19 / 34
19.初めてのお泊り
しおりを挟む
晩御飯はうちでは見ることが叶わないであろう、おしゃれなクリスマスディナーだった。チキンレッグははちみつとショウガを利かせた醤油味だったのでなじみのある味だったけど複雑で、ナイフとフォークで食べるのはちょっと緊張した。俺以外の3人は当たり前のようにきれいに骨から身を外して食べている。
クラムチャウダーもサラダもお店で食べるみたいにおいしかったし、俺は初めてラザニアと言うものを食べた。家に帰ったら母に教えてあげよう。
手を合わせてごちそうさまを言った。おばあさまが食べさせ甲斐があっていいねと言ってくれた。俺は緩んだ顔をしていたみたいだ。ほほえまし気におばあさま達に見られていた。
「すっげうまかったです!」
至君の恋人としては子供っぽかったのかもしれない。俺は慌てて言い直した。
「とてもおいしかったです」
至君がぷっと笑い出して、おじいさままで笑うから目に力を入れた。
「お口に合って嬉しいよ。とおるん」
おばあさまが俺をとおるんと呼ぶ。至君もおじいさまももう隠さずに笑い出した。二人は笑い上戸なんだと思うことにした。おばあさまが片付けを始めたので俺はそれを手伝うべく逃げた。
おばあさまにエプロンを付けてもらって俺はおばあさまが洗ったお皿を濯ぐ係を任された。
「うちはさ。旦那も娘も孫もぜんぶアルファだから、こんな風に同じオメガの子と知り合えてすごくうれしいよ」
おばあさまはにっこりと笑う。
「俺は最近まで知らなかったんですけど。亡くなったひいばあちゃんがオメガだったそうです。それ以外家族みんなベータです。学校でオメガの友達はできたけど。身近にアルファの人って至君とバイト先の店長しか知らなくて」
キッチンは対面でおじいさまと至君はダイニングの向こう側のソファに座り、二人してこちらを見ていた。
「至君は俺のバイト先の…ケーキ屋のお客さんで」
俺が濯ぎ終わったお皿を洗う作業が終わったおばあさまが柔らかそうな布で拭いている。
「夏にいっくんがうちでバイトするようになって、帰りにケーキを買って帰るようになって、優しい子に育ったって喜んでたんだよ。とおるんに会うためだったんだね」
俺を上目遣いでにらむ仕草はかわいらしかった。
「あっ。いや、おばあさまのために買って帰ったのだと思います、おばあさまが甘いものが好きだって言ってたから」
慌ててフォローする。
「とおるんはいい子だね。一日おきに買って帰って来てたから何かあると思ってね。僕たちも買いに行ったことがあるんだよ」
俺は濯ぎ終わって手を拭いた。おばあさまが食器をしまう場所を教えてくれたので拭き終わったお皿をそれぞれの場所に戻す。
「えっ、すみません。はじめましてって言ってしまいました」
「それが普通なんだよ。不特定多数が出入りするんだから。いっくんは特別だったんだね」
おばあさまがニヤリと笑う。俺は座っている至君を見た。手を振っている、なんとなく振り返した。おばあさまがお盆にカップを4つ並べる。
「身内が言うと説得力ないけど。うちのいっくんはいい男だよ」
「はい。すごくかっこいいです」
おばあさまは笑い出す。
「素直で良いね、とおるんは」
言葉を反芻して赤面した。俺は身内相手に堂々と惚気たのだ。おばあさまが俺の頭をポンポンと撫でて。コーヒーの入ったデカンタと温めたミルクをお盆にのせて俺に持たせた。
「ばあちゃんと打ち解けてんね。妬くんだけど」
カップを並べてソファに座ると至君が強引に俺を引き寄せる。…この距離は近すぎる。そう思っておじいさまを見ると至君と同じことをしていた。アルファとしては当たり前の距離感なのか。おばあさまは目が合うとちょっと呆れた風に笑って見せた。
「あ、アイコンタクト!もう!これ飲んだら部屋に帰る」
そうして至君は宣言通りコーヒーを飲み終わると俺の手を引いた。
俺が戸惑いながら至君の部屋で立っていると。さっさと敷布団を敷き始めた。そして、敷き終わるとおもむろに両手を広げておいでと言ってくる。
和室のお布団なんて生々しすぎて一気に顔が赤くなる。俺がためらっていると至君は立ち上がって俺を抱き上げお布団に引き込んだ。後ろから抱き込まれて背中におでこを付けられた。
「透が家族と仲良くするのは嬉しいけど。妬くなぁ」
至君ってそう言うことを恥ずかしげもなく堂々と言えるところがすごいと思う。けれど、そう言うところもかっこいいと思うんだから俺も至君に染まっている。
「このままだと、至君の顔が見られないんだけど。至君と向かい合いたいな」
「まったく、透はほんとに危機感が無さ過ぎる。こんな風に布団で抱き込まれている時にそう言う事言うと襲われるよ?」
お…襲われるって。
「至君はそんなこと強引にしない人だよ。顔が見たいんだ。ダメ?」
至君がうなりながらお腹に回した手を緩めてくれた。俺はごそごそと体の向きを変えて至君の方を見た。目が合うと自然と唇を寄せ合う。
結局言葉はいらなかった。お互いの匂いに溺れるように抱き締め合ってキスを繰り返し、至君の手のひらを肌で感じながら目を閉じると朝になっていた。
クラムチャウダーもサラダもお店で食べるみたいにおいしかったし、俺は初めてラザニアと言うものを食べた。家に帰ったら母に教えてあげよう。
手を合わせてごちそうさまを言った。おばあさまが食べさせ甲斐があっていいねと言ってくれた。俺は緩んだ顔をしていたみたいだ。ほほえまし気におばあさま達に見られていた。
「すっげうまかったです!」
至君の恋人としては子供っぽかったのかもしれない。俺は慌てて言い直した。
「とてもおいしかったです」
至君がぷっと笑い出して、おじいさままで笑うから目に力を入れた。
「お口に合って嬉しいよ。とおるん」
おばあさまが俺をとおるんと呼ぶ。至君もおじいさまももう隠さずに笑い出した。二人は笑い上戸なんだと思うことにした。おばあさまが片付けを始めたので俺はそれを手伝うべく逃げた。
おばあさまにエプロンを付けてもらって俺はおばあさまが洗ったお皿を濯ぐ係を任された。
「うちはさ。旦那も娘も孫もぜんぶアルファだから、こんな風に同じオメガの子と知り合えてすごくうれしいよ」
おばあさまはにっこりと笑う。
「俺は最近まで知らなかったんですけど。亡くなったひいばあちゃんがオメガだったそうです。それ以外家族みんなベータです。学校でオメガの友達はできたけど。身近にアルファの人って至君とバイト先の店長しか知らなくて」
キッチンは対面でおじいさまと至君はダイニングの向こう側のソファに座り、二人してこちらを見ていた。
「至君は俺のバイト先の…ケーキ屋のお客さんで」
俺が濯ぎ終わったお皿を洗う作業が終わったおばあさまが柔らかそうな布で拭いている。
「夏にいっくんがうちでバイトするようになって、帰りにケーキを買って帰るようになって、優しい子に育ったって喜んでたんだよ。とおるんに会うためだったんだね」
俺を上目遣いでにらむ仕草はかわいらしかった。
「あっ。いや、おばあさまのために買って帰ったのだと思います、おばあさまが甘いものが好きだって言ってたから」
慌ててフォローする。
「とおるんはいい子だね。一日おきに買って帰って来てたから何かあると思ってね。僕たちも買いに行ったことがあるんだよ」
俺は濯ぎ終わって手を拭いた。おばあさまが食器をしまう場所を教えてくれたので拭き終わったお皿をそれぞれの場所に戻す。
「えっ、すみません。はじめましてって言ってしまいました」
「それが普通なんだよ。不特定多数が出入りするんだから。いっくんは特別だったんだね」
おばあさまがニヤリと笑う。俺は座っている至君を見た。手を振っている、なんとなく振り返した。おばあさまがお盆にカップを4つ並べる。
「身内が言うと説得力ないけど。うちのいっくんはいい男だよ」
「はい。すごくかっこいいです」
おばあさまは笑い出す。
「素直で良いね、とおるんは」
言葉を反芻して赤面した。俺は身内相手に堂々と惚気たのだ。おばあさまが俺の頭をポンポンと撫でて。コーヒーの入ったデカンタと温めたミルクをお盆にのせて俺に持たせた。
「ばあちゃんと打ち解けてんね。妬くんだけど」
カップを並べてソファに座ると至君が強引に俺を引き寄せる。…この距離は近すぎる。そう思っておじいさまを見ると至君と同じことをしていた。アルファとしては当たり前の距離感なのか。おばあさまは目が合うとちょっと呆れた風に笑って見せた。
「あ、アイコンタクト!もう!これ飲んだら部屋に帰る」
そうして至君は宣言通りコーヒーを飲み終わると俺の手を引いた。
俺が戸惑いながら至君の部屋で立っていると。さっさと敷布団を敷き始めた。そして、敷き終わるとおもむろに両手を広げておいでと言ってくる。
和室のお布団なんて生々しすぎて一気に顔が赤くなる。俺がためらっていると至君は立ち上がって俺を抱き上げお布団に引き込んだ。後ろから抱き込まれて背中におでこを付けられた。
「透が家族と仲良くするのは嬉しいけど。妬くなぁ」
至君ってそう言うことを恥ずかしげもなく堂々と言えるところがすごいと思う。けれど、そう言うところもかっこいいと思うんだから俺も至君に染まっている。
「このままだと、至君の顔が見られないんだけど。至君と向かい合いたいな」
「まったく、透はほんとに危機感が無さ過ぎる。こんな風に布団で抱き込まれている時にそう言う事言うと襲われるよ?」
お…襲われるって。
「至君はそんなこと強引にしない人だよ。顔が見たいんだ。ダメ?」
至君がうなりながらお腹に回した手を緩めてくれた。俺はごそごそと体の向きを変えて至君の方を見た。目が合うと自然と唇を寄せ合う。
結局言葉はいらなかった。お互いの匂いに溺れるように抱き締め合ってキスを繰り返し、至君の手のひらを肌で感じながら目を閉じると朝になっていた。
21
お気に入りに追加
467
あなたにおすすめの小説
これがおれの運命なら
やなぎ怜
BL
才能と美貌を兼ね備えたあからさまなαであるクラスメイトの高宮祐一(たかみや・ゆういち)は、実は立花透(たちばな・とおる)の遠い親戚に当たる。ただし、透の父親は本家とは絶縁されている。巻き返しを図る透の父親はわざわざ息子を祐一と同じ高校へと進学させた。その真意はΩの息子に本家の後継ぎたる祐一の子を孕ませるため。透は父親の希望通りに進学しながらも、「急いては怪しまれる」と誤魔化しながら、その実、祐一には最低限の接触しかせず高校生活を送っていた。けれども祐一に興味を持たれてしまい……。
※オメガバース。Ωに厳しめの世界。
※性的表現あり。
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
恋のキューピットは歪な愛に招かれる
春於
BL
〈あらすじ〉
ベータの美坂秀斗は、アルファである両親と親友が運命の番に出会った瞬間を目の当たりにしたことで心に深い傷を負った。
それも親友の相手は自分を慕ってくれていた後輩だったこともあり、それからは二人から逃げ、自分の心の傷から目を逸らすように生きてきた。
そして三十路になった今、このまま誰とも恋をせずに死ぬのだろうと思っていたところにかつての親友と遭遇してしまう。
〈キャラクター設定〉
美坂(松雪) 秀斗
・ベータ
・30歳
・会社員(総合商社勤務)
・物静かで穏やか
・仲良くなるまで時間がかかるが、心を許すと依存気味になる
・自分に自信がなく、消極的
・アルファ×アルファの政略結婚をした両親の元に生まれた一人っ子
・両親が目の前で運命の番を見つけ、自分を捨てたことがトラウマになっている
養父と正式に養子縁組を結ぶまでは松雪姓だった
・行方をくらますために一時期留学していたのもあり、語学が堪能
二見 蒼
・アルファ
・30歳
・御曹司(二見不動産)
・明るくて面倒見が良い
・一途
・独占欲が強い
・中学3年生のときに不登校気味で1人でいる秀斗を気遣って接しているうちに好きになっていく
・元々家業を継ぐために学んでいたために優秀だったが、秀斗を迎え入れるために誰からも文句を言われぬように会社を繁栄させようと邁進してる
・日向のことは家族としての好意を持っており、光希のこともちゃんと愛している
・運命の番(日向)に出会ったときは本能によって心が惹かれるのを感じたが、秀斗の姿がないのに気づくと同時に日向に向けていた熱はすぐさま消え去った
二見(筒井) 日向
・オメガ
・28歳
・フリーランスのSE(今は育児休業中)
・人懐っこくて甘え上手
・猪突猛進なところがある
・感情豊かで少し気分の浮き沈みが激しい
・高校一年生のときに困っている自分に声をかけてくれた秀斗に一目惚れし、絶対に秀斗と結婚すると決めていた
・秀斗を迎え入れるために早めに子どもをつくろうと蒼と相談していたため、会社には勤めずにフリーランスとして仕事をしている
・蒼のことは家族としての好意を持っており、光希のこともちゃんと愛している
・運命の番(蒼)に出会ったときは本能によって心が惹かれるのを感じたが、秀斗の姿がないのに気づいた瞬間に絶望をして一時期病んでた
※他サイトにも掲載しています
ビーボーイ創作BL大賞3に応募していた作品です
その溺愛は伝わりづらい
海野幻創
BL
人好きのする端正な顔立ちを持ち、文武両道でなんでも無難にこなせることのできた生田雅紀(いくたまさき)は、小さい頃から多くの友人に囲まれていた。
しかし他人との付き合いは広く浅くの最小限に留めるタイプで、女性とも身体だけの付き合いしかしてこなかった。
偶然出会った久世透(くぜとおる)は、嫉妬を覚えるほどのスタイルと美貌をもち、引け目を感じるほどの高学歴で、議員の孫であり大企業役員の息子だった。
御曹司であることにふさわしく、スマートに大金を使ってみせるところがありながら、生田の前では捨てられた子犬のようにおどおどして気弱な様子を見せ、そのギャップを生田は面白がっていたのだが……。
これまで他人と深くは関わってこなかったはずなのに、会うたびに違う一面を見せる久世は、いつしか生田にとって離れがたい存在となっていく。
【7/27完結しました。読んでいただいてありがとうございました。】
【続編も8/17完結しました。】
「その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/911896785
↑この続編は、R18の過激描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
【完結】終わりとはじまりの間
ビーバー父さん
BL
ノンフィクションとは言えない、フィクションです。
プロローグ的なお話として完結しました。
一生のパートナーと思っていた亮介に、子供がいると分かって別れることになった桂。
別れる理由も奇想天外なことながら、その行動も考えもおかしい亮介に心身ともに疲れるころ、
桂のクライアントである若狭に、亮介がおかしいということを同意してもらえたところから、始まりそうな関係に戸惑う桂。
この先があるのか、それとも……。
こんな思考回路と関係の奴らが実在するんですよ。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる