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残酷な現実
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「…じゃあお前は、生徒会の奴らの仲間か!!」
心配してくれた人に普段ならこんな事はしなかった。
でも、今の俺は生徒会全員を敵のように思っている。
歩夢を変えた奴ら、歩夢の姿を見て笑っている奴らに怒りが込み上げてくる。
胸ぐらを掴んで赤髪の少年を押し倒した。
突然の事で赤髪の少年は驚いた顔をしていたが俺は気にしなかった。
こんな事をしているのに、腕が震えていて情けない自分がいた。
「おいっ!離せっ」
「……せ」
「なんだ…?」
「歩夢を、歩夢を…返せ」
「…お前」
なんで歩夢なんだ、歩夢がなにかしたのか?ただ普通に暮らしていただけなのに…
歩夢をあんな目に遭わせたのは俺だ、俺が歩夢に構ってばかりいたから歩夢が頼ったのはあの生徒会長だ。
俺にも責任がある、生徒会長だけが悪いわけではない。
俺が歩夢を守ってやれなかったからあんな奴に会ってしまったんだ。
赤髪の少年の服から手を離して、よれてしまった服を直した。
これは俺と歩夢と生徒会長の問題だ、あの場にいて歩夢を笑った奴に怒りをぶつけるのは分かるが、この人は確かいなかった…生徒会だからって関係ない。
急に冷静になって、目の前の人には申し訳ない事をしてしまったなと反省する。
「すみませんでした、俺…どうかしてて」
「いや、歩夢と言っていたが…お前、もしかして」
「歩夢の事は放っておいて下さい!」
俺はなんかあった時のために、カバンから紙とペンを取り出して連絡先を書いて赤髪の少年に渡した。
制服のクリーニング代とかいろいろあるだろうと思ってだ。
でも、歩夢の話は聞きたくなかった…今朝までは歩夢についてあんなに気になっていたのに…
俺だって似たような事をしているんだ、歩夢がどうこうなんて言えない。
逃げるようにして洋館から飛び出して、寮に向かってとぼとぼと歩いた。
どんな顔をして歩夢に会えばいいんだよ、歩夢を前にして笑顔でいられるのか?
ズボンのポケットにあるスマホがブルブルと震えていた。
画面を見ると、レオンハルトからでスライドして通話した。
さっきも震えていたから、心配掛けてしまったよな。
「…レオンハルト?」
『梓馬か、無事みたいで良かった』
「悪い…心配かけて」
『そんな事気にするな、僕が勝手にやった事だ』
「……」
『梓馬、今何処にいる?迎えに行く』
俺が少し黙っただけで、レオンハルトは声のトーンを少し下げて言ってくれた。
ありがたいけど、まだ少し一人で考えたかった。
もうすぐ寮だから大丈夫だと言って通話は終わった。
蹴られた時に切れた唇が痛いな、怪我のまま帰ったらレオンハルトがまた心配する。
一度学校の保健室で手当してから帰ろうかと学校に向かった。
もう空も薄暗いし、生徒は一人も残っていないだろう。
でも、なにかあった時のために重要な施設は年中無休で開いていると今朝保健室に来た時に壁に貼ってあった貼り紙を見た。
校舎に入らずに、直接保健室に入るドアは開いていた。
こんな時間だから保健室には誰もいなくて、いや万が一の場合を考える。
まさかこんな時間までいるとは思っていないが、ベッドのカーテンを開けた。
いないならいないでいいが、いたらいたでいろいろと問題が出てしまう。
「なんでいるんだよ」
そこにいたのは、気持ちよさそうに眠っているナイトの姿だった。
今朝はいなかった白猫はナイトの横で丸まって寝ていた。
あの真面目な白猫の事だ、ナイトを起こすのに失敗して諦めたという事が想像出来る。
まさかずっとここで寝てたのか?いくら年中無休の保健室でも寮のベッドの方がいいだろう。
同じ寮だし、放っておくわけにもいかず…ナイトの肩を軽く揺すった。
こんな事で起きるわけがない、初めてナイトと会った時を思い出す。
あの時は雷が出て起こそうとしたらナイトが起きた。
雷で起こしたわけではないが、魔力を感じて起きたのだろう。
そして今の俺は雷が発動しなくなった、ただの人間だ。
レオンハルトを呼びたいが、そうなると保健室になんでいるのか理由を聞かれる。
どうすればいいんだ…とりあえずナイトはほっといて傷の手当てを先にする事にした。
もしかしたら眩しくて起きるかも…と期待を込めて電気を付けるとベッドからなにかが下りる影があった。
人間ではないその影は欠伸をしながら俺の前に座った。
『誰かと思ったらお前か、ふぁぁ』
「ナイト、寮で寝た方がいいよ」
『分かってる、でもちょっとの事で起きないのもアイツだ』
そう言った白猫は椅子の上に飛び乗って毛ずくろいをしていた。
俺は消毒液を持って、白猫のいる椅子と向かい側にある椅子に座って口の端の切れている部分に綿を押し付けた。
ピリッと痛みが走ったが、我慢出来る痛みではなく続ける。
絆創膏を貼って、これで大丈夫だがレオンハルトには一発でバレるなと鏡を見つめる。
喧嘩をした傷みたいだが、転んだって言えば通じるか?
