俺の弟が一番かわいい

ー結月ー

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恋愛初心者

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俺がレオンハルトの方を見つめて言っていたら、突然頬を掴まれてナイトの方に向けられた。

そして、その瞬間…ナイトの唇で俺の唇を塞がれた。

びっくりして固まっていたら、ぬるっとした舌が入ってきて深いものに変わった。

ナイトの袖を掴むけど、後頭部を掴まれて逃げられない。

息が苦しくて、頭もクラクラしてきた。

俺が初めてとかどうとか言ってたくせに、ナイトは完全に初めてではないだろ!

唇を離されて、立ってられずナイトに腰を掴まれて支えられた。

「はぁっ、はぁ…なんで、いきなり…」

「俺とキスして気持ち悪かったか?」

「そんな事…ないけど」

「じゃあ梓馬は俺の事も好きなんだな」

ナイトはそう言って、俺の事をギュッと抱きしめていた。

そのまま後ろに体重を掛けられて、倒れた。

ナイトに無理矢理キスはされたが、嫌ではなかった。

俺の耳元で「梓馬は俺の事が好きなんだ」と自信満々に言われて戸惑う。

俺、ナイトの事も好きだったのか!?どうなってるんだ!?

自分の事なのに自分が分からなくなってきた。

俺って浮気体質だったのか!?

モゾモゾとナイトが俺のシャツの中に手を入れてきて、ヒヤッと冷たく感じた。

「うわっ!!」

「俺、梓馬を気持ちよくさせられる……愛人がいても気にしない…でも、愛人とするくらいなら俺としてほしい……同じ王位継承者なら俺でもいいだろ」

「いや、でも俺はレオンハルトが…」

「でも俺とキスして平気なら、俺が好きなんだよ」

「いや、でも…」

「梓馬、俺は梓馬が一妻多夫がいいならそれでいい」

あれ?話が通じてない?どうすればいいんだ?

「ナイト、梓馬を惑わすのはやめてくれないか?」

「惑わす?」

「梓馬は信じやすいんだ、混乱している」

俺は二人が何を話しているか分からないが、レオンハルトがナイトの頭を掴んで止めている。

ナイトは俺を見つめていて、俺は考えすぎて頭が回らなくなっていた。

最後にナイトは「俺は梓馬が好きだ」と言う捨て台詞のようなものを吐いて、俺から退いた。

俺はレオンハルトが好き、だって俺は男が好きじゃなかったのにキスされて受け入れて全然嫌ではなかった。

好きじゃなきゃ、普通は拒絶するレオンハルトがどんなに顔がいい美形でも嫌なものは嫌だ。

でも、それで好きだと分かったならナイトはいったいどう説明するんだ?

ナイトの言った通り俺はナイトが好きなのか?そうなのか?

「梓馬…大丈夫か?ボーッとしているが」

「レオンハルト、俺…浮気性だったみたいで…ごめん、最低だよな」

「今日は疲れただろ、ゆっくり休め」

レオンハルトはそう言って、俺の腕を引っ張って起き上がらせてくれた。

確かに疲れた…でも、まだナイトの事をはっきりさせていないのにそれでいいのか?

