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第3章
3-1 美那はゴキゲンナナメ
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8月4日、日曜日。
さあ、今日は2度目の練習試合だ。空はちょっと曇りがちだけど、予報では基本的に晴れ。
昨晩は香田さんからの連絡に興奮して眠れないかと思ったけど、超低速バランスライディングの疲れがそれを上回っていた。朝まで爆睡、目覚めスッキリだ!
昨日はライディングスクールでまったく練習ができなかったから、朝、ひとりでサスケコートに行って、軽く汗を流す。
美那を待たせないように10時50分には家の前に出て、さらに、かるーくドリブルとハンドリングの練習。
お、美那だ! と思って、明るく手を上げたら、なんか硬い表情で頷くだけ。
家でまた何かあったのかと聞いても、「大丈夫。別にない。ありがと」と、取り付く島もない。でも、少なくとも家のことではなさそうだ。
川崎に着くまでも、ずぅーと無口なまま。「モンスターズ・クッキーとの対戦、楽しみだな」とか話しかけても、「うん。そうだね」とだけしか言わない。視線もほとんど合わせない。
モスバーガーに入っても、アンニュイなまま。
こんな時の美那はほんと扱いがわからん。3on3の試合を観に行く前もやけに事務的なメッセージだったけど、今回のは、あの時ともちょっと違う感じだよなぁー。こういう時は静かにしておいた方がよさそうだ。
物憂げな美那の横顔は、大人っぽくてすげーキレイだ。でも、やっぱり美那は、笑っている方がいい。
オツさんとの待ち合わせは午後1時だったけど、12時45分ごろ、美那にナオさんからメッセージが入った。
美那は無言でスマホを俺に向ける。
――>もう川崎駅に着くんだけど、ミナとリユくんはもう来てる? ペギーたちとは横浜駅で合流した。
「なんだ、横浜で待ち合わせてたのか。だったら俺たちも横浜で合流できたのにな」
「そうだね」
美那はそれだけ言って、ナオさんに返信して、立ち上がる。
さすがにこのまま試合に行くのはまずいだろうと思って、俺は訊く。
「なあ、俺、なんか悪いことしたか?」
バッグを肩にかけた美那が、俺を見る。無理に作ったような笑みを浮かべる。
「別にリユは何も悪いことはしてないよ」
「じゃあ、なんで。なんか不機嫌に見えるんだけど……」
「ごめん。これはわたしの問題だから気にしないで。試合はちゃんとするから」
〝これ〟ってなんだよ。意味わかんねえし。でもあんまり触れられたくないことなんだろうな。
「ああ、わかった」
もやもやは残ったままだけど、そう答えるしかない。
JR南武線のホームで待ち合わせだ。階段を降りていくと、背が高くて目立つ集団がいて、すぐにわかった。
ペギーが俺たちに気づいて、手を振ってくれる。
「ハーイ、ミナ、リユ!」
いつもの笑顔に切り替わった美那が、駆け寄っていく。俺も後に続く。
「今日は、どうも、ありがとう。ばっちり、決めて、きました。楽しみに、しててね」
ペギーが片言の日本語で話しかける。
「あー、アイム、ハッピートゥシーユー、アゲン。アンド、アイム、ルッキングフォワードトゥプレイ、ウィズユー、イン、グッドコンディション!(また会えて嬉しいです。いいコンディションのあなたたちと対戦できるのを楽しみにしています)」
美那が英語で返す。そしてふたりはハイタッチ。
次は、ルーシーが笑顔を見せる。なんか、この間とは雰囲気がだいぶ違う。スポーツ少女に変身してんじゃん!
「ハイ、ミナ、リユ! ディスイズアワユニフォーム!(これ、私たちのユニフォーム!)」
なんとルーシーがバッグから取り出して広げたのは、青いタンクトップの胸のところに白い文字でMonster's Cookieと入ったユニフォームだ。わざわざ作ったのか。それにしても、この名前にこの色……もしかして、セサミストリートのクッキー・モンスターのこと? クッキー・モンスターといえば、セサミストリートで俺が一番好きなキャラじゃん!
「イズ、イット、クッキー、モンスターズ、ブルー?(それってクッキーモンスターの青なの?)」
「ヤー! ザッツ、ライト!(当たり!)」
まじか!
