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可愛いは全てを救う
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『梓馬視点』
翌日、俺は利き腕が使えなくなっていた。
ファントムが言っていた祭って、学園創立記念日の事だよな。
もうすぐなのに、この怪我が治せるとは思えない。
一度病院に行く必要があるな、放課後の帰りでも行こう。
今は学園があるから、もう少し我慢しないといけない。
利き腕だから、かなり日常生活は大変になるだろうなと小さくため息を吐いた。
俺が利き腕で自分を庇ったんだ、誰がではなく俺の責任だ。
朝食を前にして、痛む腕を必死に動かしていると目の前にフォークに刺さったソーセージがあった。
口を開いて一口かじり、口の中が美味しいので広がる。
「ありがとうレオンハルト」
「出来る限り協力するよ、元々は僕を助けるために来てくれたから」
「梓馬、俺のも食べて」
「ナイトもありがとう」
両隣にいるレオンハルトとナイトが朝食を食べさせてくれた。
甘えてばかりじゃダメだから、自分でも利き腕じゃない腕を動かしたが、食べる前に皿に落としてしまった。
こんな情けない姿、絶対に歩夢には見せられないな。
結局二人に食べさせてもらい、朝食を食べ終わった。
そして俺の部屋に戻ってきて、騒がしい朝を迎えた。
レオンハルトとナイトが俺の着替えを手伝ってくれると言うが、さすがに着替えくらいは俺一人で出来る。
裸を見られるから恥ずかしくて抵抗しているのではなく、自分で出来る事は自分でしたいだけだ。
両腕が使えないわけではないから、自分の制服を掴んで距離を取る。
「自分でやるから!」
「遠慮しなくていいのに」
「俺達は夫婦なんだから、気にするな」
「本当に自分でやるから!」
なんでそこまでして俺の着替えを手伝いたいのか分からない。
とにかく俺は一人で着替えるから、二人を部屋から追い出した。
着替え終わって部屋から出ると、まだ二人は部屋の前にいた。
レオンハルトはニコッと笑い、ナイトは無表情で見つめていた。
俺がちゃんと着替えられているか確認のためだけだと信じたい。
いつも通りの朝は過ぎ去り、三人で学園への道を歩いていた。
通り過ぎる生徒達の目線が痛いほど突き刺さってくる。
ナイトはまだ王位継承者だと公表していないけど、レオンハルトは王位継承者だと誰もが知っている。
いつもはレオンハルトと学園に行かない、今日は心配で付いて来てくれたからいつも以上に目立っている。
「レオンハルトさん、目立つ」
「雷の王位継承者として、重傷な仲間の魔導士を見送りに来ただけだ」
「他の奴にはしないのに」
ナイトがレオンハルトの方を見て、嫌そうな顔をしている。
レオンハルトは俺達に聞こえる声で「さらに目立つ行動を昨日したから君達だけでは不安だ」と言っていた。
そのレオンハルトの心配した言葉は現実の事となる。
俺達しか見ていなかった一部の目線が別の方向を見つめていた。
俺達と同じように目立つ人物が、俺達に気付いて下を向いていた顔を上げた。
朝から見てもその顔は可愛く、まさに「お嬢」だった。
幻想の王位継承者は俺達に近付いてきて、レオンハルトとナイトが前に出た。
幸いな事にファントムはそこにいなかった、こんなところで興奮したらいよいよ手遅れになる。
俺は路上変態男として、一生過ごさないといけなくなるところだった。
「よう、随分な態度だなお前ら」
「昨日の今日だからね、君の幻想は僕には通用しない」
「………」
「うるせぇな、今日はお前らに用じゃねぇんだよ」
ラルフの視線は、レオンハルトとナイトから俺に向けられた。
黄色い瞳が俺を捕らえて、可愛い子に見つめられるとドキッとする。
性格が可愛くはないのは、昨日で十分なほど味わった。
でもやっぱり顔が可愛い、歩夢とは違う生意気な可愛さっていうのかな。
彼はむしろ生意気なのがいいんだ、素直で純粋な子は歩夢と被るからあまり興味がなかった。
少しキツい視線が、また男心をくすぐって離さない。
昨日は生きるのに必死だったから、こんな余裕はなかった。
俺も少年をまっすぐに見つめて、目線が合うように中腰になった。
「どうかした?お嬢」
「……」、
俺の頬が少し痛みを感じて、ビンタされた事が分かる。
レオンハルトとナイトは幻想の王位継承者に向かって行こうとしたから、片手で二人を止めた。
ビンタされただけだ、こんなの別に痛くも痒くもない。
いや、むしろビンタとか……可愛い、俺が考える可愛い子そのものだ。
期待を裏切らない、絶対に歩夢と並べば無敵だな。
これはファントムと同じ魅力的な力でもあるのか?