また二人が変な事になったらと思うと不安だ。

俺には二人が本気で戦っている間に入るほど強くはない。

だから戦う前に止めなくてはいけない。

「大丈夫」と、レオンハルトの肩に触れると視界がぶれた。

なにが起きたか分からないまま、俺の意識はなくなった。

最後にレオンハルトが「すまない」と謝る声が聞こえた。





『レオンハルト視点』

「レオンハルトさん、梓馬が好きなのにそんな事するんですか」

「こうでもしないと梓馬はゆっくり休めないからな」

梓馬が何を考えているか、分かりやすい過ぎて心配になる。

秘密を守れるのか、まぁ弟のためなら梓馬の事だ…意地でも約束を守るだろう。

梓馬の首元を狙って気絶させて、ぐったりとした身体を抱き上げて運ぶ。

梓馬の部屋は穴が開いていて、なにかあったら大変だな。

僕の部屋に運ぶか、それが一番安全だ。

医務室を出て、廊下を歩いていると後ろからナイトが付いてくる。

「ナイト、もう帰っていいぞ…梓馬は今日は起こさない」

「梓馬が料理作ってくれたなら食べないと悪いだろ」

「……そうか、じゃあ梓馬を寝かせてから僕も食堂に行く…だから先に食べていてくれ」

「分かった……他の王位継承者達は」

「安心しろ、アイツらは特殊だからな…帰ってこない」

自分から聞いたくせに、全く興味なさそうにしていた。

ナイトは本当に扱うのが難しい男だ、最初に出会った頃から…

初めてナイトを見た時は、ナイトが入学する時だ。

白猫を肩に乗せていて、僕の神獣が僕にしか聞こえない声で唸っていた。

感じたんだとすぐに分かった、あの白猫は神獣だ。

でも一緒にいるのに白猫とナイトの繋がりを感じなかった。

それが意味する事は、一緒にいるのにまだ契約していないという事だ。

でも、いずれするだろうと思いながら親しくならない程度に会話をしていた。

そのくらいの仲だった…今日までは…

まさかこんな事になるなんて、想像もしていなかった。

梓馬はなにか特別なのかもしれない、王位継承者に好かれるなにかがある…それだとエルゼに狙われている歩夢も兄弟だからせつめいがつく。

梓馬はいったい何者なのか、何故こんなに魅力を感じるのか。

きっと本人に言っても分からないだろうな。

僕の部屋に入り、ベッドで寝かせて部屋を出た。

食堂に入ると、ナイトが僕の方に振り返った。

テーブルには自分のぶんと僕のぶんの料理が並べられていた。

先に食べていればいいのに、ナイトは料理に手をつけていなかった。

僕と一緒に食べたいわけでもないだろうに、と思いながらテーブルを挟んだナイトの向かい席に座った。

「僕のぶんまで運んでくれてありがとう」

「ついでだ、気にするな」

そう言って、やはり食事に手を付けず僕の見ていた。

純粋に見つめているというより、睨んでいるようだ。

僕に話があったから、ずっと待っていたんだろう……僕達の共通の話題といったら梓馬の事だろう。

さっきは僕が彼に話があったのに今では逆になっているな。

料理が冷めるのは嫌だから、食べながら話そうと言うとナイトは頷いてやっと食事が始まった。

梓馬がいないからこの料理の名前は分からないが、野菜が沢山入っていて甘すぎず濃すぎない味付けが美味しい。

梓馬は将来料理人を目指しているのか、これなら充分料理人になれる。

「レオンハルトさん」

「なんだ?」

「梓馬は信じやすいって言いましたよね、どういう意味ですか?」

「……それを知ってどうするんだ?」

「まさか、レオンハルトさん…梓馬を洗脳して好きにさせたんじゃ…」

食べるのを止めて、ナイトを見るとナイトは複雑な顔をしていた。

僕との力の差が分かっているから逆らいたくないが、梓馬のために言わないと…と二つの気持ちがぶつかり合っているようだ。

梓馬は愛されているんだな、普段表情が変わりにくいナイトにこんな顔をさせられるんだから…

洗脳、そう言われたらそうなのかもしれない。

梓馬の弟を助けたいという気持ちにつけ込んで、僕は恋人ごっこを提案してくれた。

身体の関係も、必要だからと強引に迫ったのは僕だ。

ナイトの事を言えないな。

「僕は梓馬を愛している、その気持ちに嘘はない」

「…でも梓馬がレオンハルトさんに抱いている気持ちが洗脳だったら卑怯じゃないですか」

「そうだな、でも梓馬のために僕は止める気はない…弟を取り戻して、そこから決めるのは梓馬自身だ」

「……」

「特別な魔法を使っているわけではないから梓馬の気持ちを変える事は出来ないよ」

「じゃあ、俺も梓馬に迫っても…もう止めませんよね」

ナイトの言葉に、諦めのため息を吐いた。

梓馬に告白するのは自由だが、梓馬とするのは見逃す事が出来ない。

僕が梓馬を愛していて独占したいから……それも少しはあるがそれだけの理由ではない。

梓馬は人間で、魔力を注いで魔法が使える。

二つの魔法を入れたらどうなるかなんて誰にも分からない、そんな魔導士は聞いた事がない。

梓馬の身体に何かしら変化が起こるかもしれない…だから僕はダメだと言っているんだ。

それに、もし無事でもナイトの氷の魔法なんて使ったらどうなるか分かっているのか?

周りには梓馬が雷属性だと知られているのに、混乱する。

人間だと気付く奴が居ても不思議じゃない、そんな危険な目にあわせるわけにはいかない。

「梓馬にアプローチするのは勝手にしろ、ただ…梓馬は雷属性なんだ…それを変えると梓馬がどうなるか……想像出来ないほどのバカではないだろ」

「………ご馳走様、梓馬の事よろしく」

ナイトはそう言っていつの間にか全部食べたのか、空の食器を片していた。

僕も食事を再開させた。

納得してはくれたとは思うが、梓馬の事を諦めたわけでなさそうだ。

食堂で一人になり、早々に食べて僕も食器を片した。

ナイトが入寮するなら部屋を掃除しておかないといけないな。

確か使っていない部屋があったが、あそこは物置になっている…片付けないとな、と気分が滅入る。

梓馬の部屋も壊れたままにしておくわけにはいかないな。

やる事が山積みで、梓馬の部屋に関しては僕のせいだから早めになんとかしようと思った。

学園裏にある時計塔から時間を知らせる大きな鐘が鳴った。

この鐘は寮の門限を知らせる役割もあり…離れたここまで音が聞こえる、僕のいる寮には門限はないけどね。

梓馬の様子を見に行こうと自分の部屋に向かった。
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