「あー、クッキー・モンスター、イズ、マイ、フェバリットキャラクター、イン、セサミストリート(クッキーモンスターはセサミストリートで僕が一番好きなキャラクターです)」
「オー、リアリ? ビーケアフル、ノットゥビー、ア、クッキー、トゥデイ!」
なにぃー、今日はクッキーにならないように気をつけろ、だとぉ? くそ、なんて言い返したらいいのか、思い浮かばん……。
「OK。サンキュ、フォア、ユア、アドバイス?(忠告をありがとう)」
しまった、語尾上がりになっちまった。
ま、ルーシーが笑ってるから、意味が通ったんだろう。
ナオさんが俺と美那の肩を叩いて、少し離れたところに誘導する。
「来る途中にペギーから頼まれたんだけど、できればルーシーに、なんでこの間はバスケをしなかったか質問しないで欲しいんだって」
「訳ありってこと?」と、美那。
「そうらしい。ちょっとセンシティブなことだから、質問するなら試合が終わってからにして、って」
「わかりました」と美那が答え、俺も同意する。
電車の中では、オツ・ナオとペギー、ジャック、テッドの大人グループと、ルーシーと美那と俺の高校生グループに分かれる。というか、ルーシーが俺たちと話をしたそうな感じだ。
バスケの話題には触れづらくなってしまったけど、ルーシーが音楽の話を振ってくれた。
「ミナとリユはどんな音楽、聴きますか?」
「わたしはJ―ポップかな。あー、ジャパニーズ、ポピュラーソング」
「ゆっくり、話して、くれれば、日本語で、大丈夫です」
「うん。ありがとう。洋楽とかだと、ジャスティン・ビーバー、エド・シーラン、テイラー・スイフト、BTS?」
「ああ、みんな、知ってます。リユは?」
「俺? 俺はあんまり自分で音楽を聴かないから……敢えていうなら、JAZZかな」
「Jazz? 大人っぽい、ですね」
「いや、まあ、母親が聴いているのが聞こえてくるっていう程度だけど」
「リユは、ママと仲がいいのですね」
「そうなの。わたしも、リユのお母さんから、友達みたいに接してもらってる」
「そう、なんですか。素敵な、関係、なんですね」
「いや、別にそんなでもないと思うけど……」
「小説も、そうだったし、マザー、お母さんから、たくさん影響を受けているの、ですね」
「母親とふたり暮らしだから、自然とそうなっちゃうのかな?」
「ああ、そう、なんですか。わたしと、ペギーは、ママと、3人で、暮らして、います。ママとパパは、離婚、しました。でも、パパとママは、仲が悪いわけでは、ありません。生き方が違う、という、理由で、別れました。まだ、1年に何回か、4人で、食事に行ったり、します」
離婚っていっても、いろいろあるもんなんだな。
俺と美那は目を見合わせるけど、今日の美那はすぐに視線を逸らしてしまう。
「ルーシーはどんな音楽を聴くの?」と美那が訊く。
ルーシーが満面の笑みを浮かべる。
「ドゥユーノウ、Billie Eilish? アー……ビリー、アイリッシュ、は、知っていますか?」
俺も美那も首を横に振る。
「わたし、今、ビリーにハマって、います。聴いてみて?」
ルーシーはイヤホンをスマホに挿して、俺たちに差し出した。
俺も美那もなんかぎこちない感じで、美那は左耳、俺は右耳にイヤープラグを入れる。
ルーシーがプレイボタンをタップする。
ちょっとダークな感じの独特なリズム。物憂げで繊細な、囁くような歌声だ。
俺的には割と嫌いじゃない。
ちょうど1曲が終わる頃に、電車が下車駅に到着する。
「どう、でした?」
「わたしは……よくわかんないかな?」
「俺は、割と好き」
「そう。よかった」
ルーシーが俺に微笑む。
え? なに、この感じ。しかも、美那のビミョーな気配が横から伝わってくるし……。普段なら、横から小突いてきそうなのによー。
スマホでマップアプリを開いたオツさんを先頭にして、住宅地の中をくねくねと歩いていく。細い道で日陰が多いので、真夏の昼過ぎだけど、割と快適。15分ほどで、会場がある大きな緑地公園に到着だ。
そこには、プロバスケの試合とかコンサートとかを開くメインアリーナの他に、サブアリーナがあって、今日俺たちが使うのは、観客席のないサブアリーナの方。
1階の更衣室で着替える。他チームとの集合までに時間があったので、オツさんに一声掛けてから、3階にあるサブアリーナをひとりで見に行ってみる。天井が高くて、床もピカピカの立派な体育館。ナイキデビューをした新木場の体育館と近い感じだ。
集合場所のロビーに降りて行くと、10分前なのにもうすでに全員集まっているっぽい。
今回の練習試合はZ―Fourが企画したので、オツさんが主催者だ。美那を含めた各チームの代表と審判らしき人たちと打ち合わせをしている。ペギーの横にはルーシーがいて、通訳している。
ルーシーもペギーと同じようにポニーテールになっている。横須賀のしおかぜ公園では華奢な少女に見えたけど、ハーフパンツから伸びる脚はやっぱりそれなりに筋肉がついている。
集まりに近づくと、「スクリプツ」と「キュームラス」のメンバー達にチラ見される。俺の戦力を査定されてる気分。
ナオさんが俺に気づき、笑顔を浮かべて、歩いてくる。考えてみれば、俺とナオさん以外はバスケ経験者ばかりで、この集まりの中でナオさんは若干浮き気味な感じだ。やっぱ、スポーツってそれぞれに色があるよな。テニスとバスケじゃかなり違うもんな。
「会場はどうだった?」
「新木場と同じで立派だった。気持ち良さそう」
「そうか。ねえ、今日の美那って、いつもとちょっと違う?」
「そうなんっすよ。なんか、よそよそしいっていうか、理由訊いても、言わないし。でも、よく分かりましたね。合流した時は普通に振舞ってように見えたけど」
「うん、まあね。そっか。リユくんとの間になんかあった、ってわけじゃないんだ?」
「はい。俺には思い当たることがなくて……」
「ふぅーん。ま、美那も女子だし、色々あるよね」
「どうなんですかね……」
いや、マジ、わかんねえし。でも、それにしても、ナオさんのセンサーはスゲーな。
さあ、今日は2度目の練習試合だ。空はちょっと曇りがちだけど、予報では基本的に晴れ。
昨晩は香田さんからの連絡に興奮して眠れないかと思ったけど、超低速バランスライディングの疲れがそれを上回っていた。朝まで爆睡、目覚めスッキリだ!
昨日はライディングスクールでまったく練習ができなかったから、朝、ひとりでサスケコートに行って、軽く汗を流す。
美那を待たせないように10時50分には家の前に出て、さらに、かるーくドリブルとハンドリングの練習。
お、美那だ! と思って、明るく手を上げたら、なんか硬い表情で頷くだけ。
家でまた何かあったのかと聞いても、「大丈夫。別にない。ありがと」と、取り付く島もない。でも、少なくとも家のことではなさそうだ。
川崎に着くまでも、ずぅーと無口なまま。「モンスターズ・クッキーとの対戦、楽しみだな」とか話しかけても、「うん。そうだね」とだけしか言わない。視線もほとんど合わせない。
モスバーガーに入っても、アンニュイなまま。
こんな時の美那はほんと扱いがわからん。3on3の試合を観に行く前もやけに事務的なメッセージだったけど、今回のは、あの時ともちょっと違う感じだよなぁー。こういう時は静かにしておいた方がよさそうだ。
物憂げな美那の横顔は、大人っぽくてすげーキレイだ。でも、やっぱり美那は、笑っている方がいい。
オツさんとの待ち合わせは午後1時だったけど、12時45分ごろ、美那にナオさんからメッセージが入った。
美那は無言でスマホを俺に向ける。
――>もう川崎駅に着くんだけど、ミナとリユくんはもう来てる? ペギーたちとは横浜駅で合流した。
「なんだ、横浜で待ち合わせてたのか。だったら俺たちも横浜で合流できたのにな」
「そうだね」
美那はそれだけ言って、ナオさんに返信して、立ち上がる。
さすがにこのまま試合に行くのはまずいだろうと思って、俺は訊く。
「なあ、俺、なんか悪いことしたか?」
バッグを肩にかけた美那が、俺を見る。無理に作ったような笑みを浮かべる。
「別にリユは何も悪いことはしてないよ」
「じゃあ、なんで。なんか不機嫌に見えるんだけど……」
「ごめん。これはわたしの問題だから気にしないで。試合はちゃんとするから」
〝これ〟ってなんだよ。意味わかんねえし。でもあんまり触れられたくないことなんだろうな。
「ああ、わかった」
もやもやは残ったままだけど、そう答えるしかない。
JR南武線のホームで待ち合わせだ。階段を降りていくと、背が高くて目立つ集団がいて、すぐにわかった。
ペギーが俺たちに気づいて、手を振ってくれる。
「ハーイ、ミナ、リユ!」
いつもの笑顔に切り替わった美那が、駆け寄っていく。俺も後に続く。
「今日は、どうも、ありがとう。ばっちり、決めて、きました。楽しみに、しててね」
ペギーが片言の日本語で話しかける。
「あー、アイム、ハッピートゥシーユー、アゲン。アンド、アイム、ルッキングフォワードトゥプレイ、ウィズユー、イン、グッドコンディション!(また会えて嬉しいです。いいコンディションのあなたたちと対戦できるのを楽しみにしています)」
美那が英語で返す。そしてふたりはハイタッチ。
次は、ルーシーが笑顔を見せる。なんか、この間とは雰囲気がだいぶ違う。スポーツ少女に変身してんじゃん!
「ハイ、ミナ、リユ! ディスイズアワユニフォーム!(これ、私たちのユニフォーム!)」
なんとルーシーがバッグから取り出して広げたのは、青いタンクトップの胸のところに白い文字でMonster's Cookieと入ったユニフォームだ。わざわざ作ったのか。それにしても、この名前にこの色……もしかして、セサミストリートのクッキー・モンスターのこと? クッキー・モンスターといえば、セサミストリートで俺が一番好きなキャラじゃん!
「イズ、イット、クッキー、モンスターズ、ブルー?(それってクッキーモンスターの青なの?)」
「ヤー! ザッツ、ライト!(当たり!)」
まじか!
「あー、クッキー・モンスター、イズ、マイ、フェバリットキャラクター、イン、セサミストリート(クッキーモンスターはセサミストリートで僕が一番好きなキャラクターです)」
「オー、リアリ? ビーケアフル、ノットゥビー、ア、クッキー、トゥデイ!」
なにぃー、今日はクッキーにならないように気をつけろ、だとぉ? くそ、なんて言い返したらいいのか、思い浮かばん……。
「OK。サンキュ、フォア、ユア、アドバイス?(忠告をありがとう)」
しまった、語尾上がりになっちまった。
ま、ルーシーが笑ってるから、意味が通ったんだろう。
ナオさんが俺と美那の肩を叩いて、少し離れたところに誘導する。
「来る途中にペギーから頼まれたんだけど、できればルーシーに、なんでこの間はバスケをしなかったか質問しないで欲しいんだって」
「訳ありってこと?」と、美那。
「そうらしい。ちょっとセンシティブなことだから、質問するなら試合が終わってからにして、って」
「わかりました」と美那が答え、俺も同意する。
電車の中では、オツ・ナオとペギー、ジャック、テッドの大人グループと、ルーシーと美那と俺の高校生グループに分かれる。というか、ルーシーが俺たちと話をしたそうな感じだ。
バスケの話題には触れづらくなってしまったけど、ルーシーが音楽の話を振ってくれた。
「ミナとリユはどんな音楽、聴きますか?」
「わたしはJ―ポップかな。あー、ジャパニーズ、ポピュラーソング」
「ゆっくり、話して、くれれば、日本語で、大丈夫です」
「うん。ありがとう。洋楽とかだと、ジャスティン・ビーバー、エド・シーラン、テイラー・スイフト、BTS?」
「ああ、みんな、知ってます。リユは?」
「俺? 俺はあんまり自分で音楽を聴かないから……敢えていうなら、JAZZかな」
「Jazz? 大人っぽい、ですね」
「いや、まあ、母親が聴いているのが聞こえてくるっていう程度だけど」
「リユは、ママと仲がいいのですね」
「そうなの。わたしも、リユのお母さんから、友達みたいに接してもらってる」
「そう、なんですか。素敵な、関係、なんですね」
「いや、別にそんなでもないと思うけど……」
「小説も、そうだったし、マザー、お母さんから、たくさん影響を受けているの、ですね」
「母親とふたり暮らしだから、自然とそうなっちゃうのかな?」
「ああ、そう、なんですか。わたしと、ペギーは、ママと、3人で、暮らして、います。ママとパパは、離婚、しました。でも、パパとママは、仲が悪いわけでは、ありません。生き方が違う、という、理由で、別れました。まだ、1年に何回か、4人で、食事に行ったり、します」
離婚っていっても、いろいろあるもんなんだな。
俺と美那は目を見合わせるけど、今日の美那はすぐに視線を逸らしてしまう。
「ルーシーはどんな音楽を聴くの?」と美那が訊く。
ルーシーが満面の笑みを浮かべる。
「ドゥユーノウ、Billie Eilish? アー……ビリー、アイリッシュ、は、知っていますか?」
俺も美那も首を横に振る。
「わたし、今、ビリーにハマって、います。聴いてみて?」
ルーシーはイヤホンをスマホに挿して、俺たちに差し出した。
俺も美那もなんかぎこちない感じで、美那は左耳、俺は右耳にイヤープラグを入れる。
ルーシーがプレイボタンをタップする。
ちょっとダークな感じの独特なリズム。物憂げで繊細な、囁くような歌声だ。
俺的には割と嫌いじゃない。
ちょうど1曲が終わる頃に、電車が下車駅に到着する。
「どう、でした?」
「わたしは……よくわかんないかな?」
「俺は、割と好き」
「そう。よかった」
ルーシーが俺に微笑む。
え? なに、この感じ。しかも、美那のビミョーな気配が横から伝わってくるし……。普段なら、横から小突いてきそうなのによー。
スマホでマップアプリを開いたオツさんを先頭にして、住宅地の中をくねくねと歩いていく。細い道で日陰が多いので、真夏の昼過ぎだけど、割と快適。15分ほどで、会場がある大きな緑地公園に到着だ。
そこには、プロバスケの試合とかコンサートとかを開くメインアリーナの他に、サブアリーナがあって、今日俺たちが使うのは、観客席のないサブアリーナの方。
1階の更衣室で着替える。他チームとの集合までに時間があったので、オツさんに一声掛けてから、3階にあるサブアリーナをひとりで見に行ってみる。天井が高くて、床もピカピカの立派な体育館。ナイキデビューをした新木場の体育館と近い感じだ。
集合場所のロビーに降りて行くと、10分前なのにもうすでに全員集まっているっぽい。
今回の練習試合はZ―Fourが企画したので、オツさんが主催者だ。美那を含めた各チームの代表と審判らしき人たちと打ち合わせをしている。ペギーの横にはルーシーがいて、通訳している。
ルーシーもペギーと同じようにポニーテールになっている。横須賀のしおかぜ公園では華奢な少女に見えたけど、ハーフパンツから伸びる脚はやっぱりそれなりに筋肉がついている。
集まりに近づくと、「スクリプツ」と「キュームラス」のメンバー達にチラ見される。俺の戦力を査定されてる気分。
ナオさんが俺に気づき、笑顔を浮かべて、歩いてくる。考えてみれば、俺とナオさん以外はバスケ経験者ばかりで、この集まりの中でナオさんは若干浮き気味な感じだ。やっぱ、スポーツってそれぞれに色があるよな。テニスとバスケじゃかなり違うもんな。
「会場はどうだった?」
「新木場と同じで立派だった。気持ち良さそう」
「そうか。ねえ、今日の美那って、いつもとちょっと違う?」
「そうなんっすよ。なんか、よそよそしいっていうか、理由訊いても、言わないし。でも、よく分かりましたね。合流した時は普通に振舞ってように見えたけど」
「うん、まあね。そっか。リユくんとの間になんかあった、ってわけじゃないんだ?」
「はい。俺には思い当たることがなくて……」
「ふぅーん。ま、美那も女子だし、色々あるよね」
「どうなんですかね……」
いや、マジ、わかんねえし。でも、それにしても、ナオさんのセンサーはスゲーな。
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