミングを掴んだツルギに襟を掴まれた。
「あ」
「まだまだ、だな」
一直線に投げられ、壁に直撃……するところを、姿勢を直し、壁に着地するように足で衝撃を和らげる。
まるで、逆さまに落とされた猫の着地みたい。
「オトメ、お前は何の正義を持って人を殺す?」
「え?急に」
「作戦が開始すれば確実に誰かが死ぬ。勝手に死ぬんじゃない、誰かは誰かに殺される。その時にお前のように迷っていられると困る」
「僕の……正義?」
「死さえ忘れたら、人を殺せるのか?」
ポーカーフェイスで抑揚のないツルギさんでも、この台詞だけは他と違う重みを感じだ。
「僕は、仲間を守りたいから……」
「記憶の価値、お前がどう捉えるのか、それはお前の正義だ。誰も否定できない価値観だ。一旦決めたら今作戦は貫き通せ、修正はその後だ。それでいい」
「────はい。僕は、僕の正義を貫きます」
「それがいい。このクソな場所で一番信用できる唯一だ」
訓練はこれで終了、明日は作戦の日。
夜、210は部屋で円陣を組んでいた。
「えぇ、この度、ツルギ隊長の下につくのはここの四人だ。俺はとても嬉しく、誇らしく思う」
サイケンが司会を務めた。
「サイケンはツルギ隊長が大好きじゃからな!」
「うるさい!これ程の名誉はない!明日、きっと管理者達の首を跳ね飛ばして、この輪廻を終わらせるぞ!」
「ボクも魔術でがんばる!」
「俺も肉弾戦なら得意じゃい、気ぃ張ってこうや」
「……あぁ、終わらせよう」
就寝、僕の中で疑問が生まれた。
それは、ほんのちいさなもの。
死を超越できるなら、この世界を壊す意味はないんじゃないか。
でも、先の訓練でツルギさんに教えられた、今作戦が終わるまでは正義を変えない、これを守った。
守ろうと頑張っていた。
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