俺の弟が一番かわいい

ー結月ー

文字の大きさ
50 / 81

王位を目指す者の力

しおりを挟む
『梓馬視点』

「よし、こんなもんかな」

料理が出来て、二人を呼びに行こうと厨房を出ようとした時外でガシャン!となにかが割れる音がした。

驚いて料理に蓋をして、慌てて厨房を出て音がした方向に向かって走った。

その方向は俺の部屋がある場所で、嫌な予感しかしない。

部屋のドアを開けると、そこには変わり果てた姿があった。

俺の部屋って、壁に大きな穴が開いてただろうか。

物は散乱していて、穴の前にはレオンハルトが立っていてレオンハルトの拳に電流がまとっていた。

レオンハルトは俺の存在に気付いて、表情がない顔で「梓馬の部屋を壊してすまない」と淡々と謝っていた。

いや、そういう事を心配してるんじゃなくていったい何してるんだよ。

俺も壁に近付き、下を覗き込むと寮の裏庭が見えた。

地面には氷が張っていて、下を向いているナイトの姿があった。

レオンハルトは俺に「そこにいろ」とだけ言って、下に降りていった。

レオンハルトは電流が流れる拳をナイトにぶつけて、ナイトは氷の盾を作り受け止めているが、とっさの防御ではレオンハルトの拳を受け止める事は出来ずすぐに壊れてしまう。

「な、何やってんだ二人共!!」

「…梓馬、これは必要な事だ」

「レオンハルト、いったいどういう事なんだ」

「梓馬の事情からして、王位継承者が二人も近くにいるのは危険だ……でも、ナイトは梓馬から離れる気はないと言っていた…ならば梓馬を守れる力があるか確かめているんだ、王位継承者になったばかりだと言っても甘くはないぞ」

「ぐっ…!!」

レオンハルトの力は俺の借り物の力なんかとは全然違った。

一撃がとても重くて強い、二階にいる俺のところまで衝撃が伝わってくるほどだ。

そしてそれを受け止めるナイトの力もかなりの力だが、白猫と契約したばかりで白猫の力を上手く使いこなせていないみたいだ。

レオンハルトの動きも早く、全く隙がない…これが王位継承者の実力だ。

お互い一歩も譲らない戦いで、体力が続くかぎり終わりそうにない。

レオンハルトがナイトから距離を取り、ため息を吐いた。

「これ以上続けていたら梓馬の料理が冷めてしまうな、これで終わりにしよう」

レオンハルトがそう言って、指に触れていてレオンハルトがいつも付けている指輪を外した。

その瞬間、足元から突風が吹きレオンハルトの全身が雷で覆われた。

レオンハルトの後ろに、獅子が見えた…あれはレオンハルトの神獣だ。

獅子は煙になり、レオンハルトの中に吸収された。

ナイトの周りにいつもいる白猫がいないから白猫の力を使っていると分かったが、レオンハルトは神獣の力なしであんなに戦っていたのか?

離れている俺のところまでレオンハルトの雷が届くほどさっきと比べ物にならないほどの魔力だ。

ビリビリ体が痺れて一歩も動けない。

こんな力の差が激しすぎると、ナイトの魔法じゃ受け止められない。

ナイトは生徒会と戦ったあの力を使おうとレオンハルトに向かって手をかざした。

そして、二人の王位継承者の力が激しくぶつかり合った。

寮の周りに結界が張っているのか、大きな被害はなさそうだが、二人の周りは物凄い事になっている。

雷と氷で目がチカチカしていて一瞬目を瞑ったがすぐにその光は消えて立っていたのは、レオンハルトだった。

ナイトは膝を地面に付いていて、ポタポタと真っ赤な血が地面を染めていた。

俺も飛び降りて転げながらナイトに駆け寄ると、息が荒くてまだ少しナイトの身体が痺れていた。

白猫もいつの間にかナイトから離れて傍で気絶していて、レオンハルトの本気は恐ろしいものだと分かる。

レオンハルトが近付いてきて、ナイトの前に出て両手を広げた。

これをするのは短時間で二回目だ。

「もう勝負がついただろ、これ以上は…」

「これで最後だと言っただろ、久々に力を解放したから僕も疲れた」

そう言ったレオンハルトの頬には切り傷が出来ていた。

地面に落ちた指輪を拾って嵌めると、獅子はレオンハルトから抜けて消えていった。

レオンハルトはナイトに手を差し伸ばして「王位継承者になったばかりで僕に傷を付けられるほどなら合格だ」と微笑んでいた。

ナイトはレオンハルトの手を掴み、とりあえず戦いは終わったそうだ。

それにしてもなんで戦っていたのか全く分からない、なにがあったんだ?

