俺の弟が一番かわいい

ー結月ー

文字の大きさ
35 / 81

珍獣兄

しおりを挟む
まっすぐ進むと下に続く階段があり降りていく。

するとそこは大きなダンスホールになっていて、風紀委員長がテキパキと進める。

俺は天井にぶら下げている照明に電気を付ける仕事だ。

それぞれの持ち場に向かっているが、俺は照明までどうやって行くのか分からなかった。

ハシゴは届かなさそうだし、照明近くに向かう階段とかもない。

風紀委員長はちょっと苦手だから、他の風紀委員の人に聞いてみる。

すると「飛行魔法で行けるだろ、そんな事も分からないのか」とバカにされた。

雷以外は使えないから飛行魔法の事は全然考えてなかった。

飛行魔法で行くなんて俺には無理じゃないか?他になにか方法はないか考えた。

「何やってんの、珍獣お兄さん」

「………飛行魔法が使えないから他の方法探してんだよ」

「基礎中の基礎なのに?」

「……………力に目覚めたばかりだからな」

「ふぅん、俺が手伝ってやろうか?」

基礎でも俺には出来ないから仕方ない、そう思っていたら少年の申し出に驚いた。

俺を珍獣お兄さんとバカにしていたから、まさかそんな事を言ってくるとは思わなかった。

飛行魔法以外の方法が知りたくて、少年に縋る事にした。

少年の話によると氷で階段と足場を作ってくれるというものだった。

面倒くさがりであるこの少年がよくやってくれる気になってくれたのか不思議だった。

少年は「歩夢の兄だからな」と言っていた、友人のためなら面倒くさがらないのかもな。

「これで貸しが出来たな」

「………」

結局、歩夢の兄がどうとかではなく貸しを作りたかっただけじゃないか。

歩夢はいい友達を持ったと一瞬でも思った俺がバカだったよ。

まぁ、いいや…いつか貸しを返すとして俺は少年に階段と足場を作ってもらった。

氷だから触ると冷たいから触らないように、滑らないように慎重に上がる。

かなり高くて下を見ないようにしながら上っていくと、照明が見えた。

これを触って電気を流せばいいんだよな、照明に触り雷を送った。

それを繰り返していき、照明は残り半分までになった。

かなりの照明があり、魔力も沢山使ったから疲れてしまっていた。

つい下を見てしまうと、皆疲れている様子だったが風紀委員が監視しているから帰れないようだ。

俺も早く終わらせないと日が暮れてしまうと思い、自分の仕事に戻ろうと照明に手を伸ばす。

後少しで届くと思っていたら、ずるっと足を踏み外した。

とっさになにかに掴まろうと思ったが、手は空気を掴んだ。

そのまま身体は下に向かって落ちていくしかなかった。

普通の魔導士なら飛行魔法が使えるが、俺は使えない。

この高さから落ちたら、無事では済まない事は分かる。

せめて痛みに耐えようと目を強く瞑って、来るはずの衝撃に身構えた。

軽い衝撃はあったが、痛いほどではなくて恐る恐る目を開けた。

「お転婆な珍獣お兄さんですね」

「…聞こうと思ってたけど、その珍獣ってなんだ?」

「歩夢が変態兄だって言うから、弟をそんな目で見るなんて珍獣みたいだと思っただけですよ」

やっぱり歩夢から俺ってそんな風に見えるのか、ショックだった。

そして歩夢の友人なら多分後輩だろう少年に、お姫様抱っこされてるこの状況はいったいなんだ?

落ちた俺を助けてくれたんだろうけど、そろそろ下ろして欲しい…周りの視線が痛い。

耐えきれなくて下ろしてと言ったら貸しがもう一つ増えてしまった。

少年は氷を溶かしてしまい、まだ照明があるのに足場が消えてしまった。

まだあるのになんで?と聞いたら「お兄さんは危なっかしいから」と言った。

でも全部照明に雷を当てないと帰れないと思ったら、また少年にお姫様抱っこされた。

「ちょっ、なんでまた…」

「これなら安全だろ」

そう思っていたら、少年の足が浮いて天井まで向かった。

少年の飛行魔法だろう、初めての飛行魔法で驚いて少年にしがみつく。

頭を抱えたせいか、少年が見えないと言っていて慌てて離れた。

「本当お転婆ですね、大人しくしてて下さい」と言われて、お転婆じゃないと言い返したかったが黙って照明に触れる。

この少年なら歩夢がどんな学園生活を送っているのか分かるかもしれない。

俺はただ普通に歩夢は学園ではどんな子なのか聞いただけだ、そんな不審者を見るような顔をされる覚えはない。

「…ストーカー?」

「なんでそうなるんだよ」

「歩夢の事なら俺よりお兄さんの方が詳しいよね」

確かに少年の言う通りだが、この学園に来て…俺の知らない歩夢がいるようで気になった。

「俺の知ってる歩夢は、可愛くて天使で無垢で俺の大切な弟なんだ」

「…無垢?天使?随分分厚いフィルターだな」

「フィルターじゃなくて本当に…」

「歩夢は毎日違う恋人がいて、寮の部屋にも連れ込んでいるな」

少年の言葉に開いた口が塞がらなかった、少年の言葉を全て信じるなら…

歩夢は生徒会長以外にも恋人がいるのか、しかも寮の部屋に連れ込んでって…

歩夢、いったいどうなっちゃったんだ?この学園に来てから可笑しくなったのか?

もしかしてこの少年も歩夢の恋人だったのか?顔が変わらないから何を考えてるか分からない。

最後の照明に触れて、少年の身体は下がっていき床に少々乱暴に降ろされた。

背中をぶつけて痛くて顔を歪ませた俺の前に少年はモップを見せた。

「俺の貸し一つ返してもらうからな」

「…あ、あぁ」

少年は床掃除を任されていて、氷を溶かして水にしてモップを動かしていて俺も手伝ってぞうきんで拭く。

こんな広いホールを一人で任されたなんて、風紀委員も酷い事するなぁ。

ちょっと制服が乱れていただけなのにな、ダンスホールの清掃は夜まで掛かった。

総合図書館を出ると、真っ暗で外灯だけが足元を照らしている。

腕と腰が痛くて、腕を回しながら歩いていくと少年は森と反対方向に歩いていく。

こんな夜に何処か用事でもあるのか?話からして歩夢と同室なんだよな。

「歩夢が待ってるんじゃないのか?何処に行くんだ?」

「待ってない、適当な場所で寝る」

「いや、だって部屋で歩夢一人…」

「また男連れ込んでるんだろ、安眠妨害だからあの部屋にはほとんど帰ってないんだよ」

そう言って、少年は暗闇の中に消えていき…俺も寮に帰ろうと森の中に歩いた。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい

椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。 その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。 婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!! 婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。 攻めズ ノーマルなクール王子 ドMぶりっ子 ドS従者 × Sムーブに悩むツッコミぼっち受け 作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

Q.親友のブラコン兄弟から敵意を向けられています。どうすれば助かりますか?

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
平々凡々な高校生、茂部正人«もぶまさと»にはひとつの悩みがある。 それは、親友である八乙女楓真«やおとめふうま»の兄と弟から、尋常でない敵意を向けられることであった。ブラコンである彼らは、大切な彼と仲良くしている茂部を警戒しているのだ──そう考える茂部は悩みつつも、楓真と仲を深めていく。 友達関係を続けるため、たまに折れそうにもなるけど圧には負けない!!頑張れ、茂部!! なお、兄弟は三人とも好意を茂部に向けているものとする。 7/28 一度完結しました。小ネタなど書けたら追加していきたいと思います。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...