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しおりを挟む数カ月前の話。
遠く北西を行った帝国の居城ではディオンズ・ギガジェント皇子が執務に従事するため細長い廊下を歩いていた。無駄に長いそれをウンザリしながら「どうにかならないものか」と愚痴る。
「またそれかい、だったら移動魔法をかけては如何か」
「わかっているさレイモン、だがな城に勤める侍女長が魔法陣をすっかり消し去ってしまうのさ。綺麗好きも大概にして欲しい」
「はは、あのばーさんか。今度言っておくよーっと」
軽口を叩くレイモンは、今日の分の資料をどっさり積めた籠を浮遊させて楽し気に鼻歌を奏でていた。
そして、いま議題でもっもと注目されているアネックス国の処遇について考えを巡らせる。
「キミはどう思う?例の色呆け王子の事をさ、自由人で羨ましいよね。ボクも好き勝手やってみたいものさ」
「何を言うんだレイモン、皆が好き放題していたら国が立ち行かなくなるだろうが!」
「わかっているさ、言ってみただけだよ。カリカリしないで」
「ふん!」
南東の平和ボケした小国の事を指摘してきた側近にして友人に、渋い顔をして応えるディオンズは小さく嘆息した。
「あそこはまぁ、あれだ豊かな穀倉地帯だ、最近は傾いてきているな」
「うーん、南一帯の国を豊かにしていたな。南の台所といった所か」
「そうだ、親父殿が立て直しに必死になっている、だが成果はいまいちらしい」
このままでは拙い事を誰もがわかっていたが、肝心のアネックス国が動かないと来た。頭を挿げ替えなければならないと皇帝は思っている。
***
「何?婚姻を結ぶつもりだと?自国の問題を何も解決していないのにか!?」
やけに呑気に構えていると思えば色呆け王子ことコランタム・アネックス王太子がとある令嬢と結婚する気のようだ。
「はーあ。それで婚姻はいつ結ばれるのだ?」
仕事の手を休めることなくディオンズは秘書官に聞いた。すると二十一歳を迎える誕生日に盛大に行われるというではないか。それを聞いた彼はボキリとペンの軸を折ってしまう。
「方々の国が疲弊していると報告済みだよな!しかも盛大だと、アネックスは何を考えているんだ!」
怒った皇子は規模を縮小して行えと早速通達した、渋々の体で「応じます」と返答が返って来たが、空気が読めないのか「是非、皇帝及び皇太子様も御臨席を」という内容が認められた手紙が届く。
「はぁ、ここまで話が通じないとは……平和ボケどころではないな」
属国となったアネックスだが、どうにも自分の顔に火の粉が飛ばないとわかないらしいとディオンズは思う。
「良かろう、私が直接行ってかの国を見定めてこようではないか」
代表としてギガジェントの名の下、結婚式に招待されてやろうと思うのだ。
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