後発オメガの幸せな初恋 You're gonna be fine.

大島Q太

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19.初めてのお泊り

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晩御飯はうちでは見ることが叶わないであろう、おしゃれなクリスマスディナーだった。チキンレッグははちみつとショウガを利かせた醤油味だったのでなじみのある味だったけど複雑で、ナイフとフォークで食べるのはちょっと緊張した。俺以外の3人は当たり前のようにきれいに骨から身を外して食べている。
クラムチャウダーもサラダもお店で食べるみたいにおいしかったし、俺は初めてラザニアと言うものを食べた。家に帰ったら母に教えてあげよう。

手を合わせてごちそうさまを言った。おばあさまが食べさせ甲斐があっていいねと言ってくれた。俺は緩んだ顔をしていたみたいだ。ほほえまし気におばあさま達に見られていた。
「すっげうまかったです!」
至君の恋人としては子供っぽかったのかもしれない。俺は慌てて言い直した。
「とてもおいしかったです」
至君がぷっと笑い出して、おじいさままで笑うから目に力を入れた。

「お口に合って嬉しいよ。とおるん」
おばあさまが俺をとおるんと呼ぶ。至君もおじいさまももう隠さずに笑い出した。二人は笑い上戸なんだと思うことにした。おばあさまが片付けを始めたので俺はそれを手伝うべく逃げた。

おばあさまにエプロンを付けてもらって俺はおばあさまが洗ったお皿を濯ぐ係を任された。
「うちはさ。旦那も娘も孫もぜんぶアルファだから、こんな風に同じオメガの子と知り合えてすごくうれしいよ」
おばあさまはにっこりと笑う。

「俺は最近まで知らなかったんですけど。亡くなったひいばあちゃんがオメガだったそうです。それ以外家族みんなベータです。学校でオメガの友達はできたけど。身近にアルファの人って至君とバイト先の店長しか知らなくて」
キッチンは対面でおじいさまと至君はダイニングの向こう側のソファに座り、二人してこちらを見ていた。

「至君は俺のバイト先の…ケーキ屋のお客さんで」
俺が濯ぎ終わったお皿を洗う作業が終わったおばあさまが柔らかそうな布で拭いている。

「夏にいっくんがうちでバイトするようになって、帰りにケーキを買って帰るようになって、優しい子に育ったって喜んでたんだよ。とおるんに会うためだったんだね」
俺を上目遣いでにらむ仕草はかわいらしかった。

「あっ。いや、おばあさまのために買って帰ったのだと思います、おばあさまが甘いものが好きだって言ってたから」
慌ててフォローする。

「とおるんはいい子だね。一日おきに買って帰って来てたから何かあると思ってね。僕たちも買いに行ったことがあるんだよ」
俺は濯ぎ終わって手を拭いた。おばあさまが食器をしまう場所を教えてくれたので拭き終わったお皿をそれぞれの場所に戻す。

「えっ、すみません。はじめましてって言ってしまいました」

「それが普通なんだよ。不特定多数が出入りするんだから。いっくんは特別だったんだね」

おばあさまがニヤリと笑う。俺は座っている至君を見た。手を振っている、なんとなく振り返した。おばあさまがお盆にカップを4つ並べる。

「身内が言うと説得力ないけど。うちのいっくんはいい男だよ」
「はい。すごくかっこいいです」
おばあさまは笑い出す。

「素直で良いね、とおるんは」
言葉を反芻して赤面した。俺は身内相手に堂々と惚気たのだ。おばあさまが俺の頭をポンポンと撫でて。コーヒーの入ったデカンタと温めたミルクをお盆にのせて俺に持たせた。

「ばあちゃんと打ち解けてんね。妬くんだけど」
カップを並べてソファに座ると至君が強引に俺を引き寄せる。…この距離は近すぎる。そう思っておじいさまを見ると至君と同じことをしていた。アルファとしては当たり前の距離感なのか。おばあさまは目が合うとちょっと呆れた風に笑って見せた。

「あ、アイコンタクト!もう!これ飲んだら部屋に帰る」

そうして至君は宣言通りコーヒーを飲み終わると俺の手を引いた。
俺が戸惑いながら至君の部屋で立っていると。さっさと敷布団を敷き始めた。そして、敷き終わるとおもむろに両手を広げておいでと言ってくる。
和室のお布団なんて生々しすぎて一気に顔が赤くなる。俺がためらっていると至君は立ち上がって俺を抱き上げお布団に引き込んだ。後ろから抱き込まれて背中におでこを付けられた。
「透が家族と仲良くするのは嬉しいけど。妬くなぁ」
至君ってそう言うことを恥ずかしげもなく堂々と言えるところがすごいと思う。けれど、そう言うところもかっこいいと思うんだから俺も至君に染まっている。
「このままだと、至君の顔が見られないんだけど。至君と向かい合いたいな」
「まったく、透はほんとに危機感が無さ過ぎる。こんな風に布団で抱き込まれている時にそう言う事言うと襲われるよ?」
お…襲われるって。
「至君はそんなこと強引にしない人だよ。顔が見たいんだ。ダメ?」
至君がうなりながらお腹に回した手を緩めてくれた。俺はごそごそと体の向きを変えて至君の方を見た。目が合うと自然と唇を寄せ合う。

結局言葉はいらなかった。お互いの匂いに溺れるように抱き締め合ってキスを繰り返し、至君の手のひらを肌で感じながら目を閉じると朝になっていた。
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