生徒会を庇うわけではない、レオンハルトが怒ると怖いし…何より心配掛けたくないから言わないだけだ。
『お前はナイトの事どう思ってんだ?』
「どうって…」
心配してくれた人に普段ならこんな事はしなかった。
でも、今の俺は生徒会全員を敵のように思っている。
歩夢を変えた奴ら、歩夢の姿を見て笑っている奴らに怒りが込み上げてくる。
胸ぐらを掴んで赤髪の少年を押し倒した。
突然の事で赤髪の少年は驚いた顔をしていたが俺は気にしなかった。
こんな事をしているのに、腕が震えていて情けない自分がいた。
「おいっ!離せっ」
「……せ」
「なんだ…?」
「歩夢を、歩夢を…返せ」
「…お前」
なんで歩夢なんだ、歩夢がなにかしたのか?ただ普通に暮らしていただけなのに…
歩夢をあんな目に遭わせたのは俺だ、俺が歩夢に構ってばかりいたから歩夢が頼ったのはあの生徒会長だ。
俺にも責任がある、生徒会長だけが悪いわけではない。
俺が歩夢を守ってやれなかったからあんな奴に会ってしまったんだ。
赤髪の少年の服から手を離して、よれてしまった服を直した。
これは俺と歩夢と生徒会長の問題だ、あの場にいて歩夢を笑った奴に怒りをぶつけるのは分かるが、この人は確かいなかった…生徒会だからって関係ない。
急に冷静になって、目の前の人には申し訳ない事をしてしまったなと反省する。
「すみませんでした、俺…どうかしてて」
「いや、歩夢と言っていたが…お前、もしかして」
「歩夢の事は放っておいて下さい!」
俺はなんかあった時のために、カバンから紙とペンを取り出して連絡先を書いて赤髪の少年に渡した。
制服のクリーニング代とかいろいろあるだろうと思ってだ。
でも、歩夢の話は聞きたくなかった…今朝までは歩夢についてあんなに気になっていたのに…
俺だって似たような事をしているんだ、歩夢がどうこうなんて言えない。
逃げるようにして洋館から飛び出して、寮に向かってとぼとぼと歩いた。
どんな顔をして歩夢に会えばいいんだよ、歩夢を前にして笑顔でいられるのか?
ズボンのポケットにあるスマホがブルブルと震えていた。
画面を見ると、レオンハルトからでスライドして通話した。
さっきも震えていたから、心配掛けてしまったよな。
「…レオンハルト?」
『梓馬か、無事みたいで良かった』
「悪い…心配かけて」
『そんな事気にするな、僕が勝手にやった事だ』
「……」
『梓馬、今何処にいる?迎えに行く』
俺が少し黙っただけで、レオンハルトは声のトーンを少し下げて言ってくれた。
ありがたいけど、まだ少し一人で考えたかった。
もうすぐ寮だから大丈夫だと言って通話は終わった。
蹴られた時に切れた唇が痛いな、怪我のまま帰ったらレオンハルトがまた心配する。
一度学校の保健室で手当してから帰ろうかと学校に向かった。
もう空も薄暗いし、生徒は一人も残っていないだろう。
でも、なにかあった時のために重要な施設は年中無休で開いていると今朝保健室に来た時に壁に貼ってあった貼り紙を見た。
校舎に入らずに、直接保健室に入るドアは開いていた。
こんな時間だから保健室には誰もいなくて、いや万が一の場合を考える。
まさかこんな時間までいるとは思っていないが、ベッドのカーテンを開けた。
いないならいないでいいが、いたらいたでいろいろと問題が出てしまう。
「なんでいるんだよ」
そこにいたのは、気持ちよさそうに眠っているナイトの姿だった。
今朝はいなかった白猫はナイトの横で丸まって寝ていた。
あの真面目な白猫の事だ、ナイトを起こすのに失敗して諦めたという事が想像出来る。
まさかずっとここで寝てたのか?いくら年中無休の保健室でも寮のベッドの方がいいだろう。
同じ寮だし、放っておくわけにもいかず…ナイトの肩を軽く揺すった。
こんな事で起きるわけがない、初めてナイトと会った時を思い出す。
あの時は雷が出て起こそうとしたらナイトが起きた。
雷で起こしたわけではないが、魔力を感じて起きたのだろう。
そして今の俺は雷が発動しなくなった、ただの人間だ。
レオンハルトを呼びたいが、そうなると保健室になんでいるのか理由を聞かれる。
どうすればいいんだ…とりあえずナイトはほっといて傷の手当てを先にする事にした。
もしかしたら眩しくて起きるかも…と期待を込めて電気を付けるとベッドからなにかが下りる影があった。
人間ではないその影は欠伸をしながら俺の前に座った。
『誰かと思ったらお前か、ふぁぁ』
「ナイト、寮で寝た方がいいよ」
『分かってる、でもちょっとの事で起きないのもアイツだ』
そう言った白猫は椅子の上に飛び乗って毛ずくろいをしていた。
俺は消毒液を持って、白猫のいる椅子と向かい側にある椅子に座って口の端の切れている部分に綿を押し付けた。
ピリッと痛みが走ったが、我慢出来る痛みではなく続ける。
絆創膏を貼って、これで大丈夫だがレオンハルトには一発でバレるなと鏡を見つめる。
喧嘩をした傷みたいだが、転んだって言えば通じるか?
生徒会を庇うわけではない、レオンハルトが怒ると怖いし…何より心配掛けたくないから言わないだけだ。
『お前はナイトの事どう思ってんだ?』
「どうって…」
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