お願いだから噛んで欲しい!

そらうみ

文字の大きさ
上 下
5 / 24
友人にひかれている俺

5

しおりを挟む
俺は今、放課後の教室で机に項垂れていた。
いつものように、教室には俺とりょうしかいない。

亮は先ほどから、項垂れる俺には気にもせず、俺の前の席で勉強をしている。
俺は顔を上げずに話し出した。

「アルファが…いない」

亮からの返事はなく、ノートに書き付ける音だけが聞こえる。
俺は構わずに話し続けた。

「色々な運動部の部活見学に行ったんだ。アルファって部活で活躍してるかなと思って…。
それぞれの部活で、その競技が上手いやつは沢山いたけど、正直誰がアルファなのか分からなかった…」

亮は黙々と勉強を続けている。
俺は顔を上げ、亮の背中に向かって真剣に話す。

「俺…もうダメかもしれない…この前も、男に襲われている夢まで見てしまった」

そこで亮の動きがピタッと止まり、振り返って俺を見た。
その表情に驚きもなく、真剣に俺を見ていた。

れん…それ、俺に話す?」

「俺の遺言。俺は最後まで希望を捨てなかった」

「もう終わろうとしてるな。
そんな夢の内容を暴露するほど、蓮が追い詰められていることが分かった。
蓮が部活見学するって事は、もちろん男子の部活だよな?
蓮は…男のアルファを探しているのか」

亮は手にしていたシャーペンを置き、体全体を俺に向けた。そして、両手を俺の肩に置く。

亮は今までに無いほど真剣な顔をしていた。俺も思わず真剣に見つめ返す。
すると、ゆっくりと亮が話始めた。

「蓮…テスト一週間前だけど、勉強してる?」

「…テスト一週間前で勉強する奴っているの?」

「普段から勉強して、テスト前にテスト範囲を復習する」

「俺テスト勉強って、一夜漬けしかした事ない」

「…蓮、まずは勉強しよう。テストが終わってからアルファの事は考えよう。
俺も一緒に考えるからさ」

そう言って、亮はぽんぽんと俺の肩を叩く。

そうだな。悩んでいても仕方がない。まずは学業に励もう。
その後で、アルファについて考えたらいいか。

俺は亮に微笑んだ。

「そうだな。テストに向けて勉強する。
じゃあまずは…テスト範囲どこかと、ノート見せて下さい」

亮は肩に置いた両手を、そのまま俺の両頬へと持っていき、思いっきりつねってきた。


すごく痛かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悩ましき騎士団長のひとりごと

きりか
BL
アシュリー王国、最強と云われる騎士団長イザーク・ケリーが、文官リュカを伴侶として得て、幸せな日々を過ごしていた。ある日、仕事の為に、騎士団に詰めることとなったリュカ。最愛の傍に居たいがため、団長の仮眠室で、副団長アルマン・マルーンを相手に飲み比べを始め…。 ヤマもタニもない、単に、イザークがやたらとアルマンに絡んで、最後は、リュカに怒られるだけの話しです。 『悩める文官のひとりごと』の攻視点です。 ムーンライト様にも掲載しております。 よろしくお願いします。

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

離したくない、離して欲しくない

mahiro
BL
自宅と家の往復を繰り返していた所に飲み会の誘いが入った。 久しぶりに友達や学生の頃の先輩方とも会いたかったが、その日も仕事が夜中まで入っていたため断った。 そんなある日、社内で女性社員が芸能人が来ると話しているのを耳にした。 テレビなんて観ていないからどうせ名前を聞いたところで誰か分からないだろ、と思いあまり気にしなかった。 翌日の夜、外での仕事を終えて社内に戻って来るといつものように誰もいなかった。 そんな所に『すみません』と言う声が聞こえた。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

その日君は笑った

mahiro
BL
大学で知り合った友人たちが恋人のことで泣く姿を嫌でも見ていた。 それを見ながらそんな風に感情を露に出来る程人を好きなるなんて良いなと思っていたが、まさか平凡な俺が彼らと同じようになるなんて。 最初に書いた作品「泣くなといい聞かせて」の登場人物が出てきます。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。 拙い文章でもお付き合いいただけたこと、誠に感謝申し上げます。 今後ともよろしくお願い致します。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

処理中です...