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身代わり
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「うわぁぁ!!し、し、しん………あれ?」
「ふふっ」
首を巨大な鎌で切られて死んだと思い、顔が真っ青になった。
でも、目の前は暗くならずファントムが見える。
確かに俺の首を貫通した筈なのに、生きてるなんてそんな事あるのか?
痛みはなく、あるとすれば身体が軽くなった気がするくらいだ。
首に触れると、繋がっているのに安堵するのと同時に不思議な感触がした。
無機質なそれは皮膚のようには見えなかった。
ファントムの持つ大鎌は、今の俺の姿を映し出していた。
俺の首には、銀色の首輪が嵌められていた。
「これって、レオンハルトと同じ…」
「そう、魂切りの契約首輪……君が彼の代わりになってくれるんだろ?」
「それが、彼を解放する条件」と俺の唇を撫でられて、ギュッと唇を閉じた。
口を開けていたら、ファントムの指を舐めるところだった。
俺が犠牲になれば、レオンハルトは助かる。
でも、レオンハルトは俺が身代わりになるのを良いとは思わない。
他に方法がないかファントムに向かって口を開いた。
その時、腕と腹に忘れていた痛みが走り眉を寄せた。
リーシャのおかげで痛みがなくなったのに、なんでこんなに痛いんだ。
激痛に涙で視界がぼやけて、結果的にファントムの瞳から逃れられた。
「痛っ…」
「神獣のおかげでラルフに与えられた傷を紛らわしたんだね」
「神獣……リーシャは」
「魂切りで追い出した、邪魔だったからね」
リーシャのおかげで痛みが引いたから、この身体の軽さはリーシャが俺の中にいないという事になる。
ナイトのところに戻ったならいいけど、不安が拭えない。
顎を掴まれて、ファントムと見つめ合う。
レオンハルトの代わりって、俺に何をさせる気なんだ?
そもそも、レオンハルトはファントムに何をさせられたんだろう。
教えてくれなかったから分からないが、もしかして俺みたいに魅入られて……
考え事をしていたら、痛む腕を掴まれて声を上げた。
歯を食いしばり、俺の腕を掴むファントムの腕に爪を立てた。
「離…してっくださっ!!」
「これじゃあ使い物にならないなぁ、そうだな…」
俺の言葉を無視したファントムは勝手に話を進めていた。
俺の耳に唇を寄せて、吐息混じりで囁かれた。
痛みとわけが分からない快楽に頭が支配される。
ファントムの目を見なくても、身体は覚えている。
一息だけでも、魅入られてしまう。
俺の視界がぐにゃぐにゃと歪み、一筋の光が見えた。
それは全身を包み込むほどの強い電流だった。
校舎がボロボロと崩れて、俺の身体も傾いた。
地面に寝転がる格好になり、呆然と空を眺めた。
明るいと思っていたのに、もう空は暗くなっていた。
横を見ると、レオンハルトの身体が電流に包まれていた。
そうか、首輪が外れて力を最大限に発揮出来たのか。
起き上がると激痛が走り、小さな呻き声を上げた。
レオンハルトが近付いてきて、俺の身体を優しく包み込むように抱きしめられた。
「梓、良かった…無事で」
「レオンハルトも力が戻ったみたいで良かった」
周りを見渡すと、森の中に俺達だけがそこにいた。
まさか、あの校舎丸ごと幻想の力だったのか。
ナイトの力で幻想が解かれたと思ったが、雷じゃないとダメだったのか。
周りを見渡してナイトの事を探すと、少し離れたところに倒れているナイトがいた。
ナイトに近付くと、リーシャが傍にいて俺とレオンハルトを見ていた。
「大丈夫だ」とリーシャに言われたが、目を開けるまで安心出来ない。
神獣がいない中で、幻想の王位継承者と戦ってくれたんだから。
口に血が付いていて、指で拭うと目蓋を震わせて目を開けた。
「良かった、痛みはないか?」
「……頭が少し痛い、本気でぶん殴りやがって……アイツ」
ナイトは上半身を起こして頭を抱えていた。
俺の膝を枕にして、再び眠りについた。
部屋のベッドで寝た方が、硬い男の枕よりも目覚めが良いのにな。
そう思いつつ、ナイトに「お疲れ様、ありがとう」と言って頭を撫でた。
後ろからレオンハルトの腕が伸びてきて、俺の首筋に触れた。
そのまま首輪を掴んでいるから、すぐにバレるよなと乾いた笑いしか出ない。
最後に言っていたファントムの言葉を思い出した。
「大きな祭が学園内でやるみたいだから、それ終わるまで完治しといてよ……今日とは違うカタチで監獄クラスに招待しよう、私のペット」と、やたら色気のある声で言われた。
俺、ファントムのペットになるのか?どういう事?
レオンハルトもペットにされたのか、ちょっと気になる。
「なんで梓馬の首にこんなものがあるんだ」
「えっと、油断してて…ごめん」
「まさか、僕の代わりになったんじゃ…」
「大丈夫だって、どうせ俺は魔力が使えないし…すぐに飽きて解放してくれるって」
「……すまなかった」
「レオンハルトは何も悪くないって、俺が決めた事だから」
「梓馬」
申し訳なさそうなレオンハルトの頭に触れて、大丈夫だと腕を伸ばして頭を撫でた。
いつの間にか起きたのか、下からナイトの声が聞こえた。
俺の首輪に触れていて、やっぱり気になるよなと苦笑いした。
そして、ナイトが口を開いて「勃ってる?」と言われた。
さっきのファントムで、すっかり忘れていた。
俺の周りだけ、冷気が吹いて身体を震わせた。
これはナイトの魔力ではなく、俺の羞恥心から来るものだった。
「ふふっ」
首を巨大な鎌で切られて死んだと思い、顔が真っ青になった。
でも、目の前は暗くならずファントムが見える。
確かに俺の首を貫通した筈なのに、生きてるなんてそんな事あるのか?
痛みはなく、あるとすれば身体が軽くなった気がするくらいだ。
首に触れると、繋がっているのに安堵するのと同時に不思議な感触がした。
無機質なそれは皮膚のようには見えなかった。
ファントムの持つ大鎌は、今の俺の姿を映し出していた。
俺の首には、銀色の首輪が嵌められていた。
「これって、レオンハルトと同じ…」
「そう、魂切りの契約首輪……君が彼の代わりになってくれるんだろ?」
「それが、彼を解放する条件」と俺の唇を撫でられて、ギュッと唇を閉じた。
口を開けていたら、ファントムの指を舐めるところだった。
俺が犠牲になれば、レオンハルトは助かる。
でも、レオンハルトは俺が身代わりになるのを良いとは思わない。
他に方法がないかファントムに向かって口を開いた。
その時、腕と腹に忘れていた痛みが走り眉を寄せた。
リーシャのおかげで痛みがなくなったのに、なんでこんなに痛いんだ。
激痛に涙で視界がぼやけて、結果的にファントムの瞳から逃れられた。
「痛っ…」
「神獣のおかげでラルフに与えられた傷を紛らわしたんだね」
「神獣……リーシャは」
「魂切りで追い出した、邪魔だったからね」
リーシャのおかげで痛みが引いたから、この身体の軽さはリーシャが俺の中にいないという事になる。
ナイトのところに戻ったならいいけど、不安が拭えない。
顎を掴まれて、ファントムと見つめ合う。
レオンハルトの代わりって、俺に何をさせる気なんだ?
そもそも、レオンハルトはファントムに何をさせられたんだろう。
教えてくれなかったから分からないが、もしかして俺みたいに魅入られて……
考え事をしていたら、痛む腕を掴まれて声を上げた。
歯を食いしばり、俺の腕を掴むファントムの腕に爪を立てた。
「離…してっくださっ!!」
「これじゃあ使い物にならないなぁ、そうだな…」
俺の言葉を無視したファントムは勝手に話を進めていた。
俺の耳に唇を寄せて、吐息混じりで囁かれた。
痛みとわけが分からない快楽に頭が支配される。
ファントムの目を見なくても、身体は覚えている。
一息だけでも、魅入られてしまう。
俺の視界がぐにゃぐにゃと歪み、一筋の光が見えた。
それは全身を包み込むほどの強い電流だった。
校舎がボロボロと崩れて、俺の身体も傾いた。
地面に寝転がる格好になり、呆然と空を眺めた。
明るいと思っていたのに、もう空は暗くなっていた。
横を見ると、レオンハルトの身体が電流に包まれていた。
そうか、首輪が外れて力を最大限に発揮出来たのか。
起き上がると激痛が走り、小さな呻き声を上げた。
レオンハルトが近付いてきて、俺の身体を優しく包み込むように抱きしめられた。
「梓、良かった…無事で」
「レオンハルトも力が戻ったみたいで良かった」
周りを見渡すと、森の中に俺達だけがそこにいた。
まさか、あの校舎丸ごと幻想の力だったのか。
ナイトの力で幻想が解かれたと思ったが、雷じゃないとダメだったのか。
周りを見渡してナイトの事を探すと、少し離れたところに倒れているナイトがいた。
ナイトに近付くと、リーシャが傍にいて俺とレオンハルトを見ていた。
「大丈夫だ」とリーシャに言われたが、目を開けるまで安心出来ない。
神獣がいない中で、幻想の王位継承者と戦ってくれたんだから。
口に血が付いていて、指で拭うと目蓋を震わせて目を開けた。
「良かった、痛みはないか?」
「……頭が少し痛い、本気でぶん殴りやがって……アイツ」
ナイトは上半身を起こして頭を抱えていた。
俺の膝を枕にして、再び眠りについた。
部屋のベッドで寝た方が、硬い男の枕よりも目覚めが良いのにな。
そう思いつつ、ナイトに「お疲れ様、ありがとう」と言って頭を撫でた。
後ろからレオンハルトの腕が伸びてきて、俺の首筋に触れた。
そのまま首輪を掴んでいるから、すぐにバレるよなと乾いた笑いしか出ない。
最後に言っていたファントムの言葉を思い出した。
「大きな祭が学園内でやるみたいだから、それ終わるまで完治しといてよ……今日とは違うカタチで監獄クラスに招待しよう、私のペット」と、やたら色気のある声で言われた。
俺、ファントムのペットになるのか?どういう事?
レオンハルトもペットにされたのか、ちょっと気になる。
「なんで梓馬の首にこんなものがあるんだ」
「えっと、油断してて…ごめん」
「まさか、僕の代わりになったんじゃ…」
「大丈夫だって、どうせ俺は魔力が使えないし…すぐに飽きて解放してくれるって」
「……すまなかった」
「レオンハルトは何も悪くないって、俺が決めた事だから」
「梓馬」
申し訳なさそうなレオンハルトの頭に触れて、大丈夫だと腕を伸ばして頭を撫でた。
いつの間にか起きたのか、下からナイトの声が聞こえた。
俺の首輪に触れていて、やっぱり気になるよなと苦笑いした。
そして、ナイトが口を開いて「勃ってる?」と言われた。
さっきのファントムで、すっかり忘れていた。
俺の周りだけ、冷気が吹いて身体を震わせた。
これはナイトの魔力ではなく、俺の羞恥心から来るものだった。
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