ヘラヘラと笑みが止まらなくて、鼻血まで出てしまった。
心配するレオンハルトとナイトの間から見える、幻想の王位継承者はドン引きした顔をしていた。
翌日、俺は利き腕が使えなくなっていた。
ファントムが言っていた祭って、学園創立記念日の事だよな。
もうすぐなのに、この怪我が治せるとは思えない。
一度病院に行く必要があるな、放課後の帰りでも行こう。
今は学園があるから、もう少し我慢しないといけない。
利き腕だから、かなり日常生活は大変になるだろうなと小さくため息を吐いた。
俺が利き腕で自分を庇ったんだ、誰がではなく俺の責任だ。
朝食を前にして、痛む腕を必死に動かしていると目の前にフォークに刺さったソーセージがあった。
口を開いて一口かじり、口の中が美味しいので広がる。
「ありがとうレオンハルト」
「出来る限り協力するよ、元々は僕を助けるために来てくれたから」
「梓馬、俺のも食べて」
「ナイトもありがとう」
両隣にいるレオンハルトとナイトが朝食を食べさせてくれた。
甘えてばかりじゃダメだから、自分でも利き腕じゃない腕を動かしたが、食べる前に皿に落としてしまった。
こんな情けない姿、絶対に歩夢には見せられないな。
結局二人に食べさせてもらい、朝食を食べ終わった。
そして俺の部屋に戻ってきて、騒がしい朝を迎えた。
レオンハルトとナイトが俺の着替えを手伝ってくれると言うが、さすがに着替えくらいは俺一人で出来る。
裸を見られるから恥ずかしくて抵抗しているのではなく、自分で出来る事は自分でしたいだけだ。
両腕が使えないわけではないから、自分の制服を掴んで距離を取る。
「自分でやるから!」
「遠慮しなくていいのに」
「俺達は夫婦なんだから、気にするな」
「本当に自分でやるから!」
なんでそこまでして俺の着替えを手伝いたいのか分からない。
とにかく俺は一人で着替えるから、二人を部屋から追い出した。
着替え終わって部屋から出ると、まだ二人は部屋の前にいた。
レオンハルトはニコッと笑い、ナイトは無表情で見つめていた。
俺がちゃんと着替えられているか確認のためだけだと信じたい。
いつも通りの朝は過ぎ去り、三人で学園への道を歩いていた。
通り過ぎる生徒達の目線が痛いほど突き刺さってくる。
ナイトはまだ王位継承者だと公表していないけど、レオンハルトは王位継承者だと誰もが知っている。
いつもはレオンハルトと学園に行かない、今日は心配で付いて来てくれたからいつも以上に目立っている。
「レオンハルトさん、目立つ」
「雷の王位継承者として、重傷な仲間の魔導士を見送りに来ただけだ」
「他の奴にはしないのに」
ナイトがレオンハルトの方を見て、嫌そうな顔をしている。
レオンハルトは俺達に聞こえる声で「さらに目立つ行動を昨日したから君達だけでは不安だ」と言っていた。
そのレオンハルトの心配した言葉は現実の事となる。
俺達しか見ていなかった一部の目線が別の方向を見つめていた。
俺達と同じように目立つ人物が、俺達に気付いて下を向いていた顔を上げた。
朝から見てもその顔は可愛く、まさに「お嬢」だった。
幻想の王位継承者は俺達に近付いてきて、レオンハルトとナイトが前に出た。
幸いな事にファントムはそこにいなかった、こんなところで興奮したらいよいよ手遅れになる。
俺は路上変態男として、一生過ごさないといけなくなるところだった。
「よう、随分な態度だなお前ら」
「昨日の今日だからね、君の幻想は僕には通用しない」
「………」
「うるせぇな、今日はお前らに用じゃねぇんだよ」
ラルフの視線は、レオンハルトとナイトから俺に向けられた。
黄色い瞳が俺を捕らえて、可愛い子に見つめられるとドキッとする。
性格が可愛くはないのは、昨日で十分なほど味わった。
でもやっぱり顔が可愛い、歩夢とは違う生意気な可愛さっていうのかな。
彼はむしろ生意気なのがいいんだ、素直で純粋な子は歩夢と被るからあまり興味がなかった。
少しキツい視線が、また男心をくすぐって離さない。
昨日は生きるのに必死だったから、こんな余裕はなかった。
俺も少年をまっすぐに見つめて、目線が合うように中腰になった。
「どうかした?お嬢」
「……」、
俺の頬が少し痛みを感じて、ビンタされた事が分かる。
レオンハルトとナイトは幻想の王位継承者に向かって行こうとしたから、片手で二人を止めた。
ビンタされただけだ、こんなの別に痛くも痒くもない。
いや、むしろビンタとか……可愛い、俺が考える可愛い子そのものだ。
期待を裏切らない、絶対に歩夢と並べば無敵だな。
これはファントムと同じ魅力的な力でもあるのか?
ヘラヘラと笑みが止まらなくて、鼻血まで出てしまった。
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