ナイトに肩を貸して、寮の中に入った…あの激しい戦いで寮が崩壊しなくて良かった…俺の部屋は悲惨なものだったが…

寮内にある医務室に入り、ナイトを椅子に座らせて怪我の手当をした。

上半身を脱いでもらうと、青黒い打撲の痕とかが痛々しい。

「レオンハルト、いったいなにがあったんだ?」

「梓馬が悪い、僕という恋人がいながら他の男を夫にしたんだろ?」

「……い、いや…それは俺にもよく」

レオンハルトとは恋人ごっこ…というか、真剣に考え中の段階でナイトが俺達の関係を夫婦だと言ったのならびっくりするよな。

言われた俺でもびっくりしている、告白をしたとかされたとかすっ飛ばしてとんでもない事になっていたんだから…

レオンハルトは俺の耳元に唇を寄せてきて、くすぐったくてビクッとした。

自分で傷の手当てをするナイトに気付かれないくらいの小さな声で「梓馬の身体には僕の力が宿っているんだ…なのに他の…しかも王位継承者の力を梓馬の中に入れたらどうなるか僕にも分からない」と言っていた。

なるほど、それでレオンハルトは俺の身体を凄く心配して怒っていたのか。

あれ?でも力を入れる方法って……

「ちょ、ちょっと待て!俺とナイトはそんな事していない!」

「夫婦だと言っていたから僕はてっきり…」

「ナイトは、ほら…友達なんだよ!歩夢を大切に思う心は同じだから!」

いきなり俺が大声を出したから、ナイトは首を傾げていた。

夫婦って言った意味は本人しか分からないから俺が勝手に決めつけるわけにもいかない。

でも、レオンハルトとしたような事をしてはいない!

そもそも俺がレオンハルトに抱いている気持ちがふわふわした状態で他の男とそういう事は…

レオンハルトは、俺とナイトを交互に見つめていた。

そして、理解してくれたのか「すまなかった」とナイトに頭を下げていた。

「ぼくの早とちりだったようだ、梓馬の身体になにかあってからだと遅いと思って梓馬の事を言わなくては……それには秘密と梓馬を守る力があるか試す必要があった」

「俺もレオンハルトに説明していなかったからごめん」

「二人して何の話をしているんだ?」

俺も悪いところがあった……そもそも俺がちゃんとしていたらこんな事にはならなかった。

俺達がお互い謝っていたら、ナイトが不満そうに俺達を見つめていた。

ナイトに俺の事を話していないから、そうなるのは当然だ。

ナイトが俺の秘密を言いふらすとも思えないし、歩夢の事をナイトに話した方が歩夢を守りやすくなる。

歩夢のためにレオンハルトに「ナイトにも言っていいか?」と確認したらレオンハルトは「それで彼が納得して今後余計な事をしなければな」と言っていた。

仲が悪いのか、なんかいつもと違ってレオンハルトの言葉に棘がある。

二人は俺がここに連れてくる前より知り合いみたいだったけど、あまり仲良くは見えない。

俺はナイトに全て話した。

俺が学園に人間として通わなくてはいけない理由、レオンハルトに協力してもらっている事、そして歩夢の事。

まさか俺が人間だと思わなかったのか、驚いた顔をしていた。

そして肩を落としているナイトに俺は心が苦しくなった。

秘密にしなきゃいけないという事は嘘を付かないといけないんだ……これからも、仲良くなった友達にも…

覚悟していたのに、ナイトの姿を実際に見ると心が揺らいでしまう。

「ごめん、ナイト…内緒にしていて…ナイトの事を信じられないから言わなかったんじゃなくて…何言っても言い訳だよな、ごめん」

「まさか梓馬が…」

「でも、人間っていう事だけ内緒にしてただけでナイトに言った事は本心だから!!」

「…男を知ってる身体とは」

「………ん?」

「はぁ……」

ナイトはため息を吐いていて、腹に包帯を巻いていた。

えっと…ナイトが何に落ち込んでいるのか分からなくなったぞ。

俺が人間だという事を隠していた事にショックを受けたんじゃないのか?
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい

椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。 その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。 婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!! 婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。 攻めズ ノーマルなクール王子 ドMぶりっ子 ドS従者 × Sムーブに悩むツッコミぼっち受け 作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

Q.親友のブラコン兄弟から敵意を向けられています。どうすれば助かりますか?

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
平々凡々な高校生、茂部正人«もぶまさと»にはひとつの悩みがある。 それは、親友である八乙女楓真«やおとめふうま»の兄と弟から、尋常でない敵意を向けられることであった。ブラコンである彼らは、大切な彼と仲良くしている茂部を警戒しているのだ──そう考える茂部は悩みつつも、楓真と仲を深めていく。 友達関係を続けるため、たまに折れそうにもなるけど圧には負けない!!頑張れ、茂部!! なお、兄弟は三人とも好意を茂部に向けているものとする。 7/28 一度完結しました。小ネタなど書けたら追加していきたいと思います。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...