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しおりを挟む麗らかな日和となったその日、アルドワン公爵家自慢の庭園で茶会が開かれた。
とはいっても極わずかな内輪でのことだ、セレンジェールはディオンズ・ギガジェント皇子だけを招いた。しばしの歓談の後に人払いをした彼女は改めてお礼を言った。
恐縮するディオンズは「礼を言われるほどの事ではない」と苦笑する。
「いいえ、あの時の貴方は救世主のようでしたわ。颯爽と現れて……それからあの男をボコボコに素敵でした」
「は、はは……些かやり過ぎたと反省しているよ」
頭の後ろを掻きながら、視線をどこへやって良いのかわからない皇子はキョロキョロと落ち着かない。そして、ついウッカリ目線を合わせると真っ赤になってしまう始末だ。
「う……し、失礼した!今日はやけに暑いな!暑い暑い!」
「まぁ、うふふ」
緊張が伝わったのかセレンジェールも頬を染て笑う、それから紅茶を一口嚥下して「ほぉ」と溜息を吐く。それに倣った彼もまた茶を飲み干すのだった。
「実は……私達は初めて会うのではないのだ」
「え……それは本当ですか?」
皇子に対して無礼にあたると詫びるセレンジェールは大慌てで椅子から立ち上がり深々と頭を下げる。そんなつもりはなかった皇子はどうか頭を上げて欲しいと言う。
そして、彼は「だいぶ前のことですから気にしないで頂きたい」と笑った。
でもやはり当時どのような事があったのかと気になるというセレンジェールだ、愛しい彼女にどうか教えてと懇願されれば黙っているわけにもいかない。
「あれは王城にて迷子になり途方に暮れていた時にセレンに助けられたのだ、私は当時ヤンチャが過ぎていて護衛や側近をまくことに面白がり過ぎていた。そう、ここの花園に良く似ていたよ」
「あ、まさかあの時の……申し訳ございません、私はてっきり女の子だとばかり、そういえば皇子と名乗っていたわね」
「ええ?それは酷いなぁ、まぁ華奢で細かったから仕方ないか」
「ごめんなさい、ふふふ」
当時の事を思い出したのか、ゆっくりと目を閉じてセレンジェールは「あぁ、懐かしい」と零した。
その時、雨が上がりの空に虹を一緒に見たというではないか。
「大きな虹を見たのです、とてもとても大きく素晴らしい虹をね」
「ああそうだ、思い出した!どうして忘れていたのだろう。大切な思い出だというのに!私は運命だと思った、なぜなら我が国では虹を共に見た男女は結ばれると言い伝えがあるのですよ」
「ま、まぁ……」
困惑するセレンジェールはドギマギする、すると先ほどまで照れていたディオンズは真面目腐った顔で言う。
「どうか、7年越しのこの想いを受け入れてくれないか?私はずっと貴女のことを……愛しているんだセレン」
「ま、まあ……どうしましょう。ですが、私のような傷持ちなど」
「私はずっと待ち続ける!何年でも何十年でもだ!」
「ディオンズ様」
一方で、ディオンズ皇子に伸されたコランタムは三日間も気を失っていた。
そして、目を覚ました彼は何かが足りない気がして仕方ない、それは一体何なのかわからない。
「ううん、俺はどうしちゃったんだ?父上、なにか知らないか?俺は確かセレンの屋敷で……」
堅い馬車に揺れながら途方に暮れる彼を「やれやれ」と言わんばかりの元王はクイクイと下を指す。
「え、何父上……下の方がなんだと言うの?馬車の車輪かい?違うの……?」
「……そろそろ現地につく頃だ、心して励めよ」
「なんだよぉ、教えてくれてもいいじゃないか」
そして、馬車から追い立てられた彼は尿意に気が付く、そして厠に飛び込めば絶叫が轟いた。
「ない!俺のイチモツがない!いやぁあー!ない、どうして!?どこへ行ったのだ俺のXXX!」
彼は移動中に去勢を執行されていた。
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