カイリーユと山下美那、Z(究極)の夏〜高2のふたりが駆け抜けたアツイ季節の記録〜

百一 里優

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第1章

1-22 接戦(2)

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 SSの攻撃だけど、俺が6番ラグビーのパスをインターセプト。
 速攻でショットに入ろうとした俺に、慌てた6番ラグビーがぶつかってくる。
 俺は飛ばされた。
 笛がなる。
 ファウルをもらった。
 6番が「すみません」と謝りに来る。
 なんとフリースローだ。
 練習はしてきたが、緊張する。
 大丈夫だ、得意なはずだ。
「リユ、普段通り」と、美那の声。
 無心になって放ったボールは、きれいな弧を描いて飛んでいく。
 リングにあたらずにスポッとゴールに。
 やった、1点目!
(6対7)

 ここでナオさんと交代だ。
 まだ開始後4分なのに、キツキツだ。
 SSも同じタイミングで8番中バス女子がアウト、10番高バス女子がイン。
 こっちは未経験同士の交代で戦力的に変わらないのに、向こうは中高バスケ部の女子を投入か。
 まずくね?
 とはいえ、こっちはこれ以上持ち駒がないからな。
 テニスで何度も試合を経験しているから予想はしていたけど、試合の疲れは練習とはぜんぜん違う。しかもいきなり対外試合だし。いろんな意味で場数を踏むしかない。
 この試合で勝って、もう1試合しなきゃな。
 ナオさんがやけに熱心なユニフォームの件もあるし。いや、俺も早く着たいしっ!
 思った通り、15番鈴木さんと10番高バス女子のコンビは強力だ。
 ナオさんは6番ラグビーと競るのが精一杯。
 しかも6番は当たりがきつくなっている。唯一勝てそうなのは高さだ。
 15番鈴木さんとオツさんはいい勝負だし、美那は10番高バス女子との競り合いに必死だ。
 しかも10番高バス女子は2ポイントが得意らしく、さらっと決められてしまう。
 SSが4点追加し、6対11と点差が広がる。

 オツさんのオーバーハンドレイアップで1点返すも、鈴木さん、さらには6番ラグビーにもシュートを決められてしまった。
(7対13)

 みるみるうちに点差が開いていく……。
 10番高バス女子に2ポイントを2本決められたら、2(ポイント)×2(倍)×2(本)=8(点)。
 8+13=21で、負けじゃん!
 まずい。
 そんなことはオツさんも美那も百も承知だろう。
 オツさんがナオさんになにか言うと、ナオさんは10番高バス女子がアークの外にいるときは徹底的にマークする。
 高さで2ポイントを打たせない作戦らしい。
 10番高バス女子がドリブルでナオさんを抜くと、すかさず美那がディフェンスする。
 ナオさんが、10番高バス女子からのパスを受けた6番ラグビーをマーク。
 リーチと高さでパスをさせない。
 15番鈴木さんはオツさんが動きを封じる。
 ショットクロックをオーバーさせる。
 やった!
 3人はいいコンビネーションで敵を封じたけど、特にナオさんは運動量が多くなっていて、体力的に厳しそうだ。
 ボールがラインを割る。
 残りは約3分。
 SSは6番ラグビーに代えて、8番中バス女子を投入。
 そして、ナオさんと俺が代わる。
 ナオさんはがっくり肩を落としている。そうかまだ点を取っていない。
 向こうはポイント2倍の女子2人。しかも2人とも経験者だ。
「リユは15番に付いて、とにかく止めて。それとボールを持ったら、思い切ったプレーをして。ドリブルでも2ポイントでもなんでもいいから。リユの実力を見せつけてやって!」
 そう言って美那が俺に弾けるような笑顔を向ける。
 笑いかけてる場合か、と思う一方で、なんて素敵な笑顔なんだ、という思いがそれを上回る。
 なんか今まで見た美那の笑顔の中で最高かも。

 俺たちZの攻撃権でのチェックボールで試合再開。
 3分なら全力で動けそうだ。
 強力な15番鈴木さんをマークだけど、とにかく頑張って抑えるしかない。
 美那からのパスを受ける。
 ドリブルで切り込む。
 15番鈴木さんがゴール前に陣取っているが、かまわず突っ込んでいく。
 2ステップからレイアップを打とうとするけど、鈴木さんの壁は高い。

 ……カイリー・アービング。
 何百回も見たカイリーの動きが頭に浮かぶ。
 同時に俺はボールを右手から左手に持ち替えている。
 鈴木さんが驚いた顔をしている。
 体が落下していく中で、左腕を伸ばして、そっとボールを放つ。
 黄色と青のバスケットボールが、鈴木さんの右手の横を通り過ぎて、スローモーションのようにリングの上に飛んでいく。
 リングの奥に当たって、上に小さく跳ねて、中に落ちていく。
 なんだ、この感覚。
 まるで雲の上にでもいるみたいだ……。

 ナイキのソールが床に触れて、現実に戻る。
 ボールがゴールから落ちてきて、床の上でタン、タン、タンと跳ねる。
「鈴木さん、ボール」と、10番女子が叫ぶ。
 我に返った15番鈴木さんが、ボールを取ろうとするが、ハンブルして、ラインの外に出てしまう。
 スコアボードの数字は8と13に変わっている。
 チェックボールの美那からのパスを受け、10番高バス女子との1on1。
 そう簡単には抜かさせてくれない。
 美那がパスのゾーンに走りこんでくる。
 10番の気がれる。
 バックステップ。
 たぶんアークの外。
 膝を使って、やわらかくロングシュートを放つ。
 放物線はリングへと伸びていく。
 入った!
 白いナイキは両方ともちゃんと外にある!
 2点追加。
(10対13)

 残りはあと2分を切っている。
 8番中バス女子の2ポイント狙いを美那がブロックするけど、拾った10番高バス女子にシュートを決められてしまう。
(10対15)
 Zの攻撃では、ゴール下でオツさんと鈴木さんが競り合い、オツさんが勝つ。
(11対15)
 続くSSの攻撃は、早いパス回しから鈴木さんにダンクを返される。
(11対16)

 次のZの攻めでは、オツさんからのパスを俺が痛恨のハンブル。
 15番鈴木さんから外の10番高バス女子に回され、美那の必死のブロックも届かず。2ポイントを成功されてしまった。
 SSが、4点追加。
(11対20)
 ワンゴール取られたら負けだ。

 俺から美那へのパスを8番中バス女子が手に当てる。
 ボールはコートの外に転がり出る。
 ここで美那が審判にタイムアウトを要求。
 輪になってコートに座る。
 ポカリを補給だ。
「あと10点を最短で取るには……わたしが2ポイント2本で8点、リユの2ポイント1本で10点か」
 美那がすげー計算をし始める。
「俺はおとりにでもなんでも使ってくれ。どんな球でも対応してやる。とにかく失点をゼロに抑えて、ゴールを決めるだけだ」
 オツさんもなりふり構わない感じだ。
「ナオさんの高さを活かす手はないのか?」
 と、俺が珍しく意見を挟む。
「たとえば?」と、美那が興味を示す。
「ナオさんをゴール下で鈴木さんとらせる。鈴木さんのシュートを阻止する。8番と10番は背が低い。美那がかき回して、オツさんを通してナオさんの高さを活かすとか」
「ディフェンスは可能かもしれないが、15番相手でナオがゴールを決めるのは難しいだろう。どうだ、ナオ?」
「難しいとは思うけど、何回かチャンスがあれば1回くらいは……少なくとも高さでは勝ってたと思う」
「確かにそうだな。どうだ美那?」
 美那は目を閉じて考えている。
「わかった。わたしとナオさんが交代する」
「マジ?」と、俺
「本気かミナ?」
 オツさんも目を見開いている。
「引っ掻き回すならリユのほうがうまい。バスケじゃないから。あ、これめてるんだからね。向こうもわたしとナオの交代は想定外なんじゃないかな。相手を混乱させられる。それにオツとナオの2枚の高さは脅威だよね。ただ、オツは相当運動量が要求される。ポイントガードとセンターの両方を並行してこなしてもらうイメージ。可能かどうかわかんないけど」
「やってみるか。面白そうじゃないか」
 オツさんもなんだかやる気だ。
「とにかくナオさんに1本決めてもらって、そしたらまたわたしと交代。それでどう?」
「いいんじゃないか?」
 なんかオツさんまで楽しそうだ。
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