俺の弟が一番かわいい

ー結月ー

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身代わり

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「レオンハルトは何も悪くないって、俺が決めた事だから」

「梓馬」

申し訳なさそうなレオンハルトの頭に触れて、大丈夫だと腕を伸ばして頭を撫でた。

いつの間にか起きたのか、下からナイトの声が聞こえた。

俺の首輪に触れていて、やっぱり気になるよなと苦笑いした。

そして、ナイトが口を開いて「勃ってる?」と言われた。

さっきのファントムで、すっかり忘れていた。

俺の周りだけ、冷気が吹いて身体を震わせた。

これはナイトの魔力ではなく、俺の羞恥心から来るものだった。






『視点なし』

監獄クラスの屋上から、森の方を眺める二人の影が月に照らされていた。

幻想に囚われていた彼らは森から自分達の寮に向かっているのが見えた。

偽の監獄クラスは気に入っていただけただろうか。

ファントムは楽しそうに笑みを浮かべていて、対照的に不機嫌な顔をしたラルフがいた。

本気で殺すためにやったわけではない。

彼らを幻想に飲み込んだ目的はただ一つだけ、暇潰しでしかない。

本物の監獄クラスを消して、偽物を作ったのはレオンハルトが来たからだ。

ファントムには多少の未来が見える、少し暴れてもいいような監獄クラスを作り出迎えた。

三原歩夢に情報を聞き出して、遊び相手になってくれたら良い。

そんな軽い気持ちでレオンハルトとの戦いを楽しみにしていた。

まさか、もっと面白そうなゲストがやって来るとは思わなかった。

でも、ラルフに先を越されてしまい…ずっとあの部屋でお預けされた。

だから、今度はファントムが先に遊ぼうと首輪を付けた。

「良いのかよ、簡単に逃がして…八つ裂きにすれば良かったのに」

「死んだら楽しくないよ、もっともっと私でぐちゃぐちゃになればいい」

「……趣味悪っ」

彼は、監獄クラスにいない不思議な瞳を持っていた。

普通の生徒達は、ファントムの瞳に魅入られたら終わりだ。

全てを捧げて、ファントムの忠実な僕になっていく。

幻想の魔導士なら、自ら監獄クラスの生徒になるほど。

本気を出せば、レオンハルトでさえ思い通りになるだろう。

それに、ファントムはずっと退屈だと思っていた。

レオンハルトは王位継承者だから、いろいろと面倒な事になるからやらない。

もっと抗ってくれたら楽しめるのに、人形と遊んでもつまらない。

でも神獣が引っ付いている彼は、不思議な少年だった。

確かにファントムに魅入られて、身体は素直に反応を見せていた。

でも、レオンハルトを助けたいという気持ちが瞳から伝わってきた。

その瞳に抗おうとしている奴を見て、ファントムは初めてほんの少しだけ興奮を覚えた。

抗うなら、その気力がなくなるほどに叩き落としてやる。

「ラルフこそ、八つ裂きに出来なかったくせに」

「あれは仕方ないだろ」

ファントムがラルフの方に視線を向けて、少し言い返した。

ラルフなら、あんな男…すぐに八つ裂きに出来る筈だ。

それなのに、ラルフはそうしなかった……いや、出来なかった。

ラルフは頭に血が上りやすいのに、情に熱い男だ。

見られていたら、思うように攻撃が出来なくて二発しか殴れなかった。

ナイトに対してなにかを思っていたわけではない。

ナイトの傍にいたリーシャの方を見て、ラルフは攻撃を止めた。

あの時も、ナイトとリーシャが偽物の監獄クラスに入ってきて、戦うのを止めた。

我ながら甘いとは思うが、ラルフは仕方ないとさらに不機嫌な顔になった。

「そんなにお仲間が大切?幻獣様は」

「うるせぇよ、クソ魔導士……リーシャが可哀想だ、弱い魔導士に力なんてあげなきゃならないんだから」

ラルフはそう言って、ファントムから離れて歩き出した。

最後に吐き捨てるように「俺は王位継承者を全員殺して、必ず神獣達を解放する」と言